サファイアシリーズ第2部:
次世代のサファイア結晶成長技術


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図1. これらの写真は、火災溶融法合成サファイア結晶の成長後そのままのもの(左)および炉における成長中のもの(右)を示しています。 写真提供:Hrand Djevahirdjian、SA。
前回の記事で、鉱物学、化学、物理学などのサファイアの基礎科学について、さらに宝石として、また一部の工業用途としての魅力について、触れました。 合成における初の急進展を経験したあと、私たちは現在、さらに大きくて完璧な結晶の需要を満たすために開発された次世代の成長技術に向かっています。 上述したように、初期の火炎溶融法によって成長させたサファイアの多くは、これらの高度な成長技術のための高純度の原料として使用されています(図1)。

大型サファイア結晶は様々な方法を用いて工業的に製造され、大まかに溶液成長と溶融成長とに分類されます。 溶液成長では、その融点以下の温度で結晶を生成するために、水(熱水)や他の化学物質(フラックス)のような溶媒が使用されます。 溶融成長は、Al2O3をるつぼ内で融点(2040℃)までずっと上昇させることで達成されます。 特別に配向されたシード(種結晶)から始まり、るつぼ内の溶融物の一部を引き上げることによってまたは溶融物を一方向に冷却すること(勾配徐冷)によって、大きな結晶が形成されます。 業界は大きくて指向性のある結晶を必要としているので、ここでは溶融技術に焦点を置きます。 本記事では、2つ​​の結晶引き上げ技術、2つの勾配徐冷技術、および1つのハイブリッド法を検証します。  

1960年、チョクラルスキー法成長技術が初めてサファイアに適用されました。この技術は1918年に導入され、るつぼ内の溶融液から結晶を回転させ引き上げるものです。 この技術は、純度および欠陥という両方の観点において最高品質の結晶を生成することができるので、サファイアおよび多種多様なその他の結晶質素材(シリコンを含む)にとって今日でも非常に重要となっています。 これらの製品の品質は主に、精密に制御された成長速度によって生まれます。この成長速度の制御は、加熱に要する電力を質量制御フィードバックループに基づき注意深く調整することによって可能となります。 チョクラルスキー法が非常に貴重となる別の要因は、「ドープ」結晶に意図的に加えた不純物の分布を制御する能力です。 これは、全体の溶融物を徐冷するのではなく溶融液のごく一部のみを除去することによって行えます(図2)。

図2. 加工されたものと並べて置かれたチョクラルスキー法で成長した合成ルビー結晶(左)と、成長工程より取り出し中のもの(右)。 写真提供:Jennifer Stone-Sundberg(ジェニファー ストーン‐サンドバーグ)。
EDF法成長技術は、1962年に初めてサファイアに適用されました。 これは、溶融したサファイアを成形機を通して引き上げることにより、チューブ、シート、その他の非常に特徴的な形状の生成を可能にしました。 幅広いエンドユーザーに対する防護サファイアウィンドウの需要が増加しているので、この技術はさらに高度化されると思われます(図3)。 本シリーズの次の回では、これらの用途についてさらに詳しく説明します。

図3. EDF法成長による合成サファイアシート結晶(左)と、この技術を使用する成長装置(右)。 写真提供:GT Advanced Technologies(GTアドバンスト·テクノロジーズ)。

1964年、Khachik Bagdasarov(カチック・バグダサロフ)は、結晶がるつぼの一方から他方に凝固させる特殊な温度勾配徐冷技術を導入しました。これが、水平指向性凝固法です。 Prof. Bagdasarov(バグダサロフ)教授は、現在でもサファイアやその他の結晶を生成するためにこのプロセスを使用しています。 1967年、Frederick Schmid(フレデリック シュミット)は、さまざまな結晶の大型インゴットを製造するための別の温度勾配凝固法である熱交換方式を導入しました(図4)。 この技術では光学的品質において最高級のサファイアがいくつか生成されており、現在、Advanced Sapphire Furnace(アドバンスト サファイア ファーネス)というブランド名でこの技術に基づいて炉を製造しているGT Advanced Technologies(GT アドバンスト テクノロジーズ)がその技術を所有しています。


図4. 左上の2つの結晶は熱交換法により、右上の成長装置を用いて成長させたもの。 成長プロセスの概略図を、下部に示す。 写真提供:GT Advanced Technologies(GT アドバンスト テクノロジーズ)。
チョクラルスキー法および温度勾配凝固技術の両方の側面を組み合わせるKyropoulos成長法は、1980年に初めてサファイアに適用されました。 この方法は、チョクラルスキー法と同様に溶融物と接触させたシー​​ドを回転させみますが、シード結晶を融液から引き出すことはしません。 代わりに、るつぼ内部の溶融物は、非常に制御された方法で冷却されます。 Kyropoulos法は、非常に大きい(最大100 kg)高品質のサファイア結晶を生成できるので、広範囲な用途で使用されています(図5)。

図5. この結晶は、右の装置を用いてKyropoulos法により成長させた。 写真提供:GT Advanced Technologies(GT アドバンスト テクノロジーズ)。
時計用ベアリングや傷がつきにくい時計の表面用途以外で、サファイアのハイテク用途は何でしょうか?この素材の機械的、光学的、物理的、化学的、および構造的に望ましい特性を生かせる用途については、このシリーズの第三部で説明します。

Jennifer Stone-Sundberg(ジェニファー ストーン-サンドバーグ)は、Cry​​stal Solutions, LLC のマネージング ディレクターで、Gems & Gemology(宝石と宝石学)のテクニカル エディターを務めています。 彼女は、結晶成長と特性評価技術を専門としています。