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1,000(あるいは3,000)カラットのダイヤモンドが再び発見されるでしょうか?


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香港のサザビーズでジュエリーディレクターを務めるPatty Wongが、113ctでDカラーのフローレスオーバルダイヤモンドを披露する。このダイヤモンドは、2013年9月のオークションにて3000万ドル(約29.3億円)で売却された。 写真:Russell Shor/GIA

2015年の秋 Lucara(ルカラ社)は、ボツワナにあるカロウェ鉱山で、宝石品質を有する1,000カラット以上もあるダイヤモンドとしては110年以上ぶりに発見されたことを発表しました。 現在、同社およびその他の企業がこれよりもさらに大きな石を探すのに投資を倍増しており、何世紀どころかわずか数か月または数年で1,000カラット級のダイヤモンドを発見できると確信しています。

生涯かけてもめったに発見できることのないようなダイヤモンドがまたすぐに発見できると信じる理由は一体何でしょうか?

それには2つの理由があります。つまり、経済と技術が発展したため、すぐに発見できると確信しているのです。 潤沢な資金により必然性が生まれ、技術力の高まりにより機会が生まれたのです。 この2つが原因で、市場に参入する非常に大きいダイヤモンド(研磨済みの50カラット以上のもの)の数が近年急増し、新たな記録更新の可能性ができたのです。

大きなダイヤモンドを求める裕福なバイヤー

経済に関しては、1990年代に世界的に富裕層が激増し、特に南アジア、ロシア、中国など新興経済国でその傾向が顕著に見られました。その一方、金融市場における莫大な利益が西洋諸国の経済と中東における富を支えていました。 このため、毎年販売されていた数少ない巨大なダイヤモンドに対する世界中の富裕層の購買意欲が掻き立てられました。

それ以前、大きなダイヤモンドは、破砕機に投入された後、乱暴に取り扱われていました。 100カラット以上または1,000カラット以上ものダイヤモンドが一体いくつその運命を辿ったかは知る余地もありません。 大きいダイヤモンドと商業用サイズ(10カラット以下)のダイヤモンドではカラット当たりの価格差があまりなかったため、当時ダイヤモンドの主要な生産者であったデビアスがダイヤモンドを回収する工程を一新する価値があったほどです。
 
これは矛盾しているように思えますが、過去1世紀でほとんどの期間、最短の時間でできるだけ多くのダイヤモンドを回収することでダイヤモンドの採鉱における利益が発生していました。 つまり、キンバーライトを爆破して小さい断片にし、巨大な鋼製の顎板を使ってさらに小さく粉砕し、不要の岩石から迅速にダイヤモンドを隔離するのです。 デビアスの幹部は、25カラットを超えるダイヤモンドの原石は、回収プラントに送られる前に、爆破で吹き飛ばされたり、小さな石に粉砕されてしまう可能性が多いと認識していました。 また、鉱石コンベアも非常に効率的に処理されるように高速で作動していましたが、破砕機に到着する前に大きな石を取り上げるのは困難でした。

Lesotho Promise(レソト・プロミス)から切削されたダイヤモンド。エメラルドカット、ラウンドブリリアントカット、ハートシェイプ、ペアシェイプのダイヤモンドをとり囲むように、ネックレスの形に配置されている。
603カラットの Lesotho Promise(レソト・プロミス)は、レソトにあるレツェング鉱山で発見された最大のダイヤモンドである。 ロンドンの宝石商Laurence Graff(ローレンス・グラフ)と南アフリカのダイヤモンド切削会社Safdico(サフディコ)が、このダイヤモンドを2006年に購入し、6000万ドル(およそ70億円)の価値があるネックレスなど、原石から様々な形をしたDカラーの26個のダイヤモンドに仕上げた。 写真提供:Laurence Graff

当時シエラレオネでデビアスが一部所有していたディミニコ鉱山で破砕機につながるコンベアの上部の近くからフラッシュのような光が輝いているのに作業員が気づいた話をデビアス幹部の一人はよく語ります。 その作業員は直ちに非常停止ボタンを押し、後にStar of Sierra Leone(スター・オブ・シエラレオネ)として知られる968.9カラットの結晶を取り出しました。 「あと1秒遅かったら...」と、彼は手を破砕機の顎板のように叩きながら述べました。

しかし、1990年代が進むにつれて裕福な新しいバイヤーが、特に主要なオークションハウスの販売で市場に参入したため、非常にわずかな50カラット以上のダイヤモンドに対する競争および価格が激化し始めました。 価格の高騰に貢献していた主な要因は、中国と香港で新たに出現した富裕層です。これらの地域ではChristies’(クリスティーズ)とSotheby’s(サザビーズ)の両社が、1990年代が終わりを告げる前に、大きなダイヤモンドを土台にして主要なジュエリー販売を開始しました。

10カラット以上の研磨済みのダイヤモンドの価格が1995年から2005年の間にほぼ4倍に高騰するなど、これらの価格上昇はダイヤモンドの採鉱に関する経済学における方程式を白紙に戻しました。

商業用のサイズに比べて、大きなダイヤモンドの価格が上昇したため、レツェング鉱山の事業の利益が上がった。 写真:Russell Shor/GIA

この良い例が、 南アフリカ共和国に囲まれたレソトにあるレツェング鉱山です。この鉱山では、極めて低いグレード(他の鉱山が1トンのキンバーライト当たり1カラットを産出するのに対して、レツェング鉱山では100トンのキンバーライト当たり約1カラットを産出するため、ほとんどのダイヤモンド事業の10分の1の産出量)ですが非常に大きなダイヤモンドが採鉱されます。このような石の価格が上昇したため、事業の収益性が向上し、2004年レツェング鉱山は22年ぶりに事業を再開しました。

その投資が報われ この鉱山の利益が上がり、これまでに発見された大型ダイヤモンド上位25個のうち、実に6個がレツェング鉱山から産出されており、それぞれ 478、493、527、550、601、603カラットあります。 また、レツェング鉱山は毎年60カラット以上のダイヤモンドを30個ほど回収します。

大型の原石の採鉱に貢献する新技術

経済における変化により、採鉱会社はダイヤモンドを処理および回収する方法を変更するのを余儀なくされました。 つまり、新しい技術が導入されたということです。

はじめに最新技術が導入されたのは、最初の破砕の工程でした。 何十年もの間、巨大な鋼製の顎板が、すべてのダイヤモンド鉱山で使用されていました。 この顎板を使用すると原石が非常に粗末に扱われることになりますが、キンバーライトの大きな塊を扱いやすい小さな断片にするのには便利でした。 新世紀が訪れ、鉱山労働者は、「自生」として知られている「優しく、穏やかな」粉砕方法を導入しました。この新たな方法では、破砕によって発生する強い圧力を与えずに、キンバーライトの断片どうしがぶつかり合いながら研削します。

このような自生粉砕の工程には、いくつかの種類があります。 鉱石を取り入れる場所で回転/振動コーンが、キンバーライトの断片を容器の側面に対してひとつずつ前に押し上げる工程を使用している鉱山がいくつかあります。 レツェング鉱山がこの方法を使用した後、100カラット以上のダイヤモンドの回収が2倍以上に増加しました。 他の場合では、キンバーライトの断片を互いに粉砕する大型の回転ミルを使用しています。  詳細についてはGems & Gemology(宝石と宝石学)の2015年秋号にあるレツェング産ダイヤモンドに対する特有の課題をご参照ください。

キンバーライトが、漏斗状の機械に落下する。
レソトにあるレツェング鉱山の選鉱工場で使用されているコーン型振動ふるい機の外観。 コーン型をしたこの振動ふるい機が、キンバーライトの断片を容器の側面に対してひとつずつ前に押し上げるため、大きいダイヤモンドが壊れてしまう可能性を低減する。 写真:Russell Shor/GIA

新しい回収技術において2番目に重要な点は、X線処理の使用が開始したことです。この新技術の導入により、グリース付きのベルトを利用する、1世紀も昔から使われていた方法が置き換えられたり併用されました。 この古い方法では、ダイヤモンドがグリースを塗ったコンベアに付着し、不要の岩石が側面に落ちるようになっています。 この方法はかなり効率的でしたが、デビアスおよびその他の企業は、最初に見落としたダイヤモンドの古い尾鉱を再び採鉱するという副業で利益を上げていました。

X線処理によって大幅に回収率が向上し、破砕機に到着する前に大きな石を識別して、取り上げることができるようになりました。 1980年代に開発されたXRL(X線ルミネッセンス)およびXRF(X線蛍光)装置は、強力なX線を照射するとダイヤモンドが蛍光を発するという性質を利用しています。 この方法では、破砕されたキンバーライトの切片をX線の光線の下で細い線上に落下させます。 ダイヤモンドが蛍光を発する場合には、光検出器が作動し、ダイヤモンドに圧搾空気を吹き出し、回収する箱へと移動させます。

古いX線回収装置は、蛍光のみを使用してダイヤモンドを識別していたため、蛍光を発しないダイヤモンド(多くの大きなタイプIIの石など)や一部のファンシーカラーのダイヤモンドが不要の石の集まりに移動してしまう原因となっていました。 レツェングやその他の鉱山で最近利用されている回収方法は、X線透過法(XRT)と呼ばれる方法であり、キンバーライトの中に閉じ込められた大きなタイプII型の結晶の原石を識別し、次の選鉱工程に進まないように排出します。 XRTによる選別は、ダイヤモンドが他の素材よりもはるかに明るい画像として表示されるという一般的な原理を利用しています。XRTは可視光領域とは無関係なので、ダイヤモンドの透明度に依存しません。 試料が完全に不透明に見えるほど十分に覆われている場合でも、XRT選別機は、それを検出するように設計されています。 1,109カラットのLesedi La Rona(レセディ・ラ・ロナ)ダイヤモンドを発見したのはこのXRT選別機でした。

この新しい技術のおかげで、レツェング鉱山の事業を担当するGem Diamonds(ジェム・ダイヤモンズ社)、バンクーバーのLucara Diamond Corp.(ルカラ・ダイヤモンド社)およびオーストラリアのパースにあるLucapa Diamond Co.(ルカパ・ダイヤモンド社)のような小規模の鉱山会社が、 10年で一度しか発見されないような巨大なダイヤモンドをこの10年間でいくつも回収することが可能となりました。

レツェングに加え、ルカラ・ダイヤモンド社がボツワナで所有するカロウェ鉱山では、1,109カラットのLesedi La Rona(レセディ・ラ・ロナ)ダイヤモンドが産出されました。これは、かつて発見された中で2番目に大きい宝石品質のダイヤモンドです。また、カロウェ鉱山は813カラットのダイヤモンドや100カラット以上のダイヤモンドを47個も産出しました。 アンゴラでルロ事業を運営するルカパ・ダイヤモンド社は、2016年2月に404カラットのダイヤモンドを発見しました。

1,009カラットのLesedi La Rona(レセディ・ラ・ロナ)ダイヤモンドは、宝石品質を有する1000カラット以上の原石としては、1世紀以上ぶりに発見されたものであった。 同社で採鉱に携わる幹部は、他にもこのようなサイズまたはそれ以上の原石が発見されると確信している。 写真提供:Lucara Diamond Corp.(ルカラ・ダイヤモンド社)

改善の余地

採鉱会社は、依然として改善の余地があると認識しています。 Lesedi La Rona(レセディ・ラ・ロナ)ダイヤモンドが発見された数日後に発見された374カラットのダイヤモンドは、爆破する前はその石の一部であったとルカラ社の幹部は確信しています。

史上最大のダイヤモンドは3,106.75カラットのカリナンダイヤモンドであり、南アフリカのプレミア鉱山で1903年の開鉱の2年後に発見されました。 (そのダイヤモンドの重量はもともと8,000カラットであったと推定されていますが、自然の力や爆破によって破砕しました。)プレミア鉱山(現カリナン鉱山)は、世界で最も多くのダイヤモンドが産出される宝庫であり、113年における歴史の中で100カラット以上のダイヤモンドを750個以上も産出しています。

デビアスが2007年にこの鉱山を売却した後、新しい所有者となったPetra Diamonds(ペトラダイヤモンズ社)は、3,000カラット以上もある大きいダイヤモンドを回収するために設計された新しい回収技術に投資しています。

ルカパ・ダイヤモンド社とルカラ・ダイヤモンド社の幹部も、その記録を破るために競争していると語ります。 

Russell ShorはカールスバッドにあるGIAのシニア業界アナリストです。