2015年BaselWorld(バーゼルワールド)で、さらに上を行く


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春のBaselWorld(バーゼルワールド)フェアは、毎年12万5千人の訪問者を虜にするきらびやかな魅力に満ちた、最新の時計デザイン、高級宝飾品、最高級の宝石が見れる祭典です。 写真:Russell Shor / GIA
スイスのBaselWorld Fair(バーゼルワールドフェア)は、他に類を見ない展示会です。5番街のような大きさの建造物が通路に沿って並び、2階ほどの高さのLEDスクリーンには、世界的に有名な高級ブランドの宣伝が映し出され、毎晩の閉場時にはシャンパンとオードブルがふるまわれ、会社と顧客が商談を成立させるお手伝いをします。

バーゼルワールドは、もともと一流のスイスの時計ブランドが毎年作品を発表するパーティーとして行っていたものが、彼らに商品を供給する世界の高級宝石ブランドやダイヤモンドと宝石のディーラーのための展示会となったものです。 こうした演出がなされているのは、一般の人も一日パスを60スイスフラン(62米ドル)で購入でき、4つの全てのイベントホールを訪れて最高級の雰囲気を楽しむことができるという点で、バーゼルワールドが他の業界展示会とは異なっていることが一因としてあります。

どのような参加者がいるのでしょうか。12万5,000人以上の訪問者には、新作の時計を見るために出かけてきた家族から、買い物を楽しみにくる億万長者まで様々な客層が見られます。

ツアーは、夢のホールという名にふさわしいメイン会場の3階から始まります。

このホールには、Graff(グラフ)、Garrard(ガラード)、Bulgari(ブルガリ)、Harry Winston(ハリー・ウィンストン)、ミキモト、Faberge(ファベルジェ)、Damiani(ダミアーニ)、Chopard(ショパール)の宝石が展示されており、競ってバイヤーと見物客を魅了します。 Jacob & Co.(ジェイコブ)、De Grisogono(ドゥ・グリソゴノ)、Bayco、Aaron Shumのようなあまり知られていないブランドも、彼らの華やかさに合わせるために出費を惜しみません。

Mikimoto Pearls and Gibson Guitar
Extraordinary designs are on display in the Hall of Dreams. Mikimoto, which originated the cultured pearl market more than 100 years ago, offers a pearl-encrusted bodice, left, that is in striking contrast to the kaleidoscopic atmosphere of its surroundings. This $2 million diamond-studded Gibson guitar from Aaron Shum Jewellery, right, won’t make you a rock star, but it will certainly sparkle under stage lights. Photos by Russell Shor/GIA
ジュネーブが本拠地のJacob & Coは、白い人造大理石で作られたフォロ・ロマーノスタイルの「建物」でコーナーを作っています。 吹き抜けのロビーでは、イブニングドレス姿のモデルたちがポーズをとり、同社の作品を披露します。レースのような造りの、ダイヤモンドが強調されたネックレスとブレスレットに加え、より伝統的な大粒のダイヤモンドやサファイアの作品もあります。 隣接するミキモトでは、養殖真珠があしらわれた「ボディス」をモデルが美しく着こなし、特別な照明を当てると黒い背景にその宝石が虹色に輝き、まるでウィンドウの内側で浮かんでいるように見えます。

角を曲がると、Aaron Shumが200万ドル(約2億4千万円)のダイヤモンドと、米国の楽器メーカーのギブソンのギターで人々を魅了しています。 Coronet(コロネット)と呼ばれるギターには400カラット以上の小さなカラーレスダイヤモンドがあしらわれており、咲き誇る花の形の18Kのホワイトゴールドが、ギターを弾くときに袖がひっかからないようにちりばめられています。

Graff Interior
Golden lights lead buyers past the watches in Graff’s space to the jewel room, which is illuminated by a “diamond bracelet.” Photo by Russell Shor/GIA
200万ドルのギターにも驚かないという人は、 ぜひアトリウムのはす向かい角にあるGraff(グラフ)に行ってみましょう。 2階建ての構造は、金のアールデコ調の鱗に覆われており、窓と同じサイズのLEDパネルには同社の時計作品が映し出されています。 内部には金色の天井照明が長く連なっており、クリスタルの塊が紐にぶら下がっているように見え、見物客を時計のショーケースを通って奥の聖所に導きます。 渦を巻いたような照明はダイヤモンドのブレスレットを模していて、ダイヤモンドの宝飾品が置かれている場所を示してくれます。 今年の注目作品は「The Fascination(魅惑)」という名の、152.96カラットのDカラーダイヤモンドを取り入れた時計で、 リングとして別途使用したり時計の文字盤を覆うために取りつけることもできる38.13カラットのペアシェイプダイヤモンドがついています。 4千万ドル(約48億円)で、時間があなたをお待ちしています。

エスカレーターの方に向かって行くとメインの時計会場に到達し、Baycoの「建物」から放たれる強烈な赤い光が観客を魅了しています。 この輝きは後ろから照らされているリングから放たれ、リングにはダイヤモンドに囲まれた16カラットのモザンビークのルビーが施されています。

1階は時計ホールとは名ばかりで、1500軒ほどの時計のブランドが、フェアの5つのセクションにくまなく散在しています。 それでもRolex(ロレックス)、Swatch(スウォッチ)、Omega(オメガ)、Breitling(ブライトリング)、Corum(コルム)、Hublot(ウブロ)、Tissot(ティソ)やその他数十ブランドなど、最も有名なブランドがここに集まっています。 展示は、宝飾品のフロアにあるものより遥かに贅沢で規模も大きく、これらの時計を間近で見るのはルーブル美術館でモナリザを見るようなものです。

Watch Hall
The watch hall attracts the majority of the 125,000 visitors to the fair, so it’s often difficult to catch a glimpse of the new styles they roll out each year. Photo by Russell Shor/GIA
The Swiss Watch Federation(スイス時計協会)は、高騰するスイスフランの影響を受けて時計のコストが20%も上昇し、中国経済が弱くなり中東のバイヤーも手を引いたことなどから停滞気味であった輸出をさらに脅かしていると報告しています。

混雑のため、時計パビリオンの裏の鉱物会場へはゆっくりとしか進めませんが、ここでは従来の展示会のようにダイヤモンドや宝石が展示されています。 展示品は、比較的飾り気のないもので、 煌びやかな展示や20フィートの高さがあるLEDスクリーンなどはなく、豪華絢爛の世界の首都のようなメインストリートとは対照的です。 しかし、商品は確かなもので、100万ドル(あるいはフラン)でも入手できるものは限られています。

入り口近くにあるBijan & Co.は、 200.36カラットのクッションカットサファイアを提供しており、35カラットのD、E、Fカラーのダイヤモンドのネックレスに施されています。 「我々は数ヶ月前にこれをカットしました。 このショーが初のお披露目なのです」」と社長のEliot Elihuは言います。

質問:「100万?」
回答:「それよりやや上です。」

Sri Lankan Sapphire
This 200.36 carat Sri Lankan sapphire by Bijan & Co., greeted visitors near the entrance to the gemstone hall. Photo by Russell Shor/GIA
会場を進み、200カラットのスリランカのサファイアを展示しているベンダーを通り越すと、由緒あるアントワープのダイヤモンド会社、Taché(タシェ)があります。 展示では、簡素な黒い展示箱の中に9石のタイプIIa(非常に透明度が高い)ダイヤモンドがあり、形も異なり、重さも16カラットから41カラットのものまであります。 D-Eカラーでベリー・ベリー・スライトリーインクルーデッドのクッションブリリアントカットダイヤモンド1対を除き、これらのダイヤモンドはすべてDカラー・フローレスです。

提示価格は、おそらく Graff(グラフ)の「“Fascination(魅惑)」の時計と同じかそれを上回るものであり、エグゼクティブ・ディレクターのIsaac Tachéが言うには「真剣なバイヤー以外は」値段を提示することはないそうで、このコレクションを揃えるのに何年も歳月がかかったと述べました。

「これほど調和した対のダイヤモンドは滅多に見つかりません」と彼は言います。

Tache Diamonds
Taché collected a crowd at its display with this collection of 9 Type IIa (extraordinarily transparent) diamonds of various shapes, ranging in weight from 16 to 41 carats. All of the diamonds are D Flawless., except a pair of matched D-E color, Very Very Slightly Included cushion cuts. Photo by Russell Shor/GIA
Cody Opal(コディ・オパール)にある宝石の数々には7桁ドル(円では億越え)の値段がついているものはありませんが、展示ケースの前列に展示されているいくつかのオパールを見ると、その大きな鮮やかな青緑の中に入り込んで、色彩と戯れたくなります。

「この展示会ではいつも好調です」とAndrew Codyは、色が凝縮されて、赤の斑点が入ったブラックオパールを手にしながら答えました。 「みな赤の斑が入った石を求めるので、プレミアム価値がつくのは赤です。」

10カラット以上のファンシー・イエロー・ダイヤモンドや大きな無色のダイヤモンドの数々を展示している出展者を通り越すと、30個のファンシー・ビビッド・ピンクダイヤモンドと 0.75カラットから0.90カラットの23個のファンシー・ビビッド・ブルーダイヤモンドで作られたネックレスに到達します。 思わず立ち止まって質問をしたい衝動にかられますが、メイン通路の裏にあり、比較的小さな一画に構えるこのベンダーは、写真撮影を禁じて、公に彼の名前を名乗ることもしません。

「我々の顧客は、この作品がここにあることを知っていますから」と彼は言います。
価格については「これらの石を集めるのに何年もかかったので、価格もそれに見合うものでなければなりません」と彼は説明します。

こうした主要なダイヤモンドや宝石の交渉をしていると、喉が渇きます。 会場の中央にあるスナックバーでは、各6スイスフランで、魅力的ですが小さな水のボトルを並べています。 サンドイッチが欲しいですか? トルマリンの価格を考えてください。

結局のところ、今年のバーゼルでは最高級の宝飾品には大きな需要がありませんでした。 しかしショーの終わりに見て回ったところ、展示作品にはいくつか空の隙間ができていたことから、一品ものの多くは買い手があったと分かりました。

美しさには値段があり、喜んでその値を払う人はどの時代にもいるものです。

Russell ShorはカールスバッドのGIAのシニア業界アナリストです。