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『アンカット・ダイヤモンド』のエチオピア産オパールの現実的な宝石学


NBAの元スター選手、ケビン ガーネット(左)が、ジョシュ サファディとベニー サファディ監督による映画『Uncut Gems(邦題:アンカット・ダイヤモンド)』に本人役で出演し、レイキース スタンフィールド(中央)とアダム サンドラーと共演する。彼らは、サンドラーが演じるハワード ラトナーが劇中でオークションに出品するマトリックスに埋もれたエチオピア産オパールを見ている。写真提供:A24 Films(A24 フィルムズ)

オパールの魔法のように素晴らしい品質が、アダム サンドラーが主演を務めた2019年の映画『Uncut Gems(邦題:アンカット・ダイヤモンド)』で中心的な題材として取り上げられています。まだマトリックスに埋もれている状態の巨大なエチオピア産オパールが、ニューヨークに密輸されます。

オパールでは宇宙全体を見ることができると言うほど、オパールは古い宝石だ、とサンドラー演じるニューヨーク市の47丁目の宝石商・宝石ディーラー、ハワード ラトナーが、NBAバスケットボール選手のケビン ガーネットにこのオパールを見せながら言います。ガーネットはこのオパールにあまりにも虜になり、オパールを手に入れずにはバスケットボールの試合に集中することすらできません。

サンドラーが演じるラトナーは、超高価格で売ることができる可能性を秘めているこのオパールに魅了されます。このオパールの重量は4,000~5,000カラットあり、1カラット当たり最高3,000ドル(約33万円)と推定すると、何百万ドル(数億円)もの利益が上げられる、と期待に胸を膨らませます。ところが、オークション ハウスでは、150,000ドルから225,000ドル(約1600~2500万円)というはるかに低い価格が付けられます。何故このような結果になったのでしょうか?

12個の研磨されたオパール。
映画『Uncut Gems(邦題:アンカット・ダイヤモンド)』に登場したエチオピア産オパールは、1994年にエチオピアで初めて発見された。写真撮影:Eric Welch/GIA

ほとんどの宝石と同様に、オパールでは、最終的に研磨された石の重量が、その原石のわずか一部となります。この映画に登場するオパールは、母岩のマトリックスの中にオパールの団塊(ブラック オパールではないようですが)がいくつかあるように見えますが、母岩がその大部分を占めているように見えます。つまり、そのマトリックスを取り除くまで、このオパールを評価し、その価値を査定することは実際には非常に難しいのです。

「オパールの団塊は、価値のないマトリックスを取り除いた後、宝石にするために成形して、研磨されなければなりません。その結果、重量がはるかに軽くなることはよくあります」とGIAのグラジュエイト ジェモロジスト®(Graduate Gemologist®)およびGIAカラーストーン鑑別サービスでマネージャーを務めるNathan Renfroは説明しました。「原石の宝石素材の現実的な評価は、研磨された宝石をどれだけ生み出す可能性があるか、そして仕上がる宝石の加工に伴うリスクに基づきます。」

そのリスクに加えて、オパールは、ほとんどの宝石とは異なり、石や鉱物ではないという事を考慮しなくてはいけません。

オパールは、何世紀にもわたる季節的降雨の結果、砂岩から微細なシリカの粒子が浸出し、地下の深部にある裂け目や空洞に運ばれて形成されます。その堆積物が乾燥するにつれて、微細なシリカの球体が密集した格子状に圧縮されます。光がこの微細構造を通過すると、万華鏡のようにきらきらと輝く虹色が生まれます。この現象は遊色効果と呼ばれています。
 

A front-facing piece of rough opal with the edges of its matrix showing.
The opal that beguiles the main characters in “Uncut Gems” was still in its matrix, similar to this piece of rough opal in matrix. Photo by Robert Weldon/GIA

オパールの多様な色と種類

オパールには主に5つの種類があります。

  • ホワイト オパールまたはライト オパール:半透明から亜半透明で、地色と呼ばれる白やライトグレーの背景の色に対して遊色効果を示します。『アンカット・ダイヤモンド』に登場したオパールの標本は、この映画の中ではブラック オパールとして説明されていましたが、典型的なホワイト オパールであるように見えます。
  • ブラック オパール:半透明から不透明で、黒または他の暗い色の地色に対して遊色効果を示します。色のコントラストが暗い色の背景に対してはるかに高くなるため、多くの場合、ホワイト オパールよりも高い価格で販売されます。
  • ファイア オパール:透明から半透明で、地色はブラウン、イエロー、オレンジ、またはレッドです。多くの場合、遊色効果を示さないこの素材は、「メキシコ オパール」としても知られています。
  • ボルダー オパール:半透明から不透明で、明るいまたは暗い地色に対して遊色効果を示します。マトリックスと呼ばれる周囲の岩石の断片が、仕上がった宝石の一部となります。
  • クリスタル オパールまたはウォーター オパール:透明から亜透明で、背景が透明です。このタイプのオパールは、見事に素晴らしい遊色効果を示します。

オーストラリア産オパールが最も有名であり、オーストラリアは、オパール(主にホワイト オパールとブラック オパール)が最も多く産出される場所とされています。エチオピアは、1994年に初めてオパールが発見され、最新の産地として知られています。

この映画の中でも名称が登場した、エチオピアでオパールを最も多く産出する場所は、ウォロ州のウェゲルテナと呼ばれる町の近くにあり、2008年に発見されました。主にホワイト オパールであるこの素材は、古代の火山灰に含まれているシリカから形成されました。ウォロ鉱山の北西約30マイル(約48km)の場所にあり、ブラック オパールを産出するもう一つの鉱床は、映画『アンカット・ダイヤモンド』の舞台となった2012年から一年後の2013年に発見されました 。

GIAは、長年にわたりオパールに関して詳しいレポートを発表しています。多くの研究成果は、こちらのGems & Gemology(宝石と宝石学)2019年夏号のチャートでご覧いただけます。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。