ストーリーの背景

宝石学のフールド遠征の舞台裏


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ジャングルの中を歩く場合、フィールドジェモロジストたちは準備を抜かりなく行う必要があります。 ベトナムのルビー採鉱地区へ向かう途中、Andrew LucasとGIAジャパンのAhmadjan Abduriyimは、湿って滑りやすい、草木で覆われた大理石の小尖塔がある道を登った。 写真撮影:Vincent Pardieu/GIA
フィールド調査を実りのあるものにするには、その遠征地にあったメンバーがいることが重要だ。

「危険を伴うフィールド調査には、馴染みの無い人と行くべきではありません。 チームの準備が万全であり、心構えができていることを確認するべきです」と、GIAのフィールドジェモロジストでシニアマネージャーのVincent Pardieuは述べます。

宝石学のフィールド調査とラボの中とは違います、と彼は続けます。 長期間におよび旅の仲間と共同生活が続くこと、地元の人々に頼りながら方向性を定める作業が続きます。

毎晩帰宅することができ、自分の言葉で同僚とコミュニケーションを取ることができるラボの仕事とそれを比較すると、フィールドワークのチャレンジが宝石学の専門技術を遙かに超えていることが分かるでしょう。

Pardieuは「履歴書と数回の面接に基づいてフィールドジェモロジスト部門からフィールドワーク同行者を見つけるように私が上司に頼むことはありえません。 危険を伴う遠征調査に、その人が同行できるかどうかを知るには、フィールドで時間を共に過ごす必要があります。 そうすることで、その人の技術や姿勢を判断することができるのです。」

Pardieuは「各メンバーは、他のメンバーと効率良くやりとりする方法など、チームから何を期待されているのか正確に知る必要があります。 さらにフィールド調査は、宝石、採鉱場所、採掘者にまで及びます。 鍵となるのは人間です。なぜなら人々のサポートなしには、行きたい場所へ辿り着くことも、目的の物を手に入れることもできないからです。」と言いました。

このような流れで、バンコクに拠点を置くPardieuと、カールスバッドでGIA教育部門のフィールドジェモロジィマネージャーを務めるAndrew Lucasが2012年末に開催された国際GIA調査ミーティングで出会ったとき、フィールドワークに一緒に行くことが提案されました。

二人とも調査遠征をした経験がありました。Pardieuはラボで使用する関連サンプルを宝石採鉱地区で収集し、Lucasは自身のGIA教育コースのために鉱山の市場状況の詳細を集めに行きました。 フィールドでの宝石学に対するアプローチは異なるものの、彼らはお互いに学び合うことができるとすぐに気付きました。

Lucasのベーシックトレーニングプログラムへの参加を求めたPardieuは「その日の夜に、私たちはお互いの熱意と経験を合わせて、ラボと教育の未来に役立つチームを育成しようと決意しました。」と言いました。

Lucasは「どこから始めようか」と尋ねました。

Pardieuは「もう始まっていますよ。」と答えました。 「すべてはランチやディナーでの良い会話から始まります。 そのとき初めて、お互いに信頼関係を築くことができるかという感覚が掴めるのです。」

チャンタブリとベトナムで行われたトライアル
Pardieuは、バンコクに週末フィールドワークに行ってチャンタブリ(タイ)とパイリン(カンボジア)でルビーとサファイア鉱山を訪問することをLucasに提案しました。そうすることで、Pardieuとチームのラボフィールドワークの様子を予め確認することができるからです。 次回はベトナムを含む10日間の旅になるでしょう。

Pardieuは「私が知る中で、ベトナムは最も美しく、最も能力の試される場所の一つです」と言います。 「ジャングルに覆われたLuc Yen地域は、ルビーとスピネルの採鉱場所であり、活気あるカッティング産業と取引産業の本拠地でもあります。 しかし危険な地域でもあります。 注意を怠れば、転落、負傷、あるいは死亡する可能性さえもあります。」

Pardieuは、不慮の事態を想定し、遠征調査に備えて57歳の身体的準備を整えておくようにLucasに伝えました。

「ベトナムを乗り越えることができれば、中央アジアやアフリカなどの更に長く、困難な場所への遠征調査の旅に行く準備もできます」とPardieuは言いました。

フィールドジェモロジストには大きなリスクが伴う。 Pardieu(右)はベトナムの非常に危険で滑りやすいルビー鉱山で大きな転落して腕を酷く骨折した。 この事故直後の写真では、Lucasと笑いながら旅計画について話し合うPardieuの強い精神力が見られる。 写真撮影:Clara Jennifer Haggai

Lucasは2013年5月に無事に旅を終えました。 皮肉なことに、事故にあったのは山の険しい地形について皆に警告をしていた、若い方のPardieuでした。 Pardieuは長く歩いた1日の終わりに、滑りやすい大理石の尖峰の上でバランスを崩し、左腕を骨折してしまいました。

しかし大惨事になり得た出来事は、グループの各メンバーにとって興味深い経験となりました。彼らは団結してPardieuの腕を固定して彼を運んだのです。

モゴック調査の準備
PardieuとLucasは2013年11月に再会しました。それはPardieuがミャンマー(旧ビルマ)の伝説的な宝石が存在する上ビルマとして知られるモゴックというエリアの偵察遠征調査を無事に遂行した直後のことでした。 その地域は長年にわたって閉鎖されていましたが、2013年6月に旅行者にも開かれるようになりました。 Pardieu は、前回の事故から十分に回復したので、縄や木製の梯子などを使った地下での作業など、より危険な探索に向かう準備が整ったと感じていました。

Lucasは過去に何度かミャンマーを訪れたことがありましたが、モゴックへは行ったことがなかったので、GIA教育のために情報収集ができる機会に飛びつきました。 機は熟していました。二人の宝石学者の気持ちも揃ったので、モゴックのフィールドワークに向けてパートナーを組むことを決意したとPardieuは言いました。

考えとしては、鉱山へのアクセスや参照用サンプル収集の方法を見つけるために、ラボフィールドジェモロジストによる小さく効率的なチームを編成することでした。内訳は、写真撮影のサポート、教育のためのレポート作成、データ収集の各作業について教育フィールド宝石学者が一人ずつ、そして遠征の全貌を記録する動画撮影者が一人でした。

モゴックはまたアクセス可能になりましたが、自由に行き来はできません。 ミャンマー政府は、旅行者が宝石生産や取引地域を訪問するに際に許可の取得を要求しています。 政府認定のガイドもグループに同行しなければなりません。 Pardieuは、友人の一人で、ヤンゴンのAnanda travels社のJean Yves Branchardに、許可、ガイド、ホテルの手続きを依頼しました。

さらに、モゴックで最も古い友人の一人であるJordanに、鉱山訪問の手配を頼みました。 彼は2000年にヤンゴンで宝石学を研究していた時にJordanに出会いました。二人は、ミャンマー当局がモゴックや国内の他の宝石生産地域に外国人が訪問すること禁止していた2005年1月までに、モゴックを何度か一緒に訪問していました。

「モゴックの深さ300メートルに達するルビー鉱山の岩壁を渡るときには集中力が高まる」と語る赤いヘルメット姿のLucas。 Lucasはカールスバッドでのデスクワークとこの活動の大きな違いを実感した。 写真撮影:Vincent Pardieu/GIA
Pardieu、Lucas、そしてカメラマンのDidier Gruelは、体力的に厳しい旅行に備え、スタミナを向上させることに集中しました。 モゴックで大変なことは、ジャングルでの長時間歩行や僻地の山岳地帯ではなく、深さ数百メートルの地下のルビー鉱山へ降りて行くことだとPardieuは言います。 Kadoke Tadのような場所は、網状の木製はしごで見事に構成され、映画「ホビット」の地下のゴブリンの王国のように見えます」と彼は言いました。

「ゆっくり時間をかけることが大事です。 地元民のように移動しようとしてはいけません。一歩ずつ、歩みを確認してから、次に進まなければなりません。」とLucasは鉱山を訪問したあとに語りました。 「急いで転落してしまうよりも、ゆっくり確実に進むほうが良いのです。」

グループは、非常に多くの鉱山、市場、カッティング地区を訪れ、Pardieuの言う「耳からではなく目で学ぶ宝石学」を実践しました。つまり情報は、誰かから聞いて間接的に得るのではなく、現場で自分で直接得るということです。 彼らは、文化や人々の人柄、寺院やパゴダの美しさも吸収しました。

「以前のフィールド遠征調査で共に過ごした時間は、私たちチームの効率性の改善に役に立ちました」とPardieuは言いました。 「コミュニケーションは容易かつ効率的でした。 私たちはモゴック調査に向けた準備ができていました。全員が、素晴らしいサンプルや、何千枚もの写真、長時間の動画、そして素敵な思い出を手にして、無事に帰宅することができました。」

どこから見ても明らかにフィールド遠征調査は成功でした。