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2019年にGems & Gemology(宝石と宝石学)で紹介された最も珍しい7つの宝石


ブルーのクッション カットのダイヤモンドをフェイス アップで観察した画像。
天然ダイヤモンド上にCVD合成ダイヤモンドを成長させたものをフェイス アップで撮影した画像。ホウ素が添加されたCVD層により、このブルーの色が生じる。写真:Robison McMurtry

毎年、GIAのラボラトリーにはグレーディングや鑑別レポート、起源レポートのために様々な種類のダイヤモンドやカラー ストーンが提出されます。希少であったり、注目を浴びたり、珍しい特徴を示す試料は、季刊誌Gems & Gemology(宝石と宝石学)に掲載される記事「ラボノート」でご覧いただけます。こちらの記事では、2019年にG&Gで掲載された最も興味深く珍しい7つの宝石を紹介します。

1. ダイヤモンドの上のダイヤモンド:天然ダイヤモンド上に成長させたCVD層

0.64カラットのファンシー グレイッシュ グリーニッシュ ブルーのクッション モディファイド ブリリアント カットのダイヤモンドは、2つの蛍光パターンをはっきりと示すだけでなく、タイプIaおよびタイプIIbのダイヤモンドの両方の特徴を呈しました。この試料は、天然ダイヤモンドの上にCVD合成ダイヤモンドの薄膜が合成されたものであることが判明しました。このような組み合わせの宝石がGIAで検査されるのは2回目となりますが、新しいタイプの商品が市場に参入している可能性があります。

CVD薄膜に見られる転位束
直交偏光器を使用すると、CVD薄膜の転位束がヨウ化メチレンにて観察できる。写真撮影:Troy Ardon、視野1.9mm 。

2. 大きな空、大きなルビー:大きなモンタナ産ルビー

モンタナ州の二次鉱床では、主にパステルカラーの広範囲にわたる色のサファイアが産出されます。モンタナ産ピンク サファイアは希少であり、ルビーと呼ぶに値する十分な色の深みを持つコランダムは現在でもさらに希少とされています。1.70カラットの紫がかった赤のオクタゴナル モディファイド ブリリアントが検査されました。その色と大きなサイズのため非常に見事な試料であり、モンタナ産ルビーに対してラボより発行されたわずかに2例目のレポートとなりました。

左右に並べたモンタナ産ルビーのインクルージョンの画像。
モンタナ州産1.70カラットのルビーに含まれているインクルージョン。左:幾何学模様を示す薄膜を伴うガラス質の融解インクルージョンの拡大写真。視野1.76mm。右:イリディセンスを示す薄膜、粒子の部分的に六角形の領域、短いニードルのある融解インクルージョン。視野3.81mm。顕微鏡写真撮影:Claire Malaquias

3. バナジウムのV:多量のバナジウムを含有するビルマ産カラー チェンジ サファイア

5.68カラットのクッション ミクスト カットの透明なサファイアは、蛍光灯下ではグレイッシュ バイオレット、白熱灯下ではパープル-ピンクという強い変色を示しました。化学分析の結果、異常に高いレベルのバナジウムが発見され、カールスバッドのラボがこのような化学成分を持つカラー チェンジ サファイアを検査したのは今回が初めてのこととなりました。

左右に並べたクッション カット サファイアの画像。左の写真ではグレーイッシュ バイオレット、右の写真ではパープル-ピンクを示す。
この5.68カラットのクッション ミクスト カットのサファイアは、蛍光灯下ではグレーイッシュ バイオレット、白熱灯下ではパープル-ピンクという強い変色を示した。写真撮影:Robison McMurtry

4. 模造のネオン色:パライバのような合成サファイア

それぞれが7.78カラットと4.90カラットある2つの宝石は、パライバ トルマリンと同様のネオン グリーン-ブルーからブルー-グリーンの色を呈していました。湾曲したカラー バンディングとプラトー線により、これらは火炎溶融法による合成サファイアと鑑別されました。GIAのカールスバッド ラボが、パライバのような色を示す火炎溶融法による合成サファイアを検査したのはこの宝石が初めてでした。

2つのカットおよび研磨された合成サファイア。
7.78カラットのラウンド ブリリアントはブルー-グリーン、そして4.90カラットのクッション ブリリアントはグリーン-ブルーを呈し、両方ともパライバ トルマリンを連想させる色を示した。写真撮影:Nathan Renfro

5. 手ごわいグリーン:偽造のグリーンのコーティングが施されたダイヤモンド原石

天然のグリーン ダイヤモンドは非常に希少です。その色は通常、放射性の鉱物や液体にさらされることにより生じ、「放射線のシミ」と呼ばれる緑色または茶色の斑点を伴います。6.49カラットの緑色の結晶は、酸化クロム粉末でコーティングされており、その後のアニーリングによりその粉末が放射線のシミに似た表面を作り出したものであることが分かりました。拡大して観察した結果、コーティングが簡単に検出されましたが、これは天然グリーン ダイヤモンドの特徴を模倣するのを試みた重要な事案です。

緑色の原石の結晶。
表面の緑色がまだらである、この6.49カラットのダイヤモンド原石は、カラー ダイヤモンド グレーディング レポートのためにGIAカールスバッドのラボラトリーに提出された。写真撮影:Diego Sanchez

6. 輝かしい星形:見事な星状のクラウドのあるダイヤモンド

3.70カラットのファセット カットされたファンシー ブラウニッシュ グリーニッシュ イエロー ダイヤモンドは、それぞれが研磨された八面体の頂点に向かって放射している6条から成る星状のクラウドをはっきりと示していました。この星形を示すダイヤモンドは、非常に明瞭な星形が、長波紫外線の下で強い黄色がかった緑色を示すために印象的でした。ファセット カットされた八面体のカッティング スタイルは伝統的ではないものの、このダイヤモンドに含まれているインクルージョンの様態を示すのに一役買っています。

左右に並べたファンシー ブラウニッシュ グリーニッシュ イエローダイヤモンドの画像。左の画像は通常の光源下、右の画像は長波紫外線の下で撮影された。
この3.70カラットのブラウニッシュ グリーニッシュ イエロー ダイヤモンドのファセット カットされた八面体には、水素による見事な星状のクラウド(左)が含まれており、長波紫外線下で強い黄色がかった緑色の蛍光を示した(右)。写真撮影:Diego Sanchez

7. 巨大なスター:ラボで製造された大きいスター ルビーとスター サファイア

アステリズムを有する珍しく大きい2つの裸石、直径約76.96mmの4,759カラットの赤い球体および約52.04×42.29×20.89mmの467.2カラットのブルーのカボションは、合成ルビーと合成サファイアと鑑別されました。合成スター コランダムは特に希少であるというわけではありませんが、GIAに提出されたラボで製造されたスター ルビーとスター サファイアの中でこれらは最大のものの一つでした。

大きな合成スター ルビー(左)および小さめの合成スター サファイア。
4,759カラットの合成スター ルビーおよび467.2カラットの合成スター サファイアが、GIA Tokyoのラボに提出された。写真撮影:Shunsuke Nagai

Gems & Gemology(宝石と宝石学)では、さらに興味深く、珍しい宝石などに関するラボノートが毎回掲載されていますので、是非ご覧ください。

Stuart Overlinは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集幹事です。Brooke Goedertは、GIAでジェモロジィ コンテンツ戦略のライター兼編集者を務めています。Kellie Giordanoは、GIAのデジタル コミュニケーション マネージャーです。