G&G2015年夏号:デュアルスター, 顕微鏡写真ガイド, タジキスタンのルビー, 新しいセクション ミクロの世界


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この号のNathan Renfroの記事では、現代のデジタル顕微鏡写真法における画像処理ソフトウェアと照明技術の役割について検証する。 表紙画像はコロラド州とワイオミング州の州境にあるKelsey Lake(ケルシーレイク)鉱山から採掘されたダイヤモンド結晶の表面に見られる変形したトライゴン。 このノマルスキー微分干渉顕微鏡によるコントラスト画像は、20倍の対物レンズとCanon 6dカメラを装着したNikon Eclipse LV100を使用して撮影された。 拡大した被写界深度で70枚の顕微鏡写真を1枚の画像に処理するのに、Helicon Focus(ヘリコンフォーカス)深度合成ソフトウェアを使用した。 垂直視野:0.49mm。 写真:Nathan Renfro。

スター効果は宝石の世界でも最も魅力的な現象のひとつで、Gems & Gemology(宝石と宝石学、G&G)の夏号ではコランダムとクォーツの両方に見られるデュアルカラーダブルスターの原因について深く探ります。 またこの号ではジェモロジストに向けて、宝石のインクルージョンの顕微鏡写真を撮影するハウツーや、タジキスタンのSnezhnoe(スニジネ)の滅多に訪れることのないルビーの原産地の概要についても掲載しています。 加えて、G&Gはミクロの世界という新しいセクションを創設し、インクルージョンや宝石の「内部空間」を分析する詳しい宝石観察をお届けします。

ルビー、サファイア、クォーツのデュアルカラーダブルスター:原因と歴史的な重要性

デュアルカラーダブルスタールビーおよびサファイアは、約30年にわたりファッションジュエリー市場向けにLinde Air Products Co.(リンデ エアー プロダクツ)が主に生産してきた 合成石ラインにおいて最も知られています。 このような石は時折、世界中のさまざまな鉱床から天然で見つかることもあります。 デュアルカラー(二色)はダブルスターに起因していて、片方のスターは白色、もう一方は石自体の地色の色です。

こちら白及びピンクの二つの六条の星(スター)彩効果をもつピンクの合成サファイアは、2010年にバンコクで著者の一人が購入しました。 カボションの寸法は14.4×11.2mmで、重量は12.37ctである。 写真提供:M.P. Steinbach.

リンデ社製の合成石に加え、筆者(Karl Schmetzer、Martin Steinbach、H. Albert Gilg、Andrea Blake)は、ミャンマー産天然パープルピンクサファイア、さまざまなメーカーにより最近製造された合成石、そしてこういった現象を示すインドおよびブラジル産の天然クォーツを分析しました。

この研究者らは、通例のホワイトスターはカボションの湾曲したドームの表面で光を反射し散乱させる微細なルチルの針状インクルージョンにより生じることを指摘しました。 地色のスターも、石の奥深くから発せられる光を反射し散乱するルチルインクルージョンにより発生します。

クォーツでは、こういったスターのいずれも、針状のルチルインクルージョンが原因になっています。

研究者は合成石をいくつか再研磨し、ドームを再研磨するとホワイトスターが消え、土台を再研磨すると地色のスターが消えることを発見しました。 これにより、針状のインクルージョンは表面に限定されて存在していることが分かり、この素材が拡散処理されていることが示されました。

ジェモロジストのためのデジタル顕微鏡写真法

顕微鏡写真法とは顕微鏡を用いて小さな宝石のインクルージョンを撮影する方法で、研究と芸術の両方の目的を果たします。

最近まで、この技術にはデジタル方式ではなくフィルムが使用されていました。これまでフィルムが優れた色の演出と解像度を出していたからです。 しかし、撮影者が即座に結果を見れ、画像を簡単に調整できるという利点が加わり、デジタル顕微鏡写真法がフィルムよりもたくさんの点で進歩しています。

このオーストラリア産オパールの中の黒色マンガン酸化物「プルーム」は、芸術と科学が宝石学で融合した良い例を示している。 顕微鏡写真、視野5.85mm、Nathan Renfro撮影。 注:特に指定のない限り、この論文中では視野は水平を指す。

GIAの研究者Nathan Renfroによるこの記事は、顕微鏡写真法の基本的な特徴を、適切な宝石学用顕微鏡やデジタルカメラの選び方も含めて詳しく述べています。 カメラにリモートコントロール機能、振動制御、超高解像度撮影の機能を備えておくことが重要です。

筆者は、顕微鏡へのカメラの取付け方、宝石のクリーニング、適切な照明の設定とステップを負いながら読者を導きます。 一般的に宝石学検査で標準となる暗視野照明は、インクルージョンと背景の間に強いコントラストを作る原因になるため、必ずしも顕微鏡写真法に最適ではありません。 埃の粒子や傷がかなり目に付きやすくなります。 そのため撮影者は、明視野証明、拡散照明、ファイバー光源、偏光照明、紫外線、またあまり知られていない微分干渉コントラストシステムなど、様々な照明技術を(時には組み合わせて)使用しなければなりません。

どんな写真でも、画像を撮ることがはじめのステップです。 標準的な画像編集ソフトであるフォトショップなどの域を超え、実際の被写体にできるだけ近い画像を表現するべく処理することは、第2のステップです。 これには焦点を改善できる処理ソフトが必要となります。被写界深度を拡張することは、高い倍率と非常に短い焦点距離を得るために必須です。 HDR(ハイダイナミックレンジ)ソフトウェアも、過度に明るいまたは暗い領域に対応するため、また詳細を強調するために重要です。 電話を含め一部のカメラにはHDR機能が組み込まれています。 最後に、最終画像の画像条件を示すために、使用中の倍率と被写界深度の大きさを表示するスケールバーを入れると役立ちます。

タジキスタン、Snezhnoe(スニジネ)産のルビーおよびサファイア

ルビーは世界で最も求められる宝石の一つです。 この記事では、ロシア、ドイツ、タジキスタンの鉱物学者と教育者のチームが、タジキスタンと中国西部との国境に非常に近いところに位置している、ほとんど知られていないタジキスタンのSnezhnoeの鉱床について報告します。

左:Snezhnoe(スニジネ)産ルビー内部の茶色の柱状ルチルインクルージョン。 顕微鏡写真提供:Elena S. Sorokina、35倍拡大。 右:鉱床で採集されたピンクサファイアに見られるジルコン(Zr)とルチル(Rt)のインクルージョンの後方散乱電子像(Cal = カルサイト[方解石]、Mrg = マーガライト)。 Sorokina(ソロキナ、2011年)。

この鉱床は、タジキスタンがまだソビエト連邦の一部であった1980年に発見されました。 ソ連当局は「数十万カラットの宝石コランダム」の埋蔵を推定しましたが、その後1990年まで採掘を続ける間、実際の生産量は秘密にされたままでした。 採鉱は過去10年で再開しましたが、国営企業はまだ生産量を開示していません。

Snezhnoeのルビー鉱床は地下20〜25フィートの大理石層の間にあります。 筆者らは、以前に採掘された数十個のルビーを含有する岩石を分析し、有名なモゴック産ルビーと同等量のクロムを含有するピンクサファイアやパープルレッドから明るいレッドの色範囲の宝石を発見しました。 研究者(Elena Sorokinaと共執筆者)は、Snezhnoeの素材には他の地域のルビーには見られない、アラナイト(褐れん石)、フックサイト(クロム雲母)、モスコバイト(白雲母)といった独特なインクルージョンがあることを発見しました。 これらの特徴は、ジェモロジストがこういった石の原産地を判定するのに役立ちます。

ミクロの世界

ミクロの世界という新セクションの初回では、3千万年前の足の長いダニが入っている研磨されたドミニカ産琥珀の他、破断した際に魅力的なオレンジ色のカルサイトインクルージョンが現れた暗緑色アパタイトなどについて紹介しています。 このアパタイトを拡大観察すると、その球状インクルージョンは紫色のフルオライトの「目」の付いた丸いオレンジ色の仮面の様に見えました。ミクロの世界のチーム(Nathan Renfro、Elise Skalwold、John Koivula)はまた、バイカラーのダブルアイカボショントルマリンも検査しました。この石は、シャトヤンシーの原因となっている成長チューブが顕微鏡写真でもはっきりと見られるように無色の部分にしか見られないにも関わらず、キャッツアイのピンクの帯が片側のカボションに、無色の帯が反対側のカボションに見えるものです。

ラボノート

ダイヤモンド

バンコクのGIAラボラトリーは、0.005ctから0.01ctの重量範囲の6つのメレーサイズのカラーレスHPHT合成ダイヤモンド を分析しました。 これらの合成石は研究用に合成起源であることを開示されて持ち込まれた試料で、合成石の根拠を示すインクルージョンまたは明瞭な吸収線は見られませんでした。 DiamondView装置により、青色または緑色蛍光および合成の特徴的な成長パターンが明らかになりました。

3石のLPHTアニールCVD合成ダイヤモンド:ファンシーディープブラウニッシュオレンジィピンク(帯褐帯橙ピンク色)の0.37ct(左上)、ファンシーディープブラウンピンクの0.31ct(中央上)、ファンシーブラウンピンクの0.25ct(右上)。 これらのDiamondView画像(下段)は、線形成長条線のあるオレンジ色の蛍光を示している。

また、ニューヨークのラボでは、さらに、合成成長後に低圧高温(LPHT)として知られている方法で処理した3つのピンクからブラウンのCVD成長法合成ダイヤモンドを分析しました。 これらのダイヤモンドはそれぞれ0.37、0.31、0.25ctの重量で、色をエンハンスメントするために加熱して低圧力にかけられました。 DiamondView画像では、CVD合成石に典型的なオレンジ色の蛍光と線形成長条線が、この3つのダイヤモンドにあることが示されました。

この1.18ctのファンシーインテンスブルーダイヤモンドにニューヨークのラボで最近遭遇した。

ニューヨークのラボラトリーは1.18ctの 天然IIb型のファンシーインテンスブルーダイヤモンドを分析しました。これは5.84ppmという非常に高濃度のホウ素を含有していました。 IIb型ホープダイヤモンドのようなブルーダイヤモンドの多くは、ホウ素濃度が0.24〜0.36ppmです。 この例はGIAの研究者がこれまでに見た天然ダイヤモンドの中で最高のホウ素濃度でした。

もう一つの見事なIIb型の石は、天然の1.42ctの ファンシーグレーパープルダイヤモンドで、これはカールスバッドのラボラトリーに提出されたものです。 このダイヤモンドは色だけでなく、非常に強いフォトルミネセンスからも、珍しいものでした。

真珠

GIAの研究者は、いくつかの珍しい養殖真珠を分析しました。一つは珍しい半透明のリングが片側にある大きなクリーム色と白のバロック粒でした。 検査でこの真珠は、欠け落ちた部分に新しい真珠層のパーツを付けた張り合わせの石であることが判明しました。 二つ目は、ピンクがかった紫の強い色相をもつ中国の養殖真珠のネックレスでした。 検査により、この真珠が淡水で養殖されたものであることがわかりました。これは中国の生産者がこれまでより大きく品質の高い真珠を養殖していることを示すものです。

サファイア

ベリリウム拡散や鉛ガラス充填処理については過去10年間で広く文献で報告されています。 カールスバッドのGIAラボラトリーでは最近、4.25ctの オレンジサファイアで両方の処理が施されたものを分析しました。 拡大検査により、ガラスで充填された多数のフラクチャーが明らかになりました。 さらなる検査から、石がベリリウム(Be)で処理されたことも分かりました。 ベリリウム処理はガラス充填の処理(900〜1400度)よりもはるかに高温(1800〜1850度)での処理が必要であるため、これが最初に行われたことは確かです。 これは、両方の処理が施された宝石にGIAが遭遇した初めてのケースでした。

Russell ShorはカールスバッドにあるGIAのシニア業界アナリストです。

Gems & Gemology(宝石と宝石学)は年4回発行される専門誌で、1934年以来の宝石学研究の最新の技術進歩について報告しています。 G&Gブリーフは、最新号の内容の概要を紹介しています。