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カラーストーンの暗さと明るさ


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多くの宝石商は、プロポーションが深い宝石を避ける可能性がある。しかし、このクンツァイトのプロポーションは深いため、ウィンドウが小さくなり、フェイスアップの色(上面図)が側面から観察したときよりも飽和している。写真撮影:Orasa Weldon/GIA

全5部の連載記事『カラー宝石(ダイヤモンド以外)の価値要因、デザイン、カットの品質』の第3部。

2016年に初版がGemGuide(ジェムガイド)で発表されたこの総合シリーズは、ファセットカットされた宝石の価値を決定する際にカットの品質が果たす役割に特に重点を置きながら、カラー宝石の価値に影響を与える品質要因を検討します。GIAの研究員およびカットの専門家、Al Gilbertsonは、カットの要素を研究し、カット職人の選択、利害得失の判断およびその理由を探求し、カラー宝石のカットの品質の様々な側面を評価するためのガイドラインを提供します。

オリジナルの連載記事のこのウェブサイト版は、5つの記事に分かれており、オリジナルの文体をわずかに編集したものです。

画像について: ファセットの配置のワイヤフレームまたは描写(図3-09の左側など)は、宝石のカットの特徴を示すために本物の宝石をスキャンして作成されました。フェイスアップのパターン(図3-09の右側など)は、DiamCalcというプログラムを使用して作成されました。また、示されている宝石素材を表すために屈折率が調整されました。DiamCalcは複屈折を表示しません。

カット職人による利害得失の判断

宝飾業界がカラー宝石の相対的な価値をどのように評価するかを議論する前に、カット職人が様々な利害得失を計るのを強いられた例がよくあることを認識するのが重要です。例えば、カット職人がとても稀少で非常に薄い原石を入手したとします。その原石から小さい宝石をいくつかカットするでしょうか。それとも、非常に薄くて、ウィンドウがかなり付いている大きめの宝石をたったひとつカットするでしょうか。多くの場合、どちらのシナリオにおいても得られる価値はほぼ同じになります。しかし、場合によっては、どちらか一方が大幅に価値が高くなることがあります。その原石を1つの宝石にカットすることで、その種で最大のカット宝石になるのであれば、カット職人は、おそらく1つの宝石にカットすることを選ぶでしょう。このように利害得失を判断する際には考慮すべき点が多々あるのです。

暗さ - 良い点と悪い点およびその原因

消光とは、宝石をフェイスアップで観察したときに見える暗い部分であると宝飾業界の多くの方が理解しています。この説明には十分な情報がありません。消光は、宝石で観察されるパターンの暗い、もしくは黒い部分が生じる4つの異なる原因のうちの1つにしかすぎません。

  1. 吸収。 素材が非常に暗く(図3-01参照)、光が宝石を通過することができない状態のことを指します。宝石を通過する可視光のスペクトル全体が実際に吸収されてしまいます。このような暗さは良くありません。 吸収
    図 3-01: 可視光線のスペクトルは、この非常に暗いスピネルではほとんど完全に吸収されている。写真撮影:Robert Weldon/GIA

    宝石の暗いパターン
    図 3-02: このチャートは、宝石の光を反射する能力に与えるクラウンおよびパビリオンの角度の影響を示している。この図の一部は、Richard Hughes、Gemological Digest(ジェモロジカル・ダイジェスト)1988年、第2巻、第1号 & 2号、10-15頁から借用された。イラスト: Al Gilbertson/GIA
  2. ウィンドウ。 光が宝石を通過してしまい、どの方向においてもパビリオンファセットにより光が観察者へ跳ね返ってきません。つまり、宝石を見すかしているということです。このため宝石の中心部に灰色のくすんだ部分ができてしまい(図3-02参照)、これはマイナス要因として考えられます。この記事では、後ほどウィンドウについて詳しく説明します。
  3. 消光。光が宝石に入り、パビリオンファセットで少なくとも1回跳ね返しますが、クラウンを通して観察者に戻りません。観察者は、宝石の外側の低い角度から出てくる、その急な角度のあるファセットから反射を見ることができます。明るい光源(非常に明るい場所)から反射している隣接するファセットと比較すると、強いコントラストが原因で低角度の反射が暗くなるため、黒に近くなったり、消滅したりします。宝石の外にある何かの反射をそのファセットから見れるはずですが、宝石を通して見ることができません。つまり、暗さだけが見れるのです。これが本当の消光であり、パビリオンに急な角度がある結果として起こります(図3-02参照)。


    パビリオンの角度が急傾斜であればあるほど、消光がより極端になります。熟練したカット職人は、消光を活かして使用することができます。例えば、深いパビリオンがある淡い色の素材(クンツァイトまたはシトリン(黄水晶))をカットすると、宝石を通ってより長い経路を移動する光をより強く吸収できるだけでなく(これはいくつかの宝石をわずかに向上させる)、宝石の色をより明確に示します。結果として起こった消光が、コントラストを介して色の飽和を増加させるように思われます(これについては後ほど詳しく説明する)。消光を作る角度を意図的に選択すると、さらに飽和している宝石のような錯覚が生まれます。逆に、消光が最小限で光がより多く戻ってくる角度を作ると、飽和が少ない宝石のような錯覚が起こります。

  4. 観察者と物体の反射観察者は、通常、肉眼から8〜20インチ(20~50㎝)離して宝石を手に持ちます。通常、光は肩越しから宝石に入り、宝石に戻るため、観察者は見ることができます。観察者は、周囲の光源に比べて暗い物体として反射されます (図3-03参照)。これは、観察者と物体の反射として考える必要があります(Harding、1975年Gems & Gemology(宝石と宝石学)1975年秋号およびGilbertson、2013年)。

    観察者と物体の反射
    図 3-03: 観察者の反射は、宝石の暗い部分を認識するのに影響を与える。イラスト: Bruce Harding/GIA

    このような暗さは、ほどほどに使用される場合には良いものとなります。多くの宝石に見られるコントラストのパターンは、観察者の頭と胴体の反射が原因で起こります(図3-04参照)。観察者の反射は重要です。その結果として起こるコントラストのパターンは、宝石の明るさやくすみの印象に影響を与えます。

    観察者と物体の反射
    図 3-04: 宝石におけるコントラストのパターンの暗い部分は、観察者の頭と胴体の反射であることがよくある。イラスト: Al Gilbertson/GIA


    観察者の反射について理解を深めるためには、完全に拡散する白色光の環境でファセットカットされた宝石がどのように見えるかを考えてみましょう。宝石が白色光以外には何も反射しなかった場合、コントラストが全くありません(図3-05のボックス A参照)。蛍光色の赤いマスクで顔と肩を覆い(図3-05のボックスB参照)、その拡散された白色光のみの環境で宝石を観察すると、このように見えます(図3-05のボックスC参照)。宝石にもっと近寄ると、赤い色が宝石全体にもっと反映されるでしょう(図3-05のボックスD参照)。部屋の明かりがついていなく、観察者の顔に光が輝いていた場合、結果はちょうど反対になり、観察者の顔が明るい部分として反射し、宝石は主に暗くなります。

    Observer and object reflection
    Fig. 3-05. An example of how an observer influences the contrast patterns of light and dark in a gem. Box A: a gem in fully diffused white light. Box B: a hypothetical observer covered with a fluorescent red mask. Box C: the observer’s reflection in red on the gem. Box D: as the observer moves closer, the stronger and darker his reflection. Illustration: Al Gilbertson/GIA.

    観察者の反射の例として明らかなのは、暗いボウタイです。図3-02は、パビリオンの角度が変化するにつれて、サンプルの宝石のボウタイ(12時と6時の位置)がどのように変わるかという例を示しています。これは、パビリオンの角度の狭い範囲で起こる観察者の反射の結果として生じます。

宝石の魅力に対するコントラストの影響

宝石に見られるコントラストのパターンは、観察者の反射から、または消光からのいずれにしても、色の外観、明るさ、魅力に影響します。コントラストのパターンは、ファセットの配置(角度と位置)が原因で作られます。より伝統的なカッティングスタイルは、コントラストのパターンを目立たなくし、見かけの色をより均一で落ち着いた色にします。しかし、ファンタジースタイルのカッティングの暗いアクセントがある部分によく見られる強いコントラストは、色の強い印象およびよりダイナミックな外観を作り出します(図3-06参照)。

サンストーン(日長石)とトルマリンのカット
図 3-06: ファンタジーカットはコントラストを利用して、これらのサンストーン(日長石)やトルマリンの宝石で色の印象をより強くする。カット:John Dyer 写真提供:John Dyer & Co.

下の図(図3-07参照)は、色の見え方に対するコントラストの影響を示しています。写真にある円の青い色は、すべて同じです。しかし、左側の円は右側の円よりも強いコントラストを示しています。右側の青色の全体的な印象は、グレーとのコントラストが少ないために弱くなっています。これは、強いコントラストがより魅力的で、その結果として色がより鮮やかになることを示しています。

一連の円
図 3-07: すべての円は同じ青色であるが、左にあるコントラストがより高く暗い部分を持つ円の青色は、より鮮やかで、魅力的に見える。イラスト: Al Gilbertson/GIA

残念ながら、多くのデザインにおいて強いコントラストは、すでに強く飽和している宝石素材と使用するとき、色がもっと暗かったり、暗すぎるという印象も与えてしまうかもしれません。

ウィンドウと深さ

前述したように、強いコントラストは、色の印象と均一性を強化します。コントラストが弱いとその逆が起こります。ここに示されている3つのライトピンクの宝石(図3-08参照)は、それぞれテーブルの下にウィンドウがあります。ウィンドウが大きくなるにつれて、宝石の中心部の色が弱くなり、均一でなくなります。

スピネル
図 3-08: ウィンドウイングの影響を示す3つのスピネル。大きなウィンドウを持つ左側のスピネルは、3つの宝石のうち最も弱く均一性に劣る色を示している。写真撮影:Robert Weldon/GIA

カット職人による利害得失の判断: カッター職人は、より大きく、もっと重い(そしてより大きなウィンドウのある)宝石に仕上げるか、それともウィンドウのない小さい宝石をカットすることでもっと価値がでるかを判断しなければなりませんでした。図3-02では、カラーの飽和が十分に強いので、フェイスアップの外観と価値に対するウィンドウの影響が最小限になるため、カット職人はわずかに浅いパビリオン (57%) を使用することを選択する可能性があります。また、これは原石からの歩留まりがより高く、その宝石の最終的な価値は、パビリオンの深さが62%であり直径が小さい宝石にカットした場合よりも高くなる、ということかもしれません。その一方では、最高の色を達成するために、深さは少なくとも62%である必要があり、それがより重要であると考えるカット職人もいるかもしれません。

宝石の屈折率(RI)は、ウィンドウを回避するために理想的な深さを決定します。屈折率とは、特定の宝石素材がどの程度光を曲げることができるか測定します。RIが高いほど、ウィンドウを回避するために宝石をカットするべき深さは浅くなります。よくカットされたダイヤモンド(RI=2.417)は、さらに浅くカットすることができ、傾けてもウィンドウを示さないのはこのためです。

宝石のダイアグラム
図 3-09: 異なる屈折率を持つ宝石は、同じプロポーションにカットした場合でも、フェイスアップの外観が異なることがある。ベリル (緑柱石) = RI 1.589;グロッシュラーガーネット = RI 1.74. イラスト: Al Gilbertson/GIA

図3-09の例では、ベリル (緑柱石)、グロッシュラーガーネット、15度傾いているグロッシュラーガーネットが示されており、深さは、図の上部から下部に移動すると少し浅くなります。左の図は、右に示されている宝石素材に使用される正確な割合を反映しており、宝石商は、最初の2列のもののように深い宝石を避ける傾向にあります。フェイスアップの外観における違いは、宝石の屈折率のためです。

この図では、急傾斜のプロポーションになるまで傾けたり、プロポーションが浅くなるまでは、ガーネットにはウィンドウがありません。べリルでは、2つの深い石において、ウィンドウの度合いが最小になっています。最初のものは、ウィンドウを回避するのに十分な深さがありません。楕円形のべリル (上から2番目)ではファセットの配置が、ウィンドウを小さくするために閉じていることに注目してください。カット職人がクォーツ(べリルとガーネットよりも低いRI、1.54)で作業する場合、ウィンドウを回避するには、図で示されているすべてのものよりも深いプロポーションを必要とします。

光が観察者に反射せず戻ってこないだけでなく、宝石の背後にあるものは何でも色に影響を与えてしまうことがウィンドウの欠点です。ウィンドウを有する宝石がペンダントにセットされると、その宝石の下にある肌の色や衣類の生地が見かけの色に影響を与えます。これは、明るい色の宝石ではより明確です。色の飽和が強い場合、小さなウィンドウはあまり目立たなくて、目障りにならず、過度に飽和した色を和らげるので役に立つ場合もあります。

ブリリアンスと深さ (浅い、深い、許容範囲)

宝飾業界では、「ブリリアンス」という言葉を使うことは珍しくありませんが、この用語を使うときに誰もが同じことを意味しているわけではありません。混乱が生じるため、GIAは、ダイヤモンドのカットグレーディングシステムに関する情報を2004年に発表したときに、「明るさ」という言葉を使い始めました。「明るさ」という用語のGIAによる定義は、「研磨されたダイヤモンドをフェイスアップで観察したときに見える内部と外部の白い光の反射が現れる外観またはその程度」です。 

ブリリアンスは宝石が持っている「生命」の量を指すという方もいます。宝石を揺らしたり、傾けたりするときらめきますか?宝石の中で光が舞い躍りますか?その他の方にとっては、あまり専門的でない用語「ブリリアンス」は、宝石の内部から反射した白色光ではなく色がある光を意味する可能性があります。色は非常に重要であり、よくカットされた宝石では、返ってくる光のほとんどは、色と飽和する必要があります。カットの質が低いカラー宝石は、くすんでいたり色が薄くなってしまった部分があるため、ブリリアンスに欠けています。

「明るさ」という用語をこの記事では使用しますが、GIAでダイヤモンドに使用する「明るさ」はカラー宝石では意味が異なります。カラー宝石に関しては、明るさに色の飽和が含まれる必要があります。残念ながら、希望する飽和を得るためには、良い明るさは適度な色の濃度によります。色が均一である宝石をカットする場合は、宝石の内部から反射している明るい白色光が原因で、その色が褪せてしまいます。

著者でありルビーとサファイアの世界有数の専門家の一人であるRichard Hughesは、カラー宝石のカットにおいて、「通常、ガードルに最も近いパビリオンのファセットはあまりにも急な角度にカットされ、キューレットにあるファセットは浅すぎる。その間にあるファセットのみが適切な角度にカットされることがよくある。この結果、3つの明確な部分、すなわちガードルの近くの消光、キューレットの近くのウィンドウ、その間のブリリアンスができる…」と指摘しています。図3-02はこれを一般的に示しており、カット職人が宝石に施すカットが浅すぎたり深すぎたりしてはならないのは明らかです。しかし、どれくらいが深すぎで、どれくらいが浅すぎだと判断されるのでしょうか?

カット職人による利害得失の判断: 深いプロポーションのある宝石は、ウィンドウがなくても、ジュエリーとして素敵に見えると判断されないため、多くの宝石商はそのような宝石を避けます。宝石商は、宝石を横から見て、深すぎると判断します。ウィンドウがなく十分に浅い宝石を見つけることはおそらくないでしょう。この様に、宝石商はカット職人に影響を与えてしまいます。さらに、色がもっと均一で、フェイスアップで色が良く見えるにもかかわらず、カット職人がプロポーションの深い宝石を売るのが困難になるため、市場価格にまでも影響を及ぼすことがあります。

クンツァイトの上部と側面図
図 3-10: 多くの宝石商は、プロポーションが深い宝石を避ける可能性がある。しかし、このクンツァイトのプロポーションは深いため、ウィンドウが小さくなり、フェイスアップの色(上面図)が側面から観察したときよりも飽和している。写真撮影:Orasa Weldon/GIA

実験: デザイナーカットとミックスカットのスタイル

カット職人による利害得失の判断: 実験。デザイナーは、よく奇想天外なアイデアを思いつき、宝石で新しいコントラストやパターンのデザインを試します。ウィンドウを利用するデザイナーは、色が不均一であったり、時には淡い色であっても、ユニークで印象的なデザインを作成しようとするかもしれません。さらに、過度の明るい光が返ってくるため色が弱くなり、コントラストがほとんどなくなるにもかかわらず、デザインの中にはテーブルの下から観察者に明るい光を返すことに焦点を当てているものもあります。その明るさは、意図したパターンの一部であるかもしれません。最終的には、デザイナーの試みが成功したかどうかは、宝石に与えられた最後の「見栄え」が販売で受け入れられたかどうかによります。

上記のブリリアンスに関する説明は、より伝統的なカッティングスタイルに焦点を当てています。デザイナーカットは、シンチレーションと見かけの明るさが、ダイヤモンドのカッティングのように主な目標であるという異なるアプローチをとり、色の均一性と飽和に重点を置くことは二の次になります。

このスタイルのカッティングでは、ウィンドウは好ましくないとみなされ、フェイスアップのパターンが非常に重要となります。1980年代初頭に開発されたスピリット・サン(図3-11参照)は、この概念の良い例です。すべてのファセットが白色光を観察者に返すようにデザインされており、その結果、非常に小さなコントラストのパターンが生じます(これは、この淡いシトリン(黄水晶)のわずかなカラーゾーニングがフェイスアップで見やすくなる原因にもなる)。

シトリン(黄水晶)の上部と側面図
図 3-11: このシトリン(黄水晶)は、1980年代に開発されたスピリットサンデザイナーカットの一例である。色と飽和を均一にするのとは対照的に、シンチレーションと見かけの輝きに重点を置くカットである。コントラストパターンがほとんどないため、フェイスアップビュー (左)で見られるわずかなカラーゾーニングが発生していることに注目するべきである。予備成形:Werner Anschvetz、カットおよび研磨:Hans J. Roehrig 写真撮影: Orasa Weldon/GIA

明るさの概念および明るい印象を与えるものは、宝石からどのくらいの光が送り出されたかということだけではありません(図3-11のスピリット・サンは入ってくる光のほとんどを送り返す)。それは目に映るパターンの問題でもあります。認知科学者(私たちの視覚およびどのように物事を感知するかを研究する)は、私たちの目と脳に対する刺激(私たちの視覚システムすなわちVIS)のプロセスは単純ではないと説明します。私たちのVISは、利用可能なすべての手がかりを使って動作します。例えば、宝石が動くにつれて変化するパターンにおいて、その宝石自体の中から宝石は光を生成することを私たちは認識します。このパターンは、光が宝石のファセッティングデザインと相互作用することによって作られます。そのパターンは、明るさの知覚に影響を与えます。

図3-12のそれぞれの円は、表面積の50%が暗くて50%が白色光となっています。「左下の円にある格子のパターンは、おそらく視覚的に最も興味深いものになります。宝石が光を(すべて白色)100%を返すことができて、暗い部分が表れない場合、コントラストの暗い部分がある石よりも明るく測定されますが、その外観の魅力は激減してしまいます。例えば、図3-07(上)の右側の列は、コントラストが弱いため左のものよりもぼんやりして見えます。これらの画像から、光がよく返ってくることは「ブリリアンス」の重要な側面ですが、コントラストはフェイスアップの明るさにおいて重要な要因であることが確認されます。当然のことながら、あまりにも暗かったり、暗さが不均等であると、あまり魅力的でなくなる場合もあります。」(Gilbertson、2013年)

円
図 3-12: どのように人間の視覚システム (VIS) がコントラストとパターンを処理するかは、宝石の明るさに対する認識に影響を与える。明暗のコントラストは、宝石のフェイスアップの明るさにおいて重要な要因となる。イラスト: Al Gilbertson/GIA

多くの暗いパターンが加えられすぎた可能性のある例が、三角形にカットされた黄色のベリル (緑柱石)で見ることができます(図3-13参照)。淡い色の宝石では、これにより暗い色の印象が与えられ、その宝石が販売されやすくなります。ダイヤモンドのカット職人と同様に、カラー宝石のデザイナーの中には、宝石の内部で強いコントラストを作るのを試みる方もいます。この強いコントラストは、異なった興味深いパターンをもたらします。また、少ないコントラストでより微妙なデザインを作るデザイナーもいます。どちらのタイプも魅力的になります。飽和した色では、暗いコントラストを多く追加すると、宝石が過度に暗くなります(図3-14参照)。パターンが生み出すものにカット職人が敏感である場合、それは宝石を向上させることができます。カット職人がデザインで誤った選択をすると、宝石の色は弱くなってしまいます(コントラストがあまりにも強いため暗すぎるか、またはスピリット・サンのようにコントラストが弱かったり存在しないため明るすぎる)。

ベリル (緑柱石)の上部と側面図
図 3-13: このベリル (緑柱石)のカット職人は、フェイスアップで観察したときに暗い色の印象が出るように、暗めのパターンを選んだ(左)。これによりこの宝石の市場性が高まった可能性があるが、フェイスアップの輝きが損なわれてしまった。カット:Maria Atkinson 写真撮影:Orasa Weldon/GIA
アメシスト(紫水晶)上部と側面図
図 3-14: 飽和した色では、このアメシスト(紫水晶)に見られるように、暗いコントラストを多く追加すると、宝石が非常に暗くなり、すべての明るさが失われる。写真撮影:Orasa Weldon/GIA

カットのデザイナーは、ラディアントカットのようにダイヤモンド業界で人気を博しているカットスタイル「ブリリアント」のバリエーションを試してみるのを好みます。しかし、古いカッティングスタイルのほうが色をもっと良く見せる(そして通常は色がもっと均一になる)と判断するため、カラーストーンの業界では、デザイナーカットのサファイア、ルビー、その他のカラー宝石には関心を示さない方もいます。これは、「ブリリアンス」という用語を取り巻く、利害得失のもう一つの判断です。

多くのデザイナーは、GemCadやGemRayなどのコンピュータプログラムを使用して様々なファセットの配置を慎重に変更し、デザインにどのような影響を与えるかを確認します(図3-15はGemRayによるもの)。数年前、GemCadによって生成されたダイアグラム(カットのプラン)をデータベースに集計する取り組みが行われました。当時、これらのダイアグラムは4000以上ありました(著作権で保護されているものも含む)。その後、ダイアグラムの数はさらに増え、現在は公表された数多くデザインのオンラインリポジトリがあります。

ファセットカットされた宝石
図 3-15: 多くのデザイナーは、コンピュータプログラムを使用して様々なファセットの配置を試し、デザインにどのような影響を与えるかを確認する。このイラストは、GemRayを使用して作成された。イラスト: Al Gilbertson/GIA

ここまでは明るさに対する認識に影響を与える概念について説明しました。これからは、明るさに関して宝石のカッティングが及ぼす全体的な影響の評価について説明します。良好な色の明るさは、色の深みに依存することを念頭に置いてください。宝石の完成品を手にして始めてみましょう。宝石を傾けて動かすと、ほとんどの宝石は(良い色とともに)良い明るさを返すはずです。50%の明るさを持つ宝石は、宝飾業界では依然として魅力的であると考えられます。しかし、深いプロポーションから生じた暗い部分や浅いプロポーションから生じたウィンドウ があまりにも多く、色があまり明るくない宝石は、あまり価値がありません。明るさが少ないと、価値が減ってしまいます。また、カットの品質が悪くなると、不均一のパターンも大きな影響を及ぼし始めます。

色は非常に重要であるため、明るい鮮やかな色の印象は価値を向上するのに役立ちます。あまりにも明るすぎたり、暗すぎたりすると、色が弱くなってしまうため、カット職人は最高となる色の飽和の印象を得るために明るさと暗さのちょうどよいバランスを達成しようとします。

次回の予告: 第4部:「価値に影響を与えるために相互に作用する要因」では、カット職人の選択をさらに探求し、相対的な価値を評価するために業界で使用される追加の要因について説明します。

Al Gilbertsonは、カールスバッドにあるGemological Institute of Americaのラボのカット研究部門でプロジェクトマネージャーを務めています。GIAに入社する前は、American Gem Society(アメリカ宝石学会、AGS)のカットタスクフォースで、カットグレーディングのASET技術の基礎としてAGSが取得した特許を開発するなど、多大な貢献をしました。GIAには2000年に入社し、ラウンドブリリアントダイヤモンドのためのGIAカットグレーディングシステムを開発した研究チームの一員となりました。また、Gilbertsonは『American Cut—The First 100 Years(アメリカのカット — 最初の100年)』の著者でもあります。

この記事をレビューしていただき、貴重なご意見をいただいたWayne Emery(The Gemcutter)、Brooke Goedert( 研究データスペシャリスト/GIAカールスバッド)、Josh Hall(副社長/Pala International, Inc.)、Dalan Hargrave(Gemstarz)、Richard Hughes(Lotus Gemology)、Stephen Kotlowski(Uniquely K Custom Gems)、Andy Lucas(コンテンツ戦略およびフィールドジェモロジィ教育部門マネージャー/GIAカールスバッド)、Nathan Renfro(鑑別部門分析マネージャー/GIAカールスバッド)に、深くお礼を申し上げます。

この連載記事の第1部および第2部は、GemGuide(ジェムガイド)の2016年1月/2月 第35巻1号、第3部および第4部は、2016年3月/4月 第35巻2号、第5部は、2016年5月/6月 第35巻3号に掲載されました。記事では主題に「ファセットカットされた」という用語は使用されていませんが、この連載記事の主な要点は、ファセットカットされた宝石です。
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