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ロシアのロモノソフダイヤモンド事業で採掘されるファンシーカラーダイヤモンド


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「スペシャル」と呼ばれる 10.8 カラット以上の大きなダイヤモンドの原石が、小さめの商業用サイズのダイヤモンドから選別されて販売される。 写真:Karen Smit/GIA

ロシアの最新ダイヤモンド事業の一つが稼働しているロモノソフは、同国のヨーロッパ側にあるアルハンゲリスクの由緒ある港の近くに位置します。 GIA シニア業界アナリストの Russell Shor と研究科学者博士の Karen Smit が、ファンシーカラーダイヤモンドの重要な原産地になると期待されているロモノソフから初となるレポートをお伝えします。

地球の北緯 64 度線あたりに水平に線を引くと、世界最大級のダイヤモンド鉱山をたどることができます。その線は、イエローナイフ北部にあるカナダの採掘地から大規模なシベリア鉱床を通り、ロシアのヨーロッパ側にあるアルハンゲリスクの由緒ある港近くに位置する最新の採掘地へと行き着きます。

有名な 18 世紀のロシア人科学者の名前にちなんで命名されたロモノソフダイヤモンド鉱床は、初めて発見されてから 30 年以上後の 4 年前に産出を開始しました。 ロモノソフが特別なダイヤモンド鉱床である理由は、紫がかったピンク、紫、緑色、黄色や茶色などのファンシーカラーダイヤモンドが産出されることに加えて、宝石品質の無色のダイヤモンド(D から Z)がかなり高い割合で採鉱されるためです。

ロシア最大のダイヤモンド採掘・販売企業 ALROSA(アルロサ)の子会社である Severalmaz(セベラルマズ)の副主任地質学者 Ilya Zezin は、ロモノソフの年間ダイヤモンド産出量 200 万カラットのうち、350 カラットに 1 つがファンシーカラーダイヤモンドであると伝えています。 これを世界の統計と比べてみると、ファンシーカラーダイヤモンドの世界全体での産出率はなんと 1 万個につき 1 つだけです。

ロモノソフ鉱床の航空写真
Arkhangelskaya のキンバーライトの露天採鉱。 ロモノソフ鉱床で最初に発見されたキンバーライト。この鉱床は最高のグレードのダイヤモンドを産出し、表土も最も少ない。 写真:Karen Smit/GIA

ロモノソフ鉱床について地質学者が関心を寄せるもう一つの珍しい特徴は、ほとんどのダイヤモンドの探査事業が始生代クラトンに集中しているとする、いわゆる「クリフォードの法則」に反している点です。 クラトンは約 30 億年もの間安定状態が続く、地殻の非常に古い部分です。 アルハンゲリスク地域の地殻は原生代に形成された造山帯に位置します。つまり、始生代クラトンと比べると、約 20 億年前に形成されたかなり新しい地殻であることになります。 通常、ダイヤモンドはそのような地殻層に安定した状態で存在するとは考えられていません。 また、世界最大のダイヤモンド鉱床の一つであるアーガイル(オーストラリア北西部でリオ・ティントが採掘する)鉱床も、クリフォードの法則に完全に反して存在しており、ファンシーピンクおよびレッドダイヤモンドを産出し続けていることで有名です。  

Zezin はアルハンゲリスク市内にある安全な選別施設に私たちを案内し、ダイヤモンドがモスクワにある営業所に送られる前に選鉱される過程を説明してくれました。 そこには、約 2 週間分の産出量である 7 万カラット近くのダイヤモンドが並べられていました。 様々な美しい色のファンシーカラーダイヤモンドが、鏡の上で選別されていました。 それらのファンシーカラーダイヤモンドは、過去 2 ヶ月に産出された石の中から選別されたものです。色の強みが様々に異なるイエローダイヤモンドが 100 カラットほどある中に、1 カラットを超えるパープルピンクのダイヤモンドが 3 つありました。 このパープルピンクに似た色の約 0.4 カラットの研磨済みパープルピンクダイヤモンドがこの鉱床で採掘され、2015 年に香港で 1 カラットあたり 160 万ドル(約 1 億 6500 万円)以上で入札・売却されました。

推定0.4カラットのロモノソフ産パープルピンクダイヤモンド
2015年のはじめに採鉱された、推定約0.4カラットのロモノソフ産パープルピンクダイヤモンド。同年9月に、香港の入札販売で1カラットあたり160万ドル以上で売却された。 写真:Russell Shor / GIA

セベラルマズ社は来年後半には、現在稼働中の 2 つのパイプの中でも最も生産性の高い地帯に達するため、今後はファンシーカラーと無色の両方のダイヤモンドがさらに数多く産出されると Zezin は語ります。 また、ロモノソフではそれとは別に採算性のある 4 つのパイプが予備として残されています。

ロモノソフの鉱床はアルハンゲリスクから約 60 マイル(100 キロ)北にある、北東部の密森林地帯に位置します。 ドビナ川が白海に流れる河口の近くに位置するこの都市は、何世紀もの間、北部におけるロシアの唯一の深海港でした。また、毎年ほぼ 5 ヶ月間も凍結するにもかかわらず、重要な貿易中心地となっています。 旅行者は、早くも 1740 年代にこの地でダイヤモンドを発見したと報告していましたが、ロシアの地質学者は、ダイヤモンドが産出される可能性に関しては 1970 年代後半まで真剣に検討しませんでした。

それまでは、木材がこの地域を活性化させる原動力となっていました。 白海が温暖な気候をもたらすため、この地域はシラカンバ、カラマツ、マツやトウヒなど針葉樹が密林しています。カナダおよびシベリアなど同緯度に位置する他のダイヤモンド鉱床の周りには、人跡未踏のツンドラ地帯が広がっていることを考えるととても対照的です。

鉱山への道は、樺、モミ、トウヒやカラマツの森を通って続いています。
鉱山への道は、樺、モミ、トウヒやカラマツの森を通って続いている。 同じ緯度(64N)のカナダやロシアの他の鉱山とは対照的に、アルハンゲリスク地域の気候は比較的穏やかである。 写真:Russell Shor/GIA

ダイヤモンドの探査に力が入り始めたちょうどその時、この地域の経済は悪化し始めました。 1980 年、この地域の航空探査を行っていた地質学者のチームが、アルハンゲリスクから約 60 マイル(100 キロ)のところにある川の中央部にキンバーライトパイプを発見しました。 最終的には経済的ではありませんでしたが、この発見により広範囲にわたるエアボーン探査に拍車がかかり、1980 年代初頭にはロモノソフ鉱床を形成する鉱体群が発見されました。Pomorskaya(1980年)、Karpinskogo I および Karpinskogo II パイプ(1981年)、Lomonosovskaya パイプ(1982年)および Arkhangelskaya パイプ および Pionerskaya パイプ(1983年)とそれぞれ名付けられています。 約 14 マイル(23 キロ)北東部にある Verkhotina と呼ばれる 2 番目の鉱体郡は、デビアスに関連する探査会社が 1996 年 2 月に発見しました。 このキンバーライト鉱床にある V. Grib パイプは、ロシアの石油系巨大企業複合体である LUKOIL(ルクオイル)の子会社、Arkhangelskgeoldobycha によって採掘・運営されています。  

キンバーライトパイプの発見は、ダイヤモンド鉱床の長く費用のかかる開発プロセスにおいては最初のステップにしかすぎません。 それぞれの鉱床では、キンバーライトに 100 メートル以上の空管を通して広範囲にわたって試料を採取し、ダイヤモンドのサイズおよび品質や潜在的なグレードすなわち鉱石 100 トン当たりから取れるカラット重量などについて、結果を分析しなければなりません。 自然の法則なのか、ダイヤモンドの分布はほとんど均一でなく、パイプ内でも異なる場所に点在していることが多いので、コア試料は各パイプ全体から採取する必要があります。 コア試料からその鉱床が有望であると判断されると、バルクサンプル(1 トン以上のキンバーライトから成る試料)が運び出されて検査され、その鉱石のグレードが採算性のある採掘につながるかが見極められます。

通常​​、これらの検査は完了するまでに数年かかります。 セベラルマズ社にとっては幸いなことに、鉱床からはアルハンゲリスク市がかなり近く、探査期間中、雪により道が交通不可の状態でも、ヘリコプターで物資を輸送することができました。 セベラルマズは 1986 年に現在の林道を開設し、カナダのように細い氷結した道路や、シベリアの永久凍土対応のための高額な物流維持管理費などに悩むことなく、容易に物資を輸送できるようになりました。

ファンシーカラーダイヤモンドの原石は、ミラーの上でサイズ別の山に分類されます。
ロシア、アルハンゲリスク地域にあるロモノソフのダイヤモンド鉱床で、2か月の間に産出したものから選別された一連のファンシーカラーダイヤモンドの原石。 この鉱床でのファンシーカラーの産出率は約0.03%で、全世界の平均値0.001%を上回る。 写真:Karen Smit/GIA

1987 年、大きめのパイプのほどんどに採算性が見込まれるという結果が出されました。中でも、Karpinskogo I は、上部(クレーターの層相)では 1 トン当たり 0.6 カラットが見込まれるものの、パイプの下部(ダイアトリームの層相)では 1 トン当たり 1.4 カラットが産出されると推測されました。 Arkhangelskaya でも同様の結果が確認され、クレーターの層相では 1 トン当たり 0.5 カラット、ダイアトリームの層相では 1 トン当たり 1.06 カラットの産出が推定されました。 そしてついに、当時ソ連の支配下にあった中央政府はこの鉱床を開発する認可を与えました。

ダイヤモンドを採掘する上で地質と物流は好条件に恵まれましたが、激動の時代が到来しました。 数年間にわたって政治的動乱が続いた後、ソ連は 1991 年に崩壊し、政府と経済が大混乱に陥りました。 混乱の中で新しいロシア政権が出現すると、政府は新しく発足し自治権を有すサハ共和国とともに、ダイヤモンドの資源を管理する組織 Almazy-Rossii-Sakha(後に ALROSA に改称)を創設しました。なお、サハ共和国には、ロシアのダイヤモンド鉱床の大部分が位置しています。 次に、政府はロモノソフ鉱床を管理するためにセベラルマズという名の子会社を創設しました。

しかし、財政が引き続き不安定であったため、ロシア政府が採算の良いシベリア鉱山での生産活性化に注力している間、その後 12 年間つまり 2005 年までロモノソフ鉱床の開発は延期されました。

ダンプトラック一杯のキンバーライトの山が備蓄されます。
ArkhangelskayaとKarpinsky Iのパイプから産出するキンバーライトは、回収プロセスを容易にするため、鉱山の別々の場所に外気にさらされる形で備蓄される。これが大粒のダイヤモンドに加わるダメージの可能性を低減することになる。 写真:Russell Shor/GIA

「Arkhangelskaya パイプのダイヤモンド埋蔵量は最大で、地下 54 メートル(177 フィート)にある非常に大きな Lomonosovskaya パイプと比べて、取り除くべき表土が約 30 メートル(98 フィート)と最も少なくて済みます。ですから、Arkhangelskaya が最初の採掘対象に選ばれました。」と Zezin は言います。また、同社は政府の要請で、キンバーライトを上昇させるために非常に高い圧力で地表に水を噴射するなど、一般的でない採掘方法をしばらく試していたと教えてくれました。 最終的にそれらの方法は「効率的でも効果的でもない」と確認されたと言います。

セベラルマズは Arkhangelskaya と Karpinskogo I パイプで採鉱を進める一方、Pionerskaya と Lomonosovskaya の 2 つの最大のパイプを予備として残しつつ、Karpinskogo II と Pomorskaya は検査中のままとなっています。 同社は従来型のダイヤモンドの採鉱方法に戻りましたが、1 つだけ異なる手法を用いています。発破を行っていないのです。

Zezin は言います。「鉱体の上部は非常に柔らかいため、爆破せずに掘削機で作業を行うことができます。 ただし、深くなるにつれて、鉱石が非常に硬くなるパイプの一部分では爆破しなければならないこともあります。」

他の鉱床での採掘ともう 1 つ異なるのは、セベラルマズ社は加工工場に素材を直ちに搬送しないという点です。 その代わり、素材を数ヶ月間備蓄して風化させてから粉砕します。

記念碑となったトラックの前に立つIlya Zezin。
35トン運搬トラックの前に立つ、Severalmazで副主任を務める地質学者Ilya Zezin。現在使用されていないこのトラックは、2014年のメイン処理施設オープンを記念するモニュメントとなっている。 写真:Russell Shor / GIA

「風化するとキンバーライトはさらに柔らかくなり、回収するのが容易になります。」と Zezin は説明してくれました。

工場では鉱石が水と混ぜられ、巨大な回転式洗浄機の中で回転し約 120 ミリメートル × 25 ミリメートルに粉砕されます。これは、最も大きな結晶が損傷しない程度の十分な大きさです。 粉砕された後、素材は油圧分離器に送り出されます。 最大の鉱石は X 線装置に直接送られ、中間サイズの鉱石は遠心分離機にかけられた後、X 線装置に送られます。 X 線装置は、1 ミリメートルまで小さなダイヤモンドを識別して分離します。 最も小さい素材は X 線装置には送られず、尾鉱扱いとされます。

工場ではさらに、見逃された可能性があるダイヤモンドを尾鉱の中から検知する検査プロセスがありました。その結果を表示するモニターを誇らしげに示しながら、 Zezin はこの方法はうまくいっているようだと言っていました。 回収率は平均およそ 97% であると彼は述べ、 この時モニターは 99% 以上の回収率を示していました。
 
生産工程は各パイプで異なり、時には別々に処理されることもありますが、ほとんどの場合は一緒に処理されます。 ロモノソフでは、非常に大きなダイヤモンドが産出されることはほとんどありません。 ロモノソフから産出された最大のダイヤモンドは、2011 年に発見された 106 カラットの灰色の工業用ダイヤモンドです。 2 本のパイプで産出されるダイヤモンドの 82% は、宝石品質または宝石品質に近いものです。 アルハンゲリスク市の選別施設に GIA が訪問した際、 2 週間で産出されたうちの一部として、10.8 カラットを超える様々な品質の約 20 個のダイヤモンドが並べられていました。

仕分け室のダイヤモンドの山の脇に立つ、Karen Smit(左)とRussell Shor。
GIAからの訪問者、リサーチサイエンティストのDr. Karen Smit(左)およびシニア インダストリー アナリストのRussell Shorが、ロシア、アルハンゲリスク市近郊のロモノソフ鉱床にあるArkhangelskayaとKarpinsky I パイプでの、約2週間の生産を振り返る。 写真提供:Severalmaz

加工工場が拡大され、より豊かな鉱床部分での採鉱が開始するため、ロモノソフの生産は今後数年間で倍増しそうだ、とセベラルマズの主任エンジニア Igor Nikolaevich は説明していました。 また、他のパイプを開発するのは何年も先のことになる、と彼は付け加えました。

「その計画は最終決定されていませんが、2040 年または 2050 年以降も採鉱しているのは確実でしょう。」と彼は述べました。

編集者メモ:アルロサは、3830 万カラット(世界全体の 30%)の生産量を誇る世界最大のダイヤモンド生産者であり、官民連携企業です。 2013 年のアルロサ株の第二次放出では 14% および 2016 年の第二次放出では 10.9% が売却され、中央政府、サハ州および様々な自治体が残りの株式を保有しています。

Russell Shor はカールスバッドにある GIA のシニア業界アナリストです。
Karen Smit 博士はニューヨークの GIA の研究科学者です。

筆者ら一同は、アルロサの皆様方にこの素晴らしい旅の実現にご協力いただいたことに対して、心よりお礼申し上げます。 国際関係部の Evgenia Kozenko 様および Irina Dolgopolova 様は、この旅行を企画してくださり、ご親切にも私たちに同行し当社見学の際に通訳を務めてくださいました。 副主任地質学者の Ilya Zezin 様、主任地質学者の Vladimir Kim 様および鉱山での主任測量士の Valery Kalashnikov 様は、ご多忙中にもかかわらず鉱床を案内くださり、知識を共有してくださいました。 Pavel Grib 様はアルハンゲリスクにあるダイヤモンド選別施設で、ご親切にも私たちを案内してくださいました。 セベラルマズのプレスサービス主任の Svetlana Antipina 様も、アルハンゲリスクでの訪問の企画にご援助くださり感謝しております。 最後に、モスクワの United Selling Organisation でガイドとして案内してくださった Anatoly Posadsky 様と Ludmila Demidova 様にも心よりお礼申し上げます。