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GIAの研究員、ダイヤモンドの中にあるダイヤモンドの謎の秘密を明らかにする


グリーンの地色と表面に三角形のエッチングが付いたダイヤモンドの原石。
シベリアから産出された0.62カラットの緑色の「マトリョーシカ」ダイヤモンド。2つの小さな溝により外側につながっているキャビティが内部にある。小さなダイヤモンド結晶は、内部で自由に動く。提供:Alrosa(アルロサ)。写真撮影:Jianxinn (Jae) Liao/GIA

ダイヤモンドは、地球から誕生する稀少で美しい贈り物です。ところが、ダイヤモンドの中にダイヤモンドがある場合はどうでしょう?それはまさしく特別な贈り物です。

GIAニューヨークのラボラトリーの研究員は、これまでに発見された中で最も興味深く、珍しいダイヤモンド結晶の一つを検査する機会を得ました。ロシアの有名な入れ子人形にちなんで「マトリョーシカ」と名付けられたこの結晶は、2019年にシベリアでロシアの鉱山会社Alrosa(アルロサ)によって発見されました。色、エッチング、内部のキャビティなど珍しい特徴がありますが、大きなダイヤモンドの中に閉じ込められているにもかかわらず自由に動く結晶に多くの関心が寄せられているのです。

「今までにこのようなものは見たことがありません。内部に小さなダイヤモンドの結晶があり、その結晶が外側の結晶から完全に切り離されているだけでなく、このような状態のダイヤモンドがどのように形成されたかは謎であるため、これは本当に珍しいダイヤモンドです、とGIA取締役副社長兼ラボ・研究主任責任者のTom Mosesは述べます。

このビデオでは、内部にあるダイヤモンド結晶が外側のダイヤモンドの中で自由に動く様子を見ることができる。ビデオ撮影:Towfiq Ahmed/GIA

GIA研究開発ディレクター副社長のWuyi Wang博士、スタッフジェモロジストのEmiko Yazawa、シニアアナリティクス技術者のStephanie PersaudおよびElina Myagkaya、上級研究科学者のUlrika D’Haenens-Johansson博士、Tom Mosesで構成されたGIA研究チームは、高度な器具機器類を用いて0.62カラットの原石の結晶を検査しました。

ダイヤモンドの観察およびその形成に関する専門知識に基づき、研究チームは、何百万年から何十億年もの年月をかけて、ダイヤモンドの表面から内部のキャビティまで伸びる2つの小さいエッチングされた溝を通して、約0.11カラットのダイヤモンド素材が溶解して流れ出たという結論に至りました。残ったダイヤモンド素材は0.03カラットの小さなダイヤモンド結晶となり、この結晶は外側の結晶から完全に切り離された状態になりました。

詳しい分析を行った結果、内部にある小さなダイヤモンドは外側のダイヤモンドとほぼ同じ微量元素の化学組成を有し、外側のダイヤモンドが地球のマントルで形成されたとき、キャビティはなかったことが判明しました。

このアニメーションは、外側のダイヤモンド結晶、内部のキャビティ、内部にある結晶を示している。 制作:Emiko Yazawa/GIA

GIA研究チームは、内部にある結晶の地色が天然の透明な緑色をしており、その表面にはクリスマス ツリーのようなエッチングがあることに興味を持ちました。これらは、稜に沿った浅いフラクチャーにある小さなダーク グリーンの放射線によるシミであると判断され、このダイヤモンドが自然界で照射処理されたことが明らかとなりました。放射性元素を含む液体が原因でグリーンの地色および放射線によるシミが形成され、この結晶を最後に飾り立てました。

「入れ子人形のようなこのダイヤモンドを検査することができて非常に光栄でした。ほとんどのダイヤモンドは溶融状態または流体の環境で形成され、多くの場合、複数のタイプの溶融された素材または流体の素材との相互作用から部分的に再吸収および再形成されることが確認されています。ダイヤモンドの中にダイヤモンドがあるというこの特別な石を検査したことで、ダイヤモンドがどのように形成されるのかについてさらに深く理解することができました」とMosesは説明します。

より詳しい記事は、Gems & Gemology(宝石と宝石学)2020年春号のラボノートに掲載される予定です。

Stephen Morisseau(AJP®)は、GIAのコーポレート コミュニケーション担当ディレクターです。