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宝石カッターがカルセドニーの美しさを明かす


このアゲートには全体に、ブラックからホワイト、イエロー、グリーン、ブルー、オレンジそしてブラウンの色の渦巻きの帯が見られる。
メキシコ産のこのアイリスアゲートは、石の背後から光を当てると、スペクトル色の劇的な渦巻きを見せる。写真提供:Robert Weldon/GIA

地球の地殻構成で一番多くを占めるフェルスパーの次に多いのが、クォーツ類の鉱物です。アゲートとジャスパーは肉眼では見えないクォーツの小さな結晶で構成されている、カルセドニーの一種です。これらのクォーツの大変微細で隠微晶質の形態は、古代から王族や一般の人々の両方を魅了してきました。

アゲートは最初テオフラストス(紀元前372~287年)による『On Stones』という文献に言及されました。彼はこれらを価値の高い美しい石であると言及しました。その後、プリニウスによる『博物誌』(紀元77年)において、アゲートははるかに豊富で様々な種類があるため、価値が下がりました。

プリニウスとテオフラストスの両方が、アゲートの名前は、おそらく初めて発見されたシチリアのアカテス川に由来すると書いています。

アゲートとジャスパーには、多色パターンで無限の品種が存在します。それぞれが自然の芸術のユニークな創作です。これらの石はオレンジ、ブラウンやゴールドといったリッチな秋の色をしており、色の層または帯状に色が見られます。また、団塊状またはジオードのような「雷の卵」と呼ばれる構造を形成します。銀河や周回惑星に似て見えるアモルファスや渦巻き模様を示すアゲートもあります。 

ブラジル産アゲートの垂直状スラブは、インクルージョンが作る街のスカイラインや樹木のある山頂のようなシーンを見せている。
この顕微鏡写真は、形成された層に対し垂直にスライスして研磨されたブラジルアゲートの板で、賞を受賞した。鉱物は針鉄鉱と赤鉄鉱ですが、インクルージョンによって表されるシーンは自由に想像できる。顕微鏡写真:John Koivula/GIA

ファイアーアゲートは、反射した白色光を散乱させて色相のスペクトルを表します。同様に、アイリスアゲートは、透過光を散乱させて虹色を示します。宝石として使用されるアゲートは天然色の場合もありますが、染色されているものも多くあります。濃いピンク、ブルーまたはグリーンアゲートで特に見られます。アゲートは多孔質素材で、カラーエンハンスメント処理にも適しています。

多くの宝石と同じように、取引名はそれらの外観を説明します。ポピージャスパー、デンドリティック、レース、アイリス、ファイアーやランドスケープ・アゲート等があります。 

カルセドニーは、その美しさと相対的に豊富な産出量、また彫刻に適しているため、広くヨーロッパ、中東で古代からジュエリー、カメオ(浮き彫り)や陰刻(沈み彫り)に使用されてきました。

アレキサンダー大王以前には、署名や文書の真正性を証明するために蝋に押すカルセドニーの印は、通常動物や自然の要素が掘られていました。アレキサンダー大王は、おそらく世界初の「自分撮り(セルフィー)」であろう自分自身の肖像を神格化したカメオを依頼しました。その後、陰刻された家紋も印として使用されました。高級宝石材料と複雑な彫刻が社会的地位の印でした。

色鮮やかなアゲートは、多くの場合染色されている。 ランドスケープ・アゲートジュエリーのこのブルーの色相は処理されたものである。 提供:Rare Earth Enterprises(レアアースエンタープライジズ)、 写真:Robert Weldon/GIA

ドイツのイーダーオーバーシュタインは、世界でも最高のアゲート彫刻で知られています。アゲートは、1400年代以来、ナーエ川の渓谷に沿った地域で採鉱されており、石の切断用砥石に動力を供給するために川の流れを利用していました。宝石彫刻の技術は、アゲート、ジャスパーや他のカルセドニーの豊富な産出により、地域で繁栄しました。

1800年代にドイツのアゲート素材が枯渇した際には、イーダーオーバーシュタインの宝石カッターは、ブラジルから素材を輸入し始めました。ブラジルに加えて、南米のアルゼンチンとウルグアイ、また欧州、オーストラリアや北米の一部地域で鉱床が発見されました。これにより、彫刻や宝石カッティングの芸術を繁栄し続けることができました。

Jerusalemエッグ・コレクションは、850個の宝石彫刻や鉱物彫刻のコレクションです。それらの多くはアゲート、ジャスパーや他の微結晶クォーツでできており、イーダーオーバーシュタイン出身の現代の熟練カット職人であるDieter Jerusalemが生涯かけて手掛けた代表作品です。地域の重要な現代宝石彫刻家にはBernd Munsteiner、息子のTom Munsteiner、Erwin Pauly、息子のHans Ullrich Pauly、Dieter Lorenz、Gerd Dreher、Patrick Dreherがいます。

アゲートのカッティングや彫刻の美術は世界中の国々でも広がっており、最初のアゲートシンポジウムはコロラド州デンバーにて2005年に開催されました。それ以来、カラフルな微結晶クォーツへの関心は広がり続けています。

推奨書リスト:

  • Agates of Lake Superior(スーペリオル湖のアゲート)、Lynch, Dan R.とBob Lynch著(2011年)、Adventure Publications(アドベンチャー・パブリケーションズ)、ミネソタ州ケンブリッジ
  • Exquisite Agates(絶妙なアゲート)、Mayer、Dietrich著(2014年)、ドイツ、Lauenstein、Bode
  • Agtes(アゲート)、Zenz, Johann著(2005年)、ドイツ、Haltern、Bode
  • AgatesII(アゲートII)Zenz, Johann著 (2009年) 、ドイツ、Haltern、Bode
  • AgatesⅢ(アゲートⅢ)Zenz, Johann著 (2011年) 、ドイツ、Lauenstein、Bode

Sharon Bohannon、研究、カタログ化、記録写真撮影を行うメディア編集者。GIA GGおよびGIA AJP。Richard T. Liddicoat 宝石学図書館情報センターに勤務しています。