Gemfields(ジェムフィールズ)は宝石市場の成長を確信


カゲム鉱山のザンビア産エメラルド
Gemfields(ジェムフィールズ)が販売するエメラルドやルビーその他の宝石の中に、ザンビアのカゲム鉱山から産出したエメラルドがある。 これらのエメラルドは、ルサカのオークションで販売するため洗浄および選別を行い準備されたもの。 写真:Robert Weldon/GIA、提供:Gemfields(ジェムフィールズ)。
2014年11月後半に、ジェムフィールズはモザンビークのMontepuez(モンテプエス)ルビー鉱床から出土した40.23ctのルビーを発表しました。 この発見は、通常は大粒のダイヤモンドに向けられるような注目度で報道で大きく取り上げられました。

ジェムフィールズのCEOであるIan Harebottleが色石宝石業界について話すたびに、「可能性」という単語が登場します。 ジュエリーメーカーや小売業者が、定期的な供給、安定した価格設定、一貫性のあるグレーディング、マーケティング支援の強化などの条件が見込めると感じることができれば、高級品の売上高における色石のシェ​​アは世界中で大幅に増加する可能性がありダイヤモンドに匹敵することもあり得ると、彼は考えています。 彼はまさにそうなるように、会社の目標を定めました。

40.23カラットルビー
この大きな40.23カラットのルビーは、2014年後半に発見されました。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)
ジェムフィールズは、色石宝石の売り上げがダイヤモンドに追い付くにあたり、難解な問題に直面しています。 宝石の売上高は、世界的なダイヤモンドの販売のごく一部に留まっています。 米国では2014年度のJewelers of America’s Cost of Doing Business Survey(Jewelers of Americaが行った、ビジネスを行うための費用の調査)によると、対価値換算で色石宝石は宝石店売上高の約8%を占めるにすぎません。 中国ではその割合はもっと高いと考えられますが、国内でのジェード人気が非常に高く、消費の大半となっています。

ジェムフィールズは、色石宝石を市場において然るべき地位に引き上げるための変革推進者になれると彼は信じています。

同社はザンビアでのKagem(カゲム)鉱山での生産によって、これまでで世界最大のエメラルドの単一の採掘源であると主張し、モザンビークのモンテプエス鉱山での生産によってルビーについても同様になることを目指しています。 同社はまた、ザンビア南部のKariba (カリバ)アメシスト鉱山も運営しています。

エメラルドクリスタル
ザンビアのカゲム鉱山から出た巨大なエメラルド結晶は Nsofuという名前で、6100ctの重さがある。
小さいほうのエメラルドは、合計で125ctの重量がある。 写真:Robert Weldon/ GIA
提供:Gemfields(ジェムフィールズ)
色石業界は、資本のほとんどない小規模な企業や、あったとしても世界の一部の地域のみに見られる僅かばかりのそれよりは大きな企業がいまだに多数を占めていて、開示や透明性が限定されています。同社はこうした業界においては異例の、世界で三つしかない上場宝石採掘事業者のうちの最大企業であり、それゆえ影響力を持っています。 また、同社はマーケティングや広告にその収入の大部分を当てるためのリソースと意欲の両方を備えた唯一の宝石採掘事業者です。

ルビーの結晶
GIAが訪れた際に、約9.00カラットもの並はずれた大きさのルビーの結晶が発見された。 しかし、はるかに大きい40カラット以上のルビーが、報告されている。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
昨年同社はその総広告支出の約3分の1 に相当するおよそ5百万ドル(約5.3億円)をマーケティングキャンペーンに費やし、そのエメラルドのブランドアンバサダーとして女優Mila Kunis(ミラ クニス)を採用しました。 今年もミラ クニスはアンバサダーを務め、さらなる5百万ドルをつぎ込んだ同社のルビー製品も含めた「ナチュラル イメージ」キャンペーンを、ノーメイク風の装いで強調しました。 

多くのエメラルドやルビーの生産者とは異なり、ジェムフィールズはプライベートディーラーのネットワークの代わりにオークションを通じてオープンに製品を販売しています。 Harebottleによるとこれにより、同社は原石に対して市場ベースで競争力のある価格を得ることができ、更には、はるかに広い範囲の世界的主要ディーラーが供給を受けられるようになるということです。  

製品ライン、価格設定、およびグレーディングの一貫性というのが、同社の野心的な戦略であると同時に、取り組むべき課題でもあります。 そして、これは彼らが宝石を採掘する瞬間から始まります。 Harebottleは言います。「一貫した供給から、すべてが始まらなければならないのです。 」

一貫性は、常に業界において最も難しい課題の一つとなっています。 通常は鉱床が発見されると、初めのうちは比較的簡単に宝石が拾えるので小規模鉱山労働者が押し寄せて来ますが、やがて宝石の質が落ちたり、特に新しくてもっと収益性の高い他の場所が発見されたことによりそこが非効率的な採鉱となって見返りよりもコストが高くついてしまうなどして、鉱床が衰退した後は、皆そこを立ち去ります。 2007年に発見されたタンザニアのWinza(ウィンザ)にあるルビーとサファイア鉱床は、その良い例を示しています。 2年間は鉱山から宝石が多く産出しましたが、6年も経たないうちこの初生鉱床はかなり掘り尽くされてしまい、今となっては、容易に採掘できて市場に到達できる上質の素材はわずかな量しかありません。  

さらに、多くの小規模な採掘業者は税金や関税の支払を回避するために、容易に拾い出せる浅い部分を浚った後、地下深くに横たわる宝石を残してその場所を放棄していきます。 

ジェムフィールズは、3カ国1100名以上の従業員を支えるその高コスト構造および鉱山の確保と運用のための資本コストから、多くの主要宝石のディーラー同様に、市場が上昇しているときに商品を控えることができにくくなっています。それでも彼らはいつでも、エメラルドとルビーの少なくとも1年分に相当する量を留保することが可能です。 ジェムフィールズは、供給を控えることによるよりは需要を操作することによって、成り行き値段に対応していくことを望んでいます。  この古くからの投機的な方法は決まって品不足状態を作り出し、価格を更に吊り上げることとなりますが、バリューチェーン下流にある小売業者やディーラーが一貫性のある宝飾品ラインを作製しようと行っている努力を妨げるものとなってしまいます。  

カゲム鉱山
2008年にGemfields(ジェムフィールズ)が採掘をはじめる前のカゲム鉱山の様子。 提供:Gemfields(ジェムフィールズ)
しかし、すべては、地面から始まります。 ジェムフィールズが2008年にザンビアのNdola(ンドラ)近くにあるカゲムの操業を引き継いだ際、事業の最優先事項は、素材の一貫した流れを実現させるための体系的かつ効率的な採掘作業を開発することだったと、その鉱山のシニア地質学者であるRobert Gessnerは語ります。 「初期の採掘法は場当たり的で、無数の小さなピットがあちこちに散らばっていました。」

カゲム鉱山
カゲム鉱山2014年後半。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
Kafubu (カフブ)の位置
カフブ位置
カゲムのエメラルド鉱山は中央アフリカに位置するカフブ地区にあり、
大陸のパンアフリカン造山帯の重要な交差点となっている。 地図:John et al., 2004.からの複写。
カゲム地域
カゲム地域
カゲムのエメラルド鉱山(緑色の部分)は、カフブのエメラルド鉱区に位置している。
Gemfields(ジェムフィールズ)からの複写。
カゲム鉱山は、Kitwe(キトウェ)の銅鉱山の町から小さな村やアカシアの木々の間をコンゴ民主共和国とのほぼ国境にまで続く道を通って、約2時間ほどの所にあります。 同社は1.8億ドルを投資して、その鉱床をちょうど1キロメートル超の長さの単一ピットへと発展させ、これにより当時存在の分かっていた全てのエメラルドの産状が明らかになりました。 このピットから回収した岩塊や砂礫のほんの一部(毎月百万トンのうち6000トン)だけがエメラルドを含んだ鉱石ですが、この有望な鉱脈は豊かで、トン当たり250〜300カラットのベリルとエメラルドが収穫できます。 この生産量の約8%が宝石品質で、この数値は大多数の宝石採掘基準においてかなり高いもので、更に25%がビーズとして使用出来る「エメラルド」として分類されます。 残りは、産業用および装飾用途の「ベリル」と呼ばれるものです。

この原石からジェムフィールズは、市場に対し商品の魅力をアピールして理解を得られやすいように、詳細なグレーディングシステムを確立しました。 「これは、一貫性のある供給を行うための要です。 これにより顧客は商品を理解したうえで購入することができ、販売の都度商品に一貫性があることに信頼を持つことができます。 信頼を持つことができれば顧客は必要なものだけを買うことができ、比較的大量な購入も可能となり、そのためコレクションを構築したり経済の規模を向上させたり(多くのダイヤモンドサイトホルダーができるようなやり方とほとんど同様に)することができ、更には、関連するマーケティングキャンペーンを使ってそうした生産運営をサポートすることで顧客を支援することができます」とHarebottle氏は述べています。

この1キロメートルほどの鉱山ピットでは、労働者が「クイックソート」というのを行っていて、鉱石を洗浄し、その鉱石を洗浄工場に送る前に、爆破によって出てきたエメラルドの結晶をまず集めます。 次に、これらを近くにある南京錠をかけた番号付きの箱に入れます。 残りの鉱石はトラックで搬出され、更なる回収のために破砕機へと運ばれていきます。

Kagem(カゲム)鉱山
エメラルド(左)は、Kagem(カゲム)が初めての採掘された場所であることから、エメラルドの初期調査が続けられている。 警備員が遠くから見守る中、作業員は表土を濡らして、現れる緑色の兆候をヒントにエメラルドを探す。 大きさや品質に関係なく(右)エメラルドが発見されると、選別工場に定期的に運ばれる箱に入れられる。 写真:Robert Weldon/GIA、提供:Gemfields(ジェムフィールド)
価値でいうと50%から60%といった高い割合の鉱石がピット現地で回収され、残りは後の破砕、洗浄、回収作業により回収されると、Gessneは説明してくれました。

シニア地質学者Robert Gessner
カゲムのシニア地質学者のRobert Gessnerは、洗鉱工場で、様々な採掘抗から産出した鉱石を事前スクリーニング、洗浄、サイズ選別を行った後行程の、「ピッキングベルト」の前で暫く時間を過ごす。 施設全体にピッカーが配置されている。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
正確にグレーディングするための鍵は、粗選鉱(およびソーティング)から始まる、とソーティングマネジャーのVijay Ameriyaは説明しました。 選別場は、二重有刺鉄線フェンスに囲まれた、鉱山本部構内の中央に建っている白いレンガ造りの建物です。 選別場の内部では、労働者は徹底的に原石をきれいに洗浄します。 彼は説明を続けます。「回転ドラムでゆっくりと回し、母岩のほとんどを取り除きます。」それから必要に応じて、結晶から母岩をこすったり切り出したりして取り除いていきます。 カゲムの選別室では、労働者は外科手術のような注意を払い、小型のハロゲンライトで照らしながら素材の価値にならない部分を除去します。 「こうすることで、正確なグレーディング、ソーティング、重量測定、パーセル作成を通して高いレベルの価値付加が可能になります」と彼は言います。 

エメラルド結晶のクリッピング
不要な母石鉱物またはマトリックスを結晶から落とし「解放する」する作業は時間がかかりますが、エキスパートはエメラルド結晶を割れないために細心の注意を払って行います。 光ファイバーライトでマトリックス下の大切なエメラルドを取り出すために使用されます。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
「顧客は色を確認することができますし、オークションにかける際の重量に母岩が入ってしまうことはないと信頼できるため、この手順は重要です。」

しかし、Ameriyaの説明によると、セキュリティの観点からはそうした母岩も把握対象で、洗浄された結晶は除去した母岩と一緒に重量測定を行って洗浄前の重量と数値が一致するかを判定するのだといいます。 

生産物は、四つの基本的な等級に分類されます:「プレミアムエメラルド」「エメラルド」「ベリル1」「ベリル2」です。その後プレミアムエメラルドとエメラルドは、サイズ分けのふるいで重量を基に分別します。 次に、色による分別が行われます。黄色の二次色を有する緑色と、青色の二次色を有する緑色です。

エメラルドの選別
選別場では、ソーター(選別者)がエメラルド結晶の半透明度、サイズ、色を
検査して分別していく。 写真:Robert Weldon/GIA、提供:Gemfields(ジェムフィールズ)。
これらは、色の質、色調、彩度、クラリティ、形状によってさらに分けられていきます。 グレーダーはほとんどが地元労働者で、工場のメインルームでソーティングを行います。部屋の後部には50に分けられた小石の山が置かれた長いテーブルがあります。それぞれの山はエメラルドの特定のグレードごとの集まりとなっていて、同社が産出する原石を分類する際の基準石として用いられます。

マスターサンプル表
エメラルドの分類
カゲムの生産量は、過去8年間で大きく変動していても、一般的には増加傾向です。

カゲムの操業初年度(2007年度)でジェムフィールズは、940万カラットのエメラルドとベリルを採掘したと報告しました。  生産は翌年やや増加しましたが、カゲム鉱山がその処理能力をアップグレードした後の2009年会計年度には、2800万カラットに跳躍しました。 2010年には生産量は落ちて1740万カラットに戻り、その後は大きく変動し、2011年3500万カラット、2012年2100万カラット、2013年3000万カラットとなりました。  同社は2014年会計年度には、2020万カラットのエメラルドならびにベリルを採掘したと報告しましたが、これは前年からほぼ1000万カラットのダウンでした。  8%は良質な素材であることを示しており、つまり生産は2014年会計年度で約160万カラットに相当することになります。 
 
収益もまた、不安定でした。 2011年、同社は4090万ドルの売上高を報告し、翌年は8370万ドルに跳ね上がりました。 しかし2013年には、ジェムフィールズはちょうど4840万ドルの売上高、および2280万ドルの損失を報告しました。 ただし、借方に含まれていたものは Fabergé (ファベルジェ)ブランド買収に関連する費用(株式移転における9000万ドル)でした。 また、シンガポールからルサカに主力のエメラルドオークションが移転したことにより、少なくとも1件の販売が当会計年度後まで延期となりました。 2014年には売上高は、モンテプエスのルビー生産が操業を開始すると230.8%急増して1.6億ドル(約168億円)になり、2013年会計年度から繰り延べになっていたエメラルドのオークションが全体を押し上げました。 同社は再び、800万ドルを超える利益を出すようになりました。

モンテプエス

モザンビークのルビーは今日での宝石学の話題の中心となっていますが、発見されたのは比較的最近のことです。 実際に、20世紀における宝石学的文献や、この東アフリカの国に宝石の可能性を精査した1990以前の地質学研究には、記載がないのです。 

高品質ルビーが豊富にあるような場所はほとんどありませんが、モザンビークから北にタンザニア、ケニア、エチオピアを通って伸びる造山運動であるモザンビーク造山帯には豊富にあることが分かっています。 このモザンビーク帯は、タンザナイト、ツァボライト、黄色や赤色や変色性のガーネット、クリソベリル、更には1900年代半ばにケニアとタンザニアで発見されたルビーやサファイアなど、東アフリカの宝石素材の多くを産出します。 

おそらく最大の皮肉は、かつてのポルトガル植民地であったモザンビークが、独立後の今や共産主義と内戦の数十年間のほこりを払いつつあり、今世紀で最も採算性の高いと思われるルビーの産出地の一つとして浮上していることです。

ルビー鉱床
モザンビークのマニング・ニースの主要なルビー鉱床の眺めには、前景にGemfields(ジェムフィールズ)の作業場だけでなく、周囲の地形や森林地帯が見えます。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
英国を拠点とするジェムフィールズ社はモンテプエス鉱山から産出されるルビーに関してモザンビーク政府と契約を締結しており、ルビーの採掘が大規模ベースで行われ、定義可能で再現性ある品質の品揃えに分類され、整然と体系的なオークションモデルを通じて販売されることを証明するため、尽力しています。 その目的は、彼らがザンビア産のエメラルドで達成できたのと同様の方法で、一貫性と再現性のモデルをバリューチェーンの下流にあるバイヤーに提供することです。

ルビーの選別
モザンビークのルビー探査
モザンビークの地図
モザンビーク、南東アフリカ、地図
モザンビークは、世界で最も息をのむようなビーチのいくつかを提供しています長い海岸線と、南東部アフリカに位置しています。 そのルビー鉱山は同国北東部の隅に集中している。 - リチャード·W·ヒューズ、2009年から適応地図。
モンテプエスのルビー採掘操業は、Pemba(ペンバ)の港湾都市西側から約2時間の、大部分が平原のMiombo林に時折バオバブの木が見えるような場所の中にあり、運営されてわずか二年です。 主要鉱区を含めた多くの地域がまだ保安がなされていないため、採掘現場近くの道路では間に合わせのガリンペイロ(個人採掘職人)の村が出現しました。  

警備
Gemfields(ジェムフィールズ)のすべての施設では、観光客や従業員がここを出る際に警備員がボディチェックを行っています。 この警備員はManinge Niceのルビー採掘事業の鳥瞰図を持っています。 それにもかかわらず、周辺地域からの違法鉱山労働者が依然として Gemfields(ジェムフィールズ)の所有地に不法侵入し、奥深くに隠れています。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
モンテプエスは、一次鉱床であるManinge Niceと、Muglotoと呼ばれる二次鉱床から構成されていて、共に同じ地域に位置しています。  鉱石は非常に豊かであり、一度露出した地表に沿って歩いていけば簡単にルビーやピンクコランダムを拾うことができるほどです。 鉱石洗浄と選鉱は採掘現場で行われ、それからトラックで運搬されて、採掘場から約10キロ(6マイル)に位置する鉱夫居留構内の選別場で選別されます。 カゲム鉱山と同様に、選別前にすべての素材から徹底的に不要箇所を削り除去します。 

洗鉱工場
マニングニース、モンテプエス、モザンビークでの洗鉱工場。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA

ルビー
ルビーの分類
ルビー原石サンプル
モザンビーク産のルビー原石サンプル2つをカットして、上質のルビーに仕上げます。 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)、Robert Weldon/GIA
選別場は鉱山本部構内の中央にあり、二重有刺鉄線フェンスになっています。 グレーディングの手順はカゲム鉱山のものと類似していますが、グレーディングの内容自体は、カゲムでの宝石とは性質の異なるコランダム生産専用に調整されています。 基本的な等級は以下のとおりです。

  • プレミアムルビー:5グラム以上の最高品質
  • ルビー:5グラム未満の最高品質のもの、もしくは同じ重量で色が劣るもの
  • 低(品質)ルビー:これらは、色、大きさ、クラリティで3つの等級に分けられる。 このグレードのルビーの多くは小さな亀裂があり、採掘現場でホウ砂で処理される。
  • コランダム
  • サファイア
  • 小型のもの:~4.6mm
生産量の約60%がコランダムでピンクがかったものから無色のサファイアで、そのうち一部のものは処理により適度なピンク色にすることができるものです。 低(品質)ルビーは産出量の約20%から25%を占めます。 ルビーは約10%から12%、プレミアムグレードは約8%を占めると、 モンテプエス選別場のアシスタントプロダクトマネージャーPhillippe Ressigeacは述べています。

モンテプエスにおけるグレーダーにとって、ルビーおよびプレミアムルビーに分類される石のほとんどの産出源がMuglotoであるという事実が役に立っています。Gemfieldsによると、Muglotoでは、サイズやカラーが驚くほど均質である素材が産出されるからです。  カゲム鉱山でエメラルドの等級が多数あるのとは異なり、Muglotoから産出する最高品質のルビーは、色相と彩度によって、A~Dの基本的な4つに分類されるだけです。 AおよびBグレードはビルマのモゴック産の素材に似た色のもの、CとDの色はそれよりはやや暗いタイの素材に似ています。

4.04カラットと3.00カラットのルビー
左のサンプルよりも大きい原石からカットされたモザンビーク産出の4.04カラットおよび3.00カラットのルビーは、同じような原石からカットされ、優れた色が出る場合の代表である。 写真撮影:Robert Weldon/GIA、提供: Evan Caplan、ロサンゼルス、
素材はさらに、サイズ、形状、クラリティで分けられます。 プレミアムルビーは、最大の22ミリメートル以上から、下は2ミリメートルまでの7種類のサイズ分類に細分されます。

Muglotoは、鉱石1トン当たり2~3カラットを産出します。 一次鉱床のManinge Niceの素材は、「サファイア」(インクルージョンが多く板状で亀裂の入ったピンク系の素材)から、良質でファセット向けの品質のものまで変化に富みます。 こうした石がトン当たり162カラットほどと沢山あり​​ます。 事実この鉱床は、この場所に訪問した人が文字通り、あらゆる品質のコランダムがあちこちに散らばる地面の上を歩けるほどに豊かです。 

Maninge Niceルビー鉱床
モザンビーク、Montepyez(モンテプエス)のManinge Nice のルビー鉱床を歩くと、表層に(ルビーを含む)コランダムを見ることができる。 写真撮影:Robert Weldon/GIA、提供:Gemfields(ジェムフィールズ)
この低品質素材の中には、モンテプエス近辺の別の場所で見つかる淡色で亀裂の多く入った石に似たものもあり、一部のディーラーはこうした素材に高鉛ガラスを注入して「製造された(manufactured)コランダム製品」にします。

このような「ガラス充填ルビー」がその処理の事実を開示されずに天然石として販売されているという好ましくない事態についての報道がここ数年米国および他の国々で持ち上がり、多くの宝石ディーラーは、このような商品がすべてルビーの信頼を損なうことになると言及するに至っています。 しかしHarebottleは、不都合な報道による脅威は、ジェムフィールズのより上質な製品に波及しないと考えています。

「第一に、明確に開示される限り、処理石については問題視していません!次に、広く認められ高く評価されているラボラトリーの発行するグレーディングレポートによって品質が裏付けされている場合は特に、消費者は自分にとってどの商品がベストであるかを見つけ出すことができるものだと私は考えています。」

ですから、彼にとってそれは「情報を得た消費者」の選択に関することなのです。 最高品質のルビーは高価な石であるのに対し、処理された商品はずっと手頃な価格で至る所に見られます。 「ルビーにはあらゆる品質や処理があるのですから、一方が他方に悪影響を与えることなくそれぞれが個々の消費者の経済や購買ニーズに完全に合うように、対応する十分な余裕が市場にないものでしょうか?」Harebottleは、尋ねます。

品質比較
プロから消費者までを含み、レベルに関係なく情報開示をしない売買にまつわる課題は、モザンビーク産(左)の高品質の素材が、ガラス充填された低品質のコランダムと混同される可能性があるということです。 (右) 左写真:Robert Weldon/GIA、提供:Evan Caplan;右写真:Robert Weldon/GIA。
Harebottleは、モンテプエスは未だ探査と拡張の段階にあり、よって、グレードや品質はまだ今後数年間でかなり変動する可能性があると強調します。 例えば2013年6月会計年度四半期には、同社はすべての品質を含む110万カラットを採掘しました。 2014年の6月会計年度の同期については採掘の合計は20万カラットのみでしたが、価値ははるかに高かったと彼は言います。

実際、鉱石選鉱や洗浄機器は基本的なタイプで比較的小規模のままでありながら、鉱山労働者はこれらの装置が作業するよりもはるかに多くを採掘しました。 同社は、2015年の春までに洗浄処理能力を少なくとも2倍にする計画を立てています。

販売

ジェムフィールズのオープンオークションは、従来のカラーストーン業界の慣習からの飛躍的な脱却であり、これまで長年にわたりダイヤモンド業界内で行われてきたものに非常に近いものとなっています。

宝石業界のこれまでの歴史を通して、ほとんどのカラーストーン生産者はディーラーの既存ネットワークを介して個人的に販売を行ってきており、現在エメラルドやその他の宝石素材は主に南米やインド、コランダムはタイが、主要な取引地となっています。 その結果、同類の素材について大きな価格変動が生じ、価格が不安定になっているケースが多く見られます。 

しかしジェムフィールズは、詳細にグレーディングされた商品に基づくオークションにより、透明性が高まり真の価格発見ができるのだと考えています。 Harebottleによるとこのような価格形成が、同社が2011年以来毎年開催しているエメラルドのオークションにおいてカラット/品質当たりの価格における全体的な不安定性を著しく低減させる結果になったということです。 「昔であれば、最低入札と最高入札の間には10,000%もの開きが見られることもありました。 

世界の多くの専門家が基本的に同じ原石に入札するような場面がありましたが、彼らが提示した価格にはかなりの差が見られました。 今日、特異なケースとして(低価格の入札をする)「あつかましい」顧客がいますが、価格変動率は激減し、付け根は最大で100から200%の間での開きとなっていて、以前に比べれば非常に安定していると言えます。」Harebottleは、これはバイヤーの自然な帰結というけでなく、顧客がようやく生産管理についてより理解できたことにもあったと考えています。 Harebottleによると、このプロセスは、次のとおりになります。

  • ジェムフィールズのオークション運営はすべて、単純なリザーブプライス(非公開の最低落札価格が設定されている)方式で非公開入札で行われます。
  • 各オークションの前に、ジェムフィールズが最低落札価格(その価格なら当該商品を売っても良いとする最低金額)を設定し、これをオークション開始前に密閉した入札箱に入れます。
  • オークション参加者には商品を評価するためにいくらかの日数が与えられ、その後参加者はそれぞれのアイテムに応じて入札しなければなりません。 ジェムフィールズは、オークション全体、つまり一括して競売品のすべてを単一の入札では、受け付けていません。
  • 参加者はこれらの入札額を入札ブックに書き込み、入札箱に入れます。 参加者は、1つのアイテムに複数の入札をすることもできますが、最高入札金額のみが対象となります。
  • オークション終了後、最低落札価格(MRP)よりも入札が高額になった各アイテム毎に、全入札が評価されます。 各アイテムは、最高入札者に渡ります。
  • 全入札の評価がされた後、参加者は、どの企業がどのアイテムを落札したか(単に企業名と落札したもののみで、入札額は含まれない)の通知を受けます。 入札が最低落札価格に達しなかったアイテムについても全て公開されますが、その場合ジェムフィールズは、顧客が少なくとも今後同社がどのあたりの価格を期待するのかについて見当が得られるように、同社が期待したMRPを開示します。
ルビーとエメラルドのオークションプロセスは、異なる場所で行われていても、どちらも類似しています。 政府がオークションをザンビアの地で開催するように要請したのを受けて、カゲム鉱山で採掘したエメラルドについてのジェムフィールズのオークションは、ザンビアの首都ルサカで定期的に開催されています。

当初同社は、主要なバイヤーが参加について消極的であるかもしれないことに対する懸念を表明して、オークション開催について難色を示しました。 しかしながらバイヤーは参加し、2014年11月の直近の販売では、17ロットに分けられた53万カラットに対し、過去最高のカラット当たり価格(ほぼ66ドル、約7600円)を記録しました。 競売された商品の88%以上が売れました。 Harebottleは、これは宝石ビジネスの国際的な視野を示す役に立つと言います。

取引商品、すなわちジェムフィールズが自社で採掘していないエメラルドは、インドのジャイプールで販売されます。そこではジェムフィールズの顧客の多くが宝石ビジネスを行っていて、またムガール帝国時代から存在するエメラルドカット産業が確立されています。 モンテプエス産の素材は、シンガポールで販売されています。

ジェムフィールズは、宝石ビジネスに浸透している「今日はここにあるが、明日にはもうない」というメンタリティに起因した価格の不安定性を軽減したいと考えています。 宝石ディーラーにとってこれは、一度販売された商品を、類似の品質の商品で埋め戻すことができることを意味します。 宝石商やデザイナーにとってこういった販売モデルは、エメラルドやルビーを使って何度も同じ品質で生産が可能なジュエリーラインを創作することを可能にしてくれるもので、さらに最も重要なことは、目の肥えた消費者の心をカラー宝石に引き戻すために必要となる協調的なマーケティング活動の正当性を示していることです。

ジェムフィールズは、自社の生産に加えて、地元の市場から素材を購入します。 昨年はオープンマーケットから850万ドル(約98億円)相当のエメラルドを取得し、それを自社製品とは別途で販売しました。

Harebottleにとってこの素材を自社生産品と分離することは重要な意味があり、説明責任の問題でもあります。 「私たちはよく知られている「顧客確認 (KYC)」プロセスを適用してはいますが、どのように採掘されたか、あるいは採掘された環境がどう扱われていたか、などというこれらの(外部)の商品に関して生じる事項を確実に知ることはできません。それでも、商品を手に入れた時点からは、税金やロイヤリティなどがすべてカバーされていると保証することはできます」と彼は言います。 ジェムフィールズは、高い金網フェンスやセキュリティカメラ、幹線林道沿いと鉱山のチェックポイント全体の重要箇所に配置した警備員など、ザンビアの鉱山に万全の厳しい警備を敷いたにも関わらず、不法採掘されたり、でなければ選別作業現場で盗まれた素材でさえ、買い戻していることになるケースもあるだろうと考えています。

Kagem(カゲム)の警備員
にこやかに!Kagem(カゲム)の警備員が頭からつま先まで皆さんの検査を行なうところである。 全ての従業員、同社関係者、訪問者は、2つの鉱区の各所で警備員の検査を受ける対象となる。 写真:Robert Weldon/GIA、提供:Gemfields(ジェムフィールズ)
しかしながらモンテプエスは、はるかに広範囲な地域に広がっているものの、大部分は警備がされていません。 鉱山キャンプとモンテプエス採掘場との間の10キロの道のりには深い藪が広がっており、これがガリンペイロ、つまり常時ルビーを捜して敷地への侵入を測ろうとしている違法採掘者をうまく阻んでくれています。 

Harebottleは実際に、ガリンペイロが強い日差しからの保護が無いまま作業を続け、病気や脱水状態になるという多くの悲しいケースを目にしてきたと言います

「彼らの状況を理解することはできますが、盗難や環境破壊を見逃すことはできません」と彼は言い、ジェムフィールズと政府が、鉱山労働者のために特定の領域を留保しておくことで、全員にとって公平となるバランスを取ろうとしていることを強調しました。 

しかしながら、事態が複雑なのは多くのガリンペイロが他の地域、あるいは他の国からの移住者であるということです。 「彼らは、税金やロイヤリティを払わずに違法にモザンビークの国外にこれらの宝石を運び出してしまうため、地域社会や国に対する利益もないのです」と彼は説明します。
 

マーケティング

ジェムフィールズの販売モデルは、デビアスのシングルチャネルマーケティング方式から派生して修正を加えたものであり、この方式はHarebottleが以前にタンザナイト鉱山のTanzaniteOne(タンザナイト ワン)と業務提携していた際に用いた方式です。

彼と当時CEOのMichael Nunnは、デビアスのように供給を管理したいと考えており、同社には世界で唯一のタンザナイト鉱床において最大の利権を所有しているという利点がありました。 それと前後して彼らは、定期的に開催される販売で自分たちの商品を購入した顧客から自分たちが選択し吟味した顧客、つまりサイトホルダーに相当する人々に対する販売戦略を考案しました。  さらに彼らは、サイトホルダーが購入する素材について完全に理解するのに役立つ、タンザナイト原石のグレーディングの基準を考案しました。 最後に、デビアスが20世紀の大半で行ったように、TanzaniteOne(タンザナイトワン)はマーケティング部門としてTanzanite Foundation(タンザナイト財団)を設立し、需要を増加しつつ価格が緩やかに上昇する助けとしました。

「さらに、我々はタンザナイトの価格設定のガイドのようなものを望んでいたし、業界と消費者の双方に取引の透明性を上げられるようなタンザナイトの保証書(鑑別レポート)が欲しかったのです」とHarebottle氏は述べています。

Gemfields(ジェムフィールズ)の最高経営責任者(CEO)のIan Harebottle
Gemfields(ジェムフィールズ)の最高経営責任者(CEO)のIan Harebottle 写真提供:Gemfields(ジェムフィールズ)
「私たちが宝石業界から受けた反発がどれほどだったか、信じられないでしょう。」Harebottle氏は、思い返します。 「私たちは宝石を一般商品化しようとしていると非難され、このような統制を取れば、「ロマンス」を以て顧客に宝石を販売するという機会が奪われると言われました。」

Harebottleは、供給の大半を制御する必要はないのだという事実も含めて、これらの経験から多くの教訓を得たと言います。 「私たちは、デビアス型の市場シェアが重要だと思っていました。 しかし、見解を変えました。

「今日の価値の重要要素は、製品が消費者の心のどの部分を捉えたかということです」と彼は強調します。  「その多くは、広告活動を介して達成されます。 消費者が最も関心を持つ場所に私たちの製品を位置づけると共に、ジェムフィールズが倫理観や透明性、受け継がれるもの、起源の問題、卓越性、創造性といった観点においてどういう立ち位置にあるかをはっきりと示さなければなりません。」

シュガーローフ・グリーンエメラルドリング
ニューヨークのAlexandra Morがデザインした Sugarloaf Green Emerald リングは
カゲム産の大きなエメラルドが特徴。 写真:Alexandra Mor
これらの観点は世界に多く点在する「新世紀世代」の主要な関心事であり、そのような世代の代表ともいえるミラ クニスは、同社の製品に自分の名前が使われる前に自分自身で会社の業務のあらゆる側面を見ておきたかったのだとHarebottle氏は述べています。  その意味でミラ クニスは、製品のルーツを辿り、美と希少性に対する従来の概念だけでなく持続可能性という観点でその製品がどういう立場にあるのかを理解できるようになりたいと願う多くの新世紀世代の人々と同じなのです。

40.23ctのルビーを例に挙げ、Harebottleが言うに、ジェムフィールズはこの宝石が鉱山から最終消費者に届くまでを、予備成形、研磨、セッティング作業を通して追跡していくことを決定しているそうです。 (ボックスAを参照してください)​​。

ボックス A:利益追求と企業責任
ザンビア北部にあるカゲム鉱山の地域社会関係を担当するシニアマネージャーのJoseph Chilambweは、私たちの前にあるアカシアの森のアーチを腕を広げて示します。 「カゲムは我々の鉱山から高速道路までのこの地域全体の責任を負ってきました。」

カゲム鉱山は、中央政府と提携してジェムフィールズが運営する、ザンビアで最大級のエメラルド鉱山です。 ンドラの銅鉱山の町を走る主幹高速道路まで車で約3時間、約12マイルほど広がるこの地域は、エメラルドが発見される以前は過疎地でした。 現在は、違法鉱山労働者や農民、あるいは単に収入を求めている人たちの家族らが定住する小さな区画があり、鉱山地域周辺の森林丘陵全体に散らばっています。

農業プロジェクト
持続可能な地域社会の構築
Chilambweがハンドルを握り、我々は藪を切るように伸びる赤茶げた未舗装道路を進み、カゲムが建築した3学級の学校のあるKapila(カピラ)という村に向かいました。 「この主要道路は、我々が管理しています。 しかし人々があまりに離れて点在しているので、学徒が教室まで来れるように、更に11キロの道路を建設しなければなりませんでした。」と彼は語ります。

簡素な側道に入り、周囲の乾燥した低木林と鮮やかに対照を成す緑豊かな平原の脇に据えられたいくつかの伝統的な家屋の近くに車を停止します。 「これらの家庭は、鉱山に新鮮な野菜を供給してくれるKapila Green Farmers’ Cooperative(カピラグリーンファーマーズ協同組合)の一員です。」

平原は手入れの行き届いた灌漑水路で区画分けされ、キャベツ、ジャガイモ、タマネギ、その他の複数の主要産物を産出しています。 "事実このプログラムは成功をおさめ、鉱山の需要をはるかに超える穀物を収穫していて、市場に出荷する道を模索しなければなりません。」

学校は、農場を数マイル通り過ぎ、モニュメントのように風景から突き出た蟻塚の横の野原に建っています。 カピラの学校は、カゲムがすべての支援を行っている1学年から7学年までを受け入れており、3つの教室があり、教師の給与もカゲムが助成しています。 各教室には、年齢層に応じて2名から3名の学生が座れる木製のテーブルやベンチが3列に並んでいます。 授業内容は基礎教養(英語など)、算数、家政経済などで構成されますが、教師は少なくとも1名の学生が大学に進学していったことを誇らし気に述べます。  科学技術やコンピュータトレーニングは、地域の電力不足であったり、毎回学校まで遠路はるばる来なければならない生徒があったりで、制限があります。

Chilambweは言います。「この学校はまだ政府に認可されていません。ですから、その日まで私たちが完全に支援していくつもりです。」更に5キロの道のりを行ったところにあるChapula(チャプラ)では、カゲムはそれよりも大きい10年生の子供までが学べる7教室ある学校を建てました。

最寄りにあるのはNkanaクリニックで、カピラとチャプラの両地域での基本的な医療ニーズに応えるために設計されています。 我々の到着が遅くなりこのクリニックのスタッフに話を聞くことは出来ませんでしたが、Chilambweの話では、日常的な治療は看護師を採用してこなし、より重篤なケースについては救急車を手配出来るそうです。

モザンビーク北部にあるモンテプエスも比較的遠隔地に位置しており、一番最寄りの主要都市でも、およそ3時間車南西へ行ったPembaの港です。 モンテプエスでの時間は限られており周辺地域を訪問することはできませんでしたが、鉱山のプロジェクトマネージャーSanjay Kumarは、同社が鉱山サイトからそれぞれ約10マイルある地元の2か所の村NamanhumbirとNacojaで、飲料用井戸を開拓していると説明しました。 また、Namanhumbirで学校や村の市場を改装したり、その他のいくつかの村にある学校の改装にも貢献してきています。

「私たちが地域の人々のためにしていることはまだまだ沢山あり​​ます」とKrumar氏は述べています。 「私たちの採掘領域内には何千人もの違法鉱山労働者がいて、時には脱水症状で倒れた人たちに医療を手配してやらなければなりません。」

ジェムフィールズは、2012年に採掘権を支配下に置いて後に、地域社会との関係修復を成し遂げました。 それまでは、鉱山の警備員が違法鉱山労働者(ガリンペイロ)を銃撃したり、時には殺してしまうというような事件が数多くありました。 地元の報道機関によると、これは、長いことこの地域の問題となっていたそうです。 ある事件では、ジェムフィールズがこの地に参入する直前、警備員が300人の鉱夫に向かって発砲し、1人が死亡し、2人が負傷しました。   

さらにジェムフィールズは、 2014年12月のモンテプエスのルビーオークションで 、サイの密猟反対活動支援を行うこととし、モザンビークと南アフリカの間の300マイルに及ぶ国境沿いに禁猟区の空中監視を敷くための資金助成を開始したことを発表しました。 アフリカのサイは高い絶滅の危機に瀕しており、ジェムフィールズは2014年11月に見つかった 40.23ctのルビーをRhino(サイ)ルビーと命名し、人々の関心を高めようとしました。

ジェムフィールズは、2013年にそれより6年前に再構築されていた由緒あるジュエリーブランドFabergé(ファベルジェ)を買収し、その魅力を獲得することとなりました。 Harebottleは、ファベルジェというブランドがジェムフィールズの宝石の完全な基盤となり、ジェムフィールズは全体的にジュエリー部門を再活性化させる意向であると言います。 このブランドは世界中に10か所以上のブティックを経営しており、 ファベルジェのデザイナーは、カゲムのエメラルドとモンテプエスのルビーを創作ジュエリー作品に調和させました。

ジェムフィールズは、計画すべてを達成できるでしょうか?

American Gem Trade Association(アメリカ宝石取引協会)のエグゼクティブディレクターDoug Huckerは、マーケティングと責任ある採掘慣行に重点を置くこの会社の姿勢に好感を持っています。 彼はまた、安定した供給が大いなる利益であると信じてはいますが、ジェムフィールズが恒常的に無秩序となっている業界に秩序をもたらせるのかについては疑問に感じています。

「彼らは、一貫性のある価格設定の確立を望んでいます。 おそらく、自社の製品つまりザンビア産のエメラルドには可能かもしれません。 しかし、コロンビア産エメラルドは別商品です」と彼は説明します。 「したがって、ジェムフィールズの価格が完全に移行されるようなことはなさそうです。」

さらに彼は、「これらの(宝石生産者)をまとめようとするのは、猫の群れを追うようなものです」と述べています。 第二に、一律に供給と価格に影響を与えるために、莫大なリソースと高いマーケットシェアが必要となります。 ジェムフィールズがこれを実行できるほどのマーケットシェアを持っているのかは確信できません。」
 
宝石業界が、特に価格設定についてのジェムフィールズの市場への取り組みに対し懐疑的なままであることをHarebottleは実感しています。 業界の多くが特に心配するのは、綿密で一貫性のあるグレーディングがコモディティ化につながることです。 彼はそれについて異議は唱えていません。 確かに、特に2カラット以上の石について、ラパポート方式の価格リストが消費者の信頼を高める後押しとなるためやがては業界の利益になっていく可能性もあると彼は信じていますが、同時に多くの固有の課題をはらむことも理解しています。

「短期的な利益が多少喪失することがあっても、人々は、価格が大きく変動して不安定であるということ(現在の状態)に対処する必要が無くなり、自分が購入する商品の価値について理解するようになるので、これにより損失補てん以上に売り上げ増加に転じるでしょう。」

彼は、過去に未だしがみついていると彼が考えている多くのカラーストーンのディーラーおよび生産者の間で、このような見解が賛同を得ていないことは認めています。一方で、スタートは低いながらも、カラーストーンの需要は近年よく伸びてきています。 「透明性を高め、価格と供給の一貫性を増加させれば、全体としてカラーストーンの更なる需要をもたらすことになります。 それについては疑いの余地がなく、実現すれば、誰にとっても良いことになるのです。」

Russell Shorはシニア業界アナリスト、Robert WeldonはPhotography & Visual Communications(写真・ビジュアルコミュニケーションズ)のマネージャーです。

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GIAスタッフはリサーチおよび市場への見識を深めることを目的に、鉱山、 製造業者、 小売業者の他、 宝石およびジュエリー産業に関わる場所や企業を頻繁に訪ねております。 GIAは訪問中にスタッフを受入れて貴重な情報を提供してくださった皆様のご厚恩に心から感謝いたします。 これらの訪問やそれを基にした記事または出版物のいかなる内容も、保証するものではありません。

筆者は、ジェムフィールズのCEOであるIan Harebottle氏の温かいご協力に感謝致します。 ジェムフィールズのチームの多くのメンバー、Vijay Ameriya、Joseph Chilambwe、Robert Gessner、Anna Haber、Ashim Roy、Philippe Ressigeac は、筆者らの見学の申し出に対し、非常に親切に対応してくれました。