展示会レビュー:メトロポリタン美術館でのUnique by Design(独自性をもたらすデザイン)


グレー
アメリカ人アーティストのMyra Mimlitsch-Grayが製作したBrass Knuckles(ブラス・ナックルズ)は真鍮の飾り付きの24金メッキの真鍮から成る指輪で、Unique by Design (独自性をもたらすデザイン):Donna Schneierコレクション内の現代ジュエリー 展に出展された。 写真:メトロポリタン美術館, 寄贈:Donna Schneier, 2007(2007.384.38)。
メトロポリタン美術館が開くDonna Schneier コレクションの現代ジュエリー展は、19ヶ国からのデザイナー88名の作品を厳選して集めた、まさにアートとジュエリーの橋渡しとなる催しです。 Jane Adlinがキュレーターを務めるこの展示会に展示されている現代ジュエリーは130作品以上に上ります。 展示会は近現代アートのデザインと建築を鑑賞するためのLila Acheson Wallace Wingを会場に、2014年8月31日まで開催されます。

Schneierのコレクションは、熱烈かつ多様な実験を続ける中でのスタジオアートムーブメントの進化を物語っています。 展示会では、1960年代から現在までに製作されたジュエリーのうち、将来のジュエリー界発展に欠かせない、有望な作品で構成されています。そこには現代ジュエリーアートに関する文献でも紹介され、かつメトロポリタン美術館で大々的に展示される価値のあるものも含まれます。 是非とも注目していただきたい作品を以下に紹介します:Earl Pardon作のシルバー、イエローゴールド、 エナメル、真珠母貝、黒檀、半貴石を使ったネックレス;Eugeneと Hiroko Pijanowski 夫妻作の紙ひもと帆布のネックレスとブレスレットのセット;Gijs Bakker 作のダイヤモンドとPVCラミネート写真のブローチ;Hermann Junger 作のイエローゴールド、 ベゼルセットエメラルド、クリソプレーズ、サファイア、ラピスラズリ、エナメルの正方形ブローチなどが挙げられます。

Mary Lee Hu作<em>チョーカー#70</em>
Unique by Design(独自性をもたらすデザイン): Donna Schneierコレクションの現代ジュエリーからの画像
この展示会では、簡潔な作品分類展示法を用いています。 展示は正方形の部屋を会場にし、出展者3名の作品が後壁に飾られています:David Watkins のミニマリスティックなシルバー、スチール、 アクリルの幾何学的作品;William Harper のゴールド、宝石、七宝エナメルの名人芸的作品;Thomas Gentille の巨大な卵殻、木、漆の作品集などです。 残りの展示品は7つのテーマごとに分かれて陳列ケース内に収められ、来客者が四方から作品を鑑賞できるように展示されています。

最初のウィンドウは、Eugene と Hiroko Pijanowski夫妻の作品で占められております。 続く2番目のウィンドウには厳選された「ゴールド」の作品が数点飾られており、 中でも一番の見物がMary Lee Hu 作のChoker # 70です。これは20個の凧形のモチーフを組み立てた壮大な金線細工のネックレスです。 このような絢爛なゴールドの作品に代表される、インパクトの強い異彩を放つジュエリーが来客者をお迎えします。 3番目のウィンドウには、上述したGijs BakkerのダイヤモンドブローチとEmily Van Lersumの繊細な半透明アクリルカフスブレスレットなど、「ミニマリズム」に拘った作品が並べられています。 ジェモロジストを唸らせているのは、Joan Parcher 作のシルバーと雲母で作られたチェーンです。 円形雲母に開けた穴でつながったチェーンは、宝石細工士にとって謎となっています。最も壊れやすい宝石素材の1つである雲母を、どうやってこのように削れるのでしょう?この魅惑的なディスプレイからは、非高級材料を使用することの価値に気付かされます。つまり職人業とデザインが、使用される素材の価値に優って重要であることを示唆しているのです。

4番目のグループは、「マキシマル(極大)」な作品を展示する大きさを売りにした一般的なイメージに勝負を挑んでいます。 展示された作品で最も強烈な印象を与えるのが、Lola Brooksが製作した特大のシルバー、イエローゴールド、ガーネットのハートブローチでしょう。 5番目のショーケースでは、集めたジュエリーで「物語」が構成されています。 中でもKiff Slemmons 作の胸当ては圧巻で、シルバー、No.2鉛筆、石、馬毛、コイン、皮などを使い、アメリカ原住民の戦利品として使われた首衣装を連想させる作品です。 6番目は、「ファウンド・オブジェとパロディー・オブジェ」で占められ、その中で最もコンセプトが顕著に表れていたのが、Helen Brittonの金メッキを施したシルバーやプラスティックポリマー、ファウンドオブジェのネックレスです。 最後のガラスケースには「彫刻的」ジュエリーが登場します。 主にブローチで占められるこの多様性に富んだグループでは、 彫刻と建築と宝石の類似点に明らかに焦点を当てています。 Georg Doblerのスチールワイヤーとブラッククロムの格子飾りでこしらえたブローチが、まさにその象徴を表しています。

ジュエリー愛好家、専門学生、アマチュア現代芸術家たちにとってSchneier コレクションは、際限ないほどバラエティに富んだアートスタジオジュエリーに巡り会える必見の展示会なのです。 より詳細かつ丁寧な説明での分類展示を行っていれば、この印象的なコレクションがより効果を発揮し、陳列された作品のオリジナリティやクオリティを来客者に理解してもらえたでしょう。 果たしてメトロポリタン美術館以上にアンティーク、ウィーン学派、そしてアールデコの間の類似性について、啓発的な描写ができる場所があるでしょうか?一般的なジュエリーの展覧会では、展示されている芸術作品がどのようにインスパイアされ創作されたのかについて解説しているものはほとんどないと失望するばかりです。 来客者が、展示会に関わる資料に触れる機会もなくメトロポリタン美術館を後にしてしまえば, この展示作品群が誇る荘厳さと意義深さが真に評価されなくなってしまう恐れがあります。 アートのアマチュアを熱心なジュエリーコレクターに育て上げるためには、 ジュエリーコレクションにおいて、 現代的なものも含め、歴史的かつ文化的背景を紹介した資料が不可欠なのです。

Delphine Leblanc はニューヨークのティファニーの 専門鑑定士です。