業界分析

宝石商、2016年のホリデーシーズンで売上げアップを目指す


 “Blue Sky”(ブルースカイ)ダイヤモンドのリングを手にする女性。 彼女の顔は隠れているが、リングを手にしている彼女の指のクローズアップ写真である。
11月16日にジュネーブのサザビーズで1700万ドル(約18億6200万円)で販売された8.01カラットのファンシービビッドブルーのスカイブルーダイヤモンド。 ブリリアントカットおよびバゲットカットの無色のダイヤモンドを周りに散りばめてリングにセッティングされている。 写真:サザビーズ

ホリデーシーズンが到来し、Blue Nile(ブルーナイル社)などジュエリーの大手小売業者が活気のない売上を報告したため、年末のジュエリー売上予測にはばらつきがあります。 しかし、経済指標は米国の経済が引き続き強化していることを指しており、店舗およびオンラインでの売上がこのホリデーシーズンに早くも期待をもたらしています。

Kay(ケイ社)、Zales(ゼールス社)、Jared the Galleria of Jewelry(ジェアード・ザ・ギャレリイア・オブ・ジュエリー社)を所有する、多国籍企業Signet(シグネット社)およびBlue Nile(ブルーナイル社)は、直近の四半期でそれぞれ売上高が2%と4.3%減少したことを報告しました。その一方、ティファニー・アンド・カンパニーの売上高は、 2期連続して下落した後、かろうじて1%増加しました。 香港の小売店Chow Tai Fook(周大福)が所有するダイヤモンドブランド店Hearts on Fire(ハーツ・オン・ファイヤー)は、第3四半期に世界的に売上高が9%減少したことを報告しました。 また、香港と中国における周大福の売上高は前四半期に23.5%減少しました。

しかし、これとは対照的に、高級品を販売する業者からは楽観的な結果が報告されています。 Centurion Magazine(センチュリオン・マガジン)の調査によると、高級宝飾品店の60%がブラックフライデーおよびサイバーマンデーで28%の販売利益を報告し、これは10%以上増加であったと伝えられています。 一方では、25%の企業が5%以下の販売減少を報告しました。 また、株式市場のニュースサイトThe Street(ザ・ストリート)による調査では、ホリデーシーズンにおける店舗とオンラインの合計売上高は7.1%増加が確認されました。

ホリデーシーズン以降に関しては、ダイヤモンド業界の主債権者ABNアムロ銀行は、米国の経済は来年も引き続き改善するため(中国の経済はわずかに回復)、ダイヤモンドの需要に増加をもたらし、これにより過去18か月に研磨済みダイヤモンドの価格がゆるやかだと着実に下落していたトレンドを逆転させると伝えます。 しかしながら、Bain & Company(ベイン・アンド・カンパニー)のレポートでは、ダイヤモンドの生産業者は需要が吸収できる以上の原石を販売しているため、来年に供給過剰につながる恐れがあると、警告しました。

梨型のピンクダイヤモンドがリングにセッティングされ、2つの無色のバゲットがその両脇を飾り立てる。
11月15日にジュネーブで行われたクリスティーズのオークションでは、35のロットが100万ドル(約1億1200万円)を超え、GIAが鑑別した9.14カラットのファンシービビッドピンクが1820万ドル(約20億3000万円)の最終価格が付いた。 写真提供:クリスティーズ

オークション

予想より緩やかな始まりであり、さらにいくつかの重要なダイヤモンドや宝石が未入札の時期を超え、秋のオークションシーズンは、数多くの数百万ドル級のファンシーカラーダイヤモンドが販売され成功を収めました。

11月29日に香港で開催されたクリスティーズでは、GIAで鑑別された4.29カラットのファンシービビッドブルーダイヤモンドが1180万ドル(カラットあたり270万ドル)(約13億2000万円、カラットあたり約3億2000万円)で販売され、10.7カラットのRatnaraj(ラトナラジュ)ルビーが1020万ドル(約11億4000万円)で販売されました。 ジュネーブで行われたサザビーズでは、総計1億3600万ドル(約152億3200万円)以上の売り上げがあり、GIAがファンシービビッドブルーとグレードをした8.01カラットのSky Blue(スカイブルー)ダイヤモンドが、1700万ドルあまり(カラットあたり210万ドル)(約19億円、カラットあたり2億3500万円)で落札されました。 また、7.74カラットのファンシーディープブルーダイヤモンドは、370万ドル(カラットあたり170万ドル)(約4億1400万円、カラットあたり1億9000万円)で販売されました。

11月15日にジュネーブで行われたクリスティーズのオークションでは、35のロットの売り上げは100万ドル(約1億1200万円)を超え、9.14カラットの梨形のファンシービビッドピンクが1820万ドル(カラットあたり200万ドル)(約20億3000万円、カラットあたり2億2400万円)およびGIAグレードカラーがDに該当した洋ナシ形の52.55カラットと50.47カラットのフローレスダイヤモンドが1760万ドル(約19億7000万円)で販売されました。

業界

インドの首相Narendra Modiが500ルピーおよび1000ルピー(約800円および1600円)紙幣の流通を12月30日までに差し止めると突然発表しました。これらの紙幣は流通している現金の価値において86%を占めるため、インドの小売業や卸売業は混乱に陥りました。 このため、年末に予定されていた宝石および宝飾品の見本市がいくつかキャンセルされることになりました。 そのうちで最も影響を受けた見本市は、12月23日~26日に予定されていたJaipur Jewellery Show(ジャイプールジュエリーショー)であり、来年に延期されましたが、開催日はまだ未定となっています。 また、カラーストーンの採鉱会社、Gemfields(ジェムフィールズ)も、同じ時期にジャイプールで開催を予定していたエメラルドとベリルのオークションをキャンセルしました。

これらの紙幣を所有している人々には、12月30日までに自分の銀行口座にその紙幣を預金する必要があり、銀行で引き出せる金額に厳しい制限が適用されています。 また、同国の財務省は、3,000ドル(約34万円)以上の現金取引に関する報告要件の規制を強化しました。  

同省は、「ブラックマネーの撲滅やテロ資金およびその他の破壊活動の資金調達を抑制する」ために首相が取った処置であると伝えました。この高額紙幣の廃止は輸出を主とするインドの貿易業にはほとんど影響を及ぼしませんが、同国の小売売上高のほとんどが現金で取引されるため、経済学者は、これにより1%ほど成長率が減少すると予測しています。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。