カーネギー研究所の科学者によるダイヤモンドプレスを使用した惑星形成の研究


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カーネギー研究所の地球物理学研究室では、地球やその他の惑星の地質学的研究だけでなく、エキゾチックな新素材の技術的適用など、さまざまな目的のために高圧高温(HPHT)プレスを使用している。 ここでは、科学者のSteve Shirey(スティーブ シャーリー)とStevce Stefanoski(スティーブス ステファノスキー)がラボのマルチアンビルプレスの1つに実験物を装着する準備をする。 Duncan Pay(ダンカン ペイ) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)
ジェモロジストにとって、高圧高温(HPHT)プレスといえば、合成ダイヤモンドの成長やダイヤモンドの色の処理の最新技術を意味します。

ワシントンのカーネギー研究所の地球物理学研究室のリサーチサイエンティストであるValerie Hillgren(ヴァレリー ヒルグレン)にとって、そうした条件を作り出すプレスは、私達の太陽系の地球型惑星がどのように形成されたかを研究するための手段となります。

私達は地球物理学研究室の大型機械室に、Hillgren(ヒルグレン)と、同僚のカーネギー研究所地磁気部門のDr. Steven Shirey(スティーブン シャーリー博士)と一緒に立っています。

重機の音で空気がブーンと鳴り、無数のパイプで増加する圧力がリズミカルな音をたてています。 油の匂いが強く、ダイヤルが壁に並んでいます。 私達の周りには、研究者が地球や他の惑星内部深くの状態をシミュレートするために使用する、巨大なマルチアンビルプレスが4機あります。プレスは、それぞれが小さなフォルクスワーゲンほどの大きさです。 各装置は、水星の中心核と同等の圧力に耐えることができます。

これらの機械の内部はギガパスカル(​​GPa)で測定された圧力に対応することができます。 装置は25GPaまで対応でき、これは地球の表面下700キロメートル(435マイル)に相当する圧力です。 この大きさの圧力により、科学者は地球のマントルでの岩石形成系を研究することができます。

これは大そうな数字に聞こえますが、地球の層の深さのほんの一部です。地球の核の中心は表面下6378キロメートル(3963マイル)です。

「地球の奥深くで起こる事象を見たいと思えば、まあ、25 GPaでは下部マントルの表層にしか相当しません。」ヒルグレンは述べます。

比較のために挙げると、地球の核の圧力は360 GPaすなわち364万バールです。 地球の表面での圧力は、約1バールで、0.0001 GPaと同等です。

研究からのニュース、ダイヤモンド、HPHT-処理された、蛍光性
Valerie Hillgren(ヴァレリー ヒルグレン)は、彼女が愛した2つの科目、天文学と地質学を夢の仕事に組み合わせることができ、カーネギー研究所で地球物理学研究室のHPHTプレスを使用して惑星地質学を研究している。 Pedro Padua(ペドロ パドゥア) © GIA、提供:Carnegie Institution of Washington(カーネギー研究所)
ヒルグレンの研究では、特に金属に富む部分とケイ酸塩に富む部分に分化し始めるときの、惑星のマントルと核の分離に焦点が当てられています。 「私達が注目するのは、異なる元素の化学成分が惑星のマントルと核との間でどのように分離されるか、そしてそれが高圧化でどのように発生するか、ということです。」と、彼女は言います。

ヒルグレンは、実験はその目的によって、数分から1日ないし2日で実行できると教えてくれます。 彼女は次のように説明します。「通常、惑星の成分として妥当と思われる割合の酸化物と金属の混合物を出発原料とします。容器の中にそれらを入れて、加熱します。」

十分な熱と圧力をかけた後、「それが金属の部分とケイ酸塩の部分に分離し、それからそれを取り出してその化学的特性を研究します。」と彼女は語ります。

Carnegie Institution of Washington(ワシントン・カーネギー地球物理学研究所)のマルチアンビル型プレス
この順を追った写真では、地球物理学研究室のマルチアンビルプレスの内部の仕組みを垣間見ることができる。
ヒルグレンは次のように付け加えています。「惑星を形成したに違いない物質について研究の結果が何を教えてくれるか、どのような状態が存在していたはずであるか、いつ核が分離したのか、そして核の分離後に何か起こったかについても、探っています。」

「そのプロセスを理解するために注目していることの1つは、マントルの化学的性質で、これは金属が分離するときにその痕跡を残します。」と、彼女は続けます。 「そのため、私達はこうしてプレス機を使用して惑星の内部奥深くの状態を見ることで、それを再現するわけです。」

現在ヒルグレンは、太陽系の最も内側の惑星である水星を研究しています。 「水星は、火星、地球、金星など、太陽系のその他の同様な惑星と比較して、比例的に非常に大きな金属核を持つ非常に珍しい惑星です。

「それは謎です。なぜ水星はそのような大きな核を持つのでしょうか?惑星の先天的な化学現象なのでしょうか、それとも惑星が形成された後に起こった何かのプロセスによるものなのでしょうか?」

ヒルグレンと彼女の同僚は、惑星形成の可能性のある出発原料として様々な隕石の成分を考慮します。「ここには、様々な隕石のタイプが多数あり、私達はこれらの隕石のいずれかが水星を形成した出発原料として妥当であるか調べています。」

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これはChergach隕石の一部で、この隕石は2007年にマリに落下した。 これは、コンドライトと呼ばれる隕石の代表的なもの。 こうした石質隕石は融解による改変を受けておらず、多くの惑星​​の出発原料にかなり近いと考えられている。 Valerie Power(ヴァレリー パワー) © GIA、提供:H. Obodda Precious Gems and Minerals。
彼女は、さまざまな圧力と温度の条件下で実験する予定であると説明します。 「物質に異なる条件を適用した場合、マントルと核とは異なる成分になってしまうでしょうか?私達は地球だけでなく、他の惑星にも注目しています。」

ヒルグレンにどのプレスを使用しているのか尋ねました。 笑いながら、彼女はすべてのプレスを使用すると言います。 「どのくらいの圧力を用いるかによりますね。ちょうどここにピストンシリンダがありますが、これは2~3 GPaで、非常に浅い場所に相当します。 他のプレスはマルチアンビルで、より深い場所の圧力を得たい場合は25 GPaまで上げることができます。

水星の面白いところは、核-マントル境界であるとヒルグレンは言います。 彼女は次のように説明します。「核の分離を調べたいのであれば、水星ならば7 GPaだけで十分です。この惑星なら、これらのプレスをまったく通常の方法で使用して、簡単で身近に研究することができます。」

最後に、私達はヒルグレンにどのようにしてこの分野に興味を持つようになったか尋ねました。 彼女は非常に運良くこうなったと感じています。「若い頃は常に天文学に興味を持っており、大学に入学したら地質学に非常に興味を持つようになりました。大学の最後の年に惑星地質学のコースがあり、それはちょうど私が本当に好きだった宇宙空間と地質学の2つを組み合わせたものでした。」

ワシントンのカーネギー研究所の地球物理学研究室にある高圧研究について詳しくは、https://www.gl.ciw.edu/research/high_pressure_researchをご覧ください。

カーネギー研究所での他の高圧研究

Dr. Steven Shirey(スティーブン シャーリー博士)によると、カーネギー研究所の地球物理学研究室は長い間、高圧研究のリーダーであり続けています。 研究所は、1900年代初頭に行われた地球の造岩鉱物のシステムを見るための非常に浅い圧力と高い温度での実験から始まりました。 科学者たちは、岩石やマグマが地中深くでどのように形成するのか調べるため、熱力学の基本的な理解を得ようとしていました。

シャーリーは、地球物理学研究室では天然ダイヤモンドについてはまだ多くの研究が行われていないが、将来的にはその可能性が増えると語っています。 ラボの仕事の多くは、 特にCVD成長の合成ダイヤモンドと、半導体やその他の技術的用途として使用するための特殊な新素材の実験に焦点が当てられてきました。

ピストンシリンダーを用いた初期の研究

1960年代の研究では、ピストンシリンダーという単純なタイプの高圧装置が使用されていました。 シャーリーの説明によると、「圧封型のカバーのシリンダーがあり、内側リング、子リング、そして別のリングがあります。 これらの圧封型リングは圧力をかけて組み立てられているので、ピストンを押した時の膨張にも対応できるようになっています。」

ピストンシリンダー
Dr. Steven Shirey(スティーブン シャーリー博士)は、地球物理学研究室が地球の岩石形成システムを手始めに、高圧高温の研究の領域へ早期進出したことにを説明する。
「さまざまな素材でできた、中央に領域を設けたシリンダーに試料を入れます。」と、彼は言います。 「シリンダーはたいてい、ゴールドやプラチナなどの貴金属、あるいはグラファイトなどで製造されたカプセルのようなものです。 そして、塩やパイロフィライトなどの圧縮性のあるものと、周りのカバーもあります。」

パイロフィライトは水酸化ケイ酸アルミニウム-Al2Si4O10(OH2)で構成されているフィロケイ酸塩鉱物で、ガスケット素材と圧力伝達媒体の両方として高圧実験で広く使用されています。

シャーリー博士は、抵抗加熱装置がシリンダーの穴を通っていると説明します。「全体を圧縮すると、その圧縮から圧力が生じ、またこの抵抗の両端に電圧をかけることで加熱されます。」

これらの装置では50キロバール(5 GPa)あたりまで達することができ、これは地球の内側約150キロメートル(93マイル)に相当すると、彼は言います。「これがだいたいピストンシリンダーの最高値になります。」

ピストンシリンダーはマルチアンビル型プレスに比べると非常に小さなものだと、背後にある大きな装置を身振りで示しながらシャーリーは言います。「とはいえ、ピストンシリンダーを使って初期のころ取り組んだ問題は、マントルの融解関係や形成された溶融物の種類など、基本的なものでした。これは、キンバーライトで育てられるマントル捕獲岩に見られる状況をかなりの部分シミュレーションしてくれる実験研究となります。」

マルチアンビル型プレス

天然ダイヤモンドの形成の実験にはいずれも、大量の実験素材を保持できるマルチアンビル型プレスの使用を必要とすると、シャーリーは述べます。 ピストンシリンダー装置と同じように、科学者は、抵抗の両端に電圧を印加して高温に加熱して、地球や他の惑星の内部の様子を再現することができます。

マルチアンビル型プレス
このビデオでは、Dr. Shirey(シャーリー博士)は私達にカーネギー研究所のマルチアンビル型プレスを見せ、ピストンシリンダー装置のような以前の装置と比べてその利点を説明してくれている。
しかしマルチアンビル型プレスは違った方法で動作すると、彼は言います。「ここには、大きな格納容器内で浮かべたように置かれた立方体があり、立方体の中には、角が切り落とされた窒化ホウ素の立方体がさらに入っていて、その角の部分に試料が入るようになっています。」

シャーリーはマグネシウムと酸化クロムの化合物(MgOおよびCr2O3)で出来ている八面体の試料ホルダーを親指と人差し指で持ちます。 これが、窒化ホウ素またはタングステンカーバイドのいずれかで出来ている8個の立方体の中心に収まります。 それはプレスの大きさを考えると、かなり小さなものです。 斜めの穴は試料ホルダーを貫通しており、そこで実際の実験が行われます。 シャーリーは、皮肉のつもりは全くなく、これは「大容量装置」であると言います。

「これらのおかげで、電子マイクロプローブに入れて優れた分析をするのに十分な大きさの質量で、かなり高い圧力をかけることできます。」

著者について:Duncan Pay(ダンカン ペイ)(dpay@gia.edu)はGems & Gemology(宝石と宝​​石学)の編集長で、Pedro Padua(ペドロ パドゥア)はカリフォルニア州カールスバッドにあるGIAコンテンツ開発のビデオプロデューサーです。 Dr. Jim Shigley(ジム シグリー博士)は、カールスバッドにあるGIAラボの著名な研究員です。

著者は、ワシントンDCのカーネギー研究所を訪問した際の援助とご好意について、地球物理学研究室の研究員であるValerie Hillgren(ヴァレリー ヒルグレン)、地磁気部門のシニアサイエンティストであるDr. Steven Shirey(スティーブン シャーリー博士と)、その同僚の皆様に感謝します。