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ダイヤモンドの研究、大陸の形成に関する手がかりを与える


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西アフリカのシエラレオネにあり、リベリアとの国境近くに位置する町、Zimmi(ジミ)から産出されたタイプIbのダイヤモンド原石。西アフリカ大陸がどのように形成されたかを理解するのに手がかりとなる化学組成を持つ硫化物インクルージョンが含まれている。写真撮影:Karen Smit/GIA

こちらの記事は、2019年4月26日にScience(サイエンス)誌に掲載された、Karen V. Smit、Steven B. Shirey、Erik H. Hauri、Richard A. Stern著の記事ダイヤモンドの硫黄同位体、大陸の形成における違いを解明の要約です。

ダイヤモンドは、最も貴重な宝石の一つであり、地球科学者にとって非常に価値がある宝石でもあります。ダイヤモンドの鉱物インクルージョンは、地球の中の到達できないほど深い場所から直接入手できる試料です。ダイヤモンドに含まれているインクルージョンは、地球内部の水分、地球深部における鉱物学および金属相に関する情報を地球科学者に提供します。また、ダイヤモンドが形成された年代をダイヤモンド自体から直接判断することはできないため、ダイヤモンドの内部に閉じ込められた鉱物インクルージョンが、この情報を提供する唯一の手がかりとなります。ダイヤモンドのインクルージョンは宝石業界では望ましくないと考えられていますが、非常に貴重な科学的試料となるのです。

この研究では、シエラレオネのZimmi(ジミ)鉱区から産出されたダイヤモンドにある硫化物インクルージョンの硫黄およびレニウム-オスミウム同位体を測定しました。硫化物は、ダイヤモンドの成長中に閉じ込められた極小の鉱物であり、通常は幅100~300ミクロンです。

この硫化物は西アフリカ大陸で沈み込みを2回記録したことが発見されました。沈み込みは、地球深部で2つのプレートが衝突した際に海洋地殻が別のプレートの下に滑り込むときに発生します。ジミの硫化物が記録した最初の沈み込みは約30億年前に発生し、2番目の沈み込みは約6億5000万年前に起きました。
 

ダイヤモンドに含まれているシルバーグレーの硫化物インクルージョン。
Zimmi(ジミ)産ダイヤモンドに閉じ込められた硫化物インクルージョン。硫化物はシルバーグレーに見え、黒くなったフラクチャーに囲まれている。硫化物はダイヤモンドよりも大きく膨張するため、これらのフラクチャーがキンバーライトの上昇中に生じる。写真撮影:Karen Smit/GIA

30億年前の沈み込み

硫化物には同位体組成が含まれているため、酸素が23~25億年前に誕生する前に硫黄が原始大気で循環していたことを意味します(Farquhar 他、2001年)。これは、質量非依存分別(MIF)硫黄同位体によって示されます。現代の硫黄(または原始大気で循環していなかった硫黄)には、これらのMIF同位体がありません1。これらの硫化物インクルージョンにMIF硫黄が存在するということは、起源が地球の原始大気において地表にあることを示しています。この硫化物は、マントルへの海洋地殻の物質の沈み込みと合体が確立されてきた時期である約30億年前に地球深部に配置された可能性があります2,3

6億5000万年前の沈み込み

これらの硫化物インクルージョンでは、レニウム-オスミウム同位体も測定されました。レニウム-オスミウム法は、ダイヤモンドが形成された時代を判断するのに最も広く使用されている技法です4。Zimmi(ジミ)産ダイヤモンドは6億5000万年前に形成されたことが発見され5、この年代は5億5000万年~7憶年前にこの地域で起きた沈み込みおよび衝突により山が形成された時期と重なります。海洋地殻の沈み込み、およびその結果生じた海洋地殻の脱水により、ダイヤモンドを形成するための炭素を含有する液体が地球深部に流出したのでしょう6

注目するべき理由

地球最古の大陸(クラトンと呼ばれる)は、リソスフェアマントルキールによって安定化されています。破壊的なテクトニック活動にもかかわらず地球の大陸が安定化したことで、地球に生命が誕生するために地質学上重要な基盤が敷かれます。地球は構造学的に見て唯一活発であり、岩石のある惑星であるため、地球の大陸が形成された方法に関する地質学を理解することは、何が地球を居住可能にするかを理解するための重要な点となります。

クラトンの安定性は、その下にある厚さ約150~200kmのマントルキールに依存します。これらのマントルキールが形成される過程は依然として議論の的となっており、その起源については様々な理論があります。クラトンが形成される過程を示すいくつかのモデルには、プレートが地球深部に沈み込み、クラトンのキールを安定させるという沈み込み型のプレートテクトニクスが関連しています。他のモデルは沈み込みとは関係なく、その代わりにマントルプルームの融解または海台での融解のようなさらに深いマントルのプロセスを必要とします。

幸いにも、これらのマントルキールはダイヤモンドの形成に理想的な条件を備えています。天然ダイヤモンドの大半は、これらのクラトンマントルキールで形成されます。ダイヤモンドは、最古の大陸の下で安定化したキールがどのように形成されているかを調査するために使用できる重要な試料になります。

ダイヤモンドにある硫黄同位体は、レニウム-オスミウム法により判断された年代と組み合わせることで、クラトン成長中に起きた複数の沈み込みを数十億年かけ離れて発生したとしても追跡するために使用することができます。沈み込みの過程は、20億年の期間にわたって西アフリカのクラトンの成長および変更に不可欠でした。

この結果を、アフリカ南部およびカナダ北部から産出されたダイヤモンドと比較しました。同位体を組み合わせたこの方法は、世界中のクラトン構造における違いについても解明することが確認されました。ジミ産ダイヤモンドと同様に、南アフリカのJwaneng(ジュワネン)およびOrapa(オラパ)鉱山のダイヤモンドには、MIF硫黄が含まれています1,7。これは、南アフリカのクラトンマントルの形成においても沈み込みが重要な過程であったことを示しています。

しかし、カナダ北部で採鉱されたダイヤモンドは、同じ硫黄化学物質を示しません。Ekati(エカティ)鉱山から産出されたダイヤモンドは、レニウム-オスミウム法によると35億年前に形成されたと判断されており、MIF硫黄はありません8,9。これは、この地域のマントルキールが、表面物質を取り入れない方法で生じたことを意味します。カナダ産ダイヤモンドの硫黄からはマントルキールがどのように形成されたかが判断できず、どのように形成されていなかったかのみが確認できます。

この研究は、ダイヤモンドの硫化物インクルージョンがクラトンの形成過程を調査するための強力な手がかりとなることを示しています。

電子顕微鏡で観察した硫化物インクルージョンの画像。
ダイヤモンドから分離され、走査型電子顕微鏡で撮影された硫化物インクルージョン。この硫化物は、表面に立法八面体の形態およびトライゴンがある。これら両方の特徴が、ダイヤモンドによって硫化物に付けられた。画像:Karen Smit/GIA


検査方法

ダイヤモンドの特性を明らかにし、インクルージョンの画像を撮影するために、最初に板状のダイヤモンドの両面をレーザーでカットし、研磨しました。

レニウム-オスミウム同位体

小さなハンマーとスチール製の割り器を使用して板状のダイヤモンドを切割し、硫化物インクルージョンを分離しました。インクルージョンは極小であり、重量は3~162マイクログラムでした。ダイヤモンドからそれぞれのインクルージョンを分離した後、画像を撮影し、走査型電子顕微鏡を用いてその主要な元素組成を分析しました。

その後、クリーンルームのラボで同位体スパイクとして知られているトレーサー溶液の既知量とともに、酸で硫化物を溶解しました。化学的なプロセスを利用して、異なる酸性溶液にレニウムとオスミウムが分離されました。レニウムとオスミウムを含む溶液は、それぞれホットプレートで乾燥させます。

オスミウムの乾燥した塩分が金属フィラメントの上に置かれ、表面電離型質量分析計(TIMS)に配置されます。フィラメントは、その後、この装置を介して加速されるイオンを生成するために加熱され、異なるオスミウム同位体が、非常に高感度な検出器で測定されます。

レニウムの乾燥した塩分は希酸溶液に混入され、その溶液はマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(MC−ICP-MS)に配置されました。溶液をプラズマでイオン化し、それらのイオンをこの装置で加速し、2つの異なるレニウム同位体を非常に高感度な検出器で同時に測定しました。

硫化物で測定されたレニウムとオスミウムの量は、フェムトグラムからピコグラムの範囲で示されます。1フェムトグラムは 10-15gまたは千兆分の一(ppq)、1ピコグラムは10-12gまたは一兆分の一(ppt)です。このような微量を測定しているため、少量の異物が混入しただけで試料が台無しになってしまう可能性があります。このため、ダイヤモンドのインクルージョンの作業専用の備品を備えたクリーンルームのラボでこの作業を行うことが非常に重要となります。

レニウム-オスミウム分析は、化学ラボおよびCarnegie Institution for Science(カーネギー研究所)地磁気部にあるThermo-Fisher(サーモフィッシャー社)のTriton機器を使用して行われました。

硫黄同位体

硫化物インクルージョンは、硫黄同位体を測定するためにダイヤモンドから分離されませんでした。その代わりに、硫化物インクルージョンが現れるように板状のダイヤモンドをダイヤモンドスカイフでさらに磨きました。それぞれのインクルージョンが表面に現れるまで数時間から1日かかりました。

硫化物インクルージョンが表面にある板状のダイヤモンドは二次イオン質量分析計(SIMS)に配置されました。硫化物に小さなくぼみを作るためにセシウムのイオンビームがこの試料に照射されました。その後、硫化物から放出された素材は、この装置を通して加速され、4つの異なる硫黄同位体を非常に高感度の検出器で同時に測定しました。

硫黄同位体は、University of Alberta(アルバータ大学)でCameca IMS 1280機器を使用して測定されました。事前の測定は、カーネギー研究所の地磁気部のCameca NanoSIMSを用いて行われました。

ダイヤモンドについて

この研究に用いられたダイヤモンドは、シエラレオネのジミ漂砂鉱床から産出されたものです。ジミ鉱区は、リベリアとシエラレオネの国境近くに位置する町、Zimmi(ジミ)の南部にあります。この産地は、硫化物インクルージョンが豊富に含まれているイエローダイヤモンドを生産することで知られています。

Zimmi(ジミ)産のダイヤモンドには、窒素不純物が稀少な遊離した形で含まれており、タイプIbのダイヤモンドとして分類されます。タイプIbダイヤモンドは天然ダイヤモンドの中で非常に稀少であり、世界各地で採鉱される天然ダイヤモンドの0.1%にも満たないと報告されています。

筆者

Karen V. Smitは、2014年からGemological Institute of America(GIA)で研究科学者として活躍しています。ダイヤモンドとそのマントルの母岩を使用して、地球深部のダイヤモンドの形成過程を理解することに興味を抱いています。彼女の研究は、地球の大陸の起源およびプレートテクトニクスの過程がダイヤモンドの安定性に与える影響、そして最近では天然ダイヤモンドの分光学的特徴を使用して、ラボで製造されたダイヤモンドと処理済みのダイヤモンドから区別することに焦点を当てています。

Steven B. Shireyは、カーネギー研究所の地磁気部に34年間勤務しています。Shireyの研究は、地球の大陸の進化、特にマントルの進化の機能に焦点を当てています。ダイヤモンドに対する興味は20年以上前に始まり、大陸の形成とプレートテクトニクスをマントルの最深の視点から検査する方法を探求しています。

Erik H. Hauriは、カーネギー研究所の地磁気部に24年間勤務し、2018年に他界しました。地球と月における揮発性物質の地球化学的循環およびそれらの惑星ダイナミクスとの関係に関心を持っていました。二次イオン質量分析におけるHauriの卓越した専門知識は、月の含水率を理解する上で飛躍的進歩をもたらし、ダイヤモンドおよびその鉱物インクルージョンにおける安定同位体の分析につながりました。

Richard A. Sternは、アルバータ大学の研究科学者であり、イオンプローブ施設のマネージャーも務めています。過去25年間に行った研究は、地球化学と地球年代学の広範なトピック、および最近では軽元素安定同位体に対する二次イオン質量分析の開発と応用に焦点を当てています。

 

参考文献

1. Farquhar 他、2002年
https://science.sciencemag.org/content/298/5602/2369

2. Barth 他、2002年
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301926802001110

3. Aulbach 他、2019年
https://academic.oup.com/petrology/advance-article-abstract/doi/10.1093/petrology/egz011/5364029

4. Pearson 他、1998年
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X98000922

5. Smit 他、2016年
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301926816300882

6. Smit 他、2019年
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0009254119301895

7. Thomassot 他、2009年
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X09001447?via%3Dihub

8. Westerlund 他、2006年
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00410-006-0101-8

9. Cartigny 他、2009年
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0024493709002497?via%3Dihub

Karen V. Smitは、GIAの研究科学者です。