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コランダムにおける合成ルビーのオーバーグロースの分析


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これは、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析のために調製したウエハーの透過光線(左)と暗視野照明(右)の写真。 合成オーバーグロースの厚みと天然の種結晶の内包物を容易に見ることができる。 写真撮影:J. Muyal © GIA
このGIAラボラトリーの研究では、天然の無色サファイアの「種」結晶に成長させた合成ルビーのオーバーグロースの試料10個についての分析を紹介します。試料は筆者の一人がバンコクの宝石ディーラーから入手したもので、ディーラーによるとこれらの試料は、1990年代に有名な合成ルビー製造会社のDouros Company(ドーロス社)によって行われたクロム(Cr)拡散処理の試みから生じたものだそうです。 その実験では、天然のピンクサファイアにクロムの拡散処理を施して外観をルビーの色にしようとしました。

試料の色は帯紫赤色から赤色で、重量は1.40から2.17ctまでの範囲でした。

GIAのジェモロジストは、従来の顕微鏡法とフーリエ変換赤外分光法(FTIR)、そしてレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)で分析を行いました。

拡大すると、三角の成長模様やほぼ平行な条線、および「熱波」状の層がオーバーグロースと種結晶の間の接触面で見られました。 オーバーグロース部には、多数のフラックスインクルージョンも含有されていました。 天然の種結晶の特徴として、修復したフラクチャー、熱変性した結晶、そして交差する針状結晶などが見られました。

3つのサンプルをウェハーに加工し、微量元素の化学組成を調べるためLA-ICP-MS分析をしました。 比較のため、代表的な合成ルビー結晶の化学データを収集しました。Dourosのフラックス成長のものをひとつと、熱水成長のものをひとつです。

顕微鏡観察に基づき、および利便性のため、筆者らは、「タイプI」と「タイプII」という2つのグループにサンプルを分けました。タイプIでは、天然の種結晶とテーブルファセットにのみ見受けられた合成のオーバーグロースの間には、特に目立つ境界はありませんでした。 タイプIIのサンプルでは、かなり厚い合成のオーバーグロースがあり、天然結晶との間にはハッキリとした「埃っぽい」界面がみられました。

LA-ICP-MSで分析したタイプIのサンプルでは、種結晶には天然のコランダム特有の微量元素の化学組成が見られた反面、合成のオーバーグロース部ではバナジウムや鉄、ガリウムなどの元素を欠いていながら、Crのレベルが高く(最大6784 ppma)、またモリブデン、ロジウムや重金属の白金など、天然のコランダムには通常見られない重元素が見られました。

タイプIIのサンプル分析では、合成オーバーグロース部はさらに高いレベルのCr(最大10,353 ppma)を含んでいましたが、タイプIとは異なりマグネシウムやチタン、バナジウム、鉄、ガリウムなど、天然のコランダムに見られる元素も同時に含んでいました。 しかしマンガン、ニッケル、亜鉛、プラチナも存在しました。 これは、上記のタイプIの例とは異なる成長条件を示唆しています。 天然の種結晶は、タイプIのサンプルと非常によく似た微量元素の化学組成を有していました。

どちらのサンプルでも、​​合成のオーバーグロースは、比較として含めた熱水法(ロシア)およびフラックス法(Douros)の成長後そのままの状態の合成ルビーとの関連性は見出せませんでした。

筆者らは結論として、天然種結晶のコランダムの内包物には惑わされないよう、石全体を慎重に観察して合成オーバーグロース内にある特徴的なフラックスインクルージョンを見逃さないように注意すべきであると考えます。