鮮やかな2016年度春季オークションシーズン:ほぼ8億ドルの売上げ


24.18ctの 隅切りで、長方形の両端をテーパードバゲットカットのダイヤモンドで挟んだミックスカットのファンシーインテンスブルーダイヤモンド。
隅切りの長方形で、重量約24.18カラットのミックスカットのファンシーインテンスブルーダイヤモンドに、 総重量約2.36カラットのテーパードバゲットカットのダイヤモンドで両側を挟まれたプラチナ台の指輪。 「Cullinan Dream(カリナン・ドリーム)」の刻印が入っている。写真提供:Christie’s(クリスティーズ)

2016年春季オークションシーズンは3月から7月の間にほぼ8億ドルの売上げを達成したことと、これまでの一般向けのオークションで最も高価な宝石を取り扱ったことにおいて記録に残るものでした。

世界の高級宝石とジュエリーの売上の90パーセント以上をコントロールするクリスティーズとサザビーズは、5710万ドルで売られたファンシービビッドブルーダイヤモンドのOppenheimer Blue(オッペンハイマーブルー)に助けられて、昨年の記録を1億4千万ドル以上で破りました。

クリスティーズ・アジアのFrancois Curiel会長は、主な買主は、今回もロシアとアジアからの個人バイヤーであったと述べました。

10.10ctの ファンシービビッドブルーダイヤモンド 重量10.10ctの珍しい楕円形のインターナルフローレスファンシービビッドブルーダイヤモンド。 写真提供:Sotheby’s(サザビーズ)

今回終了したシーズンの最初に売れた大きな石は10.10ctの ファンシービビッドブルーのDe Beers Millennial 4(デビアスミレニアル4)ダイヤモンドでした。 その石は2000年にロンドンのミレニアルドームで展示されたデビアスの有名な10個のブルーダイヤモンドのコレクションの一部でした。 2000年11月8日に、泥棒のギャングがブルドーザーでドームの壁を追突して破り、コレクションを盗もうとしました。 ダイヤモンドは、飛散防止ガラスケースに保管されていましたが、ギャングが破壊しようとしていたことがわかり、警察は犯人たちがケースを壊そうとしているときに、何人かのメンバーを逮捕しました。

数ヶ月後に展示会は終了し、その後デビアスはコレクションを個人的に販売しました。 Millennial 4(ミレニアル4)の宝石を購入した香港在住のバイヤーは、GIAが鑑定したダイヤモンドをサザビーズの4月2日の香港セールにおいて販売委託し、そこで、3200万ドルつまり、カラット単価320万ドルの値がつきました。

このリングは15.99ctで、 楕円形のビルマルビーを使い、ダイヤモンドを周りにあしらったもので、プラチナと18Kゴールドの台に取り付けられている。 Verduraがデザインを手がけたJubilee Ruby(ジュビリールビー)のリングは15.99ctの 楕円形のビルマルビーを使い、ダイヤモンドを周りにあしらったもので、プラチナと18Kゴールドの台に取り付けられている。 写真提供:Christie’s(クリスティーズ)

主要な宝石のいくつかは、4月20日のニューヨークのクリスティーズで、オーナーが変わりました。 15.99ctの Jubilee Ruby(ジュビリールビー)は、非加熱のビルマクッションカットで、高額の入札者が1420万ドルをつけた時点で、アメリカのオークションで最も高額で売却されたカラーの宝石となりました。  そのルビーが売却される直前には、別のバイヤーが10.07ctのものに880万ドルを支払ったばかりでした。 ファンシーインテンスパープルピンクのブリリアントカットダイヤモンドと40.43ctの IIa Dタイプのフローレスダイヤモンドには720万ドルが支払われました。 どちらのダイヤモンドもGIAがグレーディングしたものです。

前日にはサザビーズで、一つの重要なロットが売却されずに終わりました。 9.54ctの ファンシーディープブルーのShirley Temple(シャーリー・テンプル)ダイヤモンドで、1940年に子役女優に送られたものですが、2500万ドルの引当金での買い手は見つかりませんでした。 サザビーズ幹部は、個人取引でそのダイヤモンドを売ることができるだろうと語りました。

このリングは15.38ctで、 自然なカラーのファンシービビッドピンクダイヤモンドである。 「Unique Pink(ユニークピンク)」は15.38ctで 自然なカラーのファンシービビッドピンクダイヤモンドである。 GIAがグレーディングをしたそのダイヤモンドは梨の変形型のブリリアントで、VVS2のクラリティを持ち、IIaタイプのダイヤモンドと分類されている。  写真提供:Sotheby’s(サザビーズ)

単一のオークションにおける記録的な高価格での販売は、サザビーズのGeneva Magnificent & Noble Jewelsオークションで5月17日に達成された1億7500万ドルという価格でした。 目を引いたものは15.38ctのUnique Pink(ユニークピンク)で そのファンシービビッドのピンクダイヤモンドは、同じグレードの宝石の記録となった3160万ドルの値がついて個人バイヤーに落札されました。 オークションには他に、6.64ctの Alexandre Rezaのファンシーインテンスブルーダイヤモンドのブローチが1370万ドルで売却されました。

リングとなっているダイヤモンドが 両側に配置されている14.62カラットのエメラルドカットのファンシービビッドブルー・オッペンハイマーダイヤモンド。 約14.62ctの重量のあるファンシービビッドブルーの長方形カットのダイヤモンドは、 ブランコ状のダイヤモンドが両側にあしらわれている。 これは、Verduraからのオリジナルのプラチナ、「Eight Shades(8つのシェード)」の土台につけられている。 GIAはそのダイヤモンドをファンシービビッドブルー、ナチュラルカラーでクラリティがVVS1とグレーディング。 写真提供:Christie’s(クリスティーズ)

オッペンハイマーの名がついたダイヤモンドは幾つかありますが、Philip Oppenheimer卿が所有する14.62ctのファンシービビッドブルーダイヤモンドは、世界のオークションで最も高い金額のついた宝石のタイトルをとりました。 GIAによってグレード付けされたそのダイヤモンドは、クリスティーズの5月18日のジュネーブセールでおよそ4500万ドルで販売される予想されていましたが、たった25分間で入札は5740万ドルに達しました。 バイヤーの身元は、本人の希望でふせられています。 そのダイヤモンドはその日のクリスティーズの総売上である1億4500万ドルのうち約40%をしめました。これは2年前であれば、世界記録になったであろう金額です。 そのオークションでは、ほぼ同一のペア(11.96ct と12.2ct)のファンシービビッドオレンジイエローのペンダント型イヤリングが、1160万ドルで売却されました。

長方形にカットされたオーロラグリーン・ファンシービビッド・グリーンダイヤモンドが、ファンシーピンクのメレーで囲まれたリングである。 この5.03ctの Aurora Green(オーロラグリーン)という名のファンシービビッドグリーンは、2016年5月時点でGIAがグレード付けしたファンシービビッドグリーンダイヤモンドの中でも最大のものです。 写真提供:Christie’s(クリスティーズ)


5月末に、5.03カラットのファンシービビッドグリーンダイヤモンドが、クリスティーズの香港セールで、1680万ドル(カラット単価334万ドル)という、グリーンダイヤモンドにつけられたこれまでの最高価格とカラット単価で売却されました。 その石を鉱山から市場に出るまでたどって、その緑色が天然由来のものである強い確信を与えていることが、このような高額がついた理由の1つです。 またこのオークションでは、重量10.02ctと9.09ctのルビーのペアのイヤリングがこれまでの最高価格の1160万ドルという値段で 入札されました。 つまりカラット単価が60万7千ドルを少し超えた金額となります。 また、これまでオークションでブレスレットに支払われた最高価格の726万ドルという金額が、カルティエのアートデコのサファイア商品につけられました。

シーズン後期オークション


通常、最後の主要なオークションは5月半ばから下旬に開催されますが、今年は珍しいシーズンでした。 クリスティーズは、24.18ctの ファンシーインテンスブルーのCullinan Dream(カリナンドリーム)ダイヤモンドを、6月9日にニューヨークセールに追加し、2530万ドルで売却されたのです。 GIAがグレード付けしたダイヤモンドは、競売にかけられた同等のグレードのものでは最大で、一番に売却されたものは、122ctの 南アフリカの歴史的カリナン鉱山で数年前に発見された原石でした。

これまでに発見された世界で最大のダイヤモンドの多くは、カリナン鉱山からのもので、中には1903年に鉱山がオープンして以来、発見された最大の3106ctのものも含まれます。

この1,111カラットの原石は昨年ボツワナで発掘され、今年後半にサザビーズから販売される。 提供:Lucara Diamond(ルカラ・ダイヤモンド) このLesedi La Ronaという名で1109カラットの原石、IIa型ダイヤモンドは、昨年ボツワナで発掘されたもので、これまでに発見された中で二番目に大きなものである。 写真提供:Lucara Diamond(ルカラ・ダイヤモンド)


これまでに見つかったラフダイヤモンドで、二番目に大きなものであるLesedi La Ronaは、ボツワナにあるLucara Diamond Corp.(ルカラ・ダイヤモンド・コーポレーション)がKerowe鉱山で発見したものです。 それは千カラットのラインをこれまでに超えることのできたたった2つの宝石品質のダイヤモンド原石で、重量が1109ctありました。 採鉱会社は通常、自社のオークションまたは契約価格の見える販売を通じてダイヤモンド原石を販売するものですが、Lucaraは、ダイヤモンドと他に5カラットを少し超える4個のダイヤモンドの原石を、サザビーズに6月29日に7千万ドル以上の売上が見込まれたロンドンで販売してもらうよう委託しました。

この記録的なオークションシーズンがクライマックスで終了しようとしていた時に、競売者のDavid Bennett氏が5千万ドルで競りを始め、価格は6100万ドルで小康するまでじわじわと上がって行きました。 Bennettはハンマーを下ろして、観客に石がリザーブ価格を満たさず未売却で終わったことを告げる前に、数分間「最後のチャンスです」と言いながら構え続けました。

Russell ShorはGIAカールスバッドのシニア業界アナリストです。