エメラルドの品質を決定する要因
他のカラーストーンと同様、エメラルドの価値に大きな違いを生じさせることもある微妙な違いを見分けるには、鍛えられた眼識が必要となります。 このことは、高品質のものに対して特に当てはまります。
色
最も望ましいエメラルドの色は、鮮やかな色で暗すぎない色調の、帯青緑色から純粋な緑色です。 最も価値の高いエメラルドは透明度が高いものです。 そして色が均質で、目に見える色帯が無いことです。 色相が黄色みや青みが強すぎる場合、その石はエメラルドではなくベリルの別の変種となり、その価値はそれに応じて低くなります。
最高級のエメラルドに見られる緑色の強さは、自然界でそれに匹敵するものが他にないほどです。
クロム、バナジウム、鉄がエメラルドの色を発色させる微量元素です。 各元素の有無とそれらの相対量が、エメラルドの結晶の色そのものを決定します。
エメラルドの外観は、それが採掘された鉱山と関連していることがあります。 例えばコロンビア産のエメラルドは、暖かくより強い純粋な緑色をしていると言われています。 ザンビア産のエメラルドはクールな色調でより青みがかった緑色であると言われています。 このような説もありますが、実際のエメラルドの外観は産出地間で重複する要素があるものです。
クラリティ
エメラルドには、一般的に肉眼で見えるインクルージョンが含まれています。 このため、業者や一部の消費者はエメラルドにはインクルージョンが存在するものと理解しており、それを容認しています。 見た目にクリアなエメラルドは、とても希少なので特に価値があります。
エメラルドのインクルージョンは、苔や庭園を見ているようだと表現されることがよくあります。 そのためフランス語で庭を意味する「ジャルダン」と呼ばれることがあります。
カラーストーンでは、透明度とクラリティは密接な関係にあります。 このことは、特にエメラルドに当てはまります。 業界では一般的に、高品質のエメラルドに見られるインクルージョンは容認されています。 しかしインクルージョンが透明度とクラリティにマイナスの影響を与えている場合は、石の価値は大幅に下がります。
2000年初頭、GIAラボラトリーではエメラルドのクラリティ処理についての等級付けサービスを開始しました。 ラボラトリーでは、ルースの石を検査し、検査時点での石のデジタルカラー画像を添付したエメラルドレポートを提供します。 レポートでは、クラリティエンハンスメントの等級をminor(軽度)、moderate(中程度)、significant(重度)として記述します。 GIAラボラトリーでは、処理レベルの等級付けにのみこのシステムを使用するのであって、石の全体的なクラリティーグレードを提供するものではないことを強調しています。
カット
カット職人はカットを決定する際に、原石の色の深みや耐久性、インクルージョンを考慮する必要があります。 これを間違うと重量を損なってしまいます。即ち、宝石の潜在的価値を減少させてしまうことになります。
エメラルドの結晶には、石のカットを難しくしている4つの特徴があります。 まず、ほぼすべてのエメラルドに、顕著なフラクチャー(業界ではひび割れと呼ばれることもある)が見られます。 カット職人は、完成品に対するそうしたフラクチャーの影響を最小限に押さえるようにカットをデザインする必要があります。
二つめの要素は、こうしたエメラルドに本来あるフラクチャーが理由の一部となっているもので、エメラルドはコランダムのような宝石よりも脆いという点です。 このことから、カットや研磨、セッティングの際、あるいは日常での不注意な着用法などによっても損傷を受けやすくなります。 エメラルドカットでは、脆い角をファセットカットすることで爪留めに対し比較的安全な部分ができるため、損傷に対する保護に役立ちます。
第三に、色はエメラルドの価値を確立する上で非常に重要であるため、カットによって色相、色調、彩度の効果を最大限に引き出す必要があります。 カット職人は、エメラルドのプロポーションやファセットの数を調整することにより、石の色に影響を与えることができます。 カット職人が淡い石を深くカットし、テーブルを小さくしてファセットを少なくすれば色を暗くすることができ、また、暗い石は浅いカットでテーブルを大きく、そしてファセットを多くすれば、明るくすることができます。
第四に、多くのエメラルド結晶は帯青緑色から帯黄緑色の二色性を示すため、カット職人は結晶の長手方向に垂直となるようにテーブル方向をアレンジすることになります。 こうすることで、カット石として見える色が、多くのエメラルド愛好者たちが高く評価する青味のある緑色となるのです。
コロンビア産の原石は、石が形成される際の着色元素の分布が一様でないため、カットが特に困難となります。 色が表面に近いほど強くなっているのです。 したがって慎重にプランを立ててカットしないと、成形加工後の石が元の素材よりもはるかに薄い色になってしまうかもしれません。
カラット重量
成形加工されたエメラルドには、さまざまなサイズがあります。 美術館や個人コレクションには何百カラットにもなるエメラルドがあります。 それとは反対に、1カラットのほんの僅か分しかない、極小さなエメラルドもあります。
ジンバブエのサンダワナにあるエメラルド鉱山で産出するものは、小さいけれど色鮮やかなことで知られています。 そこのエメラルドは1mm角と小さいですが、強烈な緑色をしています。 この鉱山のカット石は平均で約0.05から0.25カラットで、1.50カラット以上のものはめったにありません。 人気のあるジュエリーのサイズは、通常はその間の範囲にあたります。
最小のサイズ域は1mm〜5mm、重量が0.02〜0.50カラットですが、センターストーンとして人気のある石は、1〜5カラットです。 高級ジュエリー作品には、20カラット以上の重さのエメラルドが使われることもあります。
品質が等しい場合、エメラルドの価格はサイズが大きくなるにつれて大幅に上昇することがあります。