G&G2015年秋号:トラピッチェ エメラルド、合成ダイヤモンド、大きいダイヤモンドの産出地


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本号のメイン記事は、コロンビア産トラピッチェ エメラルドの地質学的形成と成長に関する詳細な研究です。 カバー写真は、58.83ctの 結晶標本(左)と22.74ctの カボション(右)です。共にエメラルド含有地域として有名なPeñas Blancas(ペニャス ブランカス)地区産で、トラピッチェの特徴である放射状に伸びた6条の線が見えます。 背景に見える母岩はカルサイト、パイライト、低品質エメラルドの微小結晶の脈を含む炭質頁岩です。 写真:Robert Weldon/GIA、提供:Jose Guillermo OrtizおよびColombian Emeralds Co. (コロンビアンエメラルズ社)、ボゴタ

2015年秋号のGems & Gemology(宝石と宝石学/G&G)のカバーストーリーはコロンビア産のユニークなトラピッチェ エメラルドに関するレポートです。また、ロシアで製造された大きな合成ダイヤモンドの解析と、レソトのLetšeng(レッツェン)ダイヤモンド鉱山(世界有数の巨大ダイヤモンドの原産地)の詳細情報も掲載されています。

コロンビア産トラピッチェ エメラルド:形成の解明における最新の進展

コロンビア産トラピッチェ エメラルドには、スポークが6本ある歯車に似た特徴的な模様があります。 トラピッチェ エメラルドは、コロンビア西部にあるMuzo(ムゾー)やQuiopama(キパマ)、Coscuez(コスケス)といった名だたる鉱山付近のエメラルド含有地帯の黒色頁岩中でのみ発見されます。

全てPeñas Blancas(ペニャス ブランカス)で発見された、5.09から22.74カラットのトラピッチェエメラルド。 写真:Robert Weldon/GIA 提供:Jose Guillermo Ortiz、Colombian Emerald Co.(コロンビアン エメラルド社)

Dr. Isabella Pignatelli、Gaston Giuliani、Daniel Ohnenstetter、Giovanna Agrosì、Sandrine Mathieu、Christophe MorlotおよびYannick Branquetからなる研究チームは、現地の地質環境においてどのようにトラピッチェ エメラルドが形成されるかを特定しようと、サンプルに分光・化学分析を行いました。 それにより、黒色頁岩内の超加圧された液体がエメラルド種結晶の成長を促進し、トラピッチェへと形成されるユニークな成長環境を作り出すと結論付けられました。

ロシアのNew Diamond Technology(ニュー ダイヤモンド テクノロジー)による大型HPHT成長カラーレス合成ダイヤモンド

過去5年間、宝石市場に出回る合成ダイヤモンドの大部分の製造は、旧式の高圧/高温(HPHT)法よりも特に無色の宝石に対して効率的であるとして、化学蒸着 (CVD)法により行われてきました。

しかし、ロシアの製造業者であるNew Diamond Technologies(ニュー ダイヤモンド テクノロジー)が大きいHPHT成長カラーレス合成ダイヤモンドの商品ラインを発表し、44個のサンプルを分析のためにGIAに提供しました。

窒素ゲッターとして単純なFe系溶媒とAlを使用して作られたHPHTダイヤモンドの単一結晶の成長後のままの姿。 右端のサンプルの重量は1.40ctで、この中で最大のもの。 写真:New Diamond Technology(ニュー ダイヤモンド テクノロジー)

GIAの研究員である Ulrika F.S. D’Haenens-Johansson、Andrey Katrusha、Kyaw Soe Moe、Paul Johnson、Wuyi Wangは、素材の品質を明らかにし、かつそれらの合成ダイヤモンドを天然ダイヤモンドや処理ダイヤモンド、他の方法によりラボで製造されたダイヤモンドなどから見分けるための方法を特定するため、分光技法と宝石学的技法を組み合わせてサンプルを分析しました。

サンプルは0.20~5.11カラットの重量があり、DからKまでのカラーグレード、そしてIFからI2までのクラリティグレードでした。 サンプルとして提出されたダイヤモンドの内89%がカラーレス(D-F)として分類されたのは非常に重要な結果であり、そのカラーグレードのダイヤモンドを作り出すための通常方法としてHPHT成長法を使えるということが証明されたのです。

Letšeng(レッツェン)のダイヤモンドが抱える独特の課題

レソトのLetšeng-la-Teraeダイヤモンド鉱山は世界で最も着実にタイプIIaのダイヤモンド(窒素含有量が非常に低いタイプ)を産出し続けている原産地であり、その産出量は鉱山の全体産出量の4分の1を占めています。 これまでに発見された大型ダイヤモンド上位20個の内、実に6個がLetšeng-la-Terae鉱山から産出されており、それぞれ 478、493、527、550、601、603カラットあります。 その中でも最大のLesotho Promise(レソト プロミス)は2006年に発見され、ロンドンの宝石商であるLaurence Graffに1,240万ドル(約14.7億円)で売却されました。

マロティ山脈の奥深く、Letšeng(レツェング)鉱山近くにあるこの村は、農業や羊の牧畜を主要に行っている。 村人はダイヤモンド鉱山での労働力ともなっている。 この写真にあるバスト・ポニーは、切り立った岩山の道での足の速さと強さを高く評価されている馬だ。 写真:Robert Weldon/GIA

Russell Shor、Robert Weldon、A.J.A. (Bram) Janse、Christopher M. Breeding、Steven B. Shireyらの報告によると、レッツェンのダイヤモンドはその大部分が他の産地ではほとんど見られない12面体をしており、稀少であるということです。 しかしその価値にも関わらず、レッツェンの鉱石品位は100トンあたり2カラットと非常に低く、苦難の歴史を辿ってきました。回収技術とダイヤモンドの価格が改善されるまでは経済性が見込まれなかったのです。

反復二元線形判別分析を用いたドロマイト関連ネフライトの原産地判定

標準的な宝石学装置や観察を用いたネフライトジェードの起源の特定は、以前から困難な作業でした。 執筆者であるZemin Luo、Mingxing Yang、Andy H. Shenは、東アジアに存在するドロマイト関連の8箇所の鉱床からネフライトジェードを採取しました。

戦国時代(紀元前約475~221年)の曾国君主の墓である曾侯乙墓から出土した 古代のペンダント。 © Hubei Provincial Museum(湖北省博物館)

3人は線形判別分析(LDA)に基づいた新しい統計的分析法とレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置 (LA-ICP-MS)から得た微量元素データを用い、これらのネフライトのサンプルで大きく改善された原産地判定(平均94.4%の精度)に成功しました。 この技法は、他の宝石の地理的起源を特定するためにも応用可能だということです。

ラボノート

G&Gのこのセクションでは、均一な色をした面にある無色の孔部が円錐形の歪みと合致している様子が見られるベリーライト ピンクダイヤモンドに見られる珍しいグレイニング構造、分光分析により処理が判明したHPHT処理イエローダイヤモンド、そして正しいオリエンテーションとカッティングの重要性を実証する、パビリオンファセット沿いに濃いカラーゾーニングが見られるエメラルドに関する考察を記載しています。 他にも新成長技術の産物である照射されたグリーン‐ブルーのCVD合成ダイヤモンドや、一部を緑に染色された天然グリーン ジェダイトの彫刻、大きな天然アワビ真珠3個の検査結果などに関するラボノートも記載されてます。

独特の外観を持つアワビ真珠3つと、比較のために置かれた12mmの典型的な南洋有核養殖真珠。

ミクロの世界

「ミクロの世界」セクションでは、平面状亀裂の複雑な幾何学模様とひずみ誘起による地色を持つファンシー インテンス パープリッシュピンク ダイヤモンドや、表面近くに放射線により引き起こされた視認可能な緑がかった青色のしみを持つ以外は無色のダイヤモンド原石、スピネルグループのうち希少な亜鉛を多く含むメンバーであるガーナイトと特定されたヘリオドールのカボション内の青い八面体結晶インクルージョン、そしてタイとミャンマーの国境付近で発見されたと言われるトラピッチェ ペツォッタイトを紹介しています。

八面体面に沿って劈開ネットワークを作り出す歪みに一致した、高次干渉色を交差偏光板下で見せるダイヤモンド。 顕微鏡写真:Jonathan Muyal、視野0.62mm。

このセクションでは他にも、モンタナ州の漂砂鉱床産サファイア内のガラス質のメルトインクルージョン、カラーレス トパーズ内のモリブデナイトインクルージョン、そしてインクルージョンの外見を際立たせる疑似カラーコントラストを作り出す、宝石学顕微鏡検査の照明技術である改良ラインベルク照明法などを取り上げています。

Russell Shorは、カールスバッドのGIAのシニア業界アナリストです。