ジェモロジスト、巨大な結晶の世界へ興味を掻き立てることを目指す
4月 27, 2018
宝石鑑別士そして熱心な岩石収集家のLeela Hutchisonは、冒険が大好きな性格や宝石や鉱物に抱く「強烈な」愛が、世界最大の結晶を探査し、その知識を世界中の方々と分かち合えるようになるとは夢にも思っていませんでした。しかし、2001年、湿度100%と華氏128度(摂氏53度)という厳しい条件の下、メキシコの洞窟で高さ40フィート(約12メートル)もある巨大な結晶に慎重に登り、長年抱いていた好奇心は現実の探検と化したのです。
自称「冒険好き」のHutchisonは、巨大な結晶を研究したり、会議、講義、有名な博物館などで講演をしてキャリアを築いていました。また、現在第2版も出版されている、結晶に関する書籍を執筆してきました。
私の仕事で気に入っているのは、人々の好奇心を掻き立てることです。結晶成長の鉱物学や地質学、そしてこれがどのように形成されたり、世界のどこで発見されるのかを皆さんに教えることはとってもやりがいがあります、とHutchisonは語ります。
2000年4月にメキシコのNaica(ナイカ)鉱山で銀を掘削していた鉱夫は、地下およそ1000フィート(約305メートル)のところで「岩盤の気泡」を発見しました。これは、ジプサム(石膏)の無色透明の種である巨大なセレナイト結晶の洞窟だったのです。
Hutchisonは、テキサス州のEl Paso(エルパソ)で炎天下の中、ハイキングや山登り、そして探索をして育ちました。また、癒すパワーを持つ結晶に関しても仕事を通して精通していました。その経験、そしてメキシコのチワワ州で慈善活動を通して築いたつながりにより、2001年1月にこれらの結晶を初めて探検するグループに参加する候補者として抜擢されました。
洞窟の中は「非常に厳しく、死ぬほど苦しい」状況であったとHutchisonは述べます。「ものすごく苛酷な労働環境でした... 今までに発見されたことがなく、どれくらい大きくて、深くて、広いのかも知らない場所を探検しようとしていたのですから。」
Hutchisonは、高さ約40フィート(12メートル)、重さ60トンもあり、世界最大と考えられている巨大なセレナイト結晶を検査し、記録に残しました。
「あの結晶を初めて見たとき、まるで彼方遠くにあるスーパーマンの要塞にいるようでした。太陽系の外にある惑星で巨大な結晶があるみたいで、ものすごく暑くて、窒息するかと思ったくらいです。」
この洞窟を探検した後、体験談を分かち合うことを熱望していたHutchisonは洞窟に関する情報や写真を発表し始めました。これらは「多大な」関心を集めたため、Explorers Clubや宝石および鉱物の団体などでより多くの方のために講演会を開き、自分で結晶についての知識を深めました。
その数年後、アリゾナ州ツーソンで行われた2004年AGTAジェムフェアに出席することを決心したHutchisonは、別の砂漠で新しい冒険に乗り出しました。宝石商および時計職人であった叔父が近年他界したことを受けて、Hutchisonは彼が収集していた宝石の裸石(ルース)を従兄弟が評価するのを助けていました。ツーソンのショーに出席するためのバッジを受け取った後、GIAのブースで担当者と会話がはずみ、キャンパスで受講できるグラジュエイトジェモロジスト(GG)のプログラムに早速その場で申し込みました。
地球で発見される最大の結晶の探検家そして研究者として長い間情熱を抱いている私のキャリアでこれは転機となりました、とHutchisonは語ります。
Hutchisonの研究は、チワワ砂漠とその洞窟における原因不明の謎に焦点を当て、巨大な結晶がどのように形成されたか、そしてまだ発見されていないものがあるかなどを探求します。彼女は、Naica(ナイカ)鉱山よりもさらに深い場所にさらに巨大な結晶の窪みがあると確信しています。
私の研究結果の多くは、チワワ砂漠での私自身の経験と、NASAで宇宙生物学のディレクターを務めるPenelope Boston博士のような専門家との対談によるものです。Boston博士は、結晶中の微生物は6万年以上前のものであり、まだ生存していて、NASAのデータベースと一致するものは全くなかったと判断しました、とHutchisonは説明します。
この洞窟は再び浸水し、採鉱事業が除水作業を停止したため、もはや訪れることはできなくなりましたが、Hutchisonは、この地域にある別のセレナイト鉱床を検査して引き続き結晶を研究しています。2017年9月にLos Angeles Museum of Natural History(ロサンゼルス自然史博物館)で行われる講演会など、数多くの会議や博物館で研究成果を披露しています。また、アメリカ国内のラジオ番組で何回もインタビューを受けています。
Hutchisonは、彼女の講演会に出席する参加者の関心を引くために高いコミュニケーション能力を活用しており、GIAのおかげで結晶、宝石、鉱物について専門的に説明できる知識が身に付いたと認識しています。
上手にコミュニケーションを図ることで、世界中の皆さんの間で興味が湧いたり、講演を楽しく熱心に聞いていただけます。(GGを取得する前は)このように新しく発見された結晶の科学について皆さんに専門家としてお話しできるような知識はありませんでした、と話します。
彼女が執筆した書籍の第2版『Journey Into the Giant Selenite Crystal Caves of Mexico(メキシコの巨大なセレナイト結晶の洞窟への旅)』は2016年に出版されました。また、個々のクライアント相手にジュエリー用、自宅での使用、もしくは治癒効果を高めるために、宝石や結晶を買い付けるビジネスにも従事しています。GIAより学んだ教育のおかげで、クライアントから信頼され、「アレキサンドライトからタンザナイト」に至るまで、手に入れようとしていた宝石を本当に理解するための知識が身に付いた、とHutchisonは説明します。
毎年、ツーソンジェムショーに出席して、入学しようとしている新入生で溢れているパビリオンを歩くと、GIAで勉強して良かったと感謝と誇りの気持ちでいっぱいになります。宝石と鉱物のいずれにしても、私が受けた教育は、興味があったことを追い続けるためには非常にかけがえのないことでした、と彼女は語ります。
巨大な結晶を探査してから1年後、洞窟の中にいるHutchisonの写真が、『Smithsonian Magazine(スミソニアンマガジン)』の2002年4月号に掲載されました。今年のAGTA GemFair(ジェムフェア)でSmithsonian Gem and Mineral Council(スミソニアン宝石・鉱物評議会)にて彼女の研究結果を発表するように依頼されたとき光栄に思った、とHutchisonは述べます。
そして、以前の記事で、Jeffrey Post博士(スミソニアン協会の鉱物科学部門長)が話したことが掲載されていて、私がスミソニアンで発表したときに出席していたとおっしゃっていました。これはすごく素晴らしいことで、本当に光栄です、と続けました。
Hutchisonの研究の中心を成す核、つまり宝石や鉱物に対する情熱は依然として強く残っています。最近、クォーツを採掘するためにアーカンソー州を訪れた彼女は、赤い粘土層から美しい結晶を発掘するのは楽しいことです、と説明します。
彼女は結晶に関する興味を掻き立てることにも同様に熱心であり、17年間も彼女が結晶に魅了されているのと同じように講演会の出席者の関心を引き寄せることができたら、と願っています。
寄稿作家のKristin A. Aldridgeは、GIAのパールプログラム及びAccredited Jewelry Professional(AJP アクレディテッドジュエリープロフェッショナル)プログラムの卒業生です。