フィールドレポート

ジャイプールのマハラジャから現代の大御所まで仕えるジュエラー

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マハラジャにぴったりのこのクンダンミーナネックレスは、23金と24金、未研磨の平板状ポルキダイヤモンド、エメラルド、そしてもちろんカラフルなエナメルが合わせられ、豪華な見栄えとなっている。 写真提供:Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)

インドのラジャスタン州ジャイプールは、1700年代初頭以来ウェアラブルアートの傑作を作成し続けるジュエラーの家族の住む場所となっています。 アメールのラジャのマハラジャ、Sawai Jai Singh IIがこの街を設立し、これらの家族にそこに定住して、ラジャスタンの王族向けに豪華なジュエリーを作るように頼みました。

ムガルとマハラジャ
1700年代初頭まで遡るインド、ジャイプールの宝石の伝統を覗いてみてください。 大きなダイヤモンド、カラー宝石、そしてエナメルが、世界で最も豪華なジュエリーのひとつであるクンダンミーナに使用されました。 もともとムガル帝国皇帝とマハラジャのためのものであったこのジュエリーは、現代の一般消費者向けになりました。

では、ラジャスタンジュエリーの伝統的なスタイルとは何でしょうか。

Kundan(クンダン)ジュエリーでは、宝石は一般的に石を固定するために石の縁を囲む薄い24金の金属箔にセットされています。 Kundan Meena(ク22金ミーナ)は、美しいラジャスタンスタイルのエナメルが合わさった24金の薄箔にセットされています。エナメルは通常22金から24金のゴールドジュエリーに使われています。

ペンダントとイヤリング
クンダンミーナジュエリーの高貴な外観はカラフルで豪華である。 写真提供:Surana Jewellers
(スーラナジュエラーズ)

ポルキダイヤモンドとはもともと平板状の未研磨ダイヤモンド、または平板状に見えるようにカットされたダイヤモンドで、24金箔でクンダンスタイルにセットされます。 それらはダイヤモンドの仮のパビリオンとなっている銀箔で裏付けしてあり、外観の深さとより優れた反射を出しています。 銀箔とダイヤモンドを張り合わせたものは、22金から24金の枠にワックス状の物質で固定され、その後、そのカットされていないダイヤモンドの縁周りを24金箔で固定します。

ポルキ ダイヤモンドネックレス
マハラジャや裕福な家庭の花嫁にぴったりの、この23Kのゴールドネックレスには、フラットノーカットのポルキ ダイヤモンドがセットされている。 写真:Andrew Lucas、提供:Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)
私達の顧客は、現代の大御所(ムガル)です。
—Pracheer Surana、Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)

2015年にGIAのフィールドチームは、約300年前に人気のあったジュエリーをいまだに製造、販売する伝統的なジュエラーと、伝統的な部族のジュエリーを独自に解釈したものを生産するモダン企業など、彼らの宝石やジュエリー業界を研究するためにジャイプールを訪れました。 彼らの小売りや製造設備のインタビューやツアーを通して、私達はジャイプールのマハラジャから、イギリス王室、アラブ諸国の超裕福層、そしてハリウッドとボリウッドのスター達までの、こういったジュエラーとその顧客の秘密を学びました。

歴史的なマ​​ハラジャの写真
1700年代初頭まで遡り、Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)はマハラジャにジュエリーを提供してきた。
写真提供:Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)

SURANA JEWELLERS(スーラナジュエラーズ)

ジュエラーとしての家系はもっと過去に遡りますが、Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)は1735年にジャイプールのマハラジャへの家族経営のジュエラーとして始まりました。 1951年までにはモダン企業を形成していました。 1947年のインドの独立前に、構造化事業となっているジュエラーはほとんどありませんでした。 そんな時でも、Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)は予約制で、いつも1日あたり5人しか顧客をとっていませんでした。 本格的な裕福な顧客で、しかも、卓越したジュエリーと芸術品を注文していました。 現在は、1日に約60から70人の顧客があり、今もなお本格的なバイヤーです。

ビル・クリトン氏、チェルシー・クリントンさん他、Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)にて
かつてのマハラジャ同様、元米国大統領ビル・クリントン氏のように裕福な著名人が、 ジュエリーを購入するためにSurana Jewellers(スーラナジュエラーズ)に訪れる。 写真提供:Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)

Surana(スーラナ)は、マハラジャ向けに作られたジュエリーと似たような技術を使って、ポルキダイヤモンドやその他のKundan(クンダン)セットダイヤモンドのついたクンダンミーナジュエリーを作り続けています。 通常、23金のジュエリーフレームを使用しています。 ワックス状の物質がフレーム内に配置され、銀のバッキングと石を固定する表面を形成するために加熱されます。 銀のバッキングに窪みをつけることで、平板状の未研磨ダイヤモンドや平板状のカラー宝石用のパビリオンとしています。 

ジュエリーにデザインを描く
クンダンミーナジュエリーギャラリーの作成

カラーストーンには、反射が色を強調するように、銀箔が石と同じ色に塗装されることがあります。 このセッティングスタイルは幻想芸術だと考えられます。 ワックス状の物質を冷却して石とフォイルを硬化した後、24金の金箔でさらに石を固定します。 ほとんどの作品は、作品の裏面によく使用されるエナメルで、前面および裏面が完全に仕上げられています。

Kundan Meena(クンダンミーナ)ブレスレット
Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)によって作成されたKundan Meena(クンダンミーナ)ジュエリーのこのスイートは、裏面も前面と同様に美しくエナメルで仕上げられている。 写真提供:Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)

Surana(スーラナ)はモダンカットダイヤモンドを取り入れたモダンジュエリーラインも作成しますが、ポルキダイヤモンドのついたクンダンミーナジュエリーは今も強く求められています。 彼らはジュエリーの製造に100キロ以上の金を使用し、伝統的なインドの婚礼には、花嫁のためだけでも半キロ以上の金を使ったクンダンミーナジュエリーを含むことがあります。

Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)
クンダンミーナジュエリー、ポルキダイヤモンド、そしてラジャスタンのマハラジャのためにあるかのようにいまだに生産されている他のジュエリーの詳細について学びましょう。 
Kundan Meena(クンダンミーナ)の花瓶
Surana Jewelry(スーラナジュエリー)と美術品ギャラリー

GEM PALACE(ジェムパレス)

Gem Palace(ジェムパレス)への訪問は、美術館とモダンジュエリー店を同時に訪れたようなものでした。 1700年代初頭以来のマハラジャへのジュエラーであるSanjay Kasliwalの家族は、ジャイプールあるいは実際にインドで最も豊かな伝統のひとつを持っています。 彼らの店はアンティークと、新しく生産されたポルキダイヤモンドのついたクンダンミーナジュエリーであふれていました。 私達は大きなポルキダイヤモンドのついたマハラジャの髪飾り、250年以上前の24金とエナメルのチェスセット、また250年以上前の24金とエナメルのインコの形の水筒、純金とポルキダイヤモンドの乳児用のエナメルスプーンと皿を見ました。

西欧社会では「銀のスプーンを持って生まれた」と言いますね。インドでは、ダイヤモンドスプーンを持って生まれた、と言います。
—Sanjay Kasliwal、Gem Palace(ジェムパレス)
マハラジャの頭飾り
250年以上に渡って、このPolki(ポルキ)ダイヤモンドとエメラルドの頭飾りは、ラジャスタンのマハラジャの頭を飾ってきた。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)

マハラジャの時代以来、Gem Palace(ジェムパレス)の顧客は、ジョン・ケネディ大統領とファーストレディーのジャッキー・ケネディ、エリザベス女王、チャールズ皇太子、ダイアナ妃、オランダの女王、スウェーデンの王と女王、スペインの王と女王などに広がっていきました。 さらに顧客は、Errol Flynn、Richard Gere、Gwyneth Paltrow、そしてOprah Winfreyといったセレブや、フィアット・クライスラーのオーナーであるAgnelli(アニェッリ)ファミリーのようなビジネスリーダーもいます。 カタールの首長など、世界で最も裕福な人々の中にも顧客がいます。 Gem Palace(ジェムパレス)の顧客の50%はインド人であり、結婚式用のジュエリーはコアビジネスで非常に重要です。 ヨーロッパ、米国、中東、そして中南米で成長している新たな市場からの顧客も、重要な役割を果たしています。

伝統的な宝石カッター
Gem Palace(ジェムパレス)の宝石カッティングは、カッターが快適に床に座り、カッティングプロセスを通じて作業の感覚を捉えるため、手で宝石を持つ方法で行われている。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)

アンティークの作品と共に、私達は1842年に建てられた現在の店と同じ建物内で仕上げられた、ポルキダイヤモンドとその他の宝石が使われたクンダンミーナジュエリーの壮大な作品のデザインと作品を見ました。 職人は、原石からカラーストーンをカッティングして、半田付け用の吹管の使用、ジュエリーの前面と裏面のエナメル加工など伝統的な方法でゴールドフレームを作り、そして石をセットしていました。 

吹管をもったジュエラー
Gem Palace(ジェムパレス)でクンダンミーナジュエリーに取り組むマスタージュエラーは、
製造時にまだよく吹管を使用している。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)

Gem Palace(ジェムパレス)は常にジュエリー作品の裏面をエナメル加工で仕上げ、時にはダイヤモンドや他の石を使って仕上げをします。 その理念は、着用者がネックレスを持ち上げてつける時に、他の人が見る前面と同じように、本人が美しく仕上げられた裏面も見えるようにすることです。

Kundan Meena(クンダンミーナ)チョーカーフロント
ノーカットフラットPolki(ポルキ)ダイヤモンドと養殖パールをたくさん並んだチョーカーの前面。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)
Kundan Meena(クンダンミーナ)チョーカーバック
この同じチョーカーのバックはエナメルで美しく仕上げられている。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)
私達のジュエリーの所有者にも、他人が着用時に前面を見るように、ネックレスを持ち上げてつけるときに、同じ美しさと質を持った裏面が見えるべきです。
—Sanjay Kasliwal、Gem Palace(ジェムパレス)

Sanjay Kasliwalも、作品の裏面にロシアのスタイルのフィリグリーとダイヤモンドのセッティングで仕上げる彼のインド・ロシアンラインのように、ジュエリースタイルを溶け込ませています。前面と裏面の両方が完全に仕上がったジュエリーを維持しながら、スタイルの調和を取っています。 これらの新しいスタイルは平板状の未研磨ダイヤモンド、ローズカットダイヤモンド、そしてモダンフルカットダイヤモンドにも応用することができます。 Gem Palace(ジェムパレス)は、500USドル(約56000円)から1000万USドル(10億1300万円)、あるいはそれ以上をプライスポイントとしてジュエリーを作成し、店に来る誰もがその人に合うジュエリーの作品を見つけられるようにしています。

インド・ロシアンチョーカーフロント
ローズカットダイヤモンドと、回転式洗浄機で洗ったエメラルドがついたぜいたくなインド・ロシアンチョーカー。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)
インド・ロシアンチョーカーバック
同じインド・ロシアンスタイルのチョーカーのバックは、Polki(ポルキ)ダイヤモンドとモダンカットのダイヤモンドとフィリグリーで仕上げられ、2つの文化の豊かな伝統をブレンドしている。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Gem Palace(ジェムパレス)
私たちの店に入る誰もが、これから大切にしたいジュエリーの作品を持って出るようでなければなりません。
—Sanjay Kasliwal、Gem Palace(ジェムパレス)
Gem Palace(ジェムパレス)
Gem Palace(ジェムパレス)に入ることは、壮大な作品を生産し続ける宝石の美術館を見つけたような感じです。

AMRAPALI(アムラパリ)

宝石店にいる男性
店舗のひとつでジュエリーに囲まれている、ファミリービジネスの新世代のメンバーであるTarang Arora。 写真:Andrew Lucas/GIA、提供:Amrapali(アムラパリ)

Amrapali(アムラパリ)は、世代を超えて活躍している他のジュエラーに比べて、とても対照的です。 同社は1987年に設立されたモダンなベンチャーで、部族のジュエリーとクンダンミーナジュエリーなど、伝統的なインドジュエリーで知られています。 Amrapali(アムラパリ)は、たった数百ルピーと、インドの文化とその文化をジュエリーを通して表現することにとてつもなく大きな情熱を持つ、起業家精神にあふれる歴史科の学生2人によって設立されました。 国の遠隔地へ車で向かって、彼らは部族のジュエリーを購入し、自分達のジュエリーラインのためにそれを再作成しました。

私達の家業は、10ドルととてつもなく大きな情熱を持つ2人の歴史科の学生によって始められたのです。
—Tarang Arora、Amrapali(アムラパリ)

彼らのジュエリーは、伝統的なインドの部族のジュエリーを、多くのフォロワーがいるボリウッドの観衆向けに、ファッショナブルな高級ジュエリーに変身しました。 ボリウッドスターは、国内と海外両方で、このタイプのジュエリーが「流行である」という印象をつけました。 今日Amrapali(アムラパリ)のビジネスの60から70%はインド国内の市場です。

この会社が設立された時、製造のほとんどは、ジャイプールの家内工業で、自宅から働く職人によって行われました。 今日、季節によってこの工場は1600人から2300人の職人を雇って、ジュエリーを社内で製造しています。

ゴールドフレームを作るジュエラー
Amrapali(アムラパリ)工場: クンダンミーナジュエリーギャラリー
私たちのジュエリーは、米国7ドルから顧客が支払いたい価格まで様々です。
—Tarang Arora、Amrapali(アムラパリ)

Amrapali(アムラパリ)のジュエリーは、よりファッショナブルで手ごろな価格の土台金属にメッキ加工したラインから、シルバージュエリー、また18金から24金のゴールドジュエリーなどがあります。 ポルキダイヤモンドと他のカラーストーンの作品を使った作品など、伝統的なクンダンミーナジュエリーの精巧な作品もあります。 クンダンミーナジュエリーは22金から24金で、ほとんどの場合、前面と裏面にエナメル加工が施されています。 高いファッション志向の彼らのウェブサイトに載っているジュエリーの平均価格は120ドル(約14000円)から400ドル(約45000円)で、ゴールドのギフトは500ドル(約56000円)から5,000ドル(約56万円)、誕生日のような特別な行事向けの作品は10,000ドル(約113万円)から15,000ドル(約170万円)までになることもあり、結婚式のための作品は通常50,000ドル(約570万円)以上です。 彼らはまた、非常に精巧な高級品も生産します。 彼らのジュエリーラインは、部族に影響されたものからクンダンミーナ、そして西洋の強い影響を受けているモダンラインまで様々です。

Amrapali(アムラパリ)
部族にインスパイアされたものと伝統的なインドジュエリーのテーマを現代の生活にモダンな宝物またファッショナブルなジュエリーとしてもたらす、これがAmrapali(アムラパリ)のストーリーです。 伝統的なインドジュエリー、そしてアムラパリの工場で作られたファッショナブルなモダンラインをご覧ください。 
作業中のジュエラー
Amrapali(アムラパリ)工場: モダンプロダクションギャラリー
 


インドジュエリーの用語

Chambala:チャンパの木の香り高い黄色い花をもとにしたつぼみ型の飾りが列に並ぶロングネックレス。

Chandbala:半月の形を取り入れたイヤリングのタイプ。

Jadauジュエリー:輝きを高めるために、金や銀の箔でセットされた宝石。 これはインドで作られて着用されたジュエリー最古の形で、ラジャスタンとグジャラートの宮廷に起源を持つと考えられています。

Jhapta:通常三日月型の婚礼装飾で、頭の片側に下げ、ピンで留められます。

Jhumki:垂直軸の周りに3次元のオーナメントを取り入れたイヤリングのスタイル。

Kadas:ヒンジ付き、またはヒンジなしの幅広いバングルブレスレット。

Kundan(クンダン):非常に薄い24金の金箔が通常、長い筋状に打ちつけられたもの。 Kundan(クンダン)ジュエリーは、宝石をセットするために、金箔が宝石の周りに磨きつけられます。

Meenakari:エナメル加工。

Polki(ポルキ):未研磨のダイヤモンド、または未研磨のダイヤモンドに似せて作られたダイヤモンド。

Rajasthani aria/ariya/aad(ラジャスタニ アリア):通常は金で、ポルキやカラーストーン、真珠で装飾されたチョーカーネックレス。

Rani Haar(ラニハール、女王のネックレスとしても知られる):真ん中に大きなペンダントがついているマルチストランドの首飾り。 ストランドは通常奇数で、多くの場合、ゴールドビーズでできています。
 

Andrew Lucasは、カールスバッドのGIAの教育部門でフィールドジェモロジィのマネージャーを務めています。Nirupa Bhattは、GIAインドおよび中東でマネージングディレクターを務めています。Manoj Singhaniaは、GIAインドの教育ディレクターを務めています。Kashish Sachdevaは、GIAインドの宝石学の講師を務めています。Tao Hsuは、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の技術編集者を務めています。Pedro Paduaは、GIAカールスバッドのビデオプロデューサーです。

免責事項

GIAスタッフはリサーチおよび市場への見識を深めることを目的に、鉱山、 製造業者、 小売業者の他、 宝石およびジュエリー産業に関わる場所や企業を頻繁に訪問しています。 GIAは、訪問中に私たちを受け入れ、貴重な情報を提供してくださった皆様に感謝いたします。 これらの訪問やそれにまつわる記事、または出版物のいかなる内容も、再利用、宣伝用の利用はご遠慮下さい。

Gem Palace(ジェムパレス)、Surana Jewellers(スーラナジュエラーズ)、Amrapali(アムラパリ)の皆さまに執筆者より心より感謝申し上げます。