ReviewsGems & Gemology, Spring 2017 - Vol. 53, No. 1

ブックレビュー:Jeweler: Masters, Mavericks, and Visionaries of Modern Design(ジュエラー:モダンデザインの巨匠、一匹狼、先見者たち)

Sharon Elaine Thompson

Jeweler: Masters, Mavericks, and Visionaries of Modern Design(ジュエラー:モダンデザインの巨匠、一匹狼と先見者たち)表紙
Stellene Volandes著、Carolina Herrera序文、ハードカバー、255頁、図解入り、 Rizzoli International Publications出版、ニューヨーク、2016年、$85.00。

Jeweler: Masters, Mavericks, and Visionaries of Modern Design(ジュエラー:モダンデザインの巨匠、一匹狼、先見者たち)、Stellene Volandes著は、目にも見事なジュエリーデザインを集めた大判の書籍です。 Jewelerは、世界各地から17人のジュエリーデザイナーの作品を紹介しています: Hemmerle(ミュンヘン)、Elena Votsi(アテネ)、Mark Davis(ブルックリン)、Nicholas Varney(ニューヨーク)、Wallace Chan(ニューヨーク)、James de Givenchy(ニューヨーク)、Giampiero Bodino(ミラノ)、Judy Geib(バージニア州ウィリアムズバーグ)、Suzanne Syz(ジュネーブ)、Bhagat(ムンバイ)、Giampiero Bodino(イスタンブール)、Lydia Courteille(パリ)、Muriel Grateau(パリ)、Luz Camino(マドリード)、Antonia Miletto(ヴェネツィア)、Marie-Helene de Taillac(ニューヨーク)、そしてLauren Adriana(ロンドン)。 また、Carolina Herreraによる序文と、序論、そして各デザイナーの写真付き索引があります。

Jewelerは、Town & Country誌の編集長、Volandes氏による非常に個人的な選集です。どうやら氏は、大きくて大胆な作品を好むようです。 とは言え、各作品で唯一共通しているのは、そのドラマと完璧な職人芸の部分だけです。技巧と素材では、あらゆる範囲を網羅しています。 Milettoによるエキゾチックな木材のさりげない活用や、Davisによるベークライトの再利用、Biçakçiの驚異的な「逆インタリオ」宝石彫刻、Syzの遊び心いっぱいのエナメルやチタン、Bodinoによる伝統的な技巧を使った非伝統的なプレゼンテーション、そしてVarneyとChanの息をのむようなセッティング技法。 黒と白を好むGrateauによるものを除き、すべての作品は鮮やかなカラーストーンとエナメルを使っています。 Jewelerで紹介されている作品は、どれもクラシックな黒のドレスに単体で身につけるにふさわしい(Syzのカフスボタンだけは黒のシャツ)、芸術作品ばかりです。

本文では、各デザイナーの歴史と、用いられた作製技術について軽く触れています。 素敵な描写の一節もあります。例えば、Chanの「ウォレス・カット」に対するVolandesの説明は「技量と魔法を半分ずつ用い、果てしない想像の時間が何年もの実験へとつながってゆく中でこの作品は作られていった。」とあります。しかし、著者が個々のデザイナーの作品に出合い、アトリエを訪ね、ジャズクラブや高級レストランなどで作品について議論する様子など、彼女の個人的な旅が中心となっています。 彼女は、各作品が展示されている豪華な環境を彼女自身が経験する様子を、読者のために再現してくれます。それは多くの場合、予約制でのみ入ることが許される場所です。

Jewelerを語る際、その印象的なタイポグラフィーに言及せずにはいられないでしょう。 各セクションは一つの作品から始まります。そしてデザイナーの名前と、説明的なキャッチフレーズ。“The Modern Dynasty”「近代の王朝」(Hemmerle)や“Olympian Talent”「オリンポスの才能」(Votsi)、あるいは“The Myth Maker”「神話の創造者」(Courteille)。こうったフレーズを、ページからはみ出るほど大きい字体にしています。 本文からの引用文が、もう一つの注目すべきジュエリーと共に続く2ページにわたって広がっています。 そして最後に、最初のページの本文の反対側に、デザイナーの姓の頭文字が、ほとんど抽象画かと言うくらい拡大されています。その上で、3つ目のジュエリーが、その頭文字の形状に従って巻き付いていたり、積まれたりしています。 こういった字体の使い方により、このデザイナーたちがそれぞれの分野での巨匠であることが強調されています。その伝説的な偉大さと、そしてその作品が偉大すぎてページに収まらないということを、示しているわけです。 これは、その写真の巨大さにも表れています。多くの場合、ひとつの作品に9 x 13インチのページを全部使っており、さらに場合によっては、ひとつの作品を2ページ使って見開きで掲載しています。

この書籍をデザインした会社名(NR2154)とその役員の名前は掲載されているものの、この本の制作に不可欠であったはずの、写真家の名前が載っていません。 また、これらの作品の作製者への言及が欠けている場合があるのも残念です。 読者は、すべてのデザイナーがその作品を自ら作製したと推察するかもしれません。しかし、その多くは、他のデザインや宝石関連分野の出身であるかもしれない人たちであり、実技訓練を受けていません。Volandesは、ジュエリー製造の訓練を受けている場合は(例えばJudy Geibなど)、そのことに言及しています。 多くのデザイナーは、それ自体がすでに芸術作品であるような、図面を描いています(例えば、Varneyの描いたフード付きファルコンの図は、その横の完成品とほとんど見分けがつきません)。デザインのコンセプト自体が優れていることには、疑問の余地はありません。 ただ、こういった、多くの場合非常に複雑な作品の作製は、有能なカッターや石留め職人、ワックス彫刻家、鍛造彫金加工者、そしてポリッシャーの才能のおかげのはずです。 こういった職人たちに対する言及が、デザイナー自身やVolandesからほとんどないのは、残念です。

Jewelerは、本棚に並べておくための本ではありません。 それは、展示され、開かれ、めくられ、賞賛され、そして共有されるべきものです。その意味では、本のカバーが付いていないのは、設計上若干疑わしい意思決定だったのでは、と感じます。 Jewelerの表紙に使われている鮮やかな深い青色の布地は、ゴールドのレタリングで装飾されており、その中身の強烈な色の使われ方と対照すると、少しモノクロ的ですらあります。 しかし、時間の経過と、そして手で触られてゆくに従い、そのレタリングは薄れ、そして装丁のこの磁石のような質感も、いずれ埃やシミ、あるいはペットの毛などが付き、その内容とマッチしない色あせた外観になってしまうことでしょう。

 全体としては、Jeweler: Masters, Mavericks, and Visionaries of Modern Design(ジュエラー:モダンデザインの巨匠、一匹狼、先見者たち)は、満足できるものとなっています。 それ自体が美しいデザインの対象として、芸術やデザインそしてジュエリーのコレクターをはじめ、とにかく美しいものが分かる人のための本です。 Jewelerは、ジュエリーを作製する人やデザイナーにとっては、超ハイエンド国際ジュエリーデザインの深遠な世界に対する洞察、そして今後何年にもわたってインスピレーションをもたらすことでしょう。

Sharon Elaine Thompsonはグラジュエイトジェモロジスト(GG)であり、Gemmological Association of Great Britainの会員(FGA)でもあります。 彼女はGemological Institute of Americaの講師を勤めており、25年以上宝飾品および宝飾品製造について広範囲にわたって執筆を続けています。

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