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称賛に値する金属加工:宝石のジュエリーの魅力を引き立てる技法


フィリグリー、グラニュレーション(粒金細工)、宝石で飾られた長方形の形をした金色の箱。
Akeloとして知られているモダンなデザイナー、Andrea Cagnettiは、この「Addebaran」ボックス(1999年製)でフィリグリーとグラニュレーション(粒金細工)を用いてエトルリア風のデザインを強調している。金を使用して作業する際、Akeloは古代の祖先からインスピレーションを取り入れる。提供:Akelo、Andrea Cagnetti 写真撮影:Robert Weldon/GIA

主演の俳優の代わりに助演であった俳優が注目を浴びることがあるように、上質な金属加工は、その金属にセットされている宝石よりも光り輝く場合があります。このジュエリーの画像コレクションは、先コロンブス期から現在に至るまでの作品を使いながら、フィリグリーとグラニュレーション(粒金細工)、オープンワーク(透かし細工)、打ち出し、手彫り、フィレンツェ技法、木目金など、受賞歴のある見事に優れた作品を制作するために使用される技法を紹介します。

ムーンストーンが中心にあるダイヤモンドの形をした上部からトルマリンが中心にある三角形のものがぶら下がっている。
Carolyn Tylerは、トルマリンとムーンストーンでできたこのリングとイヤリングでグラニュレーション(粒金細工)、フィリグリー、ルプッセ(repoussé 打ち出し細工)を使用している。彼女は、自然、神話、部族の芸術をテーマにした古代文明のアーチファクトにインスピレーションを受けて作品を作る。彼女のジュエリーはバリの職人によって22Kゴールドで作られた。提供:Elise Misiorowski 写真撮影:Tino Hammid/GIA、Tino Hammid

フィリグリーとグラニュレーション(粒金細工)

フィリグリーとグラニュレーションは古くから使われてきました。フィリグリーは、非常に細い線状の金属製ワイヤーを複雑なパターンにロウ付けして作られます。このワイヤーは、そのままの状態であったり、素敵な形状に曲げたり、ねじられていることがあります。以前、フィリグリーは底にある土台にワイヤーを使用することで作られていました。技法が進化するにつれて、レースのように見える軽いオープンワークのジュエリーが好まれるようになったため土台がなくなりました。オープンワークの様式は19世紀の間に特に人気がありました。

グラニュレーションは、古代から伝承されているジュエリーアートであり、はんだの跡を見せずに微細な金の粒子がビーズのようロウ付けされています。この技法は、質感を与えるために利用したり、デザインの一部として使用することができます。シュメール人が最初にグラニュレーションを使用し、その次に西欧のエトルリア人が使用し始めました。 

複雑なピアッシングとダイヤモンドで飾られた円形のピン。
ダイヤモンドでできたこのブローチ/ペンダントは、繊細なピアッシングのオープンワークのプラチナを特徴とする。三つ葉をモチーフとしてデザインされており、それぞれの葉に月桂樹の花輪が飾られ、ハチの巣とレースで縁取りされている。縁はすべてミル打ちされている。提供:Neil Lane, Inc.(ニール・レーン社)、ビバリーヒルズ。写真撮影:Tino Hammid/GIA、Tino Hammid

オープンワーク(透かし細工)

オープンワークは、光が入って来るような模様を作るために金属を切り抜く技法です。「ピアッシング」は、ドリルや宝石商の糸鋸で装飾的なモチーフを作るために使用されるオープンワークの技法です。目に近づけてよく観察してみると、端がミル打ち用の工具で圧縮されているのをご覧いただけます。木製のハンドルが付いたピザカッターのような工具が回転して、小さいビーズのような模様が作られるのを想像してみてください。お気に入りのレリーフがオープンワークを施す金属に残り、きらめきを放つようになります。

フランス語で「最新」という意味のア・ジュールは、オープンワークのもう一つの技法であり、後ろから光が入ってくるように糸鋸を使用したりピアッシングを行って制作します。光が加わることで、宝石のシンチレーションと色が向上し、活気に満ちた外観が生まれます。

中心から腕が伸びている三日月の形をしたピン。それぞれの「腕」の先端には真珠が飾られている。
南洋真珠が飾られた18Kゴールド製の月と星のピンは、打ち出し技法を特徴とする。くぼみから生まれる模様が温かみのある光沢を放つ。これはモダンなピンであるが、打ち出し加工はアーツ・アンド・クラフツ運動が盛んに行われていた時代に特に人気を博していた。提供:Leslie Weinberg Designs(Leslie Weinbergデザイン) 写真撮影:Robert Weldon/GIA

打ち出し

打ち出しとは、先端が特殊な形になっている小さな槌で繰り返し叩き、全体的にくぼみがある装飾的な模様をつける技法です。打ち出しの歴史は何千年も前に遡りますが、打ち出し加工はアーツ・アンド・クラフツ運動が盛んに行われていた時代(1860年代~1920年代)に特に人気を博していました。ルプッセ(repoussé)repoussageでは、槌とポンチ(先の尖ったタガネ)を使用して裏側を引き上げます。また、チェイシングでは職人が槌で工具を叩いて金属の表面をへこませます。

ルビーのカボションを特徴とするワイドローズゴールドの模様が付いたブレスレット。

手彫り

手彫りでは、さまざまな形およびサイズの鋼鉄製の彫刻刀やタガネを使用すると異なった効果が生まれます。繊細な平行線を持つ仕上げ用の彫刻刀を使用すると、交差する線が質感のある模様(フィレンツェ技法として知られている)を作り出します。

Buccellati(ブチェラッティ)のデザインは、上質のリネンやレースを連想させる豊かな質感を持つ品質が特徴のフィレンツェ技法で有名です。また、同社の職人は、ハチの巣、レース、クモの巣のように見せるために使用されるピアッシング技法も使用しています。Buccellatiの工房の歴史は、金細工師のContardo Buccellatiがジュエリーを制作した1750年まで遡ります。Mario Buccellattiが、1920年代から1960年代にかけて事業を展開し、同社は国際的な有名ブランドとなりました。Bucellatiの技法および使用される工具は、ルネッサンスの時代以来変化していなく、代々継承されています。

黒い宝石のネックレスにある木目金のビーズ。
木目金の数少ない巨匠の一人、George Sawyer。1970年代以降、見事な芸術作品を制作している。George Sawyer氏による贈呈品。写真撮影:Orasa Weldon/GIA

木目金

木目金は、17世紀に日本の金属細工人の巨匠、正阿弥伝兵衛によって初めて作られました。日本では貴金属を入手するのが困難であったため、新しい合金や合金を着色するための化学処理が発明されました。木目金は、様々な合金の板金を幾層にも重ねて溶着させ、塊を作ります。このようにして、自然な木目のように見える金属、木目金が誕生します。この工程は、最初はサムライの刀を作るために使用されていました。

美しいジュエリーをご覧になるとき、金属加工の細かい部分や職人の技を注意深く観察してみましょう。このような素晴らしい技法がスターである宝石を一層輝かせていることにお気づきになるでしょう。

Sharon Bohannonは、写真の研究とカタログ化、そして記録を行うメディア編集者であり、GIAよりGGおよびAJPを取得しました。Richard T. Liddicoat 宝石学図書館情報センターに勤務しています。