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貝殻に付着するミドリアオリ(ピピ)有核養殖ブリスター パール。


4つのミドリアオリ有核養殖ブリスター パール
図1: 母貝に付着した4つのミドリアオリ有核養殖ブリスター パール。 写真撮影:Nuttapol Kitdee/GIA

はじめに

ミドリアオリは、最大幅がわずか平均40mmのアコヤガイ属で最小の母貝です。 この母貝は、クック諸島北部のペンリン島沖など、太平洋で発見されます (Strack、2001年)。 ミドリアオリは、「ピピ真珠」とも呼ばれている小さな天然真珠を生成します。この真珠の色は、黄色からオレンジ (ゴールデン)、ピンク、緑、白、黒、および灰色であり、一般的なサイズは直径4~5mmです (Buscher、1999年) 。 天然のブリスターパール*が時折生成されることがありますが、これはよく「Puku(プク)」(Strack、2001年) と呼ばれます。

ペンリン島の地図
図2: オーストラリア、ブリスベンから約3,430マイル(5,520キロメートル) の場所に位置するペンリン島 (拡大図) の場所を示す地図。

このレポートは、クック諸島 (図2) 最北の環礁であるペンリン島で採取された4つのミドリアオリ養殖ブリスター パール(図1)の特性について説明します。 これら養殖ブリスター パールはTaruia Matara氏により生成され、彼はまた1990年代初頭にペンリン島沖でクロチョウガイを使用した真珠の養殖も実験した経験もあります。 彼のミドリアオリの実験は 1990年代後半に行われました。 しかし、彼がミドリアオリを使用した実験は成功せず、わずかな数の真珠が生成されただけでした。そのうちの4つが、アラブ首長国連邦、シャルジャの Australian Pure Pearls(オーストラリアン・ピュア・パールズ)のUmit Koruturk氏よりGIAへ寄贈されました。

寄贈された養殖ブリスター パールは、核として淡水ビーズを包含していました。 養殖ブリスター パールを生成する通常の手順に従い、貝殻の内面とそれを覆っている外套膜の間にビーズが挿入されました (図3) 。 このため外套膜の上皮細胞からビーズの上に真珠層が分泌されます(Strack、2001年; 図4)。

ビーズ核
図3:外套膜の下にある貝殻に貼り付けしたビーズ核 (緑色の球) を示す図。
ビーズ核
図4: ビーズ核 (緑色の球) が、外套膜から分泌され新たに堆積した真珠層とともに成長する。

素材と方法

私たちは、ビーズ養殖ブリスター パールが付着した4つのミドリアオリの貝殻を研究しました。 それぞれの貝殻のサイズは、約49.03mm x 48.94mm、41.51mm x 40.45mm、38.43mm x 38.53mm、39.05mm x 35.50mm、 重量は12.92グラム、7.97グラム、6.74グラム、5.42グラムでした。 これらのサンプルを検査するために、真珠を分析するのに一般的に用いられる方法をいくつか使用しました。 使用した方法は、真珠の鑑別、生成された環境、使用された可能性のある処理および母貝の起源を決定するのに役立ちました。 東芝イメージインテンシファイアを装備したMatrix-FocalSpot XT-3シリーズのリアルタイムX線 (RTX) 機器 (電圧90kVおよび電流0.18mA) が、核の性質を鑑別するために使用されました。 また、海洋および淡水の物体はX線に照射されたときに異なる反応をするため、FocalSpot Verifier PF-100モデルのFSX PF100 蛍光X線分析装置 (電圧100kVおよび電流3.2mA)が、貝殻および核が生成された環境に関する情報を提供するために使用されました(Hänni他, 2005年) 。 最後に、NIS-Elements顕微鏡写真法ソフトウェアとキヤノンG16カメラを搭載した、ニコンSMZ18顕微鏡がサンプルの外観を記録するために使用されました。 さらに、GIAの宝石学用双眼顕微鏡と共に、ニコンSMZ18顕微鏡は、使用された可能性のある処理の証拠を観察し、他の検査の結果から得たいくつかの結論を証明するために使用されました。

結果

他の種と貝殻のサイズを比較し、より明白な外観の特徴を確認するために、アコヤガイ属の他の貝殻とともに貝殻およびブリスター パールの写真が撮影されました(図5)。 理論的には、新たに発見された天然真珠が依然として市場で時折見られますが、養殖真珠の外観は天然真珠よりももっと新しく見えます。 したがって、ほとんどの養殖真珠の表面は、いくつかの天然真珠の表面ほどあまり摩耗されていません。 また、通常、真珠の外観は貝殻の外観にも関連しています(SouthgateおよびLucas、2008年)。 例えば、「ゴールデンパール」は、貝殻がある程度の黄色を示している母貝からほとんど生成されます(Strack、2001年) 。

アコヤガイ種属の貝殻
図5: アコヤガイ種属の貝殻。同属の中でも様々なサイズがある。 左から右:シロチョウガイクロチョウガイパナマチョウガイミドリアオリ。 ミドリアオリは、アコヤガイ属で最小の種である。 写真撮影:Nuttapol Kitdee/GIA

本研究は、母貝にまだ付着している有核養殖ブリスター パールに焦点を当てました。 有核養殖真珠の大半は、ラウンドやほぼラウンドの形をしています(Strack、2001年)。 検査したサンプルは、貝殻に付着している場所で輪郭が不均一になるためバロックやセミバロックの形になっていましたが、本体はほぼラウンドに近い形をしていました(図6)。 

ミドリアオリ有核養殖ブリスター パール
図6: 母貝の貝殻に付着したミドリアオリ有核養殖ブリスター パール。 真珠は、有核養殖真珠で見られるようにほぼラウンドの形をしている。 写真撮影:Promlikit Kessrapong/GIA

細部をより明確に観察するために、顕微鏡写真法を用いてこのサンプルの微細な特徴を撮影しました。 その中でも特に1つのサンプルが興味深い特徴を示しました。成長した真珠層と母貝の貝殻の間に大きな開口部が1つのブリスター パールにあったため、ビーズ核を明確に観察することが可能となりました(図7、図8)。  

顕微鏡写真
図7: 内部にほぼラウンドのビーズ核があり、その核を包み込み貝殻に接する真珠層が核を囲んでいるのがこの顕微鏡写真で明確に観察できる。 写真撮影:Kwanreun Lawanwong/GIA
拡大した表示
図8: 擦過した部分を細部に渡って示しているビーズ核の拡大写真。 核、ビーズと貝殻の間に間隔があるため、真珠層の複数の層が容易に観察できる。 写真撮影:Kwanreun Lawanwong/GIA

真珠uの外観は真珠を検査する際に非常に役に立つものの、結論に達するために宝石鑑別士が最終的に考慮する必要があるのは内部構造です(Sturman、2009年)。 この目的を達成するために様々なRTXやX線断層撮影装置を使用し、ほとんどの有核養殖真珠を鑑別するときに構造を明確に観察することができます。 通常、有核養殖真珠には、ビーズ核とそれを囲む真珠層の間に明確な境界がある一方、ビーズ核と真珠層の成長の放射線不透性が異なります(Wehrmeister他、2008年)。 一部の例では、核が検出器または現在では稀少となったフィルムに対して正しい方向に位置していると、ビーズ核内で明白な縞模様が観察できる可能性があります(図9)。

有核養殖真珠の構造
図9: GIAバンコクのラボで検査したサンプルで観察された有核養殖真珠の構造の特徴。 ドリル穿孔により貫通した穴が開いているこの有核養殖真珠では、ビーズ核で明確な縞模様が観察できる(A)。  1箇所でビーズと真珠層の間に非常に明確な分界および有機物に富んだ部分と有機物が欠けている部分を示す、ドリル穿孔により貫通した穴が開いている有核養殖真珠(B)。 薄い真珠層で包まれており、境界があまり明確でないビーズ核(C)。

本研究で検査した4つのサンプルは明確な分界を示していましたが、ビーズおよび周辺の真珠層の放射線不透性の程度は容易に観察されました。 貝殻へ自然に付着しているという現象は、RTX画像でもはっきりと観察することができました。 側面から撮影したX線画像(図10)では、真珠層がそれぞれのビーズ核を覆い、貝殻に処理が施されたことを示す接合部や境界がなく母貝の表面と調和していることが証明されました。 このため、すべてが自然に付着した養殖ブリスター パールであることが確証されました。

X線顕微鏡画像
図10: 有核養殖ブリスター パールのX線顕微鏡画像。母貝の貝殻に対して配置された比較的大きいビーズとそれ覆う真珠層との間に明確な分界を示す。

図11が示すような方向でX線顕微鏡画像を撮影すると、非常にはっきりとした丸い白い形が観察されました。 これは、貝殻のはるかに薄い部分と比較して、X線が通過しなければならない非常に高い密度(素材の質量)に関連しています。 このためビーズや真珠層の成長は1つの形態を示します。ビーズと真珠層の間の境界を再びはっきりと観察するには、倍率を高くして(ズームの動作)焦点を再び合わせ、コントラストを調整する必要があります。

有核養殖ブリスター パール
図11: 母貝に付着し、真珠層で覆われているこの有核養殖ブリスター パール(左)は、X線顕微鏡画像で白い放射線不透過性(右)を明らかに示している。 写真撮影:Promlikit Kessrapong/GIA

蛍光X線に装備されているカメラで結果を写真撮影し、貝殻とブリスター パールが生成された環境が判定されました。 図12および図13は、研究に用いた2つのサンプルの蛍光X線に対する反応を示しており、異なる部分で明らかな変化が観察されました。 強力な緑がかった黄色の蛍光がビーズ核から発せられるのが観察されました。 養殖真珠産業の大半がX線と反応するのに十分な量のマンガンを含む淡水の貝殻(主にアメリカ合衆国から供給される)を使用するため、最強の蛍光がビーズ核から発生します(Hänni他、2005年)。 マンガンがほとんどまたは全くない海水では、当然反応がありません。これは照射されたビーズが強烈な緑がかった黄色の蛍光と反応し、周囲の真珠層がほとんど不活性である図12で示される3つの画像で特に顕著です。 通常、真珠層の部分で見られる弱めの黄色がかった緑色の蛍光は、覆っている非反応のSW(海水)真珠層によるビーズの蛍光が部分的に遮蔽されることで発生します。

蛍光X線
図12: 母貝に付着した、多様性のある蛍光を示す有核養殖ブリスター パールの蛍光X線の画像。 A: 全体の画像。 B: ビーズ核のX線に対する反応をISO感度6400に設定して撮影した画像。 C: ビーズ核のX線に対する反応をより高いISO感度(12800)に設定して撮影した画像。 写真撮影:Promlikit Kessrapong/GIA 
蛍光X線
図13: 研究に用いた有核養殖ブリスターパールで蛍光X線に対して反応を示したものの蛍光X線の画像。 左の画像では、開いていたり破損している部分がなく成長した真珠層が観察できる。 右の画像では、真珠層の下から発生した淡水ビーズ核が蛍光X線に対して示した反応が確認できる(ISO感度12800に設定)。 写真撮影:Promlikit Kessrapong/GIA

蛍光X線は、宝石学のラボで利用できる技術の中でも非常に役に立つ検査です。 ビーズや真珠の反応は真珠層の厚さによって異なり、これには主に2つの理由があります。 第1の理由は真珠層の成長の厚さ、第2の理由は淡水ビーズ自体が蛍光を発する程度です。これはすべてのビーズが同じ強度で蛍光を発するとは限らないためです。 両方の点を考慮すると、真珠層が薄いビーズは真珠層が厚く成長したものよりも強い反応を示す傾向がありますが、弱い蛍光を示す淡水ビーズは、蛍光を完全に抑制するのに十分厚く成長することができる海水の真珠層に囲まれている場合、蛍光を全く示さない可能性があると解釈できます。

結論

ミドリアオリ(ピピ)有核養殖ブリスター パールの存在により、これらを生成するのがわずかに成功していることが証明されました。 しかしながら、この製品が近いうちに市場に出回ることは当然期待できないでしょう。 有核養殖ブリスター パールは代替製品として市場に出ていますが、市場で販売されるには高品質である必要があります。 残念ながら、ペンリン島で採取されたミドリアオリの貝殻を用いた実験では高品質の製品を生み出す結果には至りませんでした。それゆえ、さまざまな理由で中止されたのでしょう。 このような有核養殖ブリスター パールを生成する作業が行われ、GIAに寄贈された4つのサンプルを科学的に分析して得た結果が、ほぼすべての有核養殖ブリスターパールと同様に、これらは容易に鑑別できると証明したことは非常に興味深いことです。 小さな母貝に対するブリスター パールのサイズはおそらく少し珍しかったため、独特の外観が鑑別する最初の手がかりとなりました。また、ひとつのサンプルで視覚的にはビーズ核のように見えたものは、残りの3つの試料同様、RTXによって後ほど確認されました。 RTXを用いた検査では、養殖工程で使用される貝殻のビーズの特徴的な丸い輪郭がはっきりと確認されました。 最後に、海水養殖真珠の大半と同様に、淡水養殖真珠のビーズ核の起源は、X線に照射した後の発光反応を観察することによって確認されました。 また、ミドリアオリ養殖ブリスター パールは存在しますが、実験的にしか存在しないことがこの研究から得た情報で判明しました。 アコヤガイ種すべての中でこの最小のミドリアオリによって生成された天然真珠の取引に主に関与した数人に尋ねた後でさえも、いかなる種類の有核養殖ミドリアオリ真珠で販売されたものは確認できませんでした。

免責事項

「ブリスター パール」という用語は、本記事では何度も使われています。こういった製品をこのような呼称で言及することは、この業界では一般的に行われています。 ただ、この貝殻の上で形成された物体は、厳密な意味での「真珠」ではないため、正式な名称に「パール」という単語が含まれるべきではありません。 正確にはブリスター パールは、母貝の柔らかい部分の真珠袋の中で形成され、そしてその後貝殻に移動し、更に真珠層で覆われてゆきます。

Kessrapong氏とLawanwong氏は、バンコクのGIAの真珠鑑別部でアナリストを務めています。 Sturman氏はバンコクのGIAでグローバルパールサービスのシニアマネージャーとして活躍しています。

著者は、GIAにサンプル寄贈をしたAustralian Pure Pearls(オーストラリア・ピュア・パールズ)のUmit Koruturk氏、そしてペンリン島周辺の海域でTaruia Matara氏が行った養殖実験に関する情報の提供してくれたCelestine氏らによる、多大なるご支援ご協力を頂き心より感謝致します。

Buscher E.(1999年)Gem News: Natural pearls from the northern Cook Islands(宝石ニュース: クック諸島北部から採集された天然真珠)。 Gems & Gemology(宝石と宝石学)、Vol. 35、No. 2、147-148頁。

Hänni H.A.、Kiefert L.、Giese P.(2005年)。 X-ray luminescence, a valuable test in pearl identification(X線発光、真珠の鑑定における貴重なテスト)。 The Journal of Gemmology(ジャーナル・オブ・ジェモロジィ)、Vol.29、No.5/6、325–329頁。

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Sturman N.(2009年) The microradiographic structures of non-bead cultured pearls(無核養殖真珠のマイクロX線構造)、https://www.gia.edu/gia-news-research-NR112009

Wehrmeister U.、Goetz H.、Jacob D.E.、Soldati A.、Xu W.、Duschner H.、Hofmeister W.(2008年)Visualization of the internal structures of cultured pearls by computerized X-ray microtomography(X線コンピューターマイクロトモグラフィーによる養殖真珠の内部構造の視覚化)。 The Journal of Gemmology(ジャーナル・オブ・ジェモロジィ), Vol.31、No.1/2、15–21頁。