コランダムのベリリウム、ブルーサファイアに帰結:GIAラボラトリーから
1月 26, 2007
LA-ICP-MSおよびSIMSには高額な費用か掛かるため、コスト効率の高い代替法の開発が急務である。 別の有望な技術としてレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)の名前が挙がっている。 この技術を使用しベリリウムの痕跡濃度の検出を行う場合、上述した2つの技術ほど複雑ではない反面、感度と正確さの面で劣り、その上、赤外線および紫外線可視的分光計などの標準の宝石学機器と比較して高額である。
サファイアのブルーベリリウム拡散処理 ベリリウム検出に有効な分析法が増加し、この元素を見出すために行うコランダム分析がより定着する中、宝石学ラボラトリーではこの技術によって処理された国際市場の中のブルーサファイアを、今までにも増して多く鑑別している。 2006年半ばには、全日本宝石学会がベリリウム処理されたブルーサファイア数個を確認したと報告(報告書の全文はここをクリック)。 続いて、50以上て拡散ブルーサファイアのグループは、バンコクでAIGS研究室のヴィンセントPardieuしたものであり、研究のためにいくつかの研究室に送られた。
これらおよび他の知られて処理されたブルーサファイアで測定することの濃度は20 ppm以上に百万分率(ppm)約4部から変化した。
ブルーサファイアを治療するために必ず拡散を使用する可能性は、最初はジョン·エメット(結晶化学、ブラシプレーリー、ワシントン)での作業GIAと他の研究者のチームによって2002年に調査した。 Emmettや他の研究者によると、 (「ルビーとサファイアのベリリウム拡散」2003年夏出版のGems & Gemologyの84p~135pより)ダークブルーサファイアの色を明るくするために、ベリリウム拡散とそれに続く加熱処理が有効である。
夥しい数のベリリウム拡散処理ブルーサファイアの出現を鑑み、GIAは有色市場においてベリリウム処理ブルーサファイアが占める規模を見極めようと、広大なプロジェジェクトに乗り出した。 研究室のスタッフは、ニューヨークの貿易から500以上のサファイアを分析するためにGIA研究所のLA-ICP-MSおよび標準宝石学的な技術を使用。大半は熱処理されていたブルーサファイアであったが、グループはまた、いくつかの緑、黄、オレンジ、ピンクサファイアが含まれていた。 500のサンプルに対する分析から、高濃度のベリリウム(3ppm以上)を一貫して保つ4つのブルーサファイアが見つかり、それが拡散処理されたものであることが証明された(図1)。 ベリリウム拡散処理ブルーサファイアが米国市場に参入していることは紛れも無い事実である。
ベリリウム拡散処理を行ったブルーサファイアに認められる特定のインクルージョン集合帯は、この処理の特徴と言えます。 それには珍しい型と模様で構成される群れ(図2)やコルク抜きに類似した円形インクルージョンの列や線(図3)、そして高い位置の結晶を囲む球状の雲(図4)などが含まれる。 しかしすべてのベリリウム拡散ブルーサファイアがかようなインクルージョン地帯を含んでいるとは限らず、全く含まれないものもある。 それに加え、明らかにベリリウム拡散処理を施していないとされるブルーサファイアにもベリリウムが検出される場合もある。
天然サファイアにベリリウム?純コランダムはアルミニウム・オキサイド(AI2O3)のみで構成されるが、実際、この鉱石には決まって痕跡濃度の低い他の元素が不純物として混在している。 例えば天然の未処理ブルーサファイアには、形成される堆積物の種類によって変動はあるにせよ、概算で1000〜10,000ppmの鉄やチタンが含まれていると考えられる。 イエローサファイアは通常、数十ppmのマグネシウムを含有している。 しかし未処理コランダム中のベリリウムについては、これまで文書による報告がなかった。 したがってコランダム中のベリリウムの含有は、ベリリウム拡散処理においてのみ見られる事象であると推測される。
上述した500のサンプル石を検証中、ラボラトリーでは17のブルーサファイアに、隣接する部分間のベリリウム濃度差を認めた。 すでに報告されている処理済みの鉱石から得た結果と矛盾している。 これらの異例な鉱石は2.63カラット の円形ブリリアントカットサファイアであり、加熱処理が為されたことの明らかな証拠となる。
初期LA-ICP-MSは、このサファイアのガードル上の2つのスポットの解析は、(noが検出されると)、他のスポットが離れてから順調だったのに対し、3.5 ppmで、石の中の角乳白色の雲のエッジと一致いずれかになり示したいずれかの介在物。 さらなる分析によってその雲中に最高13.3ppmのベリリウムが検知され、石上の他の箇所には原則、ベリリウムは見られなかった。 雲にはまた一貫して高濃度な、ニオビウム(Nb)およびタンタラム(Ta)が検出された。
不思議な事に雲が見せる様相は以下に描写するように特殊である。微細で(余りにも小さいため個々の粒子を標準的な宝石学顕微鏡で分析することが不可能)平面構造、そして暗視野イルミネーション上に映える乳白色、そして透過ライトによって発生するブラウン色(図5)。 これは、同様の外観を持つ雲を調べ、他のサンプルに見られたのに対し、いないこれらの雲のすべてが必ず含まれていること、しかし、注意することが重要である。
これらの17のサンプル石に加えてラボでは、この類いの雲に含まれる(高レベルのTaとNbを伴った)ベリリウム痕跡を、鑑別報告として提出されたブルーサファイア中にも検出した。 その中の数個には熱処理の痕跡は認められなかった。 マダガスカルのイラカカで採掘された堆積物からGIA研究チームが採取したサンプルや、AGTAのRichard Hughes(リチャードハグ)が入手した他のサンプルにも同様の傾向を確認した。
熱処理済サンプルを検査したところ、ベリリウム拡散処理からそのような極端に偏った元素分布が生ずるなどというシナリオは想定し難い。 上述の事柄と熱処理の証拠が無いサファイヤ中のベリリウムから、少なくとも(雲を形成している)外国の鉱石中のインクルージョンと結合している場合、微量のベリリウムがコランダム中に自然に発生するという包括的な示唆が得られる。 この現象と雲の性質への理解をより深めるために目下進行している研究に加え、GIAはかようなサファイアに元から存在するベリリウムへの熱処理効果を調査するため、Vincent Pardieu(現在スイスのルツェルンにあるGübelin Gem Lab所属)が陣頭で指揮するプロジェクトのコラボレーションをはかっている。 このプロジェクトの一環として、LA-ICP-MSによる慎重な化学マッピングがバンコクのGIA研究施設で行われている。
著者について
このレポートはカールスバッドにあるGIAラボのAndy Shen、Shane McClure、Mike Breeding、またバンコクGIAリサーチのKen Scarrattm、そしてニューヨークのGIAラボ所属のWuyi Wang、Christopher Smith(後者は現在、ニューヨーク米国宝石学研究所所属)、さらにカールズバッドGIAリサーチのJames Shigleyによって提出された。