宝石学の先駆者に因んで命名された新しい鉱物
GIAの科学者、「Crowningshieldite」を発見
カリフォルニア州カールスバッド –2018年10月9日 – GIAの研究員は、University of Padova(パドヴァ大学)の研究員との共同研究で新しい鉱物を発見し、宝石学の研究においてGIAで50年以上も先駆者として活躍していたG. Robert Crowningshield氏の貢献を称えるためにこの鉱物をcrowningshieldite(クラウニングシールダイト)と命名しました。クラウニングシールダイトは、レソトにあるLetseng(レツェング)鉱山で産出された2つのダイヤモンドで改変したインクルージョンとして発見されました。GIAの研究科学者であるEvan M. Smith博士は、GIAの年次研究集会でこの新しい鉱物について発表し、10月8日に開催されたGIAのInternational Gemological Symposium(国際宝石学シンポジウム)で紹介しました。
クラウニングシールダイトは、International Mineralogical Association(国際鉱物学連合)によって9月18日に鉱物として認可されました。Smith博士および彼の研究チームは、ほとんどのダイヤモンドよりもかなり深い場所で形成するタイプ IIa ダイヤモンドの品種であるCLIPPIRダイヤモンドのインクルージョンを検査している際にクラウニングシールダイトを発見しました。クラウニングシールダイトは、六角形の結晶構造を持つニッケル硫化鉱物であり、針ニッケル鉱の高温多形として考えられます。また、α-NiSとして知られている合成化合物に自然に発生する類似物でもあります。この鉱物は、もともと金属製で多相性のインクルージョンが変質したり化学的に変化したため形成されたと考えられています。鉄およびニッケルが豊富に含まれているこれらの金属製インクルージョンは、CLIPPIRダイヤモンドで最もよく発見される種類のものです。
このような鉱物を発見することで、ダイヤモンドと地球に関する理解が深まります。研究がGIAの使命の基礎であるのはこのためです、とGIA取締役副社長兼ラボ研究主任責任者であるTom Mosesは語ります。 Crowningshield氏の遺産を称えるのに、これ以上素晴らしいことはないと思います、と続けました。
G. Robert Crowningshieldは、GIAそして現代の科学ではあまり開拓されていない宝石学を新たなレベルに発展させました。彼が初めて成し遂げた飛躍的進歩は、1956年に照射処理したイエローダイヤモンド特有の分光学的な特徴を発見し記録したことでした。1971年、彼はラボで製造された宝石品質のダイヤモンドに関する史上初のレポートを執筆しました。カラーゾーニング、金属製のインクルージョン、紫外線蛍光の不均一な模様など、その記事で報告されているラボで製造されたダイヤモンドの鑑別基準に関する観察は、現在でもダイヤモンドを鑑別するために使用されています。また、Crowningshieldは真珠およびカラーストーンに関する数多くの発見を発表したことでも有名です。1983年に執筆した画期的な記事では、オレンジピンクの「パパラッチャ」サファイアの命名法を紹介しており、GIAの季刊専門誌、Gems & Gemology(宝石と宝石学)で1957年に彼が創出して以来、毎月掲載されているラボノートのコラムに何千件もの観察結果を報告しました。
Smith博士は、10月7~9日にカリフォルニア州カールスバッドで開催されたGIAの第6回国際宝石シンポジウムでクラウニングシールダイトに関する詳細を発表しました。この新しい鉱物の標本は、カリフォルニア州カールスバッドのGIA本部でGIAの博物館のコレクションに所蔵されます。