スリランカ:鉱山から市場まで、パート2
9月 30, 2014
22Kゴールドジュエリー
宝石のカッティングと同じように、スリランカの宝石の製法は伝統的な方法から現代的な製法まで様々です。 私たちは、22Kゴールドジュエリーを主に手作業で製造する小さな工房を訪問しました。 宝石細工職人は床に座り、ハンドソーイング、やっとこでの曲げ加工、ハンドヘルドガストーチでのロウ付け、ブローパイプ、ハンマー打ちによってジュエリーを作成していました。 職人は、日中の熱に加えてトーチから出る熱で工房が暑くなるため上半身裸で働くこともしばしばありました。
宝石職人たちがモダンなベンチに座りより多様なハンドツールやワックス彫刻、金型製作、鋳造を行うモダンな工場とは対照的でした。 CAD(コンピューター支援デザイン)/ CAM(コンピューター支援製造)でデザイン設計を行います。 モダンな工場には、大量の製品かつ重量が均一な製品を製造することにより、人気の22Kゴールドの宝飾品市場のコストを低く抑えられるという利点があります。 また、他のカラットゴールドの合金、ホワイトゴールド、プラチナなどをより現代的なデザインに生産する能力があります。
小売り
スリランカの小売市場のかなりの部分が、結婚式や特別な行事、投資、質屋業界のための22Kゴールドジュエリーと関連しています。 伝統的に花嫁が身に付けるとされる22Kゴールドジュエリーがない結婚式は、事実上スリランカではありえません。 ジュエリーの価値は、その販売または質入れで取り戻すことが可能なゴールドの商品価値によって左右されるので、より重量のあるジュエリーが好まれます。スリランカの小売業界のもう一つの重要な側面は、投資として22Kゴールドジュエリーが扱われることです。 質屋業は宝飾業界と直接関連しています。 スリランカ人は、現金不足の際に質入れできる22Kゴールドジュエリーの量で個人の裕福度を測ります。 伝統的に担保価値の大半がゴールドの本質的価値なため、ジュエリーに輝きと色を足す場合に結晶とキュービックジルコニアが使用されてきました。 大手銀行でさえも、ゴールドジュエリーの質入れによる投資ポートフォリオがかなりの割合を占めています。
Colombo(コロンボ)
早朝Colombo(コロンボ)に到着後、私たちはSapphire Capital Group(サファイア·キャピタル·グループ)の店舗を訪問し、外国のバイヤーのために代理人やコンサルタントとして働くスリランカディーラーを見ました。 数え切れないほどの地元ディーラーが、持込んだ石を販売していました。 Sapphire Capital Group(サファイア·キャピタル·グループ)はその材料が説明どおりであることを保証するのです。「ただそこに置かれる在庫はありません。」とRehan氏は言います。 「私の在庫は、標準的な商業の市場向けのものではなく、成長する隙間市場向けのため直ちにはけていきます。」
周辺の採鉱地域を見学した後、Sea通りにあるSujitha Traditional Jewellery Workshopでの22Kゴールドジュエリー製造の記録を行うためにColombo(コロンボ)に戻りました。 また、大手小売業者のWellawatta Nithyakalyani Jewellery と Devi Jewellers各社を訪問し、それぞれのディレクターにインタビューをしました。 また、他の業界リーダーへのインタビューを行い、Wellawatta Nithyakalyani社のモダンジュエリー製造施設も訪問しました。 Wellawattaの小売店では、私たちは、伝統と現代の様々なスタイルのジュエリーを身に纏うスリランカモデルを撮影することができました。
Beruwala(ベールワラ)
Beruwala(ベールワラ)の宝石取引地域は、約300年前に定住した中国のトレーダーににちなんで別名China Fort(中国の城砦)として知られています。 私達は、実際には午後まで続く宝石朝市を訪れました。 2ブロックに渡る朝市は、ディーラーで混雑していました。 常時、最大5,000人のディーラーが通りや店に集まるとのことです。 この自由市場は、特定の採鉱地域との関係はなく、スリランカ全国の様々な鉱山地域からの材料を扱っています。

Ratnapura(ラトナプラ)

町を出ると、Ratnapura(ラトゥナプラ)の周辺で伝統的な小規模ピット採鉱の作業をよく目にしました。 訪問した全ての鉱山が砂利を掘りバケツで上げる、または手駆動のウインチで巻き上げる伝統的な方法のピットマイニング作業を行っていました。
Balangoda(バランゴダ)
スリランカの採鉱業を記録するにあたって、Balangoda(バランゴダ)は特に貴重な場所です。 1日で、伝統的なピット鉱山、機械化された鉱山、河川鉱山の各鉱山を訪問し、各工法に関わる専門家をインタビューすることができました。 また、オーストラリアのデザインを基にした選鉱作業をいくつか見学することもできました。
また、機械化された作業の現場のすぐ隣のピット鉱山では人の力のみで作業が行われており、 どちらも、フル稼働していました。 その後、私たちは雨水が汲み上げられたばかりで、イラム層の除去を始めていた伝統的なピットマイニング作業現場に行きました。 機械化された露天掘りの作業現場の1つでは、宝石に表土とイラム層が多く含まれるため、表土の洗浄が行われていました。
Balangoda(バランゴダ)鉱区のハイライトは、まるで絵のような茶畑のすぐ隣にある河川採鉱場の訪問です。 鉱床では鉱山作業者が7人働いていました。 水流の遅いエリアを選び、砂利が留まるダムを築きました。 イラム層に到達するまで上の砂利をすくい出し、長く尖った鉄の棒でイラム層を崩しました。 流水で流出されかねない宝石を含む砂利を手作業で拾い上げ、目に見える宝石を取り除きました。 残りの砂利は、後にさらに洗浄が行われる可能性があるため取置きされました。 サファイアなどの宝石の他に、金も採掘されました。
Balangoda(バランゴダ)で、スリランカの伝統的な採鉱作業から機械化されたモダンな採鉱作業まで様々な工法を記録することができました。露天掘りと伝統的な立抗による採掘、機械化された露天掘りの鉱山での掘削機やトラックを使用した表土と宝石を含む砂利の除去、選鉱機による処理、砂利の手洗いや伝統的な河川採掘などがあります。

Elahera(エラヘラ)
スリランカの採鉱地域の最後の訪問先は、機械化されたピット採鉱と伝統的ピット採鉱が共存する有名なElahera(エラヘラ)鉱区でした。 機械化された行程の一つにも選鉱用の供給水に泥が多く混ざる問題があったので、別の洗鉱エリアへ砂利をトラックで輸送していました。 また、宝石を含む砂利の洗鉱過程と残った砂利の確認のために開始した選鉱を見学しました。Elahera(エラヘラ)で次に訪れたのは、伝統的な採鉱方法を使用した露天掘りでした。 ピット底部にいる作業員がスクレーパーで表土と砂利を取り、別の鉱山作業者が持つバスケットに入れます。 3段階に並んだ3人のバスケット持ちは泥や砂利でバスケットが山盛一杯になるとタイミング良く上のバスケット持ちに投げ上げ、バスケットは空になるとピット上部に山積みされます。 土と砂利で満たされたバスケットが上に投げられると、空のバスケットがプロジャグラーの技のごとくピットの底に戻されます。
スリランカで驚かされるのは、道を少し運転すると伝統的な露天掘り鉱山に出くわすことです。 私たちがアクロバティックなバスケット作業を目にした鉱山は舗装道路沿いにあり、別の浅い露天掘り鉱山も住宅と農場の目の前に偶然見つけたのです。 この浅い露天掘り作業では、表土が素早く除去されるので、作業員たちはイラム層に到達し、宝石を含む砂利を除去するのにピットから水平方向に採掘を始めたところでした。 これは、伝統的な採鉱作業で、全作業は、手工具を用いて行われ、除去された砂利は採鉱員の肩に掛けたバスケットに入れられます。

要約
スリランカの宝石と宝飾業界のすべての分野を詳細に観察しインタビューを行ったことで、活力に満ちたこの市場を明確に把握をすることができました。 スリランカは1970年代 から1990年代まで、世界の市場でその地位を再確立するのに苦労しましたが、ここ10年間は非常に活気づいています。 友好的な貿易政策により、スリランカは世界中のサファイア原石やその他のカラーストーンなどが取引されるグローバル市場で競争力を持つようになってきています。 新たな関心の高まりや中国などの新市場に端を発した宝石の価格上昇で国内の採鉱活動が増加しています。スリランカの産業は、伝統的なカッティング技術とモダンなスキルを結合しすべての市場部門に合った宝石を作り上げます。また、スリランカの貿易モデルは、数十年間にわたる人間関係と経験を今日の市場戦略に組み込んでいます。 主に国内市場向けの22Kゴールドジュエリーに焦点をあてたジュエリー製造が、新たな消費者に合わせて様々なスタイルに変化してきています。 スリランカの小売業界は、宝石、カラットゴールド、プラチナジュエリー、ダイヤモンド、カラーストーンジュエリーに対する新世代の嗜好を確立する一方で、結婚式、特別行事、投資目的の伝統的で安定した22Kのゴールドジュエリー事業を継続したいと考えています。 全般的に、これは伝統を重視しつつ将来の成長が見込める産業です。

さらに
これらのフィールドレポートは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)のスリランカ遠征で得られた研究結果についての記事でさらに詳しく紹介されます。 また、この活発な業界と世界市場に対する重要性に関して最新情報を提供するために、引き続きスリランカの産業界と緊密に協力していきます。Andrew Lucas はカリフォルニア州カールスバッドのGIAにおいて、フィールド宝石学のマネージャーを務めています。 Armil Sammoonは、National Gem and Jewellery Authority(スリランカ政府宝飾局)理事、Sapphire Capital Group(サファイアキャピタルグループ)会長、Sri Lanka Gem and Jewellery Association(スリランカ宝飾品協会)の会長を兼任しています。 A.P. Jayarajahは、Wellawatta Nithyakalyani Jewellery(ウェラワタ ニスヤカルヤニ ジュエリー)の最高経営責任者(CEO)兼Sri Lanka Gem and Jewellery Association(スリランカ宝飾品協会)の会長です。 Tao Hsuと Pedro Padua はいずれもGIAカールスバッドに所属し、それぞれGems & Gemology(宝石と宝石学) の技術編集者およびビデオプロデューサーを務めております。
免責事項
GIAスタッフはリサーチを目的に、鉱山、 製造業者、 小売業者の他、 宝石および宝石業界に関わる場所や企業を頻繁に訪れ、市場を見極める見識を深めようと努めております。 GIAは訪問中に私たちを受入れて貴重な情報を提供してくださった皆様のご厚恩に心から感謝いたします。 ただし、この訪問やそれを基にした記事または出版物のいかなる内容も、そのまま利用したり、宣伝用に使用したりしないでください。
著者一同より、以下の個人および団体の皆様方に、この旅行を成功へ導いていただきかつ私たちが共有することができる知識を提供していただいたことに対して、心からの謝辞を申し上げます。 スリランカ人の著者、スリランカ国内の宝石および宝飾業界の関係者と関連企業各位、そして大変温かく厚意に富んだスリランカの方々へ、GIAから特に厚く御礼を申し上げたく存じます。 また、著者のAndrew Lucasからはビデオグラファー兼共同著者であるPedro Padua氏に、 そのフィールドでの弛まぬ働きぶりで読者をこれらの場所へと案内し、息を呑むほどの絶景を見せて下さったことに対して感謝の意を表します。
Shamil Sammoon氏
Precision Lapidaries(プレシジョンラピダリーズ社)マネージングディレクターFaiq Rehan氏
Sujitha Traditional Jewellery Workshop(スジタ・トラディショナル・ジュエリー・ワークショップ)
Ravi Jewellers(ラヴィ宝石)経営者N. Rengarajan氏
Ravi Jewellers(ラヴィ宝石)ディレクターV. Rishanthan氏
Wellawatta Nithyakalyani Jewellery(ウェラワタ・ニトヤカルヤニ・ジュエリー)工場長J. Sasikumaran氏
Y.P. Wellawatta Nithyakalyani Jewellery(ウェラワタ・ニトヤカルヤニ・ジュエリー)協力パートナーのSivakumar氏
P.G.R Dharmaratne教授、National Gem and Jewellery Authority(スリランカ政府宝飾局)前局長
スリランカ税関副監督Ajith Siriwardena氏
Swiss Cut Lapidary(スイスカットラピダリー)オーナー兼Sri Lanka Gem and Jewellery Association(スリランカ宝飾協会)副会長Saman K. Amarasena氏
Gem Paradise(ジェムパラダイス) 社長A.H.M.Imtizam氏
H.C.J. Bandara氏
Devi Jewellers(デヴィジュエラーズ社) N.S. Vasu氏
Devi Jewellers Ltd.(デヴィジュエラーズ株式会社)会長N. Seenivasagam氏
Devi Gold Cast Pvt. Ltd.(デヴィ・ゴールド・キャスト株式会社)マネージングディレクターS·Ramesh Khanth氏
Saleems(サリーム社)M.S.M Fazli氏
Facets Sri Lanka(ファセッツスリランカ社)会長Juzar Adamaly氏
Aly Farook氏
Fine Gemstones(ファインジェムストーン)の輸出業者MSM Kamil(MSMカミール)マネージングディレクターRuzwan Kamil氏
Sapphire Gems(サファイアジェムズ)マネージングディレクターW.D. Nandasari氏
The Fine Jewellery Company(ファインジュエリーカンパニー)Nabeel Salie FJC氏
Regal Gems Ltd.(リーガルジェムズ社)マネージングディレクターAltaf Iqbal氏
Emteem Gem Laboratory(エムティームジェムラボラトリー)M.T.M. Haris氏
San Gems(サンジェムズ社)経営者M.L.M. Sanoon氏
Facets Sri Lanka(ファセットスリランカ)プロジェクトコーディネーターRoshen Weereratne氏
Sri Lanka Gem and Jewellery Association(スリランカ宝飾品協会)
National Gem and Jewellery Authority of Sri Lanka(スリランカ政府宝飾局)
International Colored Gemstone Association(国際色石協会)