サファイアシリーズ第1部:サファイアと合成サファイアー入門編


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図 1:ミャンマー(旧ビルマ)産、ディープブルー、98.57カラットのビスマルクサファイア。 写真:Chip Clark、Smithsonian Institution(スミソニアン協会)
ほとんどの人は、「サファイア」という言葉を聞くと、ビスマルクサファイアネックレス(図 1)の中央にある石のように、美しいビロードのような青の宝石を想像します。 しかしサファイアには、多くの人々が気づいているよりもずっと多くの顔があり、その産業用途や、合成石製造業における長い歴史、そして今日現れつつあり、明日には生まれているかもしれない側面を知って、驚かれるかもしれません。


図 2. 左:コランダムの結晶構造モデル。紫と金色のボールは、それぞれアルミニウム及び酸素を示している。 ピンクの陰影は、アルミニウムの正八面体配位を示す。 右: 六角柱の図は、c平面およびa平面を示す。
サファイアは、酸化アルミニウム(Al2O3)としても知られている、鉱物コランダムの変種です。 コランダムは、三方晶で晶出し、通常は六角形の結晶軸に分類されます(図 2)。 微量元素および成長の条件が揃うと、あらゆる色のサファイアが生まれます( 図 3)。 青いブルーサファイアと赤いルビーに加えて、コランダムには(無色を含む)他のすべての色の 「ファンシー」サファイアがあります。 サファイアとルビーは世界中で発見されており、有名な産地は、アフリカ、アジア、オーストラリア、北アメリカ、ヨーロッパです。


サファイア各種
図⒊ GIAのEduard J.Gübelin博士のコレクションより、虹のようにさまざま色のサファイヤ。 写真:Robert Weldon。
サファイアの融点は2040°C、モーススケールは9と硬度が高く、屈折率は1.76から1.78とかなりの高さです。 さらに色を与える不純物が存在しない場合には、サファイアは​​可視範囲全域にとどまらず、紫外域および赤外域の光線を透過するので、素晴らしい透明な光学窓材となります。 このような特性を持っているので、サファイアが有史にわたって尊ばれてきた宝石であることに不思議はありません。 また、これらの同じ特性は、宝石に関連しない用途としても非常に魅力的であり、サファイアを使用した製品の需要に応えるため、これまでで最も進んだ合成結晶成長および処理技術のいくつかが誕生しました。

サファイアが初めて工業用に使用されたのは、300年以上前のことです。それは機械式時計の宝石製軸受けで、寿命と高精度が求められる時計において、耐久性があり低摩擦であるサファイアはコストに見合う価値があったのです。 初めての合成コランダムであるフラックス法ルビーは、1873年に生成されました。 この後、1885年のフラックス法ジュネーブ合成ルビー、および1902年のベルヌーイ火炎溶融法合成ルビーが、商業的に相次いで導入されました。 初期の合成サファイアとルビーは、宝石および時計用の宝石として使用されました。 しかし、それ以来、合成サファイアは、おそらく他のどの結晶よりも多くの成長技術によって製造されてきました。 サファイアは、一致溶融点(この温度で​​、固体が同じ組成の液体に変化する)を有する二元化合物であり、非常に多くの成長技術への適用に役立ちます。

図 4. チャタム合成サファイアの結晶およびファセットカットされたもの。 提供:Tom Chatham
今日でも、フラックス(溶液)法およびベルヌーイ(火炎溶融)法の技術が、合成宝石および他の用途のために使用されています。 20世紀の間、Carroll Chathamは、慎重に制御された特性を有する結晶をゆっくりと成長させる、高品質のフラックス技術を開発しました。 彼の専門的なプロセスを使用して、Chathamは1959年に宝石品質のルビーを、1975年にブルーサファイアを発表しました(図 4)。 火炎溶融技術は、宝飾品ならび他のサファイア合成技術の供給原料として用いられる小粒のサファイア・ブールを、短時間で製造するために使用されてきました。 Hrand Djevahirdjianは、1905年にベルヌーイ法を用いて結晶の生成を始め、1914年に彼がオープンしたスイスの工場では、現在でも合成サファイアを生産しています(図 5)。


図 5. Djeva火炎溶融合成サファイアとルビーの結晶およびファセットカットされたもの。
提供:Hrand Djevahirdjian SA
サファイアの望ましい光学的、機械的、化学的、構造的、及び熱的特性を技術的用途へ応用することにより、時間とともに、より大きな、より完全な、より多様な色であつらえた形状の合成サファイアが作られるようになりました。 これらの需要を満たすために使われた結晶成長技術は、次回に説明します。

Jennifer Stone-Sundbergは、Cry​​stal Solutions, LLC(クリスタル・ソリューションズ社) のマネージングディレクターで、『Gems & Gemology』(宝石と宝石学)のテクニカルエディターを務めています。 彼女は、結晶成長と特性評価技術を専門としています。