ツーソン2015:ジェモロジストらが最新の研究活動を報告


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GIAフィールドジェモロジストStanislas Detroyat(右下)が、マダガスカルのイラカカのサファイア鉱区にあるベペハ村近くの鉱山職人のグループが働くサファイア採掘ピットを訪問した。 写真:Vincent Pardieu/GIA
GIAの研究プログラムは過去10年間で、フルタイムの研究者数が大幅に増え、活動範囲も非常に広がりました。 チームはおよそ50名のスタッフとコンサルタントから成り、彼らの持つ広範な学術研究と宝石検査の経験は、当機関の多岐にわたる研究目標をサポートしています。 カールスバッドのGIAの著名な研究員、Dr. James Shigleyはアリゾナ州ツーソンで行われた2015 AGTA GemFairでGIAの研究活動の概要を発表しました。

彼はまず、GIAが主に力を入れている研究について紹介しました。GIAの宝石の鑑別能力を支援する新しい宝石素材の収集とその特性分類、処理ダイヤモンド鑑別のための新しい手法の確立に向けた実験遂行、GIAのすべての宝石鑑別及びグレーディングラボラトリーにおける分析機器の校正基準の確立、ファンシーシェイプダイヤモンドの主要カテゴリーの概観についての検査、などです。

最も重要な活動の一つは、検査のためにGIAに提出された宝石やGIAフィールドジェモロジィチームが世界中の産地で収集した宝石から、情報を分類してGIAの宝石データベースを構築することです。 GIAは素材を収集するために、過去5年間では16カ国でおよそ60回に及ぶ、定期的な現地調査を実行しています。 昨年、研究者はブラジル、カンボジア、マダガスカル、マラウイ、モザンビーク、ミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナム、ザンビアを訪れました。

「これらの国に旅行して原産地から直接宝石試料を収集して、地球から採掘されるのを目にすることで、これらの試料が処理されてはおらず、合成石でないことが保証されます」と、Shigleyは言います。 研究者が確実な宝石の原産地が分かったうえでその独特の特徴を理解することは、原産国の判定にも役立つ、と言います。

研究者は収集した原石の試料を保存記録し、特殊な機器を使ってそれらを分類し、データベースにその結果を登録して世界中のGIAラボラトリーでそれを共有します。

Shigleyは、最大の課題の一つは宝石の処理方法を特定することだと言います。 最近の研究では、研究者は非加熱(茶色の)ゾイサイトのデータを収集し、その後、既知の温度で宝石を加熱して処理後の色とスペクトルの違いを調べています。 加熱された宝石は濃い青と紫の色に変わりましたが、これがタンザナイトとして知られるゾイサイトの変種です。 研究者らは可視スペクトルや内包物を調査した後、この情報を加熱される前の同じ石のデータと比較します。

この実験により、可視スペクトルではタンザナイトが加熱処理されたかされていないかの判定は行えないことが分かりました。多色性の3色が見られないことがタンザナイトが加熱されていないということを示唆するかもしれませんが、カットされた石に3色すべてを観察するのは困難な場合もあります。変質していない液体インクルージョンの存在が、石が加熱処理されていないという最良の目安となると思われ、破裂したような液体インクルージョンが見られた場合には加熱処理が疑われます。

Shigleyは宝石学研究とGIAラボラトリーにおける正確で効率的な機器の重要性について説明しました。 全てのGIAラボラトリーの器具は測定の一貫性を維持するために、定期的に監視し校正されています。 例として彼は、2014年初期に導入された、合成あるいは着色処理された可能性があるものから天然ダイヤモンドを識別するデバイス、GIA DiamondCheck(GIAダイヤモンドチェック)を紹介しました。 GIAはWorld Federation of Diamond Bourses(世界ダイヤモンド取引所連盟、WFDB)と協力し、世界各地の20のダイヤモンド取引所や業界団体が無償のリースによりDiamondCheckを利用できるようにしました。

Shigleyは、ファンシーシェイプのダイヤモンドについてのカット評価システムの進歩状況についても概説しました。 GIAは2006年、標準的なラウンドブリリアントダイヤモンド(DからZのカラーグレードで、フローレスからI3のクラリティ)に対するカットグレーディングシステムを導入しました。 それ以降研究チームは、最も一般的なファンシーシェイプのダイヤモンドのカットと外観について調査を行ってきました。 研究者は2014年、アントワープ、香港、ムンバイ、ニューヨーク、テルアビブ、ツーソンで、さまざまな経歴を持つ440名以上の専門家にインタビューしました。 インタビューの参加者には、ダイヤモンドの外観に対して特定の観点における業界の嗜好を判断する一助とするために、ファンシーシェイプのダイヤモンドをよく見て、気付いたことを記録するように依頼しました。

GIAラボラトリーのチームは毎日クライアントから提出された石の評価を続け、結果をデータベースに記録し、こうして観察したファンシーシェイプのダイヤモンドのデータベースは9,000件以上に上ります。 これらのファンシーシェイプダイヤモンドのカットグレードを提供する決定はされていませんが、評価システムの基本的なコンセプトが明らかにされ始めています。

ShigleyはカールスバッドのGIAのリサーチサイエンティストであるDr. Christopher M. Breedingと交代し、ダイヤモンドの蛍光について、そして、合成および照射処理ダイヤモンドの研究についての最新情報を紹介してもらいました。  

Breedingによると、長波長紫外線(UV)光線下でDからZのカラーグレードスケールのダイヤモンドは約35%が蛍光を示すといいます。 青色蛍光が最も一般的な色で、次が黄色です。 蛍光を示すダイヤモンドのうち、38%がかすかな蛍光であり、62%が中程度または強い蛍光を示します。 ダイヤモンドの大多数においては、蛍光の強度は、非常に強い青色蛍光のまれな場合を除いて、外観に影響を与えません。 蛍光は識別の特徴として、GIAダイヤモンドグレーディングレポートに記録されます。
 
愛好家用UVランプ、水銀UVランプ、LED UVルーペなど、長波紫外線に対する蛍光反応を検出するために使用できるUV光源がいくつかあります。 しかしこれらのランプ出力の波長が違うために、観察される蛍光は影響を受け、その蛍光色が変化してしまいます。 Breedingによると、GIAは長波の新しいLED UV光源を開発し、これは側波帯が無く長寿命で、ガラスフィルターの無い、各装置ごとにおける誤差の少ない照明条件を持つものだということです。 この新小型軽量光源は、精度と一貫性の向上を確実にするために、蛍光の観察方法を標準化するのに役立ちます。

Breedingは、近年より普及し、入手しやすくなっている合成ダイヤモンドについても話しました。 無色HPHT(高圧高温)およびCVD(化学蒸着)合成ダイヤモンドを製造する企業が、良い色と透明度の比較的大きなダイヤモンドを生産している、ということです。 ある調査ーAOTCグループの製造するHPHTダイヤモンドーにつての詳細な結果が、Gems & Gemology宝石と宝石学)の2014年春号に掲載されました。

続いてBreedingは、照射カラー処理についての新たな研究を発表し、ダイヤモンドの自然界における照射は処理された場合と同じ緑色を生じるので、この処理の看破は難しいことを述べました。 近年では、天然照射で淡色のダイヤモンドは、色を若干強くするために照射処理されます。 ダイヤモンドのカラー処理に関する研究は現在進行中ですが、GIAはこれらの処理を特定できるように、常に新しい方法を模索しています。

Shigleyは、現地調査から実験まで、あらゆるGIAの研究が宝石を売買する人々を保護することになることを強調して、彼の発表を終えました。 研究から得た情報によってGIAのグレーディングおよび鑑別レポートが正確かつ完全なものとなり、また、これらの情報は教育、G&G、およびGIAのウェブサイトを通して紹介されます。

Dr. James Shigley(左)とDr. Christopher M. Breeding。 撮影:Kevin Schumacher/GIA