微小インクルージョンによりダイヤモンドの年齢と地球の歴史が明らかに:カーネギー研究所による研究


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稜の鋭いこの八面体ダイヤモンド結晶は、キンバーライトの中に横たわっている。キンバーライトは、地上にダイヤモンドを運んできた岩石である。 このような結晶は、マントル深部の鉱物を携えたままである場合、マントル深部の温度や圧力の記録を示してくれることがある。 Robert Weldon © GIA
Dr. Steven Shireyにとって、ダイヤモンドは非常に特別なものです。 単にダイヤモンドの本質的な美しさのためだけでなく、その中に閉じ込められている基本的な情報のためです。 地下何百キロもの深さにある地球の初期の歴史や惑星としての構造を明らかにしてくれる情報があるからです。

私達はワシントンD.C.にあるカーネギー研究所の地磁気部門へ足を運んできました。目的は、ダイヤモンド内に留め置かれた小さな鉱物インクルージョンを分析することによって、世界中の多くの鉱床から産出されたダイヤモンドの年齢を判断するという、シャーリー博士の研究をドキュメントにすることでした。

ワシントンDCのカーネギー研究所の地磁気部門のシニアサイエンティストであるDr. Steven Shirey(スティーブン シャーリー博士)は、ダイヤモンドに特別な関心を持っている。 ダイヤモンドの研究が、深い地球内部の想像を絶する圧力と温度を垣間見る絶好の手段だからだ。 Duncan Pay(ダンカン ペイ) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)
シャーリー博士が話し始めます。「このダイヤモンドの働きの利点が何であるかをより広い目で見てみましょう。 私の個人的な目標の1つは、ダイヤモンドの年齢や、こうしたインクルージョンの研究から導き出した初期比についての知識を得て、体系的な方法で地質学の全体像に応用することです。 大陸がどのようにして結合したかという観点から、ダイヤモンドが大陸の地形の上にどのように分布しているかを調べたいと思います。」

博士は続けます。「地球の歴史をさかのぼって、ダイヤモンドの成長とダイヤモンドの履歴のパターンから、惑星としての地球の進化について何か特別なことが判明するかどうかを確かめたいのです。 それ自体が非常に驚くべき概念です。 非常に極小なこれらの石の粒をとりあげて、化学的な体系的変化を利用して地球全体について何かを語ろうとしているのですから。」

古代の大陸地域には、大きな竜骨とも言うべきマントルへの下向きの突起があり、それが十分安定した状態にあったために何百万年もの間ダイヤモンドを保存することができた。 最近の発見によると、ダイヤモンドは沈み込み帯の下のかなりの深さにおいて形成される可能性があり、ごく稀に、キンバーライトがダイヤモンドを地球の表面にもたらすことができる場所まで、地球のマントルプルームによってダイヤモンドが押し上げられることが示されている。 これらの「超深度」ダイヤモンドは、シャーリー博士や他の科学者たちにとって、マントルのより深い部分の作用を探るための意欲を掻き立てる扉となる。 Peter Johnston(ピーター ジョンストン) © GIA
この記事は、シャーリー博士とGIAのDr. Jim Shigley(ジム シグリー博士)による共著、2013年冬号Gems & Gemology(宝石と宝石学)に掲載された論文「Recent Advances in Understanding the Geology of Diamond」(ダイヤモンドの地質学の理解における最近の進歩)を補完するものです。

シャーリー博士は、地中深部のサンプリングの手段としてダイヤモンドを使用する世界中の機関から集まった、地球科学者の共同研究グループの1人です。 彼の専門は、小さな特定の硫化物インクルージョンが含まれている希少なダイヤモンドの個体を探し、丹念にそのインクルージョンを取り出してその内容、この場合は、希少金属であるオスミウム(Os)およびレニウム(Re)の微量の放射性同位元素を分析して、石の十億年オーダーの年齢を判定することです。

化学元素の同位体とはその元素と同じ原子番号の原子のことですが、核内の中性子の数が異なることからわずかに異なる質量を持つものを言います。 同位体の中には安定しているものもありますが、長期間にわたって放射線を放ち放射性崩壊をして異なる同位体に変化する、放射性核種と呼ばれるものもあります。 科学者達は、放射性崩壊の速度を知っていて存在する異なる同位体を測定することができる計器類を持っている場合、非常に正確に物質の年齢を計算することができます。

これは、広く考古学で使用されている放射性炭素年代測定法などの、昔から確立されてきた技術の原理です。 ダイヤモンドはどの考古学的遺物よりもはるかに古く、約6万年前までしか遡れない炭素年代測定法では年齢を測定できません。

シャーリー博士が探している同位体は、地球の歴史のはるか遠くに遡るものです。 これらの放射性同位体は、ダイヤモンド結晶に編み込まれた、小さくゆっくりと時を刻む時計のようなものです。 放射性同位体は非常に長い半減期(放射物質の放射線がオリジナルの半分のレベルまで低下するのにかかる時間)を持ち、数10億年にわたり非常にゆっくりと減衰します。 彼が使用しているレニウムの同位体、187Reは、41.6 x 109年、すなわち410億年の半減期を持ち、非常にゆっくりとオスミウム(187Os)へと減衰します。

博士によれば、レニウム - オスミウム減衰システムを用いた研究により、一部のダイヤモンドが著しく古代のものであることが証明されます。 「ダイヤモンドの年齢は最高35億年で、私達が地球上で見つけることができる最も古い鉱物となることもあります。一方、地球の年齢はわずか45億年であり、地球の年齢の4分の3というダイヤモンドもあることになります。」

またダイヤモンドは、地球について研究するために取得できる天然の試料で最も深いところにある鉱物であるから特別であると、シャーリー博士は付け加えます。 他のどの鉱物とも異なり、ダイヤモンドは地下最大700キロ(435マイル)の深さから地表に到達しますが、その中にマントル鉱物のインクルージョンをそのまま保持している場合があります。 博士によればダイヤモンドの結晶は、これらのエキゾチックな鉱物のための「本当に優れたコンテナ」であり、地球の表面に向かう過程でそれらを「自然のまま」の形で保持してくれます。

「つまり1つの鉱物種で、入手可能な最も深く、最も古く、二次的影響に最も耐性のある鉱物という条件を備えているため、ダイヤモンドは本当に非常にユニークな素材なのです。」

ダイヤモンドの年代測定
シャーリー博士は、インクルージョンの年齢およびダイヤモンド自体の年齢を判定するために行われる、個々のダイヤモンドのインクルージョンの内部に隠されている放射性同位体の研究について説明する。
シャーリー博士は、オスミウム-レニウム放射性減衰システムにより研究者は個々のインクルージョンの年齢を定めることができると語ります。 これまでの年代を測定する技術では年齢を判定するために、多くのダイヤモンドからガーネットやジルコンといった他の鉱物インクルージョンを収集する必要がありました。 試料中にダイヤモンドの複数の世代があった場合は、特定の年齢ではなく、平均年齢の判定を行うことになりました。

このスライドショーでは、多くの場合数十億年という範囲で正確な年齢を判定するために、研究用の天然ダイヤモンドを選定しそこから硫化物インクルージョンを摘出するのにシャーリー博士が用いるプロセスを紹介する。 それには、研究のために小さなダイヤモンドをプレート状に切断し、硫化物を劈開を利用して取り出し、化学的にレニウムとオスミウムの同位体を分離し、最終的な年代測定のために高度なラボ計測機器で様々な同位体をカウントするという、独創的な解決法が取られる。

研究用のダイヤモンドを選定する

プロセスは、適切なインクルージョンを含むダイヤモンド結晶の選定から始まります。 シャーリー博士が言うように、研究用のこのようなダイヤモンドを入手することはかなり困難です。 「私達は、ダイヤモンドが採れるキンバーライトを大量に処理している、非常に積極的に採鉱をしている鉱山に行かなければなりません。」

ダイヤモンドは、マントルからダイヤモンドを地表へ運んでくる、キンバーライトあるいはオーストラリアのアーガイル鉱山のようなより希少なランプロイトといった岩石に含まれる微量鉱物です。 シャーリー博士は言います。「キンバーライト中でダイヤモンドが見つかる確率は十億分の一です。キンバーライトの周りを歩いていてダイヤモンドを見つけることはまずありません。非常に稀な事です。」

このダイヤモンド結晶はレソトのLetseng(レッツェン)鉱山産で、シャーリー博士の研究に適した硫化物インクルージョンが含まれている。 Pedro Padua(ペドロ パドゥア) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)
研究者はダイヤモンドを含む原石が大量に産出される適切な鉱床や探査地に出向くとすぐ、産出された原石から選定を始めなければなりません。 南アフリカのベネチア鉱山のような大きな鉱山でさえも、生産される50,000個のダイヤモンド中の1つに、適切なタイプのインクルージョンが入っているかどうかなのです。

「こういう場合、宝石の取引上では不合格になるものの中から探します。」とシャーリー博士は述べます。 「ほとんどの鉱山では、宝石品質のダイヤモンドに比べて内包物を含むダイヤモンドの採鉱される頻度は非常に低く、インクルージョンがある石を入手することはほとんど不可能な鉱山もあります。」

これらのダイヤモンド結晶は、ロゼット模様のフラクチャー系を示す硫化物インクルージョンを含み、レニウム-オスミウム減衰システムを使用して年代を定めるのに適した候補である。 Pedro Padua(ペドロ パドゥア) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)

研究用のダイヤモンドの前処理

研究者は有効な研究となるに十分なインクルージョンを含むダイヤモンドを入手したら、作業を開始します。 シャーリー博士は次のように説明します。「インクルージョンを壊すことなく取り出さなければなりません。 インクルージョン全体を取り出す必要があると共に、可能な限り完全にダイヤモンドの特性を明らかにすることが必要だからです。」

「単にインクルージョンの同位体組成を測定するだけでなく、ダイヤモンドを破壊してインクルージョンを取り出す前に、ダイヤモンドがどのように形成されたかの全体像を把握することも私達の仕事です。」

最初のステップは、ダイヤモンド切削レーザを用いて、ダイヤモンドをその成長ゾーンを横断するように非常に正確にスライスすることです。 「私達が美しいダイヤモンド原石の中心部をスライスするなんてことを知ったら、宝石ビジネスに携わっている人々は気が狂ってしまうでしょう。 」とシャーリー博士は苦笑しながら語ります。

シャーリー博士はダイヤモンド結晶をレーザー切断するためのこの治具を設計した。 Duncan Pay(ダンカン ペイ) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)
「私は必要に迫られて治具を設計することになり、製作所に行き、私が設計したものを作ることができるかどうか尋ねました。 すると彼らは1、2日でそれを作成してくれました。 私達が治具を持ち帰りレーザーカッターに取り付けたところ、この治具はレーザーカッターの所有者たちには非常に評判が良かったのです。 それは、ダイヤモンドを固定するいくつかの蝶ネジが付いている小さな治具で、ダイヤモンドをカットするのに最適な位置で、ダイヤモンドの向きを変えずに、しかも3個同時にカットできます。」

中央にインクルージョンがあるように切断したウェハーは、次に、従来型のダイヤモンドスカイフで研磨されます。 インクルージョンが切断や研磨工程によって傷ついたり汚染されたりすることの無いように、十分な注意を払う必要があります。

これにより、正確に配位されたダイヤモンドプレートが得られます。通常、ダイヤモンドプレートは1ミリメートルの深さで、母体であるダイヤモンドの成長ゾーンに対するインクルージョンの相対位置を示します。 ダイヤモンドの成長ゾーンは、カソドルミネッセンス(CL)画像法を用いることによって特に観察しやすくなります。 CL画像法により、ダイヤモンドの成長履歴が単純なものか、またはより複雑なものかが明らかになります。

シャーリー博士の同僚であるDr. Jianhu Wang(ワン博士)は、二次イオン質量分析計(SIMS)またはイオンプローブを用いてダイヤモンドプレートの同位体組成についても調べます。 SIMS機器により、ダイヤモンドの成長ゾーンの詳細な化学分析が可能になります。 SIMSは、ダイヤモンド全体にわたる炭素または窒素同位体の差を測定することができます。それにより、石が特異な地質学的履歴を持っているかどうか、およびインクルージョンからのデータがどのような意味を持つかについて判定することができます。 ワン博士の研究については、今後GIAのウェブサイトのリサーチ&ニュースの記事で取り上げる予定です。

研究のためのダイヤモンドの準備
このビデオでは、研究者が研究に適するインクルージョンを含むダイヤモンドを選定して準備する方法についてシャーリー博士が説明する。 プロセスは、分析のために、結晶を正確に配位されたプレートにスライスして研磨するところから始まる。 化学反応を用いて年代を測定するために、プレートを特別に設計された「ダイヤモンドクラッカー」で劈開を利用して分割し、硫化物インクルージョンを取り出すところで終了する。

ダイヤモンドからインクルージョンを取り出す

一つのダイヤモンドプレートを選定し、記録し、分析データを収集するのに、何週間もかかる場合があります。 しかし、このデータから研究者はダイヤモンドの成長の履歴に関する貴重な知見を得ます。

しかしある時点にくると、研究者がその年齢を決定するために硫化物インクルージョンをプレートから取り除かなくてはなりません。 これは、このプロセスの最も「ローテク」な部分です。 インクルージョンの取り出しは、シャーリー博士が「ダイヤモンドクラッカー」と呼ぶ器具を使用して行います。 それはピストンを備えた蓋付きのスチール製の厚肉の中空シリンダーです。 ダイヤモンドプレートを、2枚1組のタングステンカーバイド製の旋盤片を台として、その上に配置します。 博士はダイヤモンドプレートを、インクルージョンのある部分が2つの旋盤片が作る隙間の上にくるように、シリンダー内に配置します。

シリンダーの蓋の内側には、タングステンカーバイドの棒が表面に接着されています。 シャーリー博士は下のシリンダーと蓋の横に刻まれた溝を使いながら、棒が直接下のシリンダー内の2枚のタングステン旋盤片の隙間の上に平行になるように配置します。

ダイヤモンドを破砕せずに接触するのに十分な遊びがあるように、博士は蓋のピストンを調整します。 小さなハンマーでピストンの頭を鋭く叩くと、ダイヤモンドが硫化物インクルージョンを含む面で劈開により割れ、インクルージョンが取り出されます。

次に、博士はシリンダーの内部でインクルージョンを丹念に探します。 ダイヤモンドの破片、あるいはダイヤモンドクラッカーのタングステンカーバイド部品やスチール壁からの小さな金属片の中からそのインクルージョンを見つけることは、困難な場合がよくあります。 「インクルージョンはだいたい100〜300ミクロン、時には50ミクロンのこともあります。」と、博士は述べています。 (1センチ = 10,000ミクロン、つまり、300ミクロンのインクルージョンは、わずか0.03センチメートル、0.3ミリメートルです!)

黒いディスクの中心にある小さな反射する小片が、「ダイヤモンドクラッカー」を用いてダイヤモンドプレートから割り出された硫化物インクルージョン。この極小片の中に微量の希少元素レニウムとオスミウムが隠されている。 Pedro Padua(ペドロ パドゥア) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)
これだけ小さいインクルージョンだと、ただ動かすだけでもかなり困難なことがあります。シャーリー博士は少し笑いながら話を続けます。「それはあまりにも小さいため、静電気があるだけでもインクルージョンの移動がほとんど不可能になります。また、インクルージョンをなくさないように細心の注意を払わなければなりません。 私は、インクルージョンをシンクに落としてしまったことが何度かありました。多くの時間を費やして取り出したインクルージョンですから、シンクから排水トラップを取り外して水をあけ、トラップ内のすべてのゴミを調べるしかありませんでした。」

博士は、取り出したインクルージョンを粘着性の黒色のカーボン製ディスクに移動し、走査型電子顕微鏡(SEM)で検査して、それが硫酸物のインクルージョンであり、クラッカーからのスチールやタングステンカーバイドの小片でないことを確認します。 硫化物は、それらの物質とは異なり少し「真ちゅうのような」色、または黄色っぽく見えます。

博士は、硫化物の成長形態の痕跡や結晶学的特徴についても検査します。 研究者は鉱物のインクルージョンから、ダイヤモンドが形成された温度や圧力条件、ダイヤモンドが成長した元の岩石や流体について、さらにはそのインクルージョンが母体のダイヤモンドと同時に形成されたどうかについて多くを知ることができます。

シャーリー博士は、硫化物がエクロジャイト原岩からのものかカンラン岩原岩からのものかを判断したいと考えています。 カンラン岩質の硫化物は、ニッケルの含有率が高く、鉄の含有率は低くなっています。 「湿式」分析を行う段階で使用する特殊なトレーサーの成分を決定することになるので、それを区別することが重要であると、シャーリー博士が教えてくれます。

次のステップでは、非常に精度の高い電子天秤でインクルージョンの重量を量るための準備として、小さなビーカーに入れたエタノールでインクルージョンを洗ってすすぎます。 その後、慎重に針でインクルージョンを取り上げて、ミリグラム単位まで計ることができる小さな金属の秤量ボートに移動します。

インクルージョンの重量は、シャーリー博士が研究の次の段階で追加しなければならない、「スパイク」と呼ばれる特殊な化学成分のトレーサーの正確な量に影響するもので、特に重要です。 スパイクには、レニウムとオスミウムという同位体の精密にキャリブレートした混合物が含まれています。

これは地球科学でよく使用される標準的な手法で、同位体希釈法と呼ばれています。 硫化物インクルージョンには、レニウム(187Re)という放射性同位元素が微量に含まれています。レニウムは、何百億年もかけて非常にゆっくりと崩壊しオスミウム(187Os)の安定した同位体に変化します。 放射性崩壊の速度が知られているので、存在する187Reと187Osの比率に基づいてダイヤモンドの年齢を計算することが可能です。

同位体希釈法により、各要素の異なる同位体が正確にキャリブレートされたスパイクと呼ばれる液体を追加して、インクルージョン中のレニウムおよびオスミウムと徹底的に混合することにより、研究者は、存在するレニウムとオスミウムの同位体の量を非常に正確に推定することができます。

シャーリー博士にはインクルージョンの重量と添加したスパイクの正確な量が分かっているため、すべてを回収しなくても、化学分析を行えばその比率から存在する各レニウムとオスミウム同位体の量を算出することができます。

同位体希釈法の原理は次のとおりです。白いピンポン玉と、それより少ない数のオレンジ色のピンポン玉が大きな段ボール箱にいっぱい入っているとします。 この単純化した例では、段ボール箱はインクルージョンを表し、オレンジ色の玉は測定したいオスミウム同位体、白い玉はインクルージョン中の他のすべてのもの(すなわち「石基」)を表しています。

玉を1つずつ数えることなく、可能な限り正確にオレンジ色の玉の数を計算できる方法があります。 その1つとして、既知の数の青色のピンポン玉を、たとえば100個追加して、箱の中の他のものと十分に混ぜ合わせます。 これらの青色の玉は、化学分析に用いるスパイクを表しています。

すべての玉が完全に混合したら、すなわち他の色で希釈されていることを確認したら、箱からサンプルとして玉を50個取り出し、青色の玉の数を数えます。 このサンプルから、段ボール箱内のピンポン玉の総数に対する青色の玉の比率だけでなく、数える必要があるオレンジ色の玉についても比率を割り出すことができます。 その情報から、非常に正確に各色ごとの合計を計算することができます。 全く同じ原理がダイヤモンドのインクルージョン中のレニウムおよびオスミウムの同位体にも適用されます。

インクルージョンの重量を計測して正確にキャリブレートされた量のスパイクを添加した後、シャーリー博士は酸を添加してインクルージョンを溶解し、その成分をスパイクと完全に混合します。

内包物からレニウム及びオスミウムを分離
このビデオは、シャーリー博士がダイヤモンドから取り出した硫化物インクルージョンの重量を計るところから始まる。 次に博士は、年代測定のために、インクルージョンからオスミウムおよびレニウムの放射性同位体を分離するのに必要な化学分析について説明する。
酸によりインクルージョンが溶解すると、次に中に入っているオスミウムとレニウムを蒸留する必要があります。 オスミウムの場合、これは非常に簡単です。 「蒸気輸送によって小さなボタン状の臭化水素酸にオスミウムを蒸留し、レニウムは、1滴の硫酸クロム中にとどまります。」

レニウムにはもう少し作業が必要です。「我々は、この硫酸クロムを取り出し、還元し、それが赤レンガ色から緑色に変化すると、ブリタの浄水フィルターのような陰イオン交換カラムを通して研究に最適なものとします。 カラムは、レニウムを残して他をすべて透過させるのです。」

シャーリー博士はカラムからレニウムを取り出し、乾燥させて分析の準備をします。 これでオスミウムとレニウムが分離され、質量分析計と呼ばれる高度な実験器具で両者を検査します。 交差汚染を回避するために、各金属は、各要素の異なる同位体または質量をカウントする別々の装置を使って検査されます。 「この検査から同位体組成が分かるので年齢を計算することができ、これで仕事が終わります。」シャーリー博士は安堵したように言います。

博士は続けて言います。「全てのインクルージョンについて同様に検査を行います。インクルージョンが取り出して移動することができる大きさであれば蒸留することが可能で、信じ難いかもしれませんがそこから私達は年齢を判定します。」

レニウム - オスミウム減衰を、グラフ上に線でプロットします。 個々のインクルージョンをデータ点として、線上または線に非常に近い位置にプロットします。

研究者は、各硫化物インクルージョン中のレニウムおよびオスミウム同位体の比率を利用して、
187Reから187Osへの崩壊度を測定する、アイソクロンと呼ばれるラインをプロットする。 各データ点は、
インクルージョンおよびそれを含むダイヤモンドの年齢を表す。 カナダのエカティ鉱山産のこれらのダイヤモンドは、
知られている最古のダイヤモンドで驚異的な35.23億年(グラフ上の3523 Ma)前のもので、
地球が現在の年齢の4分の1のときのものとなる。 右の挿入図は、
アイソクロンの低い方の値の詳細を示す。Westerlund (2006) からの抽出。
詳しくは、2013年冬号のGems & Gemolog(宝石と宝石学)211ページ図 24を参照。
電子スピン共鳴分光法を用いた、照射を受けた南洋養殖真珠の鑑別
このビデオでは、シャーリー博士は硫化物インクルージョンから回収したオスミウムとレニウムの同位体をカウントする質量分析法の利用について説明している。 稼働中の鉱床で適切な硫化物インクルージョンを含むダイヤモンド結晶を選定することから始まった分析は、ここで最終段階となる。 博士とその同僚は、各同位体の相対量について取得したデータを使用してインクルージョンの年齢、ひいてはダイヤモンドそれ自体の年齢を推定する。

研究の結果

シャーリー博士は、自分がカーネギー研究所の同僚と共にこの研究分野へもたらした最大の貢献は、個々のダイヤモンドの年代推測を可能にするレニウム-オスミウム年代測定法の開発であると考えています。 ダイヤモンドの年齢とそのインクルージョンの化学分析から、研究者は大陸が構築される方法と、地球の地殻変動プロセスの始まりに関して推論することができるようになります。

シャーリー博士のダイヤモンドの初期の研究は、世界で最も知られている採鉱領域の1つである南アフリカの中心部にある古代の岩石、そしてデビアスの採鉱帝国であるカープバール(Kaapvaal)クラトンに焦点を当てたものでした。 地形の東から西へと及ぶダイヤモンドの産状と年齢のパターンは、足元の下深くにある大陸の構造について博士に教えてくれました。

「私が本当に興味を抱いたのは、個々のダイヤモンドの測定値を得てそれらを合わせて全体的に見てみることにより、その年齢分布が大陸の規模で、あるいは地球の規模で億年単位の歴史において、何か基本的なものを教えてくれるだろうということでした。 それが私の情熱をかきたてました。」と博士は言います。

カープバールクラトンの例では、ダイヤモンドが、三億年ほど前に地球の歴史の中で何かが変化したことを博士に教えてくれます。 博士と同僚は、これがウィルソンサイクルと呼ばれるものの始まり、プレートテクトニクスと海洋地殻の沈み込みの開始を示しているという説を示します。 クラトンの中央には、東からと西からの2つの大陸ブロックが衝突したときに閉じられた、古代の海の墓場があります。 そして西の大陸からのダイヤモンドは東の大陸のダイヤモンドとは異なります。

3億年前のダイヤモンドは全てクラトンの西側にあり、これは西側の下での海洋地殻の沈み込み帯についてのシャーリー博士の理論と一致します。 これとは対照的に、これらの2つの古代大陸ブロックの接合部すなわち縫合線の東側には3億年より古いダイヤモンドはありません。「そしてそれは、ご覧の取りダイヤモンドの種類の分布を完全に説明します。」と、博士は述べています。

シャーリー博士は、三億年より古いダイヤモンドにはエクロジャイト質インクルージョンが全く見られないと説明します。 これは沈み込んだ海洋地殻からの玄武岩が、保持されたままダイヤモンドを含有する高圧変成岩であるエクロジャイトに転換されるに十分深くまで、大陸の竜骨の下へ深く押されていなかったことを意味します。 それより若いダイヤモンドには、こうした種類のインクルージョンが見られるようになります。 これは大きな重要な発見です。」と、博士は述べています。

カナダのダイヤモンドは古代の生成物

もう一つの画期的な発見は、カナダ産ダイヤモンドの年齢に関するものです。 シャーリー博士は、カーネギー研究所での彼のグループが、カナダの2大鉱山であるエカティとダイアヴィック(Diavik)に取り組んできたことも話します。 エカティのダイヤモンドを研究する博士過程の学生が、 それらのダイヤモンドの年齢がこれまで分析された中では最も古い約35億年であることを発見しました。

これらのエカティダイヤモンドの化学的性質が、沈み込みの初期の形態を示しました。 シャーリー博士とカーネギーでの同僚の科学者達は、ダイヤモンドを形成する沈み込みプロセスは、地球表面上のプレートテクトニクスの最古の証拠の一部であると提唱します。 ダイアヴィック産のダイヤモンドを研究している別の博士過程の学生が、 それらのダイヤモンドの古い年齢を裏付けましたが、それらは地球のマントル深部プルームが起源である証拠を発見したと、シャーリー博士は述べています。

「私達がこれまで見てきたカナダでの産状に独特な点は、その古さであり、ダイヤモンドが私たちに複雑なストーリーを語っているという事実です。」と、博士は述べています。 「私達は、この初期の始生代の期間にはダイヤモンドが形成される複数のプロセスがあったと考えており、これはまさに非常に興味深くエキサイティングな発見です。」
 

ブラジルのジュイナ産の超深度ダイヤモンド

超深度ダイヤモンドは過去15年間の中で最もエキサイティングな発見の1つであると、シャーリー博士は言います。 これらのダイヤモンドは、より浅い場所では形成することができない高圧形態のガーネットやオリビンといった、より浅いレベルでは見つからない鉱物を内部に含んでいます。 仮説として、これらのダイヤモンドが沈み込みによってマントルの700キロほど深くへ運ばれた有機物から成長したと言われています。 これらのダイヤモンドには、地球の対流マントル深くにおける乱流が起源であることを示唆する、特徴的な不規則な内部成長構造も見られます。 超深度ダイヤモンドは、科学者がこれまでに見てきたよりもさらに深くで地球のマントルをサンプリングしており、そのため間違いなく地球が炭素を再生する方法についての知見が得られるはずです。 シャーリー博士とカーネギー研究所での大勢の同僚が、積極的にこのトピックに関して他の機関の研究者と協力しています。 詳細については、博士の超深度ダイヤモンドとマントル対流についてのカーネギー研究所のページを参照してください。 


これらの小さな超深度ダイヤモンドは、多くのダイヤモンドと比べて地球のマントルの著しく深い位置で形成された。 ここでは、それらの石が分析のために電子マイクロプローブに取り付けられている。 Pedro Padua(ペドロ パドゥア) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)

仕事の見返り

シャーリー博士は、自分の仕事はとても多様であり、この仕事を愛していると語ります。「現地に赴き、地質学者と話をします。 試料を見つけ、詳細に調査し、極小のダイヤモンドをカットする方法を考えます。」

こうした仕事はシャーリー博士を刺激します。「試料を巧みに操ることにおいては独創的で知恵を使うものですが、私は同時に化学者である必要があります。実際に化学的開発研究をしなければなりませんでした。 全ての仕事が全く別のものであり、それが私が自分の仕事を愛する理由の1つです。」

最終的には、聴衆が関心を持つように伝えることができなければ、このすべての研究が無駄に過ぎ去ってしまうことを博士は認識しています。 「研究を文書にして我々の結果を伝え、人々が面白いと思う方法で語らなければなりません。 結局のところ、誰もあなたが言っていることを聞きたくないというのでは意味がありません。 だからストーリーを面白くしなければ、誰も読んでくれないのです。」

シャーリー博士は、この種の研究活動は、世界中の習慣の異なる場所や多くの提携機関からの科学者と関わるもので、協力が重要であることを強調します。 博士は自分の貢献については謙遜をします。 「仕事のほとんどは私が直接行うものではなく、一緒に研究をしている人々によって行われます。 ほぼすべての作業は、ラボへ訪れる研究者や私達が訓練しようとしている博士号取得者が行います。

「それが実は私の仕事についての面白い部分です。私は先生であることもあれば指導者であることもあり、それをとても楽しんでいます。」

著者について:Duncan Pay(ダンカン ペイ)はGems & Gemology(宝石と宝​​石学)の編集長で、Pedro Padua(ペドロ パドゥア)はカリフォルニア州カールスバッドにあるGIAコンテンツ開発のビデオプロデューサーです。 Dr. Jim Shigley(ジム シグリー博士)は、カールスバッドにあるGIAラボの著名な研究員です。

著者は、ワシントンDCのカーネギー研究所を訪問した際の援助とご好意について、地磁気部門のシニアサイエンティストであるDr. Steven Shirey(スティーブン シャーリー博士)とその同僚の皆様に感謝します。