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宝石のカッティングスタイル - 定義


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Christopher Wolfsbergによってカットされたアメトリン。写真撮影:Orasa Weldon/GIA

全5部の連載記事『カラー宝石(ダイヤモンド以外)の価値要因、デザイン、カットの品質』の第2部。

2016年に初版がGemGuide(ジェムガイド)で発表されたこの総合シリーズは、ファセットカットされた宝石の価値を決定する際にカットの品質が果たす役割に特に重点を置きながら、カラー宝石の価値に影響を与える品質要因を検討します。GIAの研究員およびカットの専門家、Al Gilbertsonは、カットの要素を研究し、カット職人の選択、利害得失の判断そしてその理由を探求し、カラー宝石のカットの品質の様々な側面を評価するためのガイドラインを提供します。

オリジナルの連載記事のこのウェブサイト版は、5つの記事に分かれており、オリジナルの文体をわずかに編集したものです。

この連載記事の第1部では、カラー宝石の価格に影響を与える7つの主要な要因であるカラー、色の均一性、原産国、サイズ、クラリティ(透明度)、形、カットの品質を検討しました。第2部となるこの記事では、基本的なファセッティングスタイルに焦点を当てながら、共通言語をいくつか確定するためにカッティングスタイルの特徴を定義し、カボションとビーズに関して簡略に説明します。
 
本記事にわたって使用されるファセットの配置のワイヤフレームまたは描写に関する注記: これらは、宝石のカットの特徴を表現するために本物の宝石をスキャンして作成されました。フェイスアップのパターン(図2-14など)は、DiamCalcというプログラムを使用して作成されました。また、示されている宝石素材を表すために屈折率が調整されました。DiamCalcは複屈折を表示できません。

ファセットカットされた宝石の各部名称

ファセットカットされた宝石の大半には、一般的にクラウン、ガードル、パビリオンのように共通する特徴があります。しかし、世界のある地域では多くの宝石のカットに不規則なパビリオンファセットがあるため(図2-01参照)、ファセット自体が名称に関する一般的な慣例に従っていません。

ファセットの配列のワイヤーフレーム
図 2-01: このイラストでは、宝石と不規則なパビリオンファセットに共通する特徴が示されている。イラスト: Al Gilbertson/GIA

通常、観察者は光がどのように集まり、返ってくるかを観察するために、宝石のクラウン(上の部分)にある平らな上部のファセットすなわちテーブルを通して見ているように、宝石はカットされます。ガードルは宝石の外側の端であり、ジュエリーやアートでは金属が石を掴んでいるところです。パビリオンは、宝石の下側の部分です。パビリオンのファセットが底の部分で先端部に集まっている場合、その先端部はキューレットと呼ばれています。また、テーブルと平行である小さいファセットがキューレットに時折ありますが、これはキューレットファセットと呼ばれています。
 
宝石の全体の深さは、テーブルからキューレットまでの宝石の合計の厚さです。宝石のクラウン高さ(直径のパーセンテージで表わされる)は、カッティングスタイルによって深いものから浅いものまで様々です。 また、パビリオンの深さ(直径のパーセンテージで表わされる)も多種多様です。パビリオンの深さが浅すぎると、石がかすれて見えてしまい、これはウィンドウと呼ばれています。一方、パビリオンの深さが深すぎると、宝石が全体的に暗く見えてしまいます。
 
「ネイティブカット」(詳細は後述)と呼ばれているカットの多くの例が、図2-01および2-02で示されています。ファセットがパビリオンで非常に不規則であることがよくあります。クラウンは幾分規則的ですが、パビリオンのように不規則になることがあります。キューレットは、ネイティブカットの宝石ではかなり中心から外れていることがあります(図2-02参照)。これらの宝石は、キューレットが意図的に片側に偏ってカットされました。カットの品質を向上させるためにこれらをリカットすると、通常、色が損なわれ、価値が非常に減少します。

ネイティブカット
図 2-02: 業界で「ネイティブカット」と呼ばれているカットの例。意図的にシフトしたのが顕著なキューレットのレンダリングがかなりオフセンターである。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ブリリアントスタイルとファセットの名称

この業界でカラー宝石を販売している方々は、ダイヤモンドに焦点を置く方とカラー宝石を重視する方の2種類に主に分類されます。これら2つのグループの方々が宝石のある部分に異なる名称を使用することが時折あります。図2-03では、これらのファセットに使用される最も一般的な名称が記載されています。

Brilliant Styles and Facet Names
Fig. 2-03. Although there may be inconsistencies in how the trade describes certain facets, these are the most commonly used terms. Illustration: Al Gilbertson/GIA

テーブルは、クラウンの中心にある最大のファセットです。 クラウンメイン(ダイヤモンドの業界ではベゼル)は、通常、凧の形をしており、スター(テーブルに接する三角形のファセット)およびブレークまたはアッパーガードルファセット(ガードルに隣接しているファセット)間の位置を指します。クラウンメインは、通常、テーブルの端およびガードルの端に接しています。
 
カラーストーンのカット職人は、ファセットがテーブルに平行になっていなくても、キューレットがある場所に接しているパビリオンファセットをキューレットファセットと呼びます(カラー宝石の加工職人が使用するGemCadと呼ばれるソフトウェアが生成されるダイアグラムではこの様な名称を与えるのは一般的です)。このダイアグラム(図2-03参照)では、凧形のキューレットファセットがカイトファセットと呼ばれることもあります。ローワーガードルファセットとキューレット(またはキューレットファセット)の間に三角形または凧型のファセットが複数の列を成している場合、中間の列にあるファセットは、メインまたはパビリオンメインと呼ばれます。また、この場所にはファセットの列がいくつもあり、それらをすべてメインと呼ぶことがあり得るため、さらに紛らわしくなることがよくあります。ローワー ガードル ファセットまたはローワー ハーフ ファセットという名称は、ダイヤモンド業界ではパビリオン側にあるガードルのファセットを表すために使用されますが、カラーストーンのカット職人は、通常、これらをブレークファセットと呼びます。
 
形が対称でなくなると、ファセットの配置が標準的でなくなります。図2-04では、ファセッティングのスタイルはブリリアントですが、ブリリアントスタイルに共通する形が限定されていないため、パビリオンファセットの中には名称が不明なものがいくつかあります。

ブリリアントスタイルとファセットの名称
図 2-04: 形が対称でなくなると、ファセットの配置が標準的でなくなることがある。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ステップカットスタイル

ファセットの配置のほとんどは、最も古典的なエメラルドカットであるステップカットで主に で構成されています(図2-05参照)。どのような形でもステップカットにカットすることができます。図2-06は楕円形のステップカットを示しています。ファセットがきちんと接していなく、多くが平行でないことに注意してください。通常、商業用にカットされたほとんどの宝石ではこのような特徴が見られます。カットの精度が高ければ高いほど、これらのファセットがきちんと接します。キューレットのひとつのポイントではなく、このファセットの配置の下部に沿って線が形成されていることに注意してください。最下部はキューレットと呼ばれていますが、この線はキールまたはキールラインと呼ばれることがよくあります。通常、ステップカットにはキールがあります。

ステップカットスタイル
図 2-05: エメラルドカット向けステップカットのファセットの配置。イラスト: Al Gilbertson/GIA
ステップカットスタイル
図 2-06: 楕円形カット向けステップカットのファセットの配置。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ステップカットのファセットには4面あり、上下の端がほぼ平行になっています。クラウンファセットでは、上部の端がテーブルの端に平行(またはほぼ平行)になっており、下部の端はガードルに平行(またはほぼ平行)になっています。ほとんどの商業用のカットでは、ステップがきちんと接していない場所から残された三角形のファセットがあります。これらは時折5面となることもあります(例:エメラルドカットのクラウンにある角、図2-05参照)。

ミックス カット スタイル

ミックス カットは、カット職人がファセットの配置においてブリリアントカットとステップカットの両方のスタイルを使用したということです。楕円形とクッションは、パビリオンがステップカットされてもクラウンはブリリアントスタイルのカットが施される事が多くあります(図2-07参照)。そうすることで異なるパターンに光が分散します。カラー宝石の価値においては色が均一であることが重要です。また、カットのスタイルをミックスすることで、色が均一になり、キューレットにある小さなウィンドウがもたらす影響を最小限に抑えることができます。

ミックス カット スタイル
図 2-7: 図 2-7: ミックス カット スタイルは、ファセットの配置においてブリリアントカットとステップカットの両方のスタイルを使用する。楕円形やクッションシェイプの宝石は、このスタイルにカットされることが多い。イラスト: Al Gilbertson/GIA

バリオンカット(図2-08参照)などのあまり一般的でないカットの場合、ファセットの名称はカット職人によって異なる場合があります。

バリオンカット
図 2-08: バリオンカットは、ミックス カットのファセットスタイルの一例である。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ローズカットスタイル

ローズカットは、3つ以上のファセットで形成されたアペックス(図2-09参照)まで到達するドーム型のクラウンを持つ平らな底部があるのを特徴とします。バラの蕾の形に似ているためこのように名付けられたローズカットは、1500年代にダイヤモンドで最初に使用されたカットでした。1800年代まで、このカットスタイルはマーカサイト(白鉄鉱)やガーネットのような数少いカラー宝石で使用されていました。最近では、その他の数多くのカラー宝石で使用されています。

ローズカット
図 2-09: ローズカットは、1500年代に初めて登場したダイヤモンドのカットだが、現在はカラー宝石のカットとして人気を集めている。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ファセットカットされていないカッティングスタイル

宝石のカッティングスタイルでファセットカットされていないものは、ファセットカットされているスタイルよりも前から存在しており、ビーズまたはカボション(またはカボ)のいずれかが最も初期のものでした。宝石のビーズは、様々な形や大きさに成形加工され、糸を通したりするために穴が開けられます。素材は透明から不透明であるものが使用されます。

カボション: シンプルおよびダブル

シンプルカボションは半球形のトップに対し平らな底面があり(図2-10参照)、ダブルカボションはトップと底面がともに球面となっています(図2-11参照)。カボションをカットするのに通常使用される伝統的な形は、長円形(楕円形)です。これは、円のように均一に丸い形とは反対に、長円形ではわずかに対称でない部分に肉眼では気付きにくいことが原因であると考えられます。また、長円形はドームと組み合わせると魅力的になります。最近では、フリーフォームを含めて多くの形がカボションに使用されています。カボションという用語は、ビーズ、彫刻されたもの、ファセットカットされたもの以外のすべての宝石の形を表すためにによく使用されます。

シンプルなカボション
図 2-10: シンプルなカボションのトップは丸みを帯びており、底面は平らになっている。イラスト: Al Gilbertson/GIA
ダブルカボション
図 2-11: ダブルカボションの上部と底面は両方とも丸みを帯びている。イラスト: Al Gilbertson/GIA

カボション: アステリズム(星彩効果)とシャトヤンシー(猫目効果)

スタールビーのようにアステリズム(星彩効果)を持つ宝石やキャッツアイ・クリソベリルまたはトルマリンのようにシャトヤンシー(猫目効果)を持つ宝石の場合、高いドーム型の楕円形やラウンドのカボションカットがスターや猫目を見せるために必要となり、これらの効果はファセットカットでは表れることがありません。多くの場合、半透明からほぼ透明であり、スターや猫目を示すより良い品質の宝石では、裏がどのように加工されているかがより重要になります。裏は研磨する必要がありません(図2-12の最初の2つの宝石を参照)。Pala International, Inc.(パラ・インターナショナル)で副社長を務めるJosh Hallは、非常に透明な宝石で裏を研磨してしまうと、スターや猫目の効果が消えないとしても減少してしまうと指摘します(図2-12の3番目の宝石)。猫目またはスターがあまりはっきりとしていない半透明や透明の宝石では、裏を粗めに仕上げるとラインがはっきりとすることが時折あります。また、スターと猫目を持つ宝石の裏の部分は非常に深くなる可能性があるため、不必要な重量が加わります。

キャッツアイ効果のある宝石
図 2-12: シャトヤンシー(猫目効果)を示す半透明からほぼ透明の宝石、この場合(上、中段)アステリズム(星彩効果)を示すこれらのスターサファイアにおいては、後部を研磨せずに高いドーム状の楕円形のカボションにカットすることより、現象を最高の状態で見せることができる。スターガーネット(下段)の高度に研磨された表面は、スターをぼやけて見せる。スターサファイア (上、中段) 写真撮影: Orasa Weldon/GIA(上、中段)、写真撮影:Kevin Schumacher/GIA (下段)

どの輪郭でもこれらのカボションのバリエーションのいずれかにカットされることができます(図2-13参照)。初期のカボションには時折彫刻が施されましたが(紋章、コガネムシ、カメオなど)、今日のカボションでは、ダブルカボションカット、ハイカボションカット、ホローカボションカットのような一般的なバリエーションがあります。空洞のある宝石には、2つの目的のうちのいずれかがあります。1つめの目的は、特定の色を強化するために宝石の薄い半透明の壁の後ろに色の付いた接着剤を付けて見かけの色を変えるためです。2つめの目的は、色が非常に暗い宝石を明るく見せるためです。

カボションカットの変種
図 2-13: 輪郭(上)とスタイル(下)の組み合わせによって様々なカボションがある。イラスト: Al Gilbertson/GIA

カボション: カメオとインタリオ

カメオとインタリオは、今日ある彫刻が施されたカボションで最も一般的な形式です。カメオは素材の表面を浮き彫りするため、デザインが土台の上に残ります。インタリオは、カメオとは逆にデザインが表面の最も高い部分の下で宝石に沈め彫りされます。最も一般的なデザインは歴史的または宗教的な人物です。よく使用される素材には異なる色の層があり(例えば縞模様のあるアゲート)、このような特徴はデザインを形成したり飾り立てることで明確になります(顔は1つの色、背景は別の色など)。貝殻とアゲートが最も一般的に使用される2つの素材ですが、他には琥珀(アンバー)、サンゴ、ジェット、溶岩が使用されます。
 
彫刻される宝石はどんな形にでもなることができ、フリーフォームや幾何学的な形、彫刻された花、動物、神話に登場する野獣など様々です。また、最近彫刻された宝石では、家族の写真を複製することもできます。近年では、これらの種類の手彫りの宝石は、超音波機によって近代的になりました。超音波法によって非常に複雑に彫刻された宝石は、手彫りのものほど貴重ではありません。

カボション: 張り合わせ石

カボションでは最もよく見られる形ですが、2つ以上の宝石素材を結合させてひとつの宝石を作る「張り合わせ石」にファセットカットされた宝石が使用されることもあります。一般的な種類として、オパールダブレット(2つの石の組み合わせ)とトリプレット(3つの石の組み合わせ)が挙げられます。詐欺の目的でファセットカットされた宝石が組み合わされることが時折あります。この場合、天然の宝石素材がクラウンに使用されて、ガラスまたは合成石がパビリオンに使用されます。着色されたセメントの層は見かけの色を変えることさえもできます。インターシャは、絵やモザイクを形成するために宝石を組み合わせる象眼の複合芸術の様式です。

形そして時にはカッティングスタイル

この連載記事の第1部「カラー宝石の価値要因」で説明したように、宝石の形や輪郭、時にはカッティングスタイルが価値要因となります。ある特定の形は需要がより高いため、その形の宝石は販売しやすくなります。宝石の輪郭は、さまざまな形になることができ、それぞれの形でファセットの配置の種類はほぼ無制限にあります。図2-14は、業界で使用されている最も一般的な形の一部を示しており、それぞれの形での複数のファセット配置も示しています。これらの名称の中には紛らわしいものがいくつかあります。エメラルドとは、輪郭、特殊なファセットの配置、またはその輪郭を持つカッティングスタイルを指します。例えば、ラディアントとは輪郭がエメラルドであるブリリアントカッティングスタイルです。スクエア エメラルド(議論の的になる呼称)は、八角形と同じです。三角形、トリリオン、トリリアントは、平らな側面(時々隅切りがある)または湾曲した側面があることもあります。この図で表示されていないその他の輪郭の形の名称は、ブリオレット、六角形、キーストーン、凧型、菱形、五角形、ロンボイド、Sカーブ、7面、シールド、台形などです。

一般的な形
図 2-14: 業界で最も一般的に使用されているファセットカットされたカラー宝石の形の例。イラスト: Al Gilbertson/GIA

カットの品質タイプ

上記のセクションでは、カットの輪郭とファセットの配置(ローズカット、エメラルドカット、カボションなど)によって、一般的なカッティングスタイルをグループに分けて説明しました。しかし、カットの全体的な品質も、広範なカテゴリに分けて説明することができます。以下の品質のタイプの名称は便宜上のものであり、著者によって任意に選択されていることをご了承ください。タイプが混同したり、分類するのが必ずしも簡単であるとは限らないため例外があります。

「ネイティブカット」の宝石

「ネイティブカット」とは、多くの場合、外観が雑に見えることを示しており、カットの技術がほとんど時代遅れなため、正確さに欠けていることが想定できます。今日の市場ではネイティブカットの宝石はほとんど見られません。
 
ネイティブカットの宝石は、通常、ジャムペグ機器でカットされます(図2-15参照)。回転する研磨盤(C)で研削および研磨をすることができます。原石が固定される木製の「ドップ」棒(D)は、平らなファセットが置かれるように宝石をその場で固定します。各ファセットの角度は、特定の穴(E)にドップ棒を置いてコントロールすることができますが、宝石の加工職人は、かける圧力の量および宝石が研磨盤に接触している時間によってどのくらいカットするかコントロールします。異なるファセットがそれぞれ配置される際、ドップを機器から持ち上げ、わずかに回転させ、(ファセットの特定の列に)同じ穴へドップを再び入れて、ファセットが宝石の周りに放射状に配置されます。これは、ファセットが最初に研磨盤のきめが粗い面に配置されてから、それぞれのファセットを研磨盤で研磨してこの工程を繰り返すため、非常に困難です。このように作られた宝石は数多くあります(図2-16参照)。輪郭が対称的でないことがよくあり、ファセットがきちんと配置されていないことに注目してください。通常、クラウンは慎重にカットされており、ファセットはかなりよく接しているものの、パビリオンには余分なファセット、不均等な列、きちんと接していないファセット、中心から外れているキューレットがあります。

ジャムペグ機器
図 2-15: 従来のジャムペグ機器は、不完全で精度の低いカッティング品質のスタイルを生成するとは限らない。実際、この方法より進化したファセットの配列は、宝石の色がより均一になることがよくある。イラスト: Al Gilbertson/GIA
ネイティブカットの宝石
図 2-16: 通常、ジャムペグ機器でカットされた宝石の輪郭は対称的でなく、ファセットが正しく配置されていない。ルビー(上と下)、サファイア(中央)。イラスト:Al Gilbertson/GIA、写真撮影:Robert Weldon/GIA

前述のように、ジャムペグ機器によってカットされた宝石は、不完全なタイプのカットであると想定されており、作業がおろそかに行われ、精度が低いと考えられています。しかし、必ずしもそうとは限りません。実際、この方法より発達したファセットの配列は、色を非常に均一に向上し、拡散するのです(色が均一であることは非常に重要です)。 宝石のカットを専門とする企業の中には、ジャムペグ機器と同様の方法と現代的なファセッティング機器の両方を使用して、古いスタイルの配置にファセットを慎重に配置するのに優れている企業が数社あります。

商業用カットの宝石

「商業用カット」には、多くのネイティブカットスタイル(ファセットの配置)が含まれますが、カットの品質がより優れています(図2-17参照)。特に輪郭が均一かつ対称的であり、ファセットがより対称的です。この記事では、商業用とは、宝石素材の一般的な品質ではなく、カットの一般的な品質のみを指します。かつてネイティブカットの宝石で知られていたカッティングセンターでは、「熟練工」が依然として古いカッティングスタイルの基準を使用して原石からカット形状へ粗削する可能性がありますが、その後は現代の方法を用いて宝石の加工を終了します。ネイティブカットと商業用カット品は共に品質の範囲がありますが、この2つの境を区別するのは非常に困難です。

ネイティブカットの宝石
図 2-17: 商業的にカットされた宝石では、宝石の輪郭がより均一かつ対称的であり、ファセットの対称性が向上する。オーソクレーズ(正長石) (上)、トパーズ (中央) スカポライト(柱石) (下)。イラスト: Al Gilbertson/GIA 写真撮影:Robert Weldon/GIA

デザイナーカットの宝石

商業用カットとネイティブカットの宝石の境が若干あいまいであるのと同様に、商業用カットとデザイナーカットの違いもあいまいです。上記の図2-17の3番目のデザインであるスカポライト(柱石)の宝石に対しては、多くがデザイナーカットとして判断するでしょう。

「デザイナーカット」(別称「精密カット」)を最も適切に定義すると、従来のファセッティング方法を使用しながら、珍しいファセットの配置を利用した独自のフェイスアップのパターンをデザイナーが作成する宝石となります(図2-18参照)。それが明るく輝いているか、独自のフェイスアップのパターンの一部として意図的にウィンドウがあるかのいずれにしても、ほとんどのデザイナーの目標は、ユニークなフェイスアップのパターンを持つ新鮮な外観を作ることです。米国では、地元の宝石商だけでなく、見本市でブースを持つ大きな宝石カット企業(アメリカ宝石取引協会のような団体のメンバーである企業も含む)のために宝石をカットするカット職人が数多くいます。

ネイティブカットの宝石
図 2-18: シェーライト(灰重石、上)、ペリドット(中央)、ホスゲン石(下)が、デザイナーカットの一例を示す。フェイスアップで見た外観がユニークな宝石は、従来のファセッティング技法を使用して、ファセットを異なって配置することで完成された。イラスト: Al Gilbertson/GIA 写真撮影:Robert Weldon/GIA

デザイナーと職人の区別は、自動車業界に比べると理解しやすくなります。デザイナーは新しいモデルの車をデザインし、熟練した職人が工場でそれとそっくりなものを大量に作ります。この記事では、「デザイナーカット」は、新しいフェイスアップの外観を作るために伝統的に制作されている多くのファセットの配置から区別されます。しかし、自動車業界との比較は、ここで終わってしまいます。その理由は、視覚的に興味深い新しいデザインが作られると、多くの場合デザインがその他のカット職人と共有されて、多くの人々によって再現されてしまうからです。これらのデザインを繰り返す人を職人と呼ぶのがふさわしいでしょう。また、より伝統的なファセットの配置とは全く異なり、より正確にカットされているので、このような職人がカットした宝石をデザイナーカットと呼ぶことができます。あまり紛らわしくない用語「精密カット」をあえて使用する方がいるのはこのためかもしれません。

ファンタジーカットとアーティスティックカッティング

 「ファンタジーカットとアーティスティックカッティング」には、標準的なファセッティングがある珍しい輪郭および窪みのあるファセッティングがある標準的な輪郭の両方が含まれます(図2-19を参照)。これらのデザインのほとんどは、ダイナミックな輪郭を形成するパビリオンに研磨された溝が独特に配置されています。パビリオン(またはクラウン)にある研磨された溝は、従来のファセッティングでは不可能であった光の新しいパターンを生み出すのに役立ちます。トーラスカットのために浅い原石を使用するGlen Lehrerのように、半端な原石を使用する方法を見いだしたアーティストもいます。この議論(この連載記事の第5部で再度取り上げられる)は、上記のファセットスタイルに限定され、それらのいずれかが判断しにくいもの(彫刻が施されたデザインのほか、宝石の反対側に時折無作為に記載された「光学的ディッシュ」)を回避しています。

ネイティブカットの宝石
図 2-19: ファンタジーカットの例。上段: Christopher Wolfsbergによってカットされたアメトリン(左)、商業用にカットされたブルートパーズ(中央)、Bernd Munsteinerによってカットされたトルマリン Jeanne Larson/The Collector Fine Jewelry(コレクター・ファイン・ジュエリー)の提供(右)。下段:D.K. Kimによるキュービックジルコニア、Wobitoスタイルの複製品(左)、Dalan Hargraveによってカットされたクォーツ(右)。写真撮影:Orasa Weldon/GIA (上段左、下段左)、Robert Weldon/GIA (上段中央、上段右、下段右)

ファンタジーという用語は、空想を意味するドイツの単語phantasieに由来し、慣習的な宝石細工の用語ではこのスタイルを分類する試みがあります。ファンタジースタイルで最も重要なアーティストの一人として、1970年代にこのスタイルを紹介したBernd Munsteinerがいます。Munsteinerは、彼が「総反射」と呼び、他の者曰く「内部のファセットを彫刻する」ように思われるものに焦点を当てています。このスタイルにカットする者は、宝石素材から美しさの対象物を作成することを目指しています。アメリカおよび外国の工場やカット職人らが、著名なデザイナーのカットスタイルを模倣し製品を大量生産していますが、低品質の宝石を使用して技量も粗雑なため、下手なカットの安価な例を容易に見つけることができます。

まとめ

現時点では、アーティスティックカッティングとプレシジョンカッティングに品質が非常に似ている宝石を工場が生産していますが、カットの品質を注意深く検査すると、期待されている精度や品質を持っていないことが明らかになります。自動カッティング機器の出現により、品質の範囲において区別するのが困難となり、商業用カットの宝石の品質が改善されるのが期待できます。
 
この記事では、基本的なファセッティングスタイルに焦点を当てながら、共通言語をいくつか確定するために様々な宝石のカッティングスタイルの特徴を定義しました。そうすることで、カット職人の選択がカラー宝石の最終的な外観(および価値)にいかに影響を与え得るかも検討しました。
 
この連載の次回の記事である第3部および第4部では、カット職人が行う多くの決断そしてその理由、そして相対的な価値を評価するために業界で使用される要因をさらに深く探求します。また、第5部ではクラフトマンシップの問題について説明します。全記事を通して、カット品質および宝石素材に対するその価値の影響を理解する基礎をご理解いただるでしょう。

次回の予告: 第3部:「暗さと明るさ」では、カットに関する決断がいかにして宝石の色の品質に重大な影響を与えるかを検討します。

Al Gilbertsonは、カールスバッドにあるGemological Institute of Americaのラボのカット研究部門でプロジェクトマネージャーを務めています。GIAに入社する前は、American Gem Society(アメリカ宝石学会、AGS)のカットタスクフォースで、カットグレーディングのASET技術の基礎としてAGSが取得した特許を開発するなど、多大な貢献をしました。GIAには2000年に入社し、ラウンドブリリアントダイヤモンドのためのGIAカットグレーディングシステムを開発した研究チームの一員となりました。また、Gilbertsonは『American Cut—The First 100 Years(アメリカのカット — 最初の100年)』の著者でもあります。

この記事をレビューしていただき、貴重なご意見をいただいたWayne Emery(The Gemcutter)、Brooke Goedert( 研究データスペシャリスト/GIAカールスバッド)、Josh Hall(副社長/Pala International, Inc.)、Dalan Hargrave(Gemstarz)、Richard Hughes(Lotus Gemology)、Stephen Kotlowski(Uniquely K Custom Gems)、Andy Lucas(コンテンツ戦略およびフィールドジェモロジィ教育部門マネージャー/GIAカールスバッド)、Nathan Renfro(鑑別部門分析マネージャー/GIAカールスバッド)に、深くお礼を申し上げます。

この連載記事の第1部および第2部は、GemGuide(ジェムガイド)の2016年1月/2月 第35巻1号、第3部および第4部は、2016年3月/4月 第35巻2号、第5部は、2016年5月/6月 第35巻3号に掲載されました。記事では主題に「ファセットカットされた」という用語は使用されていませんが、この連載記事の主な要点は、ファセットカットされた宝石です。
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