展覧会レビュー:Illuminations, from Earth to Jewel(イルミネーション − 地球から宝石へ)
1月 13, 2017

写真:Paula Crevoshay
33年以上もの間、アメリカのジュエリーアーティスト Paula Crevoshay は、珍しい稀少な宝石を組み合わせて、ブローチ、イヤリング、カクテルリングなどの印象的でカラフルなジュエリーを生み出すことで知られてきました。 そのような作品の特徴から、彼女は宝石業界では「Queen of Color(カラーの女王)」として知られています。 この秋、ParisTech School of Mines(パリ国立高等鉱業学校)にある鉱物学博物館では『Illuminations, from Earth to Jewel(イルミネーション − 地球から宝石へ)』展が開催されており、Crevoshay 氏の印象的でモダンなジュエリーの一部が博物館の標本コレクションとともに展示されています。 この展覧会では、Crevoshay 氏が好んでインスピレーションの源とする「自然」が賞賛され、 アパタイト(リン灰石)、クリソコラ(珪孔雀石)、スピネル、標準的でないガーネットなど、フランスのジュエラーが滅多に使用しない宝石が展示されています。
以前は画家をしていた Crevoshay 氏は、絵画に対するのと同じアプローチでジュエリー作品に取り組んでいます。複数の技法を組み合わせて、見た人の目に素晴らしい色合いを映し出す宝石を選び、昆虫、葉、景色などをモチーフに作品を作り上げます。 5つの展示ケースには、プライベートコレクションから選りすぐりの32点のジュエリーが展示されており、その美しさが来訪者を魅了します。 その一例として、蘭からインスピレーションを受けて作られた作品、海洋動物を形どった作品、抽象作品などが挙げられます。 優れた作品が多すぎて、一番好みの作品を選択することは難しいのですが、 「Jessie(ジェシー)」と「Maia’s Gift(マイアのギフト)」という2つの印象的な花のブローチは、そのカラフルなコントラストが話題になっています。 ジェシーブローチ(写真1)はピンクとイエローのサファイアとぺリドットとが組み合わせられ、マイアのギフトブローチ(写真2)はツァボライトガーネット、ピンクとイエローのサファイア、ダイヤモンドがあしらわれており、それぞれが格別な作品に仕上がっています。 こういった明るくて澄んだ色同士の組み合わせは伝統的ではありませんが、最終的によく調和して、 大胆で楽しい作品となっています。 さらに、Crevoshay 氏は作品の中で、ダイヤモンドや「ビッグスリー(ルビー、サファイア、エメラルド)」以外の予想外な宝石を用いることが重要かつ革新的であることを示しています。Tsaritsa イヤリング(写真3)はその代表例と言えます。 このイヤリングは、アジュライト(藍銅鉱)とマラカイトのカボションを特徴とし、ツァボライトがセンターストーンとしてセッティングされています。

ダイヤモンド。 写真提供:Paula Crevoshay

写真提供:Paula Crevoshay
鉱物学博物館の保全チームにより、作品1点につきコレクションから2つの原石標本が展示されているので、採鉱、切削、セッティングの関係を深く理解することができます。 この標本は、鉱物や宝石がどのように結晶化されるのを観察したり、宝石の切削者が、石の完成品にどのようにして輝きを与えるかを学ぶのに最適です。
Crevoshay 氏の次のビジョンは、使用する宝石の起源をジュエリーの中に表現することです。宝石の各産地を反映した美しい作品を作ることを目指したいと考えています。 ブレスレット「Rainbow over Montana(モンタナにかかる虹)」(写真4)は、この新しいビジョンを反映した作品である可能性があります。 この作品では、さまざまな色合いのピンクや、濃い青、緑がかったグレーに至るまで、モンタナサファイアのあらゆる色が引き立てられています。 完全な透明であったり、肉眼で見える乳白色のインクルージョンを持つなど、珍しい特徴を持った石があしらわれており、私たちを待ち構える未知の旅への期待を膨らませてくれます。

『Illuminations, from Earth to Jewel(イルミネーション − 地球から宝石へ)』展は、フランスの ParisTech School of Mines(パリ国立高等鉱業学校)にある鉱物学博物館にて2017年2月1日まで開催されています。 一般入場料は6ユーロです。 また、学生および高齢者の入場料は3ユーロ、12歳未満のお子様は無料です。 鉱物学博物館の開館時間は、火曜日から金曜日までの午後1時30分から午後6時、土曜日の午前10時から午後12時30分及び午後2時から午後5時までです。日曜日と月曜日は閉館です。
Marie Chabrol は、宝石・ジュエリー業界を専門とし、パリで活躍する独立したジャーナリストです。