Gems & Gemology(宝石と宝石学)

G&G 2017年春号: ブラジルのダイヤモンド生産、含銅リディコータイト、コランダム中のケイ素、そしてツーソンの取材


2017年春号 Gems & Gemology(宝石と宝石学)
今号のトップ記事は、1700年代後半にピークに達したブラジルのダイヤモンド生産についてである。 表紙のブローチは、19世紀半ばのもの。 この作品では、金の上に濃く緑青づけされた銀リボンをあしらった台に、0.77ctのファンシーライトピンクのアンティークペアシェイプの天然ダイヤモンドがセットされている。 ダイヤモンドの総重量は、5.20ctを超えている。 写真撮影:Robert Weldon/GIA、提供:Lang Antique & Estate Jewelry(ラングアンティーク&エステートジュエリー)

ブラジルのダイヤモンドや日本のジェダイトから、インドのイリディセントクォーツやポーランドの副生紅亜鉛鉱(ジンカイト)にいたるまで、2017年春号のGems & Gemologyでは、幅広いトピックが取り上げられています。 今号では、宝石の歴史的産出地と珍しい産出地の話と、高度な化学分析で明らかになった驚くべき発見についても触れています。 また、例年のツーソンの宝石ショーのニュースや最新情報と、そして多項選択式のチャレンジ・クイズも掲載しています。

ブラジルのダイヤモンド: 歴史的そして最近の観点

三騎士団の記章
ポルトガルの Placa dos Três Militares、または三騎士団の記章は、
1789年に作製された。現在はリスボンのアジュダ国立宮殿の
王室宝飾品コレクションの一部になっている。 記章はブラジル産のダイヤモンド、エメラルドや
ルビーで構成され、その金属製のマウントを隠して
宝石が強調されるように設計されている。 写真撮影: Manuel Silveira Ramos、提供:アジュダ国立宮殿

ブラジルは、その豊富なカラーストーンで知られていますが、実はかつては、世界有数のダイヤモンド生産国でした。 3世紀もの間ブラジルは、比較的少量であっても、世界市場へダイヤモンドを絶え間なく供給し続けてきました。 また、超深層やファンシーカラーのダイヤモンドとカルボナードの産出地でもあります。 ブラジルでは、ダイヤモンドは漂砂鉱床で採集されるものの(主にマトグロッソ州とミナス・ジェライス州)、初生産地は不明のままです。 著者のDarcy Svisero、James ShigleyとRobert Weldonは、何世紀もの歴史があるブラジルのダイヤモンド生産を、歴史的観点と地質学的洞察、そして将来的な探鉱への期待とともに考察します。

含銅リディコータイト・トルマリン

含銅リディコータイト・トルマリン
今回の研究の13の含銅リディコータイト・トルマリンのうち6つ。 ファセットカットされた石は、1.59~9.63ct(平均3.95ct)の重量がある。 透明で、緑がかった青や青緑、または緑色である。 写真撮影:Masumi Saito

含銅(パライバ)トルマリンは、通常エルバイト(リチア電気石)の一部として分類されます。 最近、GIAの東京ラボに提出された13個の含銅トルマリンが、その起源特定のため、LA-ICP-MSで分析されました。 石の起源は未だ不明であるものの、Yusuke KatsuradaとZiyin Sunにより、これらがエルバイト(リチア電気石)ではなく、リディコータイトとして分類するに至った意外な結果をについて説明します。

コランダムの色におけるケイ素の役割

研磨されたYogo(ヨーゴサファイア)のウエハー
Paula Crevoshayの「Yogo Columbine(ヨーゴ・コロンバイン)」ペンダントは、Yogo(ヨーゴ)サファイアの驚くほど一貫した青色を際立たせている - それは全部で 243個あり、総重量は13.89ctになる。 この作品には、0.59ctのイエローサファイアと1.37ctのダイヤモンドが使われており、18金イエローおよびホワイトゴールドにセットされている。 写真撮影:Orasa Weldon

ケイ素やチタン、そしてマグネシウムによる化学的相互作用は、宝石品質のコランダムの色に影響することが知られていますが、ケイ素に関しては、最近までその役割は十分理解されていませんでした。 John EmmettとJennifer Stone-Sundberg、Yunbin Guan、そしてZiyin Sunが、どのようにしてイオン注入標準とSecondary ion mass spectrometry(二次イオン質量分析法)を応用することによりコランダムにおけるケイ素の正確な測定につながったかを解説します。 この測定によって、ケイ素がコランダムの色に果たす重要な役割が明らかになります。モンタナ産の青いYogo(ヨーゴ)サファイアを使って、この発見を説明します。

日本のジェダイト: その歴史と特性、そして他の産出地との比較

ジェダイトの巨礫
糸魚川産のジェダイトの巨礫。白と
緑が混ざっているのが特徴です。 この巨礫は40.5kgで、高さが約39cm、
長さ約32cm、そして幅は約26cmである。 写真撮影:Ahmadjan Abduriyim

日本からのジェダイト ジェード宝石品質のは何千年も前から知られています。 この記事では、Ahmadjan Abduriyim、猿渡和子、そして桂田祐介の各氏が、日本のジェダイトの歴史的文脈、化学組成と色を分析します。 また、糸魚川、青海、若狭地域のジェダイトと、ビルマ、グアテマラ、そしてロシアから各地サンプルの特性を比較します。

天然クォーツにおけるイリデッセンス効果の要因

アイリスクォーツ(レインボークォーツ)
インドJalgaon(ジャルガウン)産のアイリスクォーツには、minor zの面でイリデッセンスがはっきりと見える。
顕微鏡写真撮影:Peter J. Heaney、視野 4.5mm

イリデッセンスの現象は、薄膜または反復下部構造のいずれかによって起こります。 インドのJalgaon(ジャルガウン)地区産のアイリスクォーツを分析した結果、Xiayang LinとPeter Heaneyの両氏は、素材のminor z 面において、差分エッチングにより生成された山脈と谷状の構造を発見し、それがイリディセント効果を発生させる要因であることを突き止めました。

宝石品質の副生合成紅亜鉛鉱(ジンカイト)の特徴

合成紅亜鉛紘(ジンカイト)
本研究で使用された副生成物の合成紅亜鉛紘(ジンカイト)のほとんどは、赤みがかったオレンジ色から黄色であり、1つ(ZnO-G)は黄緑であった。 上の段、左から右: サンプルZnO-LC(69.23ct)およびZnO-SC(31.71ct)。 下の段、左から右: サンプルZnO-G(0.32ct)およびsin-7(5.61ct)。 合成写真:Ji Zhang

合成紅亜鉛鉱(ジンカイト)は、酸化亜鉛粉の生産過程で生成される副生成物として、ポーランドの工業炉で発見されました。 偶然に発見されたこの紅亜鉛鉱は、天然のものより高い透明度と明るい色になっているのが特徴です。 Ji Zhang、Yujie Gao、そしてGuanghai Shiらが、ポーランドの鋳造所から来た副生成物の合成紅亜鉛鉱サンプルを分析し、その特徴の確証と、インクルージョンの識別、そして色の原因の探究を行っています。

ラボノート

緑色の合成ダイヤモンド
この0.42ctの緑色HPHT合成ダイヤモンドには、拡大しなくてもわかるほどの成長領域が確認できる。 写真撮影:Jian Xin (Jae) Liao

GIAのジェモロジストが、ラボに提出されたもののうち、注目すべき件を報告します。例えば、HPHT合成ダイヤモンドにおける緑色の意外な原因や、パライバのトルマリンの珍しい亜金属コーティング、そして黄色いリン光を放つケープダイヤモンド、などです。

ミクロの世界

顕微鏡写真
この場面では、パイライトのインクルージョンが溶解してしまい、ヘマタイト(赤鉄鉱)とゲーサイト(針鉄鋼)が残された。このどちらも、偏光に対して劇的な反応を示す。 顕微鏡写真:John I. Koivula、視野 10mm

宝石の内面の世界は、今でも私たちを魅了し続けています。そこで2017年春の号の特集では、負結晶のあるサファイアや、エチオピア産の貴重なオパールに見られる炎のような構造、そしてスリランカ産のトパーズに見つかった神秘的なインクルージョンの組み合わせ、などを取り上げています。

ジェムニュースインターナショナル

28.21ct フリーフォームのオレゴン産サンストーン(日長石)
このリングの中心は、ダストデビル鉱山産の28.21ct、フリーフォームのオレゴンサンストーンである。 写真提供:Sonja Kreis Unique Jewelry(Sonja Kreisユニークジュエリー)

GNI(ジェムニュースインターナショナル)セクションでは、例年通りG&Gがツーソンの宝石ショーを取材、特集しています。 ハイライトとして、エチオピアの新しい鉱床でとれたエメラルドの話題、米国のミャンマーへの制裁解除に伴う最新ビルマ宝石情報などがあります。 他には、パイロープ・スペサルティン変色ガーネットの化学組成強いリン光を出すカルサイト(方解石)の球に関する報告などもあります。

またこの春号では、2017年Gems & Gemologyチャレンジも掲載しています。 75%以上のスコアの方には、終了証書(PDF ファイル)が発行されます。満点を獲得すると、2017年秋号に名前が掲載されます。 本チャレンジへの解答カードの郵送またはオンラインでのエントリーの締め切りは、2017年8月11日金曜日です。

Jennifer-Lynn Archuleta は、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集者です。