ブルーダイヤモンドはどこで誕生するのか?

驚くほど「Superdeep(とても深い)」な起源を持ち、古代の海洋と関連するブルーダイヤモンド


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写真1: ホウ素を包有するブルーダイヤモンド。フェロペリクレースと呼ばれる鉱物の暗い色をしたインクルージョンが、この研究の一環として検査された。宝石の重量は0.03カラットである。写真:Evan M. Smith

これは、総合科学ジャーナル 『Nature(ネイチャー)』に掲載された論文「Blue boron-bearing diamonds from Earth’s lower mantle(地球の下部マントルで形成されたホウ素を含有するブルーダイヤモンド)」の要約に説明を加えたものです。GIAの研究員Evan Smithがこの記事の筆頭著者であり、Carnegie Institution for Science(カーネギー研究所)のSteven B. Shirey、Emma S. Bullock およびJianhua Wang、University of Cape Town(ケープタウン大学)のStephen H. Richardson、University of Padova(パドヴァ大学)のFabrizio Nestola、Gemological Institute of Americaの Wuyi Wang、 が共著者です。

タイプ IIbのダイヤモンドは、魅力的なブルーの色を生み出す原因となるホウ素が結晶構造内に含有されることを特徴とする稀少なダイヤモンドです。有名なHope Diamond(ホープ ダイヤモンド)が、このブルーダイヤモンドの品種の完璧な例でしょう。タイプ IIbのダイヤモンドは、長い間、地質学的な謎となっていましたが、Nature(ネイチャー)誌の2018年8月2日号に掲載された新しい研究で、これらのダイヤモンドは「Superdeep(とても深い)」ダイヤモンド、つまり他のほとんどの宝石質のダイヤモンドと比べて地球のはるかに深い場所で結晶化するダイヤモンドであることが判明しました。驚くべきことに、これらのブルーの宝石に含まれるホウ素の原子は、もともと古代の海洋から派生された可能性があります。

6つのブルーダイヤモンドの原石
写真2: 重量0.7~3カラットのブルーダイヤモンドの原石。ファセットカットされた宝石の外観を最高の状態に見せるためにインクルージョンが巧みにカットされたり研磨されてしまうことがよくあるため、このような原石のサンプルを検査するとインクルージョンを観察するのに良い機会をもたらす。写真:Evan M. Smith

ホウ素は、地球表面に強く集中している元素です。しかし、ダイヤモンドが成長するマントルでは、ホウ素の濃度は極めて低くなっています。したがって、タイプ IIbのダイヤモンドのホウ素含有量は予測不可能であり、説明するのが困難となります。ブルーダイヤモンドは、何年もの間、科学者を魅了してきましたが、このような宝石は高価および稀少であり、鉱物のインクルージョンがほとんど含有されていないため、研究で大きな課題となっています。

この研究が行われる前、タイプ IIbのダイヤモンドでは鉱物のインクルージョンが発見されたことはありませんでした。しかし、2年間に渡りGIAに提出されたダイヤモンドを系統的に選別し、インクルージョンを含む46個のタイプ IIbのダイヤモンドを発見および検査することが可能となりました。結晶化されている間にダイヤモンドに閉じ込められた素材の小さな断片であるインクルージョンを研究することで、研究チームは、母岩とダイヤモンドが形成された場所の深さを推測することができました。これらのインクルージョンで特定された鉱物は、地球の非常に深く、圧力が非常に高い場所でのみ発見されるため、タイプ IIbのダイヤモンドは少なくともマントル遷移層(410~660km)で下部マントル(>660km)に到達するほどの深い場所で形成されたという結論に達しました。ちなみに、その他の種類のダイヤモンドは、ほとんどが深度約150~200kmの場所にある古くて厚い大陸の基盤の近くで形成されるため、これはそれと比較すると約4倍ほど深いことになります。

また、この非常に深い場所において、コンベアベルトのような沈み込みのプロセスを介して下部マントルに運ばれた海洋地殻がある場所でダイヤモンドが形成されたということをインクルージョンは示しています。沈み込んだ海洋リソスフェアに関連しているということは、タイプ IIbのダイヤモンドのブルーの色の原因となるホウ素は、地球の表面から運ばれていた可能性があることを示唆しています。

ブルーダイヤモンド内にあるインクルージョン
写真3: 視野1.42mmで観察された0.21カラットのブルーダイヤモンドにあるケイ酸カルシウムのインクルージョン。このインクルージョンは、このダイヤモンドがマントルの非常に深い場所で形成された証拠となる。写真:Evan M. Smith

海水が海底に浸透すると、化学反応を起こし、ホウ素が海洋リソスフェアに堆積します。この新しい研究では、このホウ素の一部が下部マントルまで含水鉱物ととも沈み込むモデルを提案しています。この非常に深い場所では、上昇した温度と圧力が含水鉱物を破壊した後、ダイヤモンドの成長の原因となるホウ素が濃縮された液体が流出します。Smithおよび共著者が検査したブルーダイヤモンドのインクルージョンの多くは、固体鉱物を囲む薄層としてメタンと水素が共存しており、ホウ素が濃縮したそのような含水流体からダイヤモンドが成長したという証拠を提供しています。

この新しい研究では、タイプ IIbのダイヤモンドは、これまで発見された中で最も深い場所からダイヤモンドの一つであるだけでなく、ホウ素、そしておそらく水分でさえも沈み込みのプロセスを介して深海からマントルに運ばれるということが判明しました。これは、マントルの地球化学とプレート構造のプロセスを理解するために重要な所見となります。  

『Nature(ネイチャー)』2018年8月号の表紙を飾る記事『ディープブルー』は、海洋構造プレート上でホウ素が地球の下部マントルに移動するときに形成されたタイプIIbダイヤモンドに関するEvan M. Smithの研究を紹介する。画像提供:ネイチャー

スーパーディープダイヤモンドは常に小さく、宝石質にはなり得ないと最近まで広く信じられていました。この概念は、比較的大きく、不純物が皆無な(CLIPPIR)ダイヤモンドもスーパーディープダイヤモンドであるという2016年の発見に加えて、ホウ素を含有するブルーダイヤモンドはスーパーディープダイヤモンドであるという現在の発見によって覆されました。このため、世界で最も高価で輝かしい宝石質のダイヤモンドの多くはスーパーディープダイヤモンドであり、地面から何百キロも下にある対流マントルからの貴重な物理サンプルとなります。

Evan Smith博士は 10月7~9日に開催されるGIAの国際宝石学シンポジウムでこの研究について発表します。プログラムの詳細および登録に関しては、symposium.GIA.eduをご参照ください。