新しい3DソフトウェアによりGIAの真珠鑑別能力が拡大
5月 23, 2016

真珠は自然界で最も美しく、魅力的な宝石の一つです。 それは生命と暖かさに包まれて輝き、真珠のみが持つ宝石の生命と私たちを結びつけてくれます。 天然、養殖を問わず真珠には神秘性が備わっており、独自の魅力にきらめきます。
GIAの設立以来長期にわたり、世界各地からの真珠の収集および研究が行われてきました。 GIAの研究者たちは様々なツールや技法を使って異なる種類の真珠の識別をしてきましたが、最も顕著なのはX線画像です。 しかし、ここ数年間のGIAの検査において、真珠の内部構造を明らかにし、有益な結論を引き出す最先端技術となっているのが、リアルタイムX線顕微鏡断層撮影法(RTX)とコンピューターX線顕微鏡断層撮影法(μ-CT)です。 GIAの技術者や科学者たちはこれらの画像を参考とし、天然、ビーズ養殖、非ビーズ養殖、その他の真珠を判断します。 エネルギー分散型蛍光X線(EDXRF)を使用した蛍光X線分析および化学分析の技術を併用することにより、海水真珠と淡水真珠を区別することができます。
最も設備の整った研究所であっても、依然として識別が困難な真珠もあります。 研究者たちは、内部に隠された識別困難な貝殻部分や他の物体に驚かされることがあります。 最近まで真珠の内部構造は2次元画像でしか見ることができなかったため、宝石全体の構造の解明には限界がありました。
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そこで、最新技術の力が発揮されます。
GIAは最近、真珠内部の特徴についての調査能力を拡大するソフトウェアを入手しました。 この強力な研究ツールにより、真珠の特定領域を分析するために、実質的な探索、操作、抽出、再構成ができるようになりました。 また、研究者が収集した既存のμ-CTデータの質を高め、詳細をより鮮明に確認することも可能になりました。
3つの例が、このソフトウェアの可能性を実証します。 最初の例は、天然真珠の形成を引き起こした一片の貝殻を明確に示しています。 2つ目の例は、バンコクのGIAラボで検査され、最近のGems & Gemology(宝石と宝石学)ラボノートに記事が掲載された真珠です。 これは明らかに中央からの放射構造形状を示しており、同時にこのソフトウェアの抽出能力も証明しています。 3つ目の例は識別困難な構造を示しており、同ソフトウェアを使うことで定義がより明確になります。
例1
以下は、奇妙な内部構造を持つ真珠の従来の2Dμ-CTスライス画像です。 研究者たちは貝殻の一片だと推測していましたが、その正確な形状や構造を可視化するのは困難でした。



内部にある貝殻のビデオをご覧ください。
例2
この真珠には、有孔虫と呼ばれる小さな有機体であると考えられた構造が含まれます。


内部にある有孔虫のビデオをご覧ください。
例3
このソフトウェアにより、真珠内部の他の特殊な構造が分析できる可能性もあります。 次の例は大きな内部空洞を持つ淡水真珠です。結合する白い成長構造に沿って、メインの硬質部分につながっています。 分割後の真珠の3Dモデルは、空洞構成部分の全体的な形状や大きさに関する情報をより多く提供してくれます。 空洞全体の形状を観察することによって、真珠自体の理解が明確になっていきます。 新しい技術により、天然および養殖真珠の両方の内部構造を、以前は不可能だった方法で分析する機会を研究者たちは得ることができました。

GIAの研究者は「Queen of Gems(宝石の女王)」に対する研究所の長期的研究の一環として、これらの魅惑的な内部構造を探求し続けます。この新しい3Dソフトウェアは、研究者たちが駆使できる最新のツールなのです。 これらの謎を掘り下げることによって当研究所の理解が深まり、研究を土台とした真珠の識別と評価の支援となっていきます。 GIAの研究者たちがこの強力なソフトウェアツールの機能を習得することで、自身の経験をさらに分析困難な真珠に活かすことが可能になります。
Chunhui ZhouはニューヨークにあるGIAのリサーチサイエンティスト 兼 真珠識別部門のマネージャーです。 Emiko YazawaはニューヨークにあるGIAのスタッフジェモロジストです。 バンコクを拠点にしているNicholas Sturmanは、GIAのグローバル真珠サービスシニアマネージャーです。