ReviewsGems & Gemology, Winter 2016, Vol. 52, No. 4

展覧会レビュー:Spectaculaire Second Empire(壮麗なる第二帝政)

Marie Chabrol

エナメル、真珠とシトリンで飾られた金のブレスレット。
写真1。 エナメル、天然真珠、シトリンで飾られた金のブレスレット、Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)、 1870年頃。メレリオコレクション、パリ。 写真提供:Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)。

フランスの第二帝政は、第二共和政期と第三共和政期の間の1851年から1870年までで、20年に満たないものでした。 フランス共和国の初代大統領であったルイ・ナポレオン・ボナパルトは、引き続き大統領の座に居続けることができなくなると、 1851年12月2日に軍事クーデターにより議会を解散し、一年後には自信をナポレオン三世と名乗り、フランス第二帝政の皇帝に即位しました。  パリのオルセー美術館では『Spectaculaire Second Empire(壮麗なる第二帝政)』展を開催しており、社会的混乱や経済的な幸福感で満ちたこの時代がフランスにとっていかに重要であったかを鑑賞していただけます。 皇室の華やぎと豪奢に関連付けられることが多いこの時代は、一般的には退廃的と表現されます。 しかしこの第二帝政とは、道徳的および美的慣習が変化し、古代から伝承されていた生活様式が主要な技術の変化、鉄道や内陸水路などの公共インフラの拡大、産業活動の成長に直面した危機の時代だったのです。 この展覧会では、芸術作品、家具、ジュエリー(写真1)など、当時を反映する素晴らしい遺物が展示されています。

フランスの皇室が住居を向上させるためにインテリアデザインの装飾を注文したため、この時期には多くの小さな工房が、ジュエリーや美術品などの高級品を製造する工場となりました。 アリスティッド・ブシコーは、1852年に世界最初の近代的なデパート、Le Bon Marché(ボン・マルシェ百貨店)を創業しました。 洗練された女性は一日に何度もドレスや宝石を変え、同じ服を二度着用しないように心がけていました。 北部の町コンピエーニュで行われた舞踏会は、宝石商やドレスの仕立て屋が製作した最新の作品を披露するのに最高の場所のひとつとなり、今日知られているような高級ファッションが誕生しました。

現在、第二帝政期に栄えていた宝飾商の3社のみが高級ジュエリーを生産し続けています。 これら3社のうち、オルセー美術館はMellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)の作品および宝石商アレクサントル=ガブリエル・ルモニエの作品を展示することに決定しました。 ナポレオン三世はルモニエとメレリオ社を王冠のジュエラーとして任命し、 1851年にロンドンで開催されたGreat Exhibition(大博覧会)(別名クリスタルパレス展示会)で展示された彼らの作品を鑑賞し、彼らの素晴らしい才能に圧倒されました。

アレクサントル=ガブリエル・ルモニエ(1808-1894年)は、事業を始める前にBury jewelry (ベリージュエリー)の店舗で働いていました。 当時の大統領ボナパルトより支援を得たおかげもあり、ルモニエは最初に6番地、後に25番地(現在Bulgari(ブルガリ)がある場所)で、ヴァンドーム広場にて有名なパリの工房を開き、スペインの女王イザベル2世やロシアのデミドフ家など名家の御用達となりました。 彼の作品の中で、337グレインの天然真珠を特徴とした「ラ・リージェント」がある印象的な王冠は、現在プライベートコレクションに保存されています。 彼の会社は普仏戦争後に閉業し、彼は1884年に亡くなりました。 彼がデザインした作品を展示会で見ることができるのは非常に素晴らしいことであり、特にナポレオン三世の妻、皇后ウージェニーが所有していた王冠とダイアデム(写真2、左および右)は必見の作品です。

皇后ウージェニーの王冠とダイアデム。
写真2。  左:皇后ウージェニーの王冠、アレクサントル=ガブリエル・ルモニエ作、1855年。 皮革、ダイヤモンド、エメラルド、金。 Roberto Polo夫妻による贈呈品、1988年、 目録 OA 11160©RMN-Grand Palais、Louvre Museum(ルーヴル美術館)/PierreおよびMaurice Chuzeville。 右:皇后ウージェニーのダイアデム、アレクサントル=ガブリエル・ルモニエ作、1853年。 銀、金、ダイヤモンド、天然真珠。 ルーヴル美術館の友人からの贈呈品、1992年、 目録 OA 11369 © RMN-Grand Palais、ルーヴル美術館。

イタリア人のメレリオ家は、1515年に初めてフランスに到着しました。1613年、マリア・デ・メディチ王妃が、慣習となっていた管理上の制約なしで取引する権利をこの宝石商に付与しました。 1789年のフランス革命に先立ち、マリー・アントワネットとその友人が彼の常連客となりました。 1815年、メレリオはラペ通りで宝石店を初めて創業しました。 第二帝政期において、メレリオ家は、多くの国際博覧会で作品を展示し、石に振動を伝えるための柔軟な金のワイヤー(1854年に特許取得)やカラフルなエナメルといった、技術的および芸術的な革新を披露してきました。

バラ、オークの葉、オリーブの葉、栗などの自然が、メレリオが感銘を最も受ける源の一つです。 その一例として、1864年にマチルド王妃が注文したダイヤモンドを散りばめた金と銀のバラのブローチが挙げられます。 最も印象的な作品の一つとしては、1862年の国際博覧会で初めて展示されたライラックのブローチ(写真3)が挙げられるでしょう。 エナメル加工した金とダイヤモンドを使用した手作りのこのブローチはまるで本物の花のようで、その芸術的な輝きは驚嘆せずにはいられません。

ライラックのブローチ
写真3。 「Broche fleur de lilas」、Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)、1862年。 グリーン、ピンク、紫にエナメル加工した金とダイヤモンド。 プライベートコレクション。 写真提供:Wartski、©Wartski Ltd.、ロンドン。

もう1つの技術革新は、場合に応じて着用できるように変化する、いわゆるマルチウエアのジュエリーです。 この技術はメレリオが1830年に導入したもので、それ以来多くのジュエラーに使用されています。 例えば、ティアラをペンダント、ブレスレット、ネックレス、またはブローチに変えることができます。 この展覧会では、トルコ石とダイヤモンドがあしらわれた8つのブローチから成る金のダイアデムが展示されています。 また、メレリオは手首や腕の周りに着用できる可動部のあるヘビのブレスレットも製作しました。 マチルド王妃は、生と死、力と純潔を象徴するこのような作品を数多く注文しました。 ダイヤモンド、エメラルド、ルビーがセットされたエナメル加工の金のブレスレット(写真4)も、メレリオのもうひとつのお気に入りのインスピレーションである考古学的発見を取り入れています。

メレリオによる蛇のブレスレット。
写真4。 蛇のブレスレット、Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)、 1860年頃。 金、エナメル、ダイヤモンド、ルビーおよびエメラルド、メレリオコレクション、パリ。 写真提供:Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)。

自然や考古学よりインスピレーションを受けた作品に加えて、メレリオはゴシック・リバイバル様式のジュエリーにも精通しています。 メレリオ家は、カメオやマイクロモザイクを作成するために最高の職人を探しに、ローマへ年に数回訪れました。 1850年から1870年の間に作成された多くのパターンは、エジプト、グレコローマン、ビザンチン、原始キリスト教の様式に影響を受けたものでした。 写真5でご覧いただけるこのスカラベペンダント/ブローチには、モゴック産のビルマルビーと天然アワビ真珠がセットされています。 19世紀全般で見られたゴシック・リバイバル様式は、特にロマン主義、中世、ルネサンスの再発見に関連付けられていました。 その完璧な例としては、写真1でご覧いただける天然真珠とシトリンを散りばめた、変形するエナメル加工の金のブレスレットです。

スカラベのブローチ/ペンダント。
写真5。  スカラベのブローチ/ペンダント、Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)、 1865年頃。 シルバー、ピンクゴールド、アワビ真珠、ダイヤモンド、モゴック産ビルマルビー。 プライベートコレクション。 写真提供:Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)。

展覧会の中で最も素晴らしい作品は、メレリオのマスター・ジュエラーHenri Foulléによって製作された変形する孔雀の羽のブローチ(写真6)でしょう。 1867年の国際博覧会で展示されたオリジナルの作品が公爵夫人Medina Coeliによって購入された後、皇后ウージェニーはこの作品を作成するよう依頼しました。 皇后ウージェニーのお気に入りの宝石であったエメラルドは、取り外してペンダントにすることもでき、ブローチ自体が着用者を保護すると伝えられています。

プルーム デ パオン ブローチ。
写真6。銀と金の変形する“Plume de Paon”(「プルーム・デ・パオン」)ブローチ、Mellerio dits Mellerr(メレリオ・ディ・メレー)、1868年。 ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド。 メレリオコレクション、パリ。 写真提供:Mellerio dits Meller(メレリオ・ディ・メレー)。

『Spectaculaire Second Empire(壮麗なる第二帝政)』展は2016年9月27日から2017年1月15日までオルセー美術館にて開催されています。 入場料は大人12ユーロ、18歳以下のお子様は無料です。毎月第一日曜日は入場料が無料となります。 美術館の開館時間は、火曜日から日曜日までの午前9時30分~ 午後6時、 木曜日の午前9時30分~ 午後9時15分です。 毎週月曜日およびクリスマスは閉館となっています。

Marie Chabrolは、宝石・ジュエリー業界を専門とし、パリで活躍する独立したジャーナリストです。

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