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国際グループ、持続可能な宝石採鉱に関する目標を定める


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ガーナのアクァティア近郊にあるビルム川で礫をふるいにかけダイヤモンドを探す採鉱職人。 写真撮影:Russell Shor/GIA

世界経済という舞台で色石宝石業界の果たす役割はわずかにすぎませんが、発展途上国にいる多数の鉱山労働者や業界関係者にとっては、長期にわたり生活の糧となってきました。

この業界は本質的に各レベルで分裂されていること、およびそれぞれの取引レベルにおける利益相反が多く存在することにより、鉱山労働者の労力に対する報酬および労働条件を向上させることは難しい課題となっています。

経済協力開発機構 (OECD) は、このように分散された業界からできるだけ多くの貢献者を集結させるべく、5月にパリの本部で宝石採鉱などに関するものとしては初めてとなる重要なフォーラムを開催しました。 宝石の採鉱に関するセッションも行われた3日間の会議の目標は、持続可能な採鉱慣行方針を作成し、多くの場合手作業で採掘する鉱山労働者に対して僅かにしかならない報酬を増加するプロセスを始めることでした。

OECDは、互いに協力し合う市場経済を持つ34ヶ国の先進民主主義国および、経済成長と持続可能な開発を促進する目的を持つおよそ70ヶ国の非加盟国で構成されています。 当機構の推測によると、70ヶ国以上の1億人ほどが、さまざまな鉱物に関する個人採掘職人や小規模採掘の従事者だということです。 約1500万人が金の採鉱に従事しており、そのうち450万人が女性、60万人は子供です。

カラーストーンの他に金および他の鉱物関係の代表者を含んだこのフォーラムは、原産国の政府、宝石の取引者、鉱山労働者、市民社会団体、大規模の小売業者や原産地を認証する組織に、他の関係者の利益とのバランスを保ちながら生産国と鉱山労働者にも利益をもたらす政策を構築できるような基盤を提供しました。

会議に参加した者へインタビューをした結果、全員の利益を調和させることが課題であるということが判明しました。 以下がその一例です。

  • 政府は資源から利益を得て、その資源を管理をするのを希望していますが、鉱山労働者は規制と輸出関税に抵抗しています。
  • 手工具で採掘する採鉱職人は、採鉱したものからわずかな利益しか得られない場合がよくあり、その理由のとしては、彼らの多くが私有地または政府所有の土地で不法に作業していたり、あるいは最貧層で教育や権力を持たないために社会から取り残されているケースが多いことなどがあります。 
  • 大規模な採鉱会社と公正な取引慣行を認定する機関は、持続可能な採鉱や労働慣行を促進する方針を採用したり、認証プロセスに多額の代金を支払うことができます。 小規模の鉱山労働者やディーラーは、そのような認証措置は費用がかかり過ぎ、彼らを追放するための言い訳としてよく使われるものであると、訴えます。
  • 宝石のような資源を取り扱う市民社会団体や非政府組織 (NGO) は、採鉱されたあらゆる宝石に対して完璧に近い説明責任をしばしば要求しますが、鉱山労働者や取引者はこれは不可能ではないにしても非現実的な目標であると主張します。
  • 小売業者は、持続可能性および紛争に関して現在起きている、またはこれから起こりうる問題に対する顧客の懸念に対処するために、サプライチェーンの説明責任をより望むようになっています。 しかしながら、原産国の鉱山労働者および取引者は、このような消費者の懸念を認識していないか、それとは異なるまたは競合する優先事項を抱えている場合が多くあります。

OECDは、こうした利害の対立の調和をガイドラインに盛り込むことに取り組んでいます。 職人採鉱の部門に寄せられる注目の大半は、鉱山労働者を正式なセクターに移動させることに焦点を当てています。つまり、違法採掘を継続させることと引き換えに金銭その他の利益をしばしば強要するマネーロンダリング従事者や汚職官吏に依存することが、彼らの作業を合法化することで減るのです、とGIFFプロジェクトで以前のディレクターを務め、鉱物職人採鉱の持続可能性に関するコンサルタントとして活躍するEstelle Levin-Nallyが説明しました。

Levin-Nallyは、政府がこの問題に関して関心を寄せ始めていると述べました。 ただし、「カラー宝石業界はすでに、自分たちのセクターにおける、責任ある鉱物の調達に関するOECDのガイダンスの妥当性を概ね受け入れています」と彼女は付け加えました。まだ埋めなければならない大きなギャップがありますが、これは新しい展開であるとも述べました。

「サプライチェーンの上流(地元の取引者や採鉱のレベル)では、下流の人々が低価格を求めながらも環境保護や紛争の資金調達問題のような持続可能性の優先順位を要求していることを懸念しています」と彼女は語りました。 「その一方で、生産国では、鉱山労働者、輸出業者、政府関係者が、主な関心事つまり収益を最大化にする方法に関して必死にサポートを求めています。 これは、社会・環境問題に対処するための投資を刺激する基盤となります。」

鉱山での現状は「犯罪、密輸、汚職などが関わり、かなり厄介なことになっています。 これらは多くの状況で依然として対処する必要がある問題です」と彼女は認めます。彼女はこのセクターの経済的な潜在力を解き放つために、商業的な実用主義と「人権ベースのアプローチ」を取ることの重要性を強調しました。

コンベアベルトの両側に並び、通過するエメラルド原石を選別する労働者。
持続性監査は、Gemfield(ジェムフィールズ)がザンビアで所有するカジェムのエメラルド鉱山などの大規模な採鉱企業と、長期を要する認証プロセスに対する余裕がないため自分たちは不利な立場にあると主張する採鉱職人とを分割する結果となっている。 写真撮影:Russell Shor/GIA

会議に参加した政府代表者は、持続可能な採鉱および公正な労働慣行が稼働し始める前に、資源の採鉱を管理する必要があると強調しました。 つまり、採鉱と宝石鉱床への立ち入りを管理し、収益をもたらす実行可能な輸出の手続きを開発する一方、密輸を招くことなく、鉱区から密輸、犯罪の要素を除くのです。

Levin-Nallyは政府がこの方向でより主導権を取っていると指摘しますが、International Colored Stone Association(国際色石協会)でこれらの問題に取り組んでいる宝石商であるJean Claude Michelouは、多くの「非公式」の鉱山労働者つまり政府からの許可なしで採鉱をしている者にとって状況は依然として非常に困難なままであると述べました。

彼は「これらの鉱山労働者の多くにはサポートする手段がないため、そうした手段を合法化する必要があります」とし、多くの国が彼らを不法侵入者や違法事業者とみなし続けているとも付け加えました。

Michelouは、いくつかの政府がその法的枠組みにこれらの鉱山労働者を該当させるべく動いていると述べました。

「コロンビアはエメラルドと金の採鉱産業により強く関与している政府の1つです」と彼は述べました。これは、鉱山労働者をその制度から除外することでいかに収益が減少していたかを政府がついに理解したからです。

また、軍事政権に対する制裁のため長期間にわたり孤立していたミャンマーも、ルビージェードの生産管理を奪取する方向に動き出しており、会議において損失した収益の推定額が同国の代表者にショックを与えたと、Michelouは説明しました。 以前のレポートに記載されているように、ミャンマーのジェードの生産は深刻な課題を抱えています。

OECDはすべての当事者の利益の要因となる業務上のフレームワークを開発する一方で、世界銀行は、鉱物資源の持続可能な管理のプロジェクトを通してこれらのポリシーを実践する努力に資金を供給し始めています。

American Gem Trade Association(アメリカ宝石取引協会)を代表して会議に出席したJeff Bilgoreは、同協会は過去3年間で倫理規定とデューディリジェンスの手続きを開発し、その目的はOECDがこれらの基準を採用することである、と述べました。

「私達が最も重要視しているのは、鉱山労働者の利益と生産国の小さな家族経営の事業の懸念や米国の消費者の懸念とのバランスをとることです」と彼は述べました。 「かなりの進歩がありましたが、ひとつひとつ解決していくしかありません。 まだ完璧にはほど遠いものですが、前進しています。」

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。