業界分析

米国の消費者信頼感は引き続き堅調。漂砂ダイヤモンドの追跡および「汚れた金塊」


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Alrosa(アルロサ)が運営するロシア西部のLomonosov(ロモノソフ)鉱床。デビアスと同様に、アルロサは、過剰な供給に対処するためにダイヤモンドの原石の販売を大幅に削減している。写真撮影:Russell Shor/GIA

米民間調査機関、Conference Board(コンファレンスボード)が毎月行う調査によると、不安定な株式市場と中国との貿易戦争に起因するコストの増加にもかかわらず、米国の消費者信頼感は8月に堅調に推移しました。

消費者信頼感は、7月の上昇に続いて、8月にはあまり変化しませんでした。消費者の期待は幾分低下していますが、全体的には依然として堅調に推移しています。経済の他の分野ではいくらか軟化が示されているものの、消費者は依然として自信を保ち、支出に前向きです。ただし、最近エスカレートしている貿易や関税を巡る摩擦が長引く場合は、消費者の楽観は後退する可能性があります、とコンファレンスボードで経済指標シニアディレクターを務めるLynn Franco氏は述べました。

多くのエコノミストは、景気後退の兆候が現れているものの、米国の消費者の楽観的な姿勢および彼らの支出が不況を妨げていると判断しています。

小売店の業績データ

 

米国の独立系ジュエラーでは、特に高級商品を取り扱う宝石商の中で今年の売上高が好調であるものがいた一方、チェーン店は引き続き望ましくない結果を報告しています。

Signet(シグネット)グループは、第2四半期の同一店舗売上高が1%減少し、Zale Corp(ゼール社)の部門が若干の増加を記録したものの、Kay Jewelers(ケイ・ジュエラーズ)とJared the Galleria of Jewelry(ジャレッド・ザ・ガレリア・オブ・ジュエリー)はそれぞれ3%と4%の減少を記録したと報告しました。低価格のジュエリーを販売する小型売店のPiercing Pagoda(ピアシング・パゴダ)の売上高は11%増加し、同社の事業の12%を占めるオンライン販売は4%増加しました。

ティファニー&カンパニー は、上半期に世界の同一店舗売上高が3%減少、北米では5%減少し、アジアでの売上高は1%減少しました。同社は、ホリデーシーズンに世界的に売上高が1桁増加すると予想していると述べました。

香港のショー

香港での抗議行動は、特にデモ参加者が空港を占拠し全便欠航となり、鉄道が閉鎖された後に地域の小売業へ大きな打撃を与えました。ジュエリー、腕時計、高級品の売上高は、今年の最初の7ヶ月間で9%減少し、7月には全小売業で24%と急激な減少となりました。

9月のHong Kong Jewellery & Gem Fair(香港ジュエリー&ジェムフェア)は予定通り行われますが、Israel Diamond Manufacturers Association(イスラエルダイヤモンド製造業者協会)を含むいくつかの団体は、主催者にこのイベントを延期するよう要請しています。これに対応するために、主催者は出席を躊躇する可能性があるバイヤーを惹きつけるためにホテルの特別料金を提供しています。

ダイヤモンドの原石

過剰な供給と厳しい資金調達のため、ダイヤモンドの原石の販売は引き続き急激に減少しています。

デビアスの8月のサイクルの売上高は2億8000万ドル(約296.8億円)となり、2018年8月のサイクルより約40%低下しましたが、4年間で最低であった7月の2億5000万ドル(約265億円)をわずかに上回りました。デビアスの売上高は昨年の水準から44%減となっています。同社は、買い付けの延期に加えて、クライアントから特定の商品の買い戻しも行っています。

New York Times(ニューヨーク・タイムズ紙)のインタビューで、デビアスの最高経営責任者(CEO)のBruce Cleaverは、銀行による信用収縮と困難な地政学によって引き起こされたこの状況を「重大な消化不良」と呼びました。

Alrosa(アルロサ)は、「市場の需要に応じて在庫が一定になれば」市場は安定すると予測していましたが、今年の最初の7ヶ月間で売上高は35%減少しました。7月の配分は前年比50%減となり、8月の原石の売上高は前年同期比36%減となりました。デビアスと同様に、アルロサはクライアントが来年初めまで原石の購入を延期できるよう許可しています。

同社は、市場の状況がこのまま続けば、来年は販売を5%から10%引き下げるかもしれないと発表しました。

漂砂ダイヤモンドの追跡

西アフリカ諸国のギニアのダイヤモンド採掘職人は、Antwerp World Diamond Center(アントワープ世界ダイヤモンドセンター、AWDC)と協力してベルギーの持続可能な開発組織によって開発された追跡可能な供給の取り組みを通じて、発見したダイヤモンドからより多くの利益を得るかもしれません。このプログラムの下で生産されたダイヤモンドは、審査を受けたサプライチェーンを通じてそれぞれの鉱夫から追跡され、AWDCの後援の下でアントワープで販売されます。

このようなプログラムは、漂砂鉱床より産出されるダイヤモンドの鉱夫にとっては稀少とされています。それは、漂砂鉱床は広大な地域に広がる傾向があり、監視が困難であるためです。鉱床はギニアのBanankoro(バナンコロ)地域にあり、ベルギーの組織であるCAP Conseilは、4月にダイヤモンド開発イニシアティブ(DDI)によって導入されたMaendeleoダイヤモンド基準に準拠していることを確認するために生産を監視しています。

Maendeleoダイヤモンド基準は、合法性、同意とコミュニティの関与、人権および労働者としての権利、健康と安全、暴力のない操業、環境管理、大規模な採鉱との相互作用、現場の閉鎖をカバーする8つの特定の原則で構成されています。これらの各原則は、測定可能な要件、具体的なパフォーマンス基準、および許容可能な監査の証拠のリストによって定義される規定で構成されています。

DDIは、政府、業界、地方の市民社会団体、アフリカと南アメリカの4カ国の職人および小規模のダイヤモンド鉱山労働者を含む、幅広い関係者と協議して、Maendeleoダイヤモンド基準を開発しました。DDIは、2012年と2013年にシエラレオネでシステムのフィールドテストを行うためにパイロットプロジェクトを実施し、2014年に完全なプログラムへと拡大しました。

汚れた金塊

ロイターは、スイスの金精製所と大手金融機関が、精製に使用される偽造された金地金(スイスの銀行の偽造された刻印付きのキロバー)を施設内で発見したと報じています。この金地金は高純度の本物の金ですが、マネーロンダリング、犯罪者、制裁政権などの疑わしい資金源から出回っていると考えられています。

このレポートによると、少なくとも5000万ドル(約53億円)相当の金地金が精製業者とJ.P Morganによって発見されたと推定されています。しかし、偽造されたより多くの金地金が検査を通過し、システムに入った可能性が高い、と付け加えました。偽造品を見つけた関係者は、偽造は極めて高度に行われているため、おそらく「かなり多くの」偽造品が流通しているであろう、とロイターに伝えました。

この偽造された金地金の出所の決定的な証拠はないものの、当局はこれらが中国で作られ、日本、香港、タイのトレーダーに売られたと確信しています。

2番目のレポートとなるニューヨークタイムズ紙の「ザ・ウィークリー」シリーズに掲載された記事は、コロンビアで違法に採掘された金が依然として市場に参入していることを指摘しています。この問題は4年前に初めて報告されました。レポートは、コロンビアの違法な金採鉱の環境および社会に対するコストを説明し、同国から産出される金属の3分の2が違法なチャネルを通過していたたことを指摘しました。

多くのアンケートは、消費者が購入する製品の起源をますます気にかけていることを示しているので、この問題は非常に重要です。昨年のGIAシンポジウムおよび昨年6月にラスベガスで開催されたGIA主催のセミナーでは、業界のさまざまな分野のリーダーが、ブランドや製品に対する消費者の信頼を維持するには倫理と持続可能性が最優先事項であると主張しました。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。