Gems & Gemology(宝石と宝石学)

G&G 2017年冬号: 地球の深部から産出されたCullinan(カリナン)のようなダイヤモンド、Dreher家の芸術的な素晴らしい宝石彫刻、マトリックス照合されたコランダム標準物質


Gems & Gemology(宝石と宝石学)2017年冬号
本号の表紙を飾るダイヤモンド原石は、2015年11月にボツワナのKarowe(カロウェ)鉱山より産出された812カラットのConstellation(コンステレーション)である。このダイヤモンドは史上6番目に大きな宝石品質のダイヤモンドであり、ダイヤモンド原石としては過去最高値の6310万ドル(約70億円)で2016年5月に売却された。インクルージョンがほとんどなく、窒素が低量であり、このサイズ、形および表面の質を有するため、CLIPPIRダイヤモンド(本号のトップ記事)の特別な種類として分類される。地質学的に特殊な方法で生成されるコンステレーションのようなダイヤモンドは、地球のマントル深部に関する貴重な情報源となる。写真撮影:Jian Xin (Jae) Liao

地球のマントルの奥深くで生成されるダイヤモンドからオーストラリア東部の沿岸で養殖される真珠にいたるまで、Gems & Gemology(宝石と宝石学)2017年冬号は、宝石学の世界におけるさまざまな側面を報告します。本号には、Cullinan(カリナン)のように地球の深部から産出されたダイヤモンドの起源に関する研究、GerdとPatrick Dreherの生命感溢れる宝石の彫刻、オーストラリア産アコヤ養殖真珠の特徴に関する記事が掲載されています。また、コランダムの化学分析に用いられるGIAの新しい検量用標準物質のセットの紹介および真珠のマイクロX線画像処理における2つの異なるタイプの検出器の比較を行い、天然、合成、処理済みのルビーのインクルージョンを示すグラフが掲載されています。

世界最大のダイヤモンドの非常に深い起源

CLIPPIRダイヤモンドの原石
CLIPPIRダイヤモンドの原石は、有名なCullinan(カリナン)ダイヤモンドに似た物理的な特徴を有する。CLIPPIRという頭字語の"C"は、このCullinanに由来する。この種のダイヤモンドのサイズは、ここで見られる14~91カラットのように大きめである。CLIPPIRダイヤモンドの原石は、形の良い結晶というよりもむしろ不規則な形をしており、もっと大きかったダイヤモンドが壊れてできたように見えることもある。写真撮影:Robert Weldon/GIA、Gem Diamonds Ltd.(ジェムダイヤモンズ社)

2017年冬号のトップ記事は、地球の対流型マントルの奥深くで発見される驚くべきダイヤモンドについて報告します。Science(サイエンス)誌の2016年12月号にEvan Smithの研究結果が発表された後、Smithと共著者は、クラリティ(透明度)に優れており、カラーグレードDを有することで知られている、Cullinan(カリナン)のように大きくて不純物のないこれら83個のダイヤモンドを検査しました。 この研究論文で使用されたサンプル、およびそのサンプルで発見されたインクルージョンやその他の特性により、地球の地質形成をより深く理解することができます。

宝石の巨匠: Drehers家と素晴らしい彫刻

Gerd Dreher作のアゲート(瑪瑙)でできたユリとPatrick Dreher作のシトリン(黄水晶)でできたネズミ
Gerd Dreherが2005年に制作したこのユリの彫刻(長さ11.0cm)は、たった一つのブラジル産アゲート(瑪瑙)から作られた。素材の活かし方やカールした花びらの裏でさえにも施された細やかな技術など、作品の至るところに彼の才能が見られる。葉、雄しべ、エナメル加工された雌しべは、18Kゴールドで作られており、ダイヤモンドがセットされている。Patrick Dreherが2015年に制作した長さ6.0cmのシトリン(黄水晶)製のネズミは、この動物の立ち方や振る舞いだけでなく、毛皮の彫刻にも細部にまで目が行き届く精緻さが確認できる。写真撮影:Robert Weldon/GIA、提供:William F. Larson家

ドイツの町、イダー=オーバーシュタインは、宝石のカッティングと彫刻の中心地として知られています。共著者であるRobert Weldon、Cathleen Jonathan、Rose Tozerが、この町の豊かな歴史と13世代を通じて技能を受け継いできたDreher家の彫刻の伝統を探求します。現代の宝石彫刻の巨匠、GerdとPatrick Dreherの作品がこの記事で特集され、オンラインではビデオやスライドショーをご覧いただけます。

オーストラリア東部のアコヤ養殖真珠

オーストラリア産アコヤ養殖真珠で作られたブレスレット
ブルー、クリーム、イエロー、シルバーの天然色のアコヤ養殖真珠で飾られたBroken Bay Pearls(ブロークン・ベイ・パールズ)社によるブレスレット。写真提供:Broken Bay Pearls

20年もの間、様々な色のアコヤ養殖真珠が、オーストラリアの東海岸でPinctada imbricata fucata (アコヤガイ)より採取されています。この記事では、Laura M. Otterと共著者が、これらの真珠の生成に関する詳細を報告し、宝石学および鉱物学における研究を初めて行います。この研究の結果、オーストラリアで採取される色付きのアコヤ真珠は、他の種の母貝から生成される真珠から区別することができるという結論に至りました。

マトリックス照合標準物質を用いたルビーおよびサファイアの主な微量元素に関する正確な報告

図1 GIAの新しいレーザーアブレージョン誘導結合プラズマ質量分析装置のコランダム検量用標準物質のセットの1つ (セット番号 1)。このセットを含むエポキシディスクは、直径1.5インチである。NIST SRM 610および612のガラス標準物質が、標準物質のために製造された合成サファイア結晶に取り込まれなかった微量および非微量元素(インクルージョンに発見されるものなど)のために含まれている。写真撮影:Jennifer Stone-Sundberg
GIAの新しいレーザーアブレージョン誘導結合プラズマ質量分析装置のコランダム検量用標準物質のセットの1つ (セット番号 1)。このセットを含むエポキシディスクは、直径1.5インチである。NIST SRM 610および612のガラス標準物質が、標準物質のために製造された合成サファイア結晶に取り込まれなかった微量および非微量元素(インクルージョンに発見されるものなど)のために含まれている。写真撮影:Jennifer Stone-Sundberg

微量元素の分析は、コランダムの地理的起源を決定するために極めて重要であります。Jennifer Stone-Sundbergと研究チームが、レーザーアブレージョン誘導結合プラズマ質量分析装置の技術を使用してGIAで化学分析をするために高精度な検量用標準物質を開発しました。これらの標準物質は、ルビーおよびサファイアの基礎的な研究と地理的起源を報告するために使用できるよう設計されています。

真珠のリアルタイムX線顕微鏡撮影法: 検出器の比較

IIおよびFPDの図
II (左) と FPD (右) の構造および操作の原理。変更・参照元:Ide 他

ここ20年以上の間、フィルムを使用するX線撮影の代わりにリアルタイムX線顕微鏡撮影法(RTX)が、真珠の検査および鑑別で使用されるようになりました。Stefanos Karampelasと彼が率いる研究チームが、RTXの機器で使用される2つの検出器の利点と欠点について議論します

天然、合成、および処理されたルビーのインクルージョンに関するチャート

ルビーの微小な特徴
16.68mmの原石および2.72ctのクッションカットのミャンマー産ルビー。写真撮影:Robert Weldon/GIA、提供:William F. Larsonによるコレクション

本シリーズの第3弾となるこの掛け図は、天然、合成および処理されたルビーでよく発見されるインクルージョンを紹介します。インクルージョンの専門家であるNathan Renfro、John Koivula、Jonathan Muyalが、細部まで観察できる30枚の顕微鏡写真をこの掛け図に提供しました。

ラボノート

蛍光灯下(左)と白熱灯下 (右)でのアレキサンドライトのカボション。
このアレキサンドライトのカボションは、蛍光灯下(左)では茶色がかった緑色に見え、白熱灯下 (右) では茶色がかった紫色に見える。このカボションでは、高密度の細いニードルが並列している浅い平面から光が反射するため、これら両方の照明の下でシャトヤンシー(猫目効果)が見られる。写真撮影:Shunsuke Nagai

ユニークなインクルージョンの模様があり、猫目効果を示すアレキサンドライトダイヤモンド原石に模倣している合成モアッサナイト合成ルビーの過剰成長と2つの天然サファイアなどが世界各地のGIAラボより報告されています。

ミクロの世界

エチオピア産オパール内のパイライト結晶と球状のアラゴナイトのインクルージョン
このエチオピア産オパールには、八面体の長細いパイライト結晶と球状のアラゴナイト(アラレ石)の興味深いインクルージョンが含まれている。顕微鏡写真:Charuwan Khowpong、視野1.40mm

宝石の微小な世界を紹介するこのG&Gのセクションでは、エチオピア産オパールの球状のアラゴナイト(アラレ石)Mogok(モゴック)産ルビーにある対になったカルサイト(方解石)のインクルージョンクォーツのシャッタカイト(シャタック石)に関する記事を紹介します。

ジェムニュースインターナショナル

ファセット加工できる品質を有するルビーの16個のサンプル
タンザニアのLongido(ロンギド)で産出された、ファセット加工できる品質を有するルビーの16個のサンプル(0.8〜7.1ct)。写真撮影:Sasithorn Engniwat

GNIのセクションは、タンザニアのLongido(ロンギド)で産出された、ファセット加工できる品質を有するルビーの初期検査、2015年にカナダのダイアヴィック鉱山から採掘されたFoxfire(フォックスファイア)ダイヤモンド原石に関する最新情報、ピンクとブルーに染色されたハイドロフェーンオパールの検査について報告します。

2017年 EDWARD J.GÜBELIN 博士最優秀記事賞

G&Gの最優秀記事賞は、読者の皆様が最も価値があったと思われる前年の記事を3つ選び、投票していただいて選ばれます。投票された方全員の中から抽選でGems & Gemology(宝石と宝石学)の1年分の購読を贈呈していますので、是非ご投票ください。抽選の対象となるには、2017年MVA(最優秀記事賞)への投票2018年3月12日(月曜日)までにご提出ください。

Jennifer-Lynn Archuleta は、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の編集者です。