研究者が宝石を語る助けとなる科学機器類



このような機器の名前は謎めいたものに思えるかもしれませんが、GIAの研究者にとっては宝石の謎の解明に役立つツールなのです。

研究者は、GIAが長年にわたって研究した無数の宝石のデータベースと照合して、宝石サンプルを分析し、鑑別の結論に至ります。 専門性と知識を駆使して、宝石の本質を明かす典型的な特徴を探します。

収集した情報とその情報をまとめるために用いる計測機器は、光分析、原子構造解析、化学分析および画像処理に分類することができます。

光分析

分光法は光が宝石とどのような相互作用をもつかを分析します。 研究者は、宝石が光をどのように吸収あるいは透過するか調べることによって、宝石を鑑別し、また処理されているか、合成かということも判断可能です。

窒素又はホウ素をチャンバ内に入れると、黄色または青色の合成ダイヤモンドができます。
 

可視分光光度計
可視分光光度計は、細い光線を宝石にあて、青で始まり赤で終わるスペクトルの、一連の波長を精査します。 サンプルに吸収されない光の波長は、機器の検出器まで進みます(透過した部分は色として目で見える光です)。 この分析結果は、光と波長の相対的な透過度(または吸収度)をグラフで示します。。 研究者は、この情報を使って、カラーストーンの色の原因を確定します。

赤外分光計
赤外分光光度計は、赤外線として知られる非可視光のスペクトルを測定します。 赤外線スペクトルによって、研究者は宝石が処理済みなのか、あるいは、ダイヤモンドがタイプIかタイプIIなのかを判定することができます。 この計測機器は、「光」として見えなくても熱として知覚できる、赤色のスペクトラムの先にある波長で放射線を発生させます。 これらの波長は分析するサンプルに吸収、透過あるいは反射されると考えられます。 樹脂、油、プラスチックの他、カラーストーンの処理に使用される物質については、その赤外線スペクトルにはっきりとした特徴があり、分光計で検出することが可能です。

赤外線顕微鏡
この特殊な顕微鏡により、研究者は赤外線が宝石の表面部でどのように変化するかを図式化することができます。

ラマン分光計
ラマン分光計は、レーザーをサンプルに照射し、研究者が宝石および鉱物試料を鑑別するのを助けるラマンスペクトルを記録します。 その結果は、グラフ上に鋭いピークを構成するので、それを精査し様々な宝石素材の既知のスペクトルライブラリと比較します。 また、この計測機器は、サンプルの発光スペクトルを記録するのに用いることもでき、フォトルミネッセンス(またはPL)分光法と呼ばれる技術を使用しています(レーザーから出る光が、サンプルが特定の波長でエネルギーを放射して発光スペクトルを作り出すするように働きかけます)。

原子構造の分析

宝石の試料はX線回折により原子レベルで検査します。 研究者はこの情報を使って、化学構造を判別し物質を特定します。

カットダイヤモンドのルーチンX線検査
 

X線回折計システム
X線回折システムは粉末状にしたサンプルにX線ビームを照射し、サンプルの結晶構造を分析します。 X線ビームは、結晶の原子構造によって、特定の角度に回折または曲折します。 研究者はこの結果を、既存の素材から得た特定の角度パターンに関する標準データーベースと照合します。 この方法は宝石の小さなサンプルを使用した破壊検査ですが、材料を鑑別する有効な手段となります。

化学分析

研究者は化学分析を用いて、宝石を構成する元素を特定し、宝石が天然か合成か、あるいは処理済みのものかを判定します。

蛍光
 

蛍光X線(XRF)
蛍光X線は、研究者が宝石に含まれる化学元素を識別するためのものです。 X線源からのエネルギーを試料に照射すると、宝石に含まれる元素によって異なるエネルギーのX線が放射されます。この装置はこれを記録します。 この計測機器では、大きくて平らに研磨されたサンプルの、高速かつ非破壊的な定性化学分析を行います。 この技術を使えば、研究者はサンプル中に存在する化学元素が何であるかすぐに分かります。

レーザーアブレーション、誘導結合プラズマ、質量分析計(LAICPMS)
この高度な計測機器を使えば、研究者はサンプル中の各元素の量を特定することができます。 レーザーから出る光線は、サンプル表面に照射され、表面から微粒子を切除または除去します。 これらの粒子を、分解された高温プラズマトーチ内にガスを送り動かすと、個別の原子が検出器により同定できます。 これにより、研究者が、低濃度であってもサンプル中に自然に存在する元素の定量化学分析を行うことができのです。 これは破壊検査で、サンプルのごく一部が使われます。

画像処理

写真法、特に顕微鏡写真法は、研究者が宝石の特徴や内包物をクローズアップ画像で捉えるための有効な方法です。 研究者たちはこの情報を用いて、宝石が形成される際の状況や、宝石によっては、産地についても把握します。

顕微鏡写真機
 

顕微鏡写真機
双眼顕微鏡写真機を使って、宝石の特徴または内包物の写真画像を撮ります。 研究者はこの情報を使って宝石を鑑別し、天然か合成か、あるいは処理済みのものかを判定します。

DiamondView(ダイヤモンドビュー)
DiamondView装置は、蛍光パターンを生成する短波紫外線源を使用して、ほとんどの天然および合成ダイヤモンドを選別することができます。 この装置は1996年に英国のDe Beers Diamond Trading Company(デビアスダイヤモンドトレーディングカンパニー)の研究者によって 開発されました。