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デビアスのライトボックスダイヤモンド


DiamondViewが右側にあり、コンピュータの画面の前に座っている女性。
GIAの研究員Sally Eaton-Magana博士が、DiamondViewでマーキスダイヤモンドの画像を分析し、合成石であるかどうか判断する。写真撮影:Russell Shor/GIA

デビアスのラボで製造されたダイヤモンド、Lightbox(ライトボックス)は、昨年の秋に小売店の店頭に並び始めました。その販売から直後、ラボで製造されたダイヤモンドを11年間鑑別および分析しているGIAの研究員、Sally Eaton-Magana博士が、Gems & Gemology(宝石と宝石学)の2018年冬号のためにこのデビアスの新製品の研究に取り掛かりました。 

ライトボックスダイヤモンドは、サイズが4分の1カラット、ハーフカラット、1カラット、色が無色、ピンク、ブルーで製造されており、カラット単価は均一800ドル(約8万8000円)となっています。Eaton-Magana博士は それぞれ0.24カラットと0.26カラットの2つの無色の標本を検査しました。

これらのダイヤモンドは両方とも、GIAのダイヤモンドカラースケールで「G」に相当すると評価され、カットグレードは「エクセレント」および「ベリーグッド」と判断されました。また、両方ともクラリティが非常に高く、GIAのクラリティスケールでVVS2に相当すると分析されました。小さい方のダイヤモンドはベゼル ファセットにピンポイントがあり、もう1つのダイヤモンドはスターファセットに極小のフェザーがありました。テーブルの下にレーザー刻印されたライトボックスのロゴ(正三角形が中央にあり、2つの二等辺三角形が並べられている)は、顕微鏡で容易に観察できるほど十分な大きさであり、このためクラリティグレードがVS2に低下します。GIA合成ダイヤモンドグレーディングレポートは、特定のグレードではなく範囲を使用して、ラボで製造されたダイヤモンドのカラーとクラリティを記述します。

Easton-Magana博士は、ライトボックスダイヤモンドが化学蒸着法 (CVD) を使用して製造されたことを確認しました。これは検出可能な窒素を持たないタイプ IIa のダイヤモンドであることを意味します。「高圧高温(HPHT)とCVD法で製造された合成石の鑑別基準は、それぞれ全く異なります。」過去10~15年で合成石が非常に多様化されている、と説明しました。 

GIA合成ダイヤモンドグレーディングレポートが2007年に初めて発行されたとき、CVD合成石は市販されていませんでした、と彼女は指摘しました。ラボで製造されたダイヤモンドで市販されているサイズのものは、非常に大きかったり、とても小さかったりと、種類が豊富になりました。また、無色からほぼ無色の合成石は非常に稀だったのですが、現在ラボで見られるものは、ほとんどがこのカラーグレードとなります、と続けました。

ライトボックスは市場では新製品であり、ラボで製造されたダイヤモンドの品種は多様化していますが、基本的な鑑別基準は変化していません。合成ダイヤモンドの鑑別は、成長形態および光学的特性に基づいて行われます。GIAは、定期的に新製品に関する研究を行っており、新たなトレンドを先取りするために自ら合成石を製造するプログラムもあります、と博士は話します。

これと同様に、鑑別に使用される基本的な機器も変更していません。研究員およびグレーディングラボのスタッフは、顕微鏡検査蛍光性を観察する画像吸収分光学測色器、フォトルミネッセンス(PL)分光法を引き続き使用しています。しかし、これらの機器のスピードと効率は大きな進化を遂げた、とEaton-Magana博士は説明しました。

PLマッピング機能が向上した結果、GIAはわずか数分でダイヤモンドの表面においてミクロンサイズの間隔で何千ものスペクトルを収集することができるようになったため、この改良は非常に重要です。  

この技術により、合成ダイヤモンドの欠陥濃度をマッピングして、HPHT合成石の成長領域を観察することができます、とEaton-Magana博士は説明します。ダイヤモンドで1つだけでなく、何千ものPLスペクトルを収集できるようになったため、以前は不可能だった相関関係を発見する機会ができました。また、GIAでは以前実験されていなかった可変性のある様々な要因が研究に取り入られました。ナノ秒からミリ秒の範囲でダイヤモンドの発光を観察するなど様々な時間単位や異なる温度でダイヤモンド内のスペクトルにどのような影響を与えるかが研究されています、と説明を続けました。

PLスペクトルを研究した結果、色を改善するためのHPHT処理がライトボックスダイヤモンドには製造後に行われなかったことが判明しました。研究員は、これまで検査した中でCVD法で製造されたすべてのダイヤモンドの約75%がHPHT処理を受けていると指摘しました。その理由は、これらのダイヤモンドは、特に製造会社が迅速に製造すると多くの場合茶色がかった色で製造されるためです。HPHT処理は、CVD法で製造されたダイヤモンドの色を改善するのに効果がありますが、十分な熱と圧力の環境を作るために必要となる大量のエネルギーは、生産コストが大幅に増加する原因となります。しかし、ライトボックスの製品は、市場に出回っているラボで製造された他のダイヤモンドのほとんどの製品よりもはるかに安い価格で販売されています。

ダイヤモンドは両方とも、DiamondViewと呼ばれる合成石検出器で撮影された画像で可視光による赤い蛍光が観察されましたが, 長波紫外線では蛍光が検出されませんでした。ラボで製造されたこれらのダイヤモンドにはCVD法の証拠である条線が確認されましたが、発見するのが困難であったためDiamondViewの画像による観察が必要となりました。 

ラボで製造されたダイヤモンドであるライトボックスは、分光技術、DiamondViewの画像、そしてもちろんテーブルの下に刻印されたロゴによりCVD法で製造された合成石として容易に鑑別されます。

Eaton-Magana博士は、CVD合成ダイヤモンドの研究を世界に先駆けて進めてきた一人であるJohn Angus博士と共に研究を行い、化学工学の博士号を取得しました。博士号および ポスドクの研究では、主にエンジニアリングおよび半導体での応用に使用するCVD合成石の製造に従事しました。

ポスドクの研究員だった時、スミソニアン研究所と協力して、ホープ ダイヤモンドなどのタイプIIbのダイヤモンドのリン光を研究しました。ダイヤモンドをこのように研究してから、この分野に進みたいと思うようになりました。ポスドクの任務が終わった後にGIAで研究員として働くことができて光栄です。それ以来、様々な処理、検出方法、天然石から合成石を区別することに重点を置いて、ダイヤモンドの物理学を深く研究しています、とMagana博士は話しました。

Russell Shorは、GIA カールスバッドのシニア業界アナリストです。