2017年度マンマリア・ブチェラッティ財団 最優秀ジュエリーデザイン賞が魅せる宝飾芸術
3月 2, 2018
第1回 ジャンマリア・ブチェラッティ財団 最優秀ジュエリーデザイン賞の審査員は、GIAのジュエリーデザインプログラムの学生達が手描きで完成させたオリジナルのレンダリングをツーソンのショーで見て非常に驚きました。
「審査員はとても驚いて、歩きながら声を上げていました。レンダリングはどれも本当にリアルで、正しいサイズとスケールで作られていました。カラフルで生き生きとしていて、今にも飛び出てくるみたいに感じます」とGIAのジュエリー マニュファクチャリング アート(JMA)部長のElizabeth Brehmerは語ります。
「レンダリングして、色を塗るものには生命が宿っています。非常に特別な思い入れがあって、有機質で本物な何かが潜んでいるのです。」
ジャンマリア・ブチェラッティ財団 最優秀ジュエリーデザイン賞は、新人のジュエリーデザイナーを奨励し、ジャンマリア・ブチェラッティが有名であった手描き彩色というジュエリーアートの長い歴史を称えるために設けられました。
「ブチェラッティ氏は、いつも自分のブランドを大切に守り、自身の工房から作り出されるものがユニークで特別な作品であり、常に非常に高い水準を必ず維持しているようにしていました。この財団の名前を冠したコンテストを開催することで、GIAの学生の最終候補者たちが審査員に与えた熱意の大きさを実感しています」と、Brehmerは述べます。
世界各地のGIAで2017年のジュエリーデザインプログラムを修了した学生にこのコンテストの参加資格が与えられました。Brehmerによると、学生の作品はいくつかの審査段階においてそれぞれ評価されます。まず、学生がコースを修了した後、各学校の生徒に自分の作品を披露します。その後、彩色画がカールスバッドの委員会に提出され、GIAで教えられた規格と基準のすべてが満たされているかを確認します。今年は12のデザインコースが世界各地で開講され、各学校 (カールズバッド、香港、インド、ニューヨーク、ロンドン、台湾、タイ) の各コースから1人の学生が選ばれ参加しました。
提出された各作品には、オリジナルのレンダリングと共に材料に関する説明とその作品を制作するきっかけとなった事柄が記載されていました。
「材料ときっかけについての説明は、コンセプトとレンダリングを行う上で重要であり、最終審査で重大な位置を占めます。説得力のある動機についてのストーリーは、その作品に影響を与えますから」と、Brehmerは語りました。
Brehmerは、このようなコンテストは、ジュエリーデザインの専門家にデザインを披露する機会を与えてくれるので、GIAの学生が参加するのは重要であると述べました。
「コンテストの開催が発表されたとき、学生はとっても喜んでいました。GIAのジュエリーデザインプログラムでアーティストとして、そしてデザイナーとして学んだスキルを披露することができるコンテストは、この業界で世界中のどこにもありません。」
ジュエリーデザインにおける様々な分野の業界の専門家5人が、ツーソンの同窓会イベント『Party at the GIA Gem Mine(GIAジェム・マイン・パーティ)』が開かれる朝に最終審査を行いました。この審査員は、Rio Grande Tools & Supplies (リオ グランデ・ツール&サプライズ)の執行副社長のMolly Bell、Remy Design(レミーデザイン)の社長兼ジュエリーデザイナー及び教育者であるRemy Rotenier、Tucson Museum of Contemporary Art(ツーソン現代美術館)の主任学芸員のGinger Porcella、小売販売およびカスタムデザインの会社、Alishan(アリシャン)のオーナーであるAlishan Halebian、JCK誌の編集長のVictoria Gomelskyです。
GIAでJMAプログラムの上級講師を務めるDoug Hallは、優勝者選考作業を開始する前に、学生の学習内容とその学び方、用いる必要がある視点、使用する技法など、GIAのジュエリーデザインプログラムの概要を審査員に説明しました。
審査員はGIAの学生が制作した作品の品質に感銘を受け、レンダリングを手に取って詳細を見たり、その作品を作るきっかけおよび使用した材料についての学生のコメントを読むことができるということに心を高揚させていた、とBrehmerは述べました。
「審査員はオリジナルのレンダリングをめったに見るチャンスがないと言っていました。また、このような作品を生み出すのにいかに多くの時間がかかり、すごく努力したのだろうと、称賛した方も数人いました。どのような作品が出来上がるかを顧客が容易に想像することができるので、販売のスピード感を上げることができることになる、と1人の審査員は指摘しました。審査員がこのように話したのは興味深いです。なぜなら、これ[レンダリングの彩色]は非常に伝統的な方法ながら今日の業界に応用できるからです。」
コンテストの優勝者がCatherine Zhengであるということは、同窓会イベントで正式に発表されました。審査員は、プラチナとタンザナイトでできたアール デコ調のネックレスを非常に気に入り、エレガントで美しい演出と、それが製作可能なデザインであることに感動した、とBrehmerは語りました。
ロサンゼルスで高所得者向けの不動産仲介業者として働くZhengは、自分の名前が優勝者として呼ばれたときに「非常にびっくり」したと言います。
「ジュエリーデザインコースにはすごく才能のある学生がたくさんいて、大学で芸術を学んだり、すでに宝飾業界で経験を積んでいた人もたくさんいたので、私はこのコンテストで優勝するとは思っていませんでした」と彼女は語りました。
Zhengは不動産業で十分な収入を得ていましたが、彼女の人生では何かが欠けているようにいつも感じていました。
「高校生の時にアートにすごく興味があって、National Award for Creative Artist(全米創造芸術賞)や「芸術的な発見」部門で米国議会より特別表彰など、アートで賞をいくつかもらいました。私の夢はデザイナーになることでしたが、多くのアジア人がそうであるように私の家族は、アーティストになることはリスクが大きいと思っていました」と彼女は説明します。
このためZhengは大学で金融とマーケティングを専攻し、卒業後に銀行に就職し、後に不動産仲介業者になりました。しかし、アートのクリエイティブなアイデアが常に浮かび、夢を諦められずにいた彼女はカールスバッドのジュエリーデザインプログラムに登録しました。このコースでは、「素晴らしい」と彼女が称えるHallが彼女の講師になりました。
「Dougは完璧主義者で、彼が設定する高い基準から私は本当に多くのことを学びました。コースはわずか9週間でしたが、この短い期間で技法とスキルについてたくさん学べました。それに、コースの後半は、学生がクリエイティブにデザインできるよう計画されています。」
Zhengは、コースを受講しながら不動産仲介業者として働いていました。
「日中に働いて、夜に勉強したり作業をしなくてはいけなかったので大変でした。すべてをこなすためには毎日4〜6時間しか寝れませんでしたから。10年以上も絵は描いていなかったけど、勉強に全力を尽くして良かったと思っています。」
頑張って努力したことはすべて非常に報われた、と彼女は述べます。「全く期待していなかったのに優勝するのはすごく嬉しいですね。」
Zhengは、このコンテストで優勝者になったという名誉を得た他に、フィレンツェへの1週間旅行を贈呈されました。フィレンツェでは、ルネッサンスのアートを見学したり、Pitti Palace(ピッティ宮殿)に所蔵されたジャンマリア・ブチェラッティの宝石コレクションの一部を見ることができます。また、ミラノに旅行し、ブチェラッティ夫人に会い、このコンテストの優勝者として表彰盾を受け取る予定です。
「イタリアに行くのはすごく楽しみです。今まで何度か行ったことがあるけれど、これは一番楽しみで、絶対思い出に残る旅になります。ブチェラッティ夫人に会えるのをとても楽しみにしています。」
Zhengは、ジャンマリア・ブチェラッティ財団 最優秀ジュエリーデザイン賞を受賞したことで、プロのジュエリーデザイナーになるという夢を追い続ける決心をしたと述べます。これは、まさしくこの賞が設けられた目的です。また、彼女は、CAD/CAMのデザインを勉強し、近いうちにGIA グラジュエイトジェモロジストとなる計画もしています。
「ジュエリーデザイナーとしてキャリアを築いたり、自分のジュエリー製品を販売し始めたりすることを真剣に考えています。これはデザイナーの初心者である私にとってすごく大切なことで、このキャリアを続けるのにすごく励みになって頑張る力が出てきます。」
Amanda J. LukeはGIAのシニアコミュニケーションマネージャーです。彼女は現在GIA Insider(GIA インサイダー)とAlum Connect(同窓生コネクション)の編集者であり、The Loupe(ルーペ誌)の元編集者でもあります。