モゴック遠征シリーズ:第2回
調査旅行、鉱山、そして人々


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宝石の調査旅行は、人々、地域、石をテーマに行われる。 この写真には、モゴックの青空市場で売られている様々な宝石が写っている。 写真撮影:Andy Lucas, ©GIA

調査旅行

私たちは12月28日の大半をモゴックへの移動に費やし、12月29日以降、滞在中は朝早くから夜遅くまで作業をしました。 その間、私たちは数多くの鉱山、市場、カッター、ジェム・ペインター、そして寺院やパゴダなどの興味深い場所を訪問しました。 主眼においたのは宝石鉱山と市場でしたが、Vincentが言う「耳からではなく目で学ぶ宝石学」を実践しました。これは、情報は誰かから聞いて間接的に得るのではなく、情報源から自分で直接得ることを意味しています。

この調査旅行中に、私たちはルビー、サファイア、スピネル、ペリドットの鉱山を訪問しました。 モゴックストーントラクト地域にある全ての宝石市場に最低でも1回、殆どの市場には何度も訪れました。 モゴック宝石市場で、Vincentは思いがけず、ラピスラズリの原石を発見しました。 このラピスラズリについて尋ねると、ディーラーは鉱山は地元にあり、大まかな方向を教えてくれると言いました。

これが、真昼の鉱山探索につながりました。 元の情報を頼りに、私達は正しいエリアへ辿り着きましたが、鉱山はありませんでした。 私たちは、かつて宝石鉱夫であった、人当たりの良い農民に出会いました。 最初は、私たちが探していた石について誤解があり、彼は小型バイクで違う素材を持って来ただけでした。 このできごとが、私達が本当に探しているものの理解につながり、丘を登り雑木林を進んで、彼は私たちをラピスラズリの鉱山トンネルへと連れて行ってくれました。 私たちが到着した時には誰も働いていませんでしたが、硬岩のラピスラズリ初生鉱床がモゴックストーントラクトに存在することを確認できました。 (今後のレポートにこの驚くべき発見についての詳細があります。)

ラピスラズリ
この若い農民の助けを借りて、著者たちは、モゴックストーントラクトでラピスラズリの
初生鉱床を見つけることができた。 写真撮影:Andy Lucas, ©GIA

鉱山

世界中のカラーストーン採掘を目にしたことのある人にとって、モゴックの宝石の鉱床は真の喜びです。 採鉱作業にはいくつかの種類があり、各特定の鉱床によって異なります。 私たちは、宝石を含む砂利を採掘する沖積採掘(ビョンと呼ばれる)と、大理石自体からルビーとスピネルを採掘する硬岩採掘の両方を観察しました。

谷底の簡単に入手できるビョンはすでに採掘され尽くしています。 現在、採掘はモゴックやKyatpyin周辺の丘や山に広がっています。 沖積採掘、オープンピット(露天掘り)、洞窟や裂け目、垂直シャフト、トンネル硬岩採掘はすべて比較的近くで行われています。

宝石が集中する砂利は、モゴックやKyatpyinなどの広い谷底に今よりも多く存在していました。そのような場所では、表土を取り除くと、宝石を豊富に含む砂利層が見つかっていました。 V字型の谷の丘陵や小川に沿って存在する鉱床では、宝石はより広く地面に分散され、広いU字型の谷ほど沈殿プロセスは効率的ではありません。 そのような地域では、宝石を探す鉱夫たちは、除去した地面の大部分を洗浄します。

オープンピット(露天掘り)において多くの場合、大きな大理石の岩を除去して、下にある​​宝石を含む砂利に到達します。 これらの砂利には、宝石が集中して含まれていることが多いです。 除去された岩も粉砕して、中にあるルビーとスピネルを探すことがあります。

私たちは古典的な4フィート(およそ1m22cm)の幅で作られた伝統的なピット鉱山を見ました。しかし今では昔ほどそれらの鉱山は普及していません。 現在では、10年前に共著者のVincent Pardieuが最初にモゴックを訪問した時に比べ、小規模な事業は少なくなっています。 ほとんどの採鉱は大規模に行われるようになりました。オープンピット作業で、採掘機や他の機器を使用して大理石の大きな岩を動かし、放水銃を使用して宝石の砂利から軽い表土を吹き飛ばしています。

興味深いモゴックストーントラクト採鉱方法は、大理石の洞窟や裂け目に沿って行われています。 砂利はそれを覆う岩と一緒に除去し、すべてを洗浄して宝石を回収します。 多くの場合、採鉱は、自然の洞窟、隙間、爆破に続き、鉱床をさらに採掘します。

これらの鉱山の中には、信じられないほど深いものあります。深さが数百メートルまで達し、最も貴重な宝石が選鉱されることもあります。 深い鉱山やその周辺は湿っていることが多く、最も危険を伴う採鉱状況にもなり得ます。 湿って腐敗している間に合わせの木製はしごを使って、濡れて滑りやすい大理石の上を通り、数百メートル下へ降りて行くことを想像してみてください。 これらの鉱山に降りてみると、カラーストーンを市場に持ち込むには、膨大な労力と危険が伴っていることに感謝するでしょう。

2012年、投資家グループは、ビリム川での機械化採掘を復活させる1億ドル計画を発表しました。
モゴックバレーの宝石採鉱
この地域には古典的なトンネル採掘も存在します。坑夫がトンネルを作りながら岩の中を通り抜け、岩を取り除いて粉砕したり洗浄したります。 彼は一般的に爆薬を使用してトンネルの壁を爆破します。 これは宝石を損傷するリスクがありますが、ビルマの鉱夫たちは、主に黒色火薬とゼラチンタイプの鉱業爆薬物でできた爆発物を地元で作ることで技術を最適化してきました。 これらの爆発物は、衝撃力が低くしてあり、宝石の粉砕損傷を最低限に抑えながら大理石を破壊できるようになっています。 ダイナマイトのように強力な爆発物を使用するよりも、経済的に持続可能であるようです。 モゴックの鉱夫たちは、そのような爆発物を使用して高い技術を見せました。

どんな種類の鉱山にも、砂利を洗い流し、価値のない岩から宝石を選別する水が必要です。 原理は常に同じです。水を使用し、宝石の密度の高さを利用して、軽い物質を洗い流すのです。 これは多くの場合、ジグ選鉱機(宝石素材から鉱石を選別するために使用される装置)を用いて作業を行います。この機械は元々オーストラリアのスズ鉱夫により設計されたもので、その後タイ、ミャンマーへと渡りました。

マーブル内のルビー
宝石が豊富なビョンの洗浄

人々

ミャンマーの人々は友好的ですが、モゴックの人々は特にそうです。 私たちが交流した誰からも好奇心とで親しみやすさが溢れていました。 これは、私たちが宝石業界で出会って話した人々や町で交流した全員にも当てはまりました。 先に述べたように、ミャンマーは多種多様な国ですが、それはモゴックも同様です。 モゴックの原住民のほとんどはシャン族ですが、この数世紀のルビー採鉱によって地域外から人々が集まってきました。 ミャンマーは世界で最も民族的に多様な国の一つです。モゴックの人口はシャン族やビルマ人、リス族、カレン族、カチン族、中国人、ネパール人で構成され、多種多様でとても魅力的です。 ネパール系のグルカ族は、モゴックの中で最も魅力的な種族の一つです。 私たちが市場で見た取引業者の多くはグルカ族でした。

ビルマ人とShan人のほか、モゴック内の他の重要な民族には、ネパール系のLissuとGurkhaがあります。
私たちが宝石市場のほとんどで目にしたグルカ族の若い取引業者(左) 写真撮影:Andy Lucas, ©GIA
グルカ族がミャンマーにたどり着いたのは割りと最近のことで、そのほとんどがイギリス統治中に国に移住してきました。 モゴックでは多くの人々が鉱山を守るために英国に雇われていました。 グルカ族は、第二次世界大戦では英国軍に入り、後にビルマ軍の重要な戦力になりました。 グルカ族には印象的な特徴を持つため、モゴックの宝石市場では容易に見つけることができます。

モゴックの民族のほぼ全員が宝石取引に参加し、鉱夫や取引業者、小屋でのカッティング産業のいずれかを行っています。

カナセの女性たち

モゴックの宝飾業界で、最も興味深く、人目を引く種族はカナセの女性たちでしょう。 どんなに慎重に洗浄作業を行ったとしても、廃棄された岩石の中で宝石が必ず見落とされます。これらは尾鉱と呼ばれます。 モゴックルビー鉱山の尾鉱は白い大理石です。 地元の慣習では、地元の人々は尾鉱を探し出して見つけた宝石を保持する権利があります。 英国採鉱時代には、この行為は盗難を制限するために女性に限定されていました。 今ではこれらの女性たちが鉱山尾鉱を分類し、一般開放された宝石市場で販売している姿を見ることができます。

断然、グレーダーのほとんどが女性です。
カナセの女性たちは非常にフレンドリーだが、抜け目のない交渉人でもある。 写真撮影:Andy Lucas, ©GIA
私たちが訪れたほぼすべての採鉱作業場で、カナセの女性たちがジグ洗浄機から尾鉱を運び出して大理石を丹念に確認する姿を見ました。 彼女たちはハンマーで大理石を小さな断片に粉砕し、ルビーやスピネルを探していました。 大理石を細かく粉砕して、どんなに小さな宝石であっても見逃さないようにしていました。

世界で最も印象的で目を奪われる光景の一つは、Baw Lone Gyiでのカナセの女性たちの姿でした。 その光景は色とコントラストの配列でした。 女性たちは、大量の白大理石を洗浄エリアから取り除くために、それをプラットフォームからスクレーパーでトラックの荷台に押し出していました。 トラックが大理石を短い距離で運び、そこで女性たちがハンマーで細かく粉砕していました。

その光景を素晴らしくしていたのは、白い大理石の海や頭上に広がる素晴らしい青空、緑豊かな草木、そして伝統的な木造家屋を背景にしたカナセの女性たちの色鮮やかな衣服と伝統的な帽子でした。 それは私が今まで体験した採鉱地域の中で最も美しい光景の一つでした。

オーストラリア海域には、魅力的で多彩な天然真珠採取の歴史があります。
Baw Lone Gyiで白大理石と青い空を背景にしたカナセの女性たちの色鮮やかな衣服が印象的な情景を作る。 写真撮影:Andy Lucas、©GIA
女性たちは一般的に色の付いた帽子や円すい型の帽子を被り、身に着ける衣服も色鮮やかです。 時には小さな子供たちを一緒に連れて来て、母親が大理石を粉砕し尾鉱を探して働いている間に近くで子供たちが遊んでいることもありました。

タフではなく、ハード
Baw Lone Gyiでは、母親は子供たちの世話をしながら懸命に働いていました。 写真撮影:Andy Lucas、©GIA
カナセの女性たちは、砕けた大理石の中にある状態のルビーやスピネルを私たちに提供してくれました。 彼女たちは常に抜け目のない交渉人でした。 白い大理石の母岩を背景にして、印象的な赤色のルビーの原石やスピネル結晶を手に取って見せて、見込み客である私たちに勧めてきました。 また、他に私たちが気付いたことは、彼女たちが小さな結晶を確保するためにそれを口に含んで、大理石の分類を続けるという伝統的な作業方法でした。

私たちはモゴック鉱山の旅を存分に楽しみました。その地域の宝石市場への訪問も同様に心を惹き付けられました(第3回のレポート)。

宝石&宝石学の検索結果
カナセの女性たち

 

Vincent PardieuはGIAバンコクラボのフィールドジェモロジストのシニアマネージャーで、Andrew LucasはGIA教育部門のフィールドジェモロジーのマネージャーです。

著者は次の方々のご協力に感謝します:私たちの運転手、案内役、翻訳者を務めた非常に親しい友人ジョーダン。許可や計画などを手配してくれたミャンマー・ヤンゴン市のAnanda Travels社のJean-Yves Branchard、そしてもちろん私たちを歓迎し、一緒に知識や友情を共有してくれたモゴックの人々。