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天然ダイヤモンドとラボで製造されたダイヤモンドで違いはあるのか


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CVD成長法(左)およびHPHT処理 (中央) を用いてラボで製造されたダイヤモンドの原石と天然ダイヤモンドの原石(右)。

ファセットカットされており、結晶化した炭素の2つの標本は、両方とも非常に透明で、直射日光の下で万華鏡のような虹色を放ちます。この2つは全く同じに見えますが、1つは10億年以上も前に形成され、もう1つは、最近、ラボで製造されました。

勿論、どちらもダイヤモンドです。1つ目は、地球の深部からの力によって形成された天然ダイヤモンドです。2つ目はラボで製造されたダイヤモンドであり、天然ダイヤモンドと同じ化学的、物理的、光学的特性を持っています。

宝石・宝飾業界のための取引ガイドを開発する米連邦取引委員会(FTC)は、ダイヤモンドを宝石ではなく素材として 「等軸晶系で結晶化した本質的に不純物のない炭素」と定義しています。

FTCはダイヤモンドは本質的に不純物のない炭素であると述べていますが、大半の天然ダイヤモンドには他の物質、特に窒素が含まれており、黄色または稀に青色を与えるホウ素を含んでいます。さらに、通常、天然ダイヤモンドには何百万年も前に形成の過程にあったダイヤモンドの中に閉じ込められた極小の異物が含まれています。

ラボで製造されたダイヤモンド(人工ダイヤモンドまたは合成ダイヤモンドとも呼ばれる)は、約5年前に商業規模で宝石・宝飾市場に参入しました。天然ダイヤモンドと外観は同じに見えますが、研修を受けた宝石鑑別士および選別のために設計された高度な機器によってのみ検出できる微妙な違いがあります。

一緒に並べて置かれた天然ダイヤモンドの原石とHPHTダイヤモンドの原石。
ダイヤモンド原石の比較。0.83ctの天然ダイヤモンドの結晶(左)および1.02ctのHPHT法で製造された結晶(右)。これらの結晶はいずれも、GIAの研究コレクションより提供。写真撮影:Orsasa Weldon/GIA

ダイヤモンドはどこで誕生するのか

 

天然ダイヤモンド

天然ダイヤモンドは、30億年前も昔に極端な圧力と高温の下で地球の深部で形成されました。ダイヤモンドは火山活動のため地表まで押し出され、火山岩の形成の一種であるキンバーライトパイプの中に埋もれています。キンバーライトパイプのわずか約5%が、採鉱するのに経済的に割が合うダイヤモンドを含んでいます。

ロシア、ロモノソフのArkhangelskayaのキンバーライトの露天掘り。写真:Karen Smit/GIA

ラボで製造されたダイヤモンド

工業用途に適した人工ダイヤモンドは、1950年代に初めてラボで製造されました。宝石質のダイヤモンドは1971年に初めてラボで製造されましたが、ラボで製造された無色のダイヤモンドが商業規模で宝石・宝飾品市場に参入したのは2010年代半ばのことでした。

ラボで製造されたダイヤモンドに関して30年以上にわたりGIAで研究を続けているGIAの名誉研究員、James Shigley博士によると、ラボで製造されたダイヤモンドは、現在2つの方法によって製造されています。

高圧高温法(HPHT)ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドが地球内で形成される高圧高温の状態をラボで模倣して製造されます。この方法では、特徴のある形を有するダイヤモンド結晶がラボで製造されます。

化学蒸着 (CVD)では、メタンのような炭素が豊富に含まれている気体の分子を炭素と水素の原子に分解し、ダイヤモンドの種結晶に付着させて、四角い平板状のダイヤモンド結晶を生成します。

いずれの方法においてもダイヤモンドを製造するには、通常、ほとんどのサイズで1か月未満が必要とされます。CVD法で製造されたほとんどのダイヤモンドは、製造過程が終了した後に色を改良または変化させるために加熱または照射のような処理がさらに必要とされます。

通常、ラボで製造されたダイヤモンドは、重量が1カラット以下になりますが、テクノロジーと技法が向上するにつれて、より大きな石が市場に登場するようになりました。

大きな工場に設置されているHPHT合成ダイヤモンドのプレス機。
幅広いサイズの宝石質のダイヤモンドを製造する工場に設置されているHPHT(高圧高温)プレス機。写真撮影:Wuyi Wang/GIA

天然およびラボで製造されたダイヤモンドを区別する方法

ラボで製造されたダイヤモンドを識別できることは不可欠です。それは、消費者は購入するものについて知る必要があり、天然の宝石と比べてかなりの価格差があるためです。

宝石を購入する一般の方々を保護し、情報を提供するという使命の一環として、GIAは、GIA グラジュエイトジェモロジスト(GG)のような資格を取得できるディプロマプログラムや天然ダイヤモンドをラボで製造されたダイヤモンドやダイヤモンドの類似石から区別するのに使用されるダイヤモンドグレーディング技術と最新の方法を教えるセミナーを提供しています。

ラボで製造されたダイヤモンドは本質的に化学的にも光学的にも天然ダイヤモンドと同じであるため、従来の宝石学的な観察や旧式の「ダイヤモンド検出器」はこれらを区別できません。専門的な宝石学ラボでの鑑別またはGIAや他の組織が開発した高度なデバイスを使用することが、それらを天然ダイヤモンドから区別するのに信頼できる唯一の方法です。

ダイヤモンドの形態 – 決定要因

地球上で何百万年もの間に形成された天然ダイヤモンドは、数週間のうちにラボで製造されたダイヤモンドとは異なって成長します。さらに、HPHT処理およびCVD成長法によって製造されたダイヤモンドは、成長形態すなわち成長条件がダイヤモンド結晶の形状にどのような影響を与えたかが異なります、とShigley 博士は説明します。

GIAで上級研究科学者を務めるSally Eaton-Magaña博士は、HPHT処理とCVD成長法で製造されたダイヤモンドを鑑別する基準は、それぞれ非常にはっきりと区別できると説明し、ラボで製造されたダイヤモンドが過去10~15年でさらに多様化しているため、GIAの研究員は新しい開発に後れを取らないよう常に注意を払う必要があると語ります。

GIAは、新製品に関する研究を定期的に行っており、新たなトレンドを先取りするためにラボでダイヤモンドを製造するプログラムも提供している、とEaton-Magaña博士は語ります。

成長方法、典型的な成長形態、天然、HPHTおよびCVDのダイヤモンドの原石の例の写真が掲載されているチャート。
このチャートは、製造された方法すなわち成長形態に基づく様々なダイヤモンドの原石を示している。ダイヤモンドがカットおよび研磨された後にこの形状はなくなるが、数ある特徴の中でも特定の成長形態に起因する蛍光パターンを検出して鑑定することが可能である。

ラボで製造されたダイヤモンドに関するGIAのグレーディング

GIAは、世界各地にある宝石のグレーディングと鑑別ラボに提出されたダイヤモンドをすべて検査し、天然またはラボで製造されたかを判断します。

ラボラトリーグロウン ダイヤモンド グレーディング レポート
GIAは、7月よりラボラトリーグロウン ダイヤモンド グレーディング レポートに色とクラリティに関する完全なGIAのスケールを含める。

GIAは、ラボで製造されたダイヤモンドのレポートを10年以上にわたって発行しています。2019年3月、GIAは、FTCのガイドラインに従い2019年7月よりレポートの名称を「GIAラボラトリーグロウン ダイヤモンド グレーディング レポート」に変更すると発表しました。混乱を避けるために、ラボで製造されたダイヤモンドに関するGIAのグレーディングレポートは、天然ダイヤモンド用のレポートと非常に異なります。さらに、ラボで製造されたダイヤモンドの色とクラリティ(透明度)を報告するために使用される用語は、天然ダイヤモンドに使用される用語とは異なります。カラーグレードは、DからZまでの代わりに、より広いカテゴリーの用語 (カラーレス(無色)、ニアカラーレス(ほぼ無色)、フェイント、ベリー ライト、ライト) が使用されます。クラリティのグレードは、天然ダイヤモンドレポートでは省略されていますが(VVS1、SI2など)、ラボで製造されたダイヤモンドのレポートでは、より広いカテゴリの記述用語(例えば、ベリー ベリー スライトリーインクルーデッド、スライトリーインクルーデッド) を使用します。

グレーディングのために宝石ラボに提出されないダイヤモンド

GIA iD100
GIA iD100を使用することで、小売業者は0.005カラットのような小さい裸石(ルース)またはセットされたダイヤモンドを迅速かつ正確に選別できる。

GIAは、ラボで製造されたダイヤモンドを特定するために、GIA iD100®と呼ばれる選別機器を開発しました。この卓上サイズの機器は、天然ダイヤモンドをラボで製造された(HPHTとCVD)ダイヤモンドやダイヤモンドの類似石から区別するために、高度な分光技術およびGIAによる60年にわたるダイヤモンド及び宝石の鑑別研究を組み合わせて設計されました。

また、GIAではGIA メレー分析サービスを提供しており、市場で最も普及している非常に小さなダイヤモンドのパーセルを迅速かつ正確に選別します。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。