業界分析

2018年春のオークション、慎重なスタートに向かう


A large pear shaped diamond sits on a silver plaque with French words.
GIAがグレーディングを行った、神秘的な6.16カラットのファンシーダークグレーブルーのFarnese Blue(ファルネーゼ・ブルー)ダイヤモンドは、5月15日にジュネーブにてサザビーズで競売にかけられる。ホープダイヤモンドの伝説的な原産地であるインドのGolcanda(ゴルコンダ)で採掘されたこの宝石は、1714年にスペイン国王のフィリペ5世と結婚した王妃エリザベッタ・ファルネーゼに贈られた。他の王室の宝石とは異なり、このダイヤモンドは、この競売に至るまで2世紀以上もの間、木製の箱に保管されて人目を見ることはなかった。木箱にある銀製の飾り額にはフランス語で「見事なブルーブリリアント」と刻まれている。この由緒ある石は、ヴィッラフランカ伯爵の曽祖父であるフィリぺ5世の妻、スペインの王妃であり、現在の所有者である王妃エリザベッタ・ファルネーゼにフィリピン諸島より贈呈された。写真提供:Sotheby’s(サザビーズ)

この春のオークションでは、世界中のバイヤーがより慎重になっているため、主要なファンシーカラーダイヤモンドや大きなカラーレスダイヤモンドが記録を更新することはあまり見られませんでした。

印象に残る素晴らしいダイヤモンドやカラーストーンが、香港、ニューヨーク、ジュネーブなど世界有数の場所で依然として提供されているものの、Cartier(カルティエ)、Boucheron(ブシュロン)、JAR、Van Cleef & Arpels(ヴァンクリーフ&アーペル)などの高級宝石店の伝統的な作品や小さめのファンシーカラーダイヤモンドが注目を浴びています。

今シーズン初の主要なオークションは4月3日に香港で行われたサザビーズでしたが、最高額で競売にかけられた作品のほとんどが落札されませんでした。このオークションの目玉品はジェード製のバングル、Circle of Heaven(サークル・オブ・ヘブン)であり、1020万ドル(約11億1200万円)~1280万ドル(約13億9500万円)で落札されると推定されていましたが不成立に終わりました。最高級のジェードの価格は若干下落したものの、この作品に関してサザビーズが発表した広報内容だと宝石部門はその価格を達成すると確信していたようです。

また、推定価格280万ドル(約3億円)、17.63カラットのカラーグレードがDであるフローレスダイヤモンドと14.18カラットのファンシーブルーダイヤモンドも落札されませんでした。

5.01カラットのファンシービビッドパープリッシュピンクダイヤモンドは、オークションで250万ドル(約2.7億円)で落札されましたが、同様のダイヤモンドが以前のオークションで落札された価格をかなり下回っていました。

4月17日にニューヨークで行われたクリスティ―ズのオークションでは、GIAがグレーディングを行った、推定価格400~600万ドル(約4.4~6.5億円)、8.42カラットのファンシーインテンスピンクが注目の的でしたが500万ドル(約5.5億円)で落札されました。しかし、最高額で落札された作品の大半は、有名宝石店のオリジナルの年代物やモダンな作品でした。最高額で落札されたもう一つの作品は、パリのデザイナーのJARが制作したリングです。このリングは、GIAがグレーディングを行った22.79カラット、カラーグレードDのフローレスで「細長い楕円形」カットのダイヤモンドが飾られているのを特徴とし、250万(約2.7億円)~350万ドル(約3.8億円)と推定されていましたが、280万ドル(約3.1億円)で落札されました。また、去年の春に行われたニューヨークのオークションと比べて、この競売ではロットが約20%減少していました。

A round brilliant diamond on a white background.
This 51.71 ct D Flawless Type IIa round diamond is expected to bring between $7 to $9 million at Sotheby’s May 15 auction in Geneva. The diamond is one of two 50-carat-plus diamonds of that grade offered at the sale. Both were graded by GIA. Photo courtesy of Sotheby's

サザビーズは、5月15日にジュネーブで行われるオークションの目玉商品である、50カラット強、カラーグレードDのフローレス タイプ IIa ダイヤモンドのセットをバイヤーがそれぞれ700万ドル(約7.6億円)~900万ドル(約9.8億円)で落札すると確信しています。GIAのグレーディングレポートによると、ひとつは51.71カラットのラウンドブリリアントで、もうひとつは50.39カラットの楕円形のダイヤモンドです。

また、サザビーズでは、Farnese Blue(ファルネーゼ・ブルー)として知られている、GIAがグレーディングを行った6.16カラットの由緒あるファンシーダークグレーブルーダイヤモンドも競売にかけられます。Hope Diamond(ホープダイヤモンド)が発見されたことで有名なインドのGolcanda(ゴルコンダ)地区から産出されたこのロイヤルダイヤモンドには、素敵な歴史があります。このダイヤモンドは、1714年に夫のスペイン国王フィリペ5世によって王妃エリザベッタ・ファルネーゼへ贈呈された宝石でした。このダイヤモンドは息子のパルマ公フィリッポへと継承され、その後、様々なイタリアの貴族の手に渡り、最終的にオーストリアのハプスブルク家で所蔵されました。この間、この宝石を所有していた家族以外、誰の目にも留まることはありませんでした。このダイヤモンドは、370万ドル(約4億円)~530万ドル(約5.8億円)で落札されると予想されています。

ダイヤモンド

デビアスは、4月のダイヤモンド原石のサイクルは合計5億2000万ドル(約567億円)の販売額となり、前年の同時期から約12%の減少、およびその前のサイクルより8%低下したと発表しました。

ダイヤモンドの種類によっては価格が若干上昇したという報告もありましたが、デビアスは価格の上昇については発表しませんでした。デビアスは、顧客に提供する商品の組合せで価格をわずかに調整することがよくあります。

デビアスでCEOを務めるBruce Cleaverは、ダイヤモンド原石の市場は好調であり、米国と中国のダイヤモンドジュエリーに対する消費者の健全な需要に対応するために、在庫の補充に焦点を当てている、と指摘しました。

生産量で世界最大のロシアのダイヤモンド生産者Alrosa(アルロサ)は、3月の売上高は合計5億5950万ドル(約610億円)であったことを報告しました。この売上高には特別入札オークションからの研磨されたダイヤモンドも含まれています。アルロサで最高経営責任者の補佐役を務めるYury Okoemovによると、大きなダイヤモンドの売上げが増加したため、この総売上高は2月よりも1840万ドル(約20億円)増加しました。

ロシアの第1四半期のダイヤモンドの売上高は16億1000万ドル(約1755億円)であり、このうち15億8000万ドル(約1722億円)がダイヤモンド原石であった、とOkoemovは指摘しました。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。