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「Imperial Flame(インペリアル・フレイム)」トパーズのカッティング


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壮麗な天然色のブラジリアン・トパーズであるThe Imperial Flame(インペリアル・フレイム)は、20年以上前に発見された、615カラットの結晶から作られている。 仕上がりサイズ 89.53 × 20.56 × 19.15mm 、重量332.24カラット。 写真提供 Sonja Kreis Unique Jewelry

2016年ツーソンショーの見られた素晴らしい宝石の1つは、332.24カラットの見事なブラジリアントパーズでしょう。このフリーフォームのトパーズ「Imperial Flame(インペリアル・フレイム)」は、名付け親でもあるKreisファミリーの宝石アーティストAlexander Kreis (Sonja Kreis Unique Jewelry, NiederwoErresbach, ドイツ)のGJXブースにて展示されました。International Colored Gemstone Association (ICA 国際カラージェムストーン協会) の常任理事Gary Roskin氏が「我を忘れて見入ってしまう」と称賛したこの壮観な作品は、きわめて珍しい615カラットの結晶から切り出されたものです。

Alexander Kreisはユニークなカットのスタイルを専門としており、 500年も代々続く、宝石のカットとジュエリー制作に携わる一家に育ちました。 現在もKreisファミリーは宝石のビジネスに関わっています。Alexanderの母Sonjaと姉妹Vanessaは、彼の宝石のスタイルにぴったりのジュエリーをデザインし、また父Stefanは原石の調達をしています。 父親が世界中を回って原石を取り扱っていたため、Alexanderにとって宝石は小さいころから生活の一部でした。 子どもの頃は、異国の宝石採鉱の話や、父親が持って帰る原石がつまった小さな袋に胸をときめかせたそうです。 こういったことが刺激となり、彼は伝統的な見習い制度のもとで宝石カットの基礎を学びました。 しかし、彼は自分のユニークな美の感性を追い求め、伝統の殻を破りました。 彼はこれまでにない原石の使い方を追求しています。

彼は常に原石の素材の中に美を探します。 「この頃はちょうどいい原石を見つけるのが難しい。 良い素材に対する需要が、特にアジアで高まっている」と話します。

この素晴らしいトパーズに話を戻しましょう。Kreisファミリーによると、この原石は定評があるブラジルのオーロプレットのトパーズ鉱山から出たものだそうです。 Minas Gerais(ミナスジェライス)地域からは200年以上にもわたってトパーズが採集されています。最初の発見は1768年と記録されており、ポルトガルの王Joseph1世は、トパーズの発見をブラジル植民地における「輝かしい祝賀」と記しています。 出典 “The Capão topaz Deposit, Ouro Preto, Minas Gerais, Brazil(ブラジル、ミナスジェライス州オーロプレットのカパオトパーズ鉱床)”、P.C. Keller著、 Gems & Gemology(宝石と宝石学)、1983年春号、12~20ページ

Ouro Preto(オウロプレット)、ブラジル
今日、活気のある街でUNESCO世界遺産であるOuro Preto(オーロプレット)は、その繁栄や名声、また美しいバロック様式建築や周囲の丘陵から採れる金、トルマリン、トパーズなどの豊かな鉱物を有している。 写真提供 Sonja Kreis Unique Jewelry

1700年代もそうであったように、今日でも、赤、ピンク、またはオレンジがかった黄色の色成分を持つトパーズは稀であり、非常に貴重なものです。 最も珍重されている色のうちの一つは、「インペリアル」トパーズとして知られるもので、ほとんどの取引においては中程度に赤みがかかったオレンジからオレンジ-レッドとされています。 これまでの報告にもあるように、オーロプレットの鉱山から採集された全素材のうち1〜2%だけがファセッティング品質ですので、それを考えると、この結晶の質がけた外れに高いことがわかります。 (参考: “An update on Imperial topaz from the Capão mine, Minas Gerais, Brazil(ブラジル、ミナスジェライス州のカパオ鉱山のインペリアル・トパーズに関する最新情報) ” D.A. Sauer他著、Gems & Gemology(宝石と宝石学)、1996年冬号、232~241ページ)

これらのトパーズ鉱山はかつて非常に活発でしたが、現在は操業していません。 Kreisファミリーの知る限りでは、この結晶は、少なくとも20年前に採掘された「古い生産物」とのことです。 彼らがこの結晶について初めて知ったのは2015年の9月。熱心なコレクターである古くからの知人が、Alexanderならなにかすごいものを作れると信じて知らせてくれました。.

ブラジル産トパーズの原石
現在、Ouro Preto(オーロプレット)のトパーズ鉱山の生産量は、1990年代のように豊富ではない。 写真提供 Sonja Kreis Unique Jewelry

そして、その月のうちに、StefanとAlexander Kreisは石を見るためブラジルを訪れました。 2人がその結晶を見たとき、すぐに「本当にすばらしい」もので、おそらく「世紀の傑作」が作れるのでは、と思ったそうです。家族の一員のCarsten Kreisはこう述べます。「主な部分は珍しい赤色です。 でもそれだけではなく、私たちが美しいと感じたのは、インペリアル・トパーズのもつ温かな色彩が広く全体に、そして驚くほど強く出ていることです。

615カラットのトパーズを 調べる
元となった615カラットのインペリアル・トパーズの結晶を観察するAlexander Kreis氏。 写真提供:
Sonja Kreis Unique Jewelry

2015年12月、Kreisファミリーはこのトパーズを手に入れました。 購入を決める前の4ヶ月間のほとんどは、作品のプランを決めるための結晶分析に費やされました。 当初は3つかそれ以上に切り分けて別々の宝石にすることをも考えましたが、彼らの目標はすぐに、知られている限りでは最大の最高品質のインペリアル・トパーズをカットすることへと変わりました。

615カラットの トパーズ結晶
Kreis氏がImperial Flame(インペリアル・フレイム)を作り上げる元となった615カラットのトパーズの結晶。 写真提供 Sonja Kreis Unique Jewelry

Alexanderは当初から、原石のとてつもないサイズと透明度は驚異的であり、色彩の幅と深さも伴ったコンビネーションは「信じられない品質」だと思っていました。 熟考の末、Alexanderはこの結晶を1つの作品にすると決心しました。 その時を思い出して彼は語ります。その決心は、「鉱物への愛からうまれたのです。今までにない、すごい彫刻になるでしょう。」

トパーズは宝石としてのアキレス腱を持っています。底面劈開です。 そのため、カット職人は劈開面に対して垂直の研削を避けるよう、細心の注意を払わなければなりません。 またインクルージョンがあると、ホイールで研磨する際に石が破損することがあります。 Sauerら(1996年)によると、 復元重量は、結晶のインクルージョンの量に左右されます。 形の良く比較的きれいな結晶で、1グラム(5カラット)あたり最大2カラットとなり、復元率は40%です。

こういったトパーズ特有の物理的な特性のため、特にこのような大きなものをカットすることは非常に難しく、熟達した職人も躊躇してしまうでしょう。 「インペリアル・トパーズはカットがとても難しい。石の中に緊張がこもっているのです」と、Alexanderは言います。 「だから我々は、徹底的に石を見ました。石の中の緊張を解いて壊してしまうかもしれないインクルージョンは特にね。」

ブラジル産トパーズの色

Alexanderは、結晶の重量をできる限り保とうと決め、その一方で最高レベルの芸術性を追求しながらカットを開始しました。 「捨てる部分はできるだけ少なくしたい、でも同時に美の可能性をできるだけ引き出したいのです」と説明します。

結晶の形成には3~4週間にわたり、合計8日間を要しました。 Alexanderは、Imperial Flame(インペリアル・フレイム)のカットのコンセプトがどう反映するかを見るために、インペリアル・トパーズの小さな石を試験的にカットしました。そのたびに、カットの工程は中断されました。 工程には3つの段階がありました。ヒビやインクルージョンのある素材のソーイングまたはトリミング、硬い結晶の荒削りと土台となる形の形成、そして反射面や溝の面の彫刻とファセッティングです。 Alexanderの正確なカットの手順や機器、研磨剤は、彼独自のものです。 前出の記事(例:Sauerら、1996年) では、ブラジルのトパーズカット職人はグリット360番の研磨ホイールと600番のファセッティング盤を使用し、Linde A (Al2O3) 粉末を用いて、鉛/錫のラップ盤で石のポリッシングをするとされています。 元の重量615カラットから切り出された完成品は、寸法89.53×20.56×19.15mm、重量は元の54%の332.24カラットとなりました。

作成法の厳密さとは関係なく、完成した作品は華々しい結晶彫刻でした。幾何学的なフラットファセットと掘りこまれた溝の曲線による見事なブレンドが、トパーズの赤からロージー・ピーチ(バラ色がかった桃色)へと変わる色相を何倍も美しく反映させています。 彫刻はきらびやかな反射を生み出し、作品の下部を生き生きとさせます。そしてトップの赤い炎に目が釘付けになるでしょう。 この作品は芸術通かハイエンドのコレクターのための特別な一品です。

 「販売するのですか?」とたずねたところ、

「はい」という答えがありました。 「価格は応相談ですが。」

Duncan PayはGems & Gemology(宝石と宝石学)の編集長です。

この記事のために、インペリアル・フレイム・トパーズに関する質問に答えてくださり、また多くの写真を提供してくださったKreisファミリー(Alexander、Stefan、Sonja、Vanessa、Carsten)に感謝します。