特集

鉱山から市場へ:カラーストーンの「冒険物語」


カラー宝石 - 鉱山から市場まで
GIAフィールドジェモロジィの教育マネージャーであるAndy Lucasと、GIAテクニカルエディターとGems & Gemology(宝石&宝石学)の研究スペシャリストのDr. Tao Hsuは、1月13日に機関のカールズバッドキャンパスで、カラー宝石のサプライチェーンに関するフィールド研究の一部を発表した。 「カラーストーンは高級品のとっておきの本当の冒険です。 他のどんな高級品が本当に冒険物語を持っているだろうか?」」とLucasは語る。ビデオ画像:Albert SalvatoとLarry Lavitt

カラーストーンの販売において、小売業者がサプライチェーンへの知識を持っていると、カウンターやどんな販売の場でも実感できる利点となります。  

これが、GIAフィールドジェモロジィの教育マネージャーのAndy Lucasと、GIAテクニカルエディター兼Gems & Gemology(宝石&宝石学)の研究スペシャリストのDr. Tao Hsuが、1月13日にGIAのカールズバッドキャンパスで、地域のGIA同窓生とWomen’s Jewelry Association(ウィメンズジュエリーアソシエーション)の会員に向けて話したことです。 LucasとHsuは、宝石が鉱山から市場に旅するときに何が起こるかを発見し文書化するために、一緒に世界を旅しています。

カラーストーンの魅力は何世紀にも渡って変わらないので、小売業者はそのロマンスや冒険の物語を人に伝える必要があります、とLucasは言いました。

「その物語の知識に精通している人の方が上手に顧客を満足させ、顧客の信頼を得て、顧客の興味を捉えることができます」と彼は言いました。

Lucasは、その物語の詳細が長年の間に進化していることを承知しています。

「現代の人々は簡単に情報へアクセスできます。また採鉱やカッティングのアートに興味を持っています。 さらに、そこには倫理的な問題がたくさんあり、人々はそれを聞くことに興味を持っています」とLucasは続けました。

二人が遠征中に最初に気づいたことの一つは、カラー宝石の原産地での技術は、資金を豊富に持つ企業が運営する大規模な鉱山のものから小さな職人鉱山のものまで幅があるということです。 両方の運営のタイプは「互いを補い合い、また対立する」こともあります。

Hsuは、彼女が今まで見た中で近代的に機械化された大規模な採鉱の最も良い例の一つとして、ザンビアの主要なエメラルド鉱山であるKagem鉱山を挙げました。

「私はその穴の大きさに驚きました。 そこの一次生産は1キロ以上に渡るこの穴から出てきています。 これは硬岩掘削であるため、これに関わる爆発を見ること、そして地面の揺れを感じることは非常に素晴らしいものでした。」 Hsuはこの鉱山を所有しているGemfields(ジェムフィールド)は、彼らのエメラルドに対して厳格で一貫性のあるグレーディングシステムを用いていると言いました。

「現代の人々はもっと簡単に情報へアクセスできます。また採鉱やカッティングのアートに興味を持っています。 さらに、そこには倫理的な問題がたくさんあり、人々はそれを聞くことに興味を持っています。」
Andy Lucas、フィールドジェモロジィマネージャー、GIA  

Lucasは、70%のカラーストーンの生産を担っていると一部の専門家が考えている、職人と小規模採鉱の例を伝えました。 このカテゴリでも、状況は多様です。

Lucasは、アフリカでの運営は「非常に変化があり」、職人鉱山の中には「違法採鉱、環境破壊、そしてより大きな組織的採鉱との対立」があることを話しました。

「スリランカでは計画があり合法化されています。鉱山の所有者、資本を提供する人々、土地所有者、そして鉱山労働者との提携があります。」 しかしモザンビークのルビー鉱山では、Garimpeiros(ガリンペイロ)と呼ばれる無免許の鉱山労働者がGemfields(ジェムフィールド)の土地で採掘することがよくあります。彼らは「Gemfields(ジェムフィールド)のように環境の復元への投資をしていない」ので、それは問題になる可能性があります。  

カンボジアのパイリンには、贈収賄、病気、そして探鉱システムに合法で正式な構造が総合的に不足しているといった懸念があり、「さらに問題のある状況」に置かれています。

「職人の採鉱は、世界中にある状況の中の一種ではありません。必ずしも肯定的でもなく、また必ずしも否定的でもありません。 前に進む方法のひとつは、業界がすべて職人の鉱山労働者に、正式なシステムと保護を受ける機会を提供することです。 これは、環境や大きな採鉱企業と投資家の権利を保護するために役立つだけでなく、透明性のあるサプライチェーンを作り上げることができます」とLucasは言います。

Lucasは職人の採鉱に変化をあたえる技術の発展のひとつに、スマートフォンがあると言及しました。 「誰かが辺鄙なところにいて、写真を撮って、見積もりのためにその写真を電子メールでバンコクに送ることができます。 スマートフォンは、世界中にコネクションを持つ独立した鉱山労働者に革命を起こしています」とLucasは述べました。

サプライチェーンのもう一つの要因は、スリランカやコロンビアなどの国が、そこの原産地で宝石をカットすることです。 例えばコロンビアでは、ほとんどすべてのエメラルドが国内でカットされています。 「彼らはコロンビア産エメラルドのカットの専門家になっています」とLucasは言いました。
   
Lucasは、これは全体的な動向の一部であると述べています。 「ジュエリーの採鉱、カッティング、製造に存在していた境界がぼやけてきました。 より多くの垂直統合と連結が起こっています」と彼は言いました。

例えばRMC Gems(RMCジェムズ)のCEOは、5年、10年前には、他の卸売業者、ジュエリー製造者や小売業者などの小さな企業をたくさん顧客として持っていたことをLucasに話しました。 これらの企業のほとんどがなくなったり連結したりしているので、現在最も頻繁に仕事をする企業はジュエリーのテレビ番組、大手ジュエリー製造業者や小売チェーンです。

「小さな企業が競争したり価値を付加する機会がどんどん少なくなっています。 大きくて、垂直統合された、資金が豊富にある企業がビジネスを奪取しています」とLucasは言います。

カラー宝石 - 鉱山から市場まで GIAでのフィールド研究を開始すると同時に、カラーストーンの業界を作り上げている世界中の多様な人々や家族の話に心を打たれたと説明するDr. Tao Hsu。 ビデオ画像:Albert SalvatoとLarry Lavitt

Hsuは製造の話をするときは中国について話さなければならないと言いました。「カラーストーンを含む全てを世界中に向けて中国が製造しています」と理由も述べました。

Hsuは、彼らの中国広東省への旅の最も強く残っている印象の一つは、施設の大きさに関係なく、「どこへ行ってもカッターの集中力と効率性を目にした」ことだと述べました。その特定の領域では巨大な製造施設が集まっており、企業は「中国カット」をブランドとして推進しています。

Lucasはジャイプールを訪れ、「全てにおいて洗練されたレベル」と分かり、ジャイプールを「近代化と伝統を共に連携しているところを見るために素晴らしい場所」と呼びました。

彼はまた、カラーストーン製造者の状況を変えている小売りプレーヤーであるジュエリーテレビについての知識を深めました。

「最大の成長市場は、ジュエリーテレビです」とLucasは言い、現地でインタビューした、あるカラーストーン製造者は、ジュエリーテレビが高級品から安価品までを扱い、「莫大な」量の品を買うことをとても気に入っていると言及しました。

垂直統合されたジュエリーテレビ起業家のひとりは、彼の企業の3000人のチームは、顧客に石がどこから来てどのようにジュエリーになるかを紹介する「ロマンスと冒険の物語」の、魅力的なプログラムを作ることで、月に100万個のジュエリー作品をプロデュースしているとGIAのチームに語りました。

「彼らの顧客は楽しむことを望んでいます。 家でテレビの電源をつければ、鉱山に行け、カッティングの様子を見ることができます」とLucasは言いました。 視聴者はその石の物語にとても関心を抱き、電話して購入します。

「みなさんはこれがどんどん成長するところを見るでしょう」とLucasは言いました。

Hsuは、2014年に二人が訪れて記録を書いた中国の市場について、「中国の市場はジュエリーと高級品の2番目に最も大きな市場です」と言いました。中国人は、特に観光客として海外で買い物をするときに、世界中の約半分の高級品を買います、とも話しています。

顧客、企業、そしてチャンネルは進化するかもしれませんが、Lucasは物語が変わらず鍵となっていると強調しました。  

彼は、GIAのニューヨークのラボでグレードしたユニークなエメラルドをニューヨークの卸売業者に販売しようとして失敗した鉱山オペレータのMarcelo Ribeiroについて語りました。 がっかりしたRibeiroはその石を香港のショーに持っていきました。 バンコクの高級品小売りジュエラーがその石の色を気に入り、詳細を知りたがりました。

「Marceloは、ベルモント鉱山、環境保護、洗練された運営、家族の歴史、鉱山の労働者、そしてその鉱山でのカッティングについてジュエラーに話しました。 そしてこの男性は納得し、石を販売する顧客を得たのです。つまり、鉱山から市場への物語はこの石の販売に貢献したのです」とLucasは話をくくりました。

寄稿者Jaime KautskyはGIAダイヤモンドグラジュエイト、またGIA Accredited Jewelry Professional(AJP アクレディテッドジュエリープロフェッショナル)で、The Loupe(ザ・ルーペ)誌の共同編集者を務めました。