G&G 2017年秋号:HPHT合成ダイヤモンド概説、新世界から産する真珠の放射性炭素年代測定、コロンビアで発展するエメラルド産業
10月 31, 2017
Gems & Gemology(宝石と宝石学) 2017 年秋号は、HPHT法合ダイヤモンドの鑑別基準から、コロンブス時代に採取された天然海水真珠、そしてコロンビアのエメラルド産業の現状まで、宝石学における広いトピックを取り上げています。そのほかに、地理的起源を決定する方法としてのエメラルドのフォトルミネッセンススペクトルの研究、20世紀半ばのドイツの合成スターコランダムについてのレビュー、「ダルメシアンジャスパー」として業界で知られている素材の検査などが取り上げられています。
HPHT成長法による合成ダイヤモンドの観察:レビュー
高圧高温(HPHT)法で成長させた合成ダイヤモンドは1990年代半ばから市販されていますが、技術はこの10年で大きく躍進しました。今回のトップ記事では、GIAのSally Eaton-Magaña、James E. Shigley、Christopher M. Breedingが、市販されているHPHT法合成ダイヤモンドに関する洞察について、入手可能なカットやカラー、クラリティについての統計データのほか、ジェモロジストにとっての鑑別基準などを含めて取り上げています。
先コロンビア期からコロンビア時代初期の海水真珠:宝石学的研究および放射性炭素年代測定法の研究
真珠はアメリカの先住民やスペインの入植者によって珍重されました。カリブ海の海水産貝養殖場は16世紀前半に乱獲されたため、貝が不足するようになりました。あるサプライヤーが、中央アメリカまたは南アメリカで先コロンブス期からコロンブス時代初期に産したとされる85個の真珠を入手したということです。Chunhui Zhouが率いるGIAとGübelin Gem Lab(Gübelin宝石ラボ)のチームがさまざまな方法で真珠を分析し、これらの主張を検証しました。
コロンビアやアフガニスタン、ザンビア産エメラルドのフォトルミネッセンススペクトル
エメラルドのフォトルミネッセンス(PL)は、微量のクロム不純物により発生します。エメラルドのPLスペクトルは石の起源によって異なる2つの特性を示します。筆頭筆者である David Brian Thompsonとそのチームは、地理的起源の証拠の可否を提示するために、コロンビアやアフガニスタン、ザンビア産エメラルド48個のPLスペクトルを検査します。
ドイツ・フライウングにある WIEDE’S CARBIDWERK(ヴィーデス・カービドヴェルク)社製造の合成スターサファイアとルビー
1950 年代、Wiede’s Carbidwerk(ヴィーデス・カービドヴェルク)社は商業市場用の合成スターコランダムを成長させる方法で特許を取得しました。同社は1970年代後半まで商品を販売しましたが、1960年代以降のサンプルは初期のものとは多少異なります。Karl Schmetzerと共著者たちは、これらの合成石を成長させるためにWiede’s社が使用したベルヌイ法の変則法を探ります。
「ダルメシアンジャスパー」の本当の色
黒い斑点(アルベゾン閃石と同定)があるため業界では「ダルメシアンジャスパー」として知られる模様の付いたこの宝石は、既刊文献ではあまり取り扱われていません。Tomas PowolnyとMagdalena Dumańska-Słowikが石の鉱物組成と特性を調査します。この調査では、この素材はジャスパーとしての宝石学的定義を満たしていないため、「ダルマチア石」という名前で呼ばれるべきだと提案しています。
コロンビアのエメラルド産業:変化の風
コロンビアにおけるエメラルド採鉱は 1000 年以上も溯ります。ですが、この産業には多国籍企業が透明性とトレーサビリティが最前線に来るように投資しているため、その最大のチャンスはまだこの先に待ち受けています。コロンビアのジェモロジストDarwin Fortaleché 氏が率いるこの探査のフィールドレポートでは、同国の「鉱山から市場まで(mine-to-market)」のエメラルド産業における近年の変化を記録しています。
ラボノート
GIA ラボからの最新情報には、ブラジルのキンバーライトから産した高品質ダイヤモンド、フラックス熱処理のルビーとベリリウム拡散のサファイアへの合成オーバーグロース、GIA の iD100 スクリーニング装置を使った天然ダイヤモンドと合成メレーの識別に関するレポートが含まれます。
ミクロの世界
G&G の顕微鏡写真法によるセクションでは、スリランカ産サファイアの花のようなインクルージョン、クォーツ内の銀のようなルチルのインクルージョン、およびフルオライトが内蔵する目に見えるバライトのインクルージョンを取り上げています。
ジェムニュースインターナショナル
秋号 GNI セクションではモザンビークのルビー採掘についての最新情報、バナジウムを高濃度に含有した青緑色パイロープ/スペサルティンの分析、およびナイジェリア北部の新しい原産地から採れたとされるサファイアの検査が特集されています。
Jennifer-Lynn Archuleta は、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集者です。