社会的公正と健全なビジネスを目指すジェモロジスト
6月 25, 2014
しかしこのペンダントはただのアクセサリーではありません。人こそが「最も貴重な財源」であると認識することでジュエリー業界を改革していこうという、あるジェモロジストの構想を象徴したものです。
Jewelers for Water(ジュエラーズ・フォー・ウォーター)の専務取締役であるAlethe Fatherleyは、ジュエリー業界と社会的公正をリンクさせることばかりに貢献してきたわけではありません。東海岸を拠点とするこのジェモロジストにとって、責任を持つことと有益であることの両方を業界に促すというアイデアが具体化できるようになってきたのは、実際にはわずかここ数年のことです。
Fatherleyの両親はジャマイカからの移民で、彼女が8歳のときに米国に移りました。 1991年に高校を卒業後、Tiffany & Co.(ティファニー)のパロマピカソ部門におけるバイヤーであった彼女の名付け親がニューヨーク本社への応募を提案したことから、次の進路を決めました。
勉強熱心であった19歳の彼女は、ティファニーの臨時事務員として雇われ、まもなく同社のダイヤモンド購入オフィスにおいて商品アシスタントのポジションを得ました。
「新人向けのポジションでは満足できないと分かっていました、」と彼女は言います。 「それに、ティファニーの販売専門家は十代の職員にさえ非常に大きな期待をしていたので、私もダイヤモンドに関する興味がより大きくなりました。」
販売員は新入社員によくテストを出しました。GIAのダイヤモンドグレーディングレポートを片手に、Fatherley に石のクラリティ特性を説明するようにいいました。 「私が答えられないときは、彼らの落胆している様子が分かりました。 そこで、上司から石の評価のテストを出されるごとに、GIAに通いたいと主張を続けました。 私はただ頼み続けました。」
Fatherleyの粘り強さは報われ、ついにニューヨークの47th StreetにあるGIAのキャンパスに通うことになりました。
「楽しくて仕方がなかった。やっと、自分が本当に楽しめることが見つかったと感じました。 GIAが終わった後は足取りが軽かったのを今でも覚えています。ただ喜びをかみしめながら五番街を歩きました。」と彼女は語ります。
1999年、FatherleyはGGディプロマを取得しましたが、これは先の長いキャリアを手に入れるためのほんの始まりに過ぎないと分かっていました。 彼女はGIA同窓会に参加し、ティファニーで13年間キャリアを積んだ後、ティファニー以外の世界で販売、マーケティング、卸売りを学び始めました。
ニューヨークのファッション工科大学で宝石学を教え、また、David Yurman、H. Stern、Lazare Kaplan International(ラザールキャプラン インターナショナル)に勤め、そこでは裸石を販売しました。 ラザールキャプランでは、ナミビアにある同社のカッティング施設のことがたびたび話題に上がりました。
「私はアフリカに興味を持つようになり、そこの人々について学んでみたいと強く思いました。」とFatherleyは言います。
その学びたいという思いはすぐに、より深いものへと変わりました。 彼女は非営利団体をリサーチし、非政府組織であるCross Cultural Solutions(異文化ソリューション)に決めました。 ラザールキャプランでのFatherleyのスーパーバイザーは、彼女が3週間休暇を取り、タンザニアのMoshi Town(モシタウン)にあるKilimahewa学校の幼稚園教論として従事することを認可してくれました。 彼女が教えた一時的な教室は、ある生徒の家に設置されました。
高級ジュエリーの世界とタンザニアの人々の生活の著しい対照に、彼女はすぐに心を大きく動かされました。 Fatherleyは数週間後、まったく新たな視点で帰国し、2009年、Jewelers that Care(関心を持つジュエラーの会)を立ち上げました。 彼女の非営利の目的は、寄付や他の援助団体とのパートナーシップを通して学校や井戸などの「開発案件を活性化」することです。 (この団体の名前はこの春、Jewelers for Waterと、より明確なものに変わりました。)
「アフリカや世界の農村が直面する深刻な問題を検討すると、結局、きれいな水と教育が不足している問題に戻るのです」と彼女は語り、さらにこう続けます。 「そしてこれらはHIV/AIDSや女性や子供に対する犯罪、また、その他深刻な問題など、他の問題の本質における一因となっていると信じています。
「私は自分の出来る範囲で支援しかったのです。 しかし、貧困における内容は伝えるのがとても難しく、そしてそれを基に販売につなげるのも難しいのです。 私は人々の関心を集めるために、創造的な方法を考えだす必要がありました。」
また、American Gem Society(アメリカ宝石学会)、ファッション工科大学、SUNY's Empire State college(サニーズ・エンパイアステート・カレッジ)で学位を取得し、ジュエリー業界との深い関係を築いているFatherleyは、自身を「ちょっとしたリクルーター」と呼んでおり、業界すべての局面における友人や同僚に、チャリティーのサポートを提供してくれたお返しとして専門的なコネクションを作る援助をしています。
ジュエラーズ・フォー・ウォーターは、井戸の建設に焦点を当てており、同じ考えを持つ多くの業界専門家と協力しあっています。 例えばこのウォーターポンプネックレスは、Thomas Kurillaがデザインし、Hoover & Strong(フーバー&ストロング)が製造したもので、東海岸におけるほんの一握りの地元ジュエリー実店舗で独占的に販売されており、その販売収益はジュエラーズ・フォー・ウォーターのウォーターポンププロジェクトに寄付されます。 また同団体は、人道的問題に取り組んだジュエラーを表彰する年に一度の授賞式をJCKにて設けました。
ジュエラーズ・フォー・ウォーターを運営するFatherleyは、夫のChristopher、4歳の息子Gordon、そして2歳の娘Mariaと共に、コネチカット州のフェアフィールドで暮らしています。
「私の夢、そして長期の目標は、農村に住む人々はもちろん、ひとつの業界として我々にも利益をもたらすような最も賢明な方法で、ジュエリー業界と協力していくことです。 我々の原動力であるこうした地域社会への貢献により、ジュエリー業界が輝くことを願っています。」と、彼女はこう語っています。
筆者について
寄稿者であるJaime Kautskyは、GIAダイヤモンド グラジュエイトおよびGIA Accredited Jewelry Professional (AJP アクレディテッドジュエリープロフェッショナル)で、The Loupe(ルーペ)誌の副編集長を数年務めていました。